国語こくご（読よみ）コクゴ

一般いっぱんには〈日本語にほんご〉の意味いみで使つかわれているが，〈何なんヵ国かこく語ごも話はなせる〉というような場合ばあいは，他たと異ことなる記号きごうの体系たいけいとしての言語げんごをさす。しかしより厳密げんみつにそれぞれの国くにの自国じこく語ごという意味いみでは，ある国家こっかの公的こうてきな言語げんごをさし，〈国家こっか語ご〉あるいは，〈公用こうよう語ご〉ともいう。アイヌ語ごはこの意味いみで国語こくごではない。国家こっか語ごをもたない国家こっかはないが，ある言語げんごが，2ヵ国かこく以上いじょうの国家こっか語ごとなることはありうる。たとえば，英語えいごはイギリス連邦れんぽう諸国しょこく，アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの国家こっか語ごである。また逆ぎゃくに，1国家こっかが数個すうこの公用こうよう語ごをもつ場合ばあいがある。たとえば，スイスでは公用こうよう語ごとしてドイツ語ご，フランス語ふらんすごおよびイタリア語ご，レト・ロマン語ごの四よっつの言語げんごがある。住民じゅうみんには一ひとつのスイスの意識いしきが強つよいにもかかわらず四よっつの公用こうよう語ごが存在そんざいするのは，各かく地方ちほうごとに住民じゅうみんが民族みんぞく的てきに相違そういし，各かく地方ちほうにはそれぞれ支配しはい的てきな言語げんごが一ひとつしかないためと，この4言語げんごが文化ぶんか的てき水準すいじゅんを同おなじくするためとによる。フィンランドには公認こうにんの言語げんごが二ふたつあった。フィンランド語ごは農村のうそん住民じゅうみんが主しゅとして使つかい，スウェーデン語ごは昔むかしの官庁かんちょう語ごで，都市としブルジョアジーに使つかわれた。しかし，フィンランド語ごを話はなす中産ちゅうさん階級かいきゅうが進出しんしゅつし，その教養きょうよう層そうが多数たすう都市としに集あつまり，現在げんざいではフィンランド語ごが多数たすう派はとなり唯一ゆいいつの国家こっか語ごとしての地位ちいを固かためつつある。ベルギーでは，その国家こっか建設けんせつ時じの支配しはい者しゃたるブルジョアジーがフランス語ふらんすごを国家こっか語ごとした。しかし農民のうみんおよび労働ろうどう者しゃが国政こくせいに参与さんよするにつれてオランダ語ご（フラマン語ご）をもフランス語ふらんすごと同等どうとうな国家こっか語ごとすることを要求ようきゅうしそれが認みとめられた結果けっか，こんにち二ふたつの同権どうけんの公用こうよう語ごをもっている。北部ほくぶのオランダ語ご地区ちくと南部なんぶのフランス語ふらんすご地区ちくとの言語げんご境界きょうかい線せんはスイスと同様どうよう，はっきりしている。
→言語げんご政策せいさく　→母語ぼご
執筆しっぴつ者しゃ：野元のもと 菊雄きくお

中国ちゅうごく，春秋しゅんじゅう時代じだいの歴史れきしを国くに別べつにまとめた書しょ。21巻かん。著者ちょしゃは不明ふめい。孔子こうしの門人もんじんの左ひだり丘おか明あきらの作さくとする説せつがあり，《左ひだり氏し伝でん》を〈春秋しゅんじゅう内ない伝でん〉と言いうのに対たいして，〈春秋しゅんじゅう外伝がいでん〉と称しょうされる。春秋しゅんじゅう時代じだいには斉ひとし・晋すすむ・楚すわえ・呉ご・越こしがかわるがわる中国ちゅうごくの覇権はけんをにぎり，歴史れきしはその興亡こうぼうを主軸しゅじくとして展開てんかいされた。本書ほんしょはこの5国こく，いわゆる春秋しゅんじゅうの五ご覇はに，旧きゅう大国たいこくである周あまね・魯・鄭ていの3国こくを加くわえて構成こうせいされている。記載きさいする年代ねんだいは，周しゅうの穆きよし（ぼく）王おう35年ねん（前ぜん967）から貞さだ定てい王おう16年ねん（前ぜん453）までで，《春秋しゅんじゅう》が記載きさいする年代ねんだい（前ぜん722-前ぜん481）よりはるかに長ながい。資料しりょうのあつかいかたや記述きじゅつに《左ひだり氏し伝でん》と矛盾むじゅんする部分ぶぶんもあり，また史話しわの構成こうせいや文章ぶんしょうの技巧ぎこうの点てんで《左ひだり氏し伝でん》に劣おとるが，《左ひだり氏し伝でん》に欠落けつらくした史実しじつも少すくなくなく，歴史れきし文献ぶんけんとしては多おおくの価値かちをもっている。なお，本書ほんしょを〈盲めくら史し〉と呼よぶのは，《史記しき》において，太ふとし史し公おおやけが〈左ひだり丘たかし，明あかりを失うしないて厥（そ）れ国語こくごあり〉と述のべているのによる。
執筆しっぴつ者しゃ：日原ひのはら 利国としくに