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契約(ケイヤク)とは? 意味や使い方 - コトバンク

契約けいやくみ)ケイヤク英語えいご表記ひょうき)contract

翻訳ほんやくcontract

デジタル大辞泉だいじせん契約けいやく」の意味いみみ・例文れいぶん類語るいご

けい‐やく【契約けいやく

(スル)
二人ふたり以上いじょう当事とうじしゃ意思いし表示ひょうじ合致がっちによって成立せいりつする法律ほうりつ行為こうい売買ばいばい交換こうかん贈与ぞうよ貸借たいしゃく雇用こよう請負うけおい委任いにん寄託きたくなど。「契約けいやくむすぶ」「さん年間ねんかん貸借たいしゃく契約けいやくする」→単独たんどく行為こうい合同ごうどう行為こうい
約束やくそくわすこと。また、その約束やくそく
にちらいの―をたがへず、まゐりたるこそ神妙しんみょうなれ」〈平家ひらか
ユダヤきょうキリスト教きりすときょう特徴とくちょうてき思想しそうで、すくいの恩恵おんけいかんしてかみ人間にんげんとのあいだわされた約束やくそく。モーセを仲介ちゅうかいしゃとしてイスラエル民族みんぞくあたえられたものを旧約きゅうやく、キリストの十字架じゅうじかじょう犠牲ぎせいつうじてなされたものを新約しんやくという。
[類語るいご]ちか宣誓せんせい血盟けつめい特約とくやく起請きしょう条約じょうやく約束やくそくもうわせやくやく約定やくじょう協約きょうやくゆいやく盟約めいやく誓約せいやく確約かくやく保証ほしょう公約こうやく口約こうやく内約ないやく黙約もくやく黙契もっけいがみつき

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精選せいせんばん 日本にっぽん国語こくごだい辞典じてん契約けいやく」の意味いみみ・例文れいぶん類語るいご

けい‐やく【契約けいやく

  1. 名詞めいし
  2. ( ━する ) 約束やくそくすること。いかわすこと。
    1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「於いましゃ契約けいやくいちゆずる籙於左府さふいち」(出典しゅってん古事ふるごとだん(1212‐15ごろ)
    2. 「われ、杵臼きなうす(しょきう)にけいやくして、いのちきみにすつること、遅速ちそくをあらそひしなり」(出典しゅってん曾我そが物語ものがたり南北なんぼくあさごろいち)
    3. [その文献ぶんけん]〔しょ鹿しかつて
  3. ある法律ほうりつじょう効果こうか発生はっせいさせる目的もくてきで、二人ふたり以上いじょう当事とうじしゃ申込もうしこみ、承諾しょうだくという意思いし表示ひょうじ合致がっち合意ごうい)によって成立せいりつする法律ほうりつ行為こうい。その内容ないようは、原則げんそくとして当事とうじしゃ自由じゆうにまかされるが、民法みんぽうとく売買ばいばい贈与ぞうよ消費しょうひ貸借たいしゃく賃貸借ちんたいしゃく雇傭こよう請負うけおい委任いにん寄託きたくなどいちさんしゅ典型てんけいについて規定きていしている。典型てんけい契約けいやく
    1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「契約けいやく申込もうしこみこれ取消とりけすことをず」(出典しゅってん民法みんぽう明治めいじきゅうねん)(1896)いちじょう)
  4. ユダヤきょう、キリストきょうで、かみすくいのごう(わざ)をなしとげるために、人間にんげんたいしてしめ特別とくべつ意思いし。また、それによってむすばれたかみひと関係かんけい。イスラエル民族みんぞくたいしてモーセをつうじててられたものを旧約きゅうやくのちにイエス‐キリストによっててられたものを新約しんやくという。
    1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「にをるものみなぬべし。しかれどなんじとはわがわが契約けいやく(ケイヤク)をたてん」(出典しゅってん旧約きゅうやく全書ぜんしょ(1888)創世そうせい)
  5. 女色じょしょく(じょしょく)。いろごと。また、情人じょうにん
    1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「難波なんばりゃく〉とりわきちかころにましさかんの御事おんことおのおのちかうりてけいやくけいやく」(出典しゅってん洒落本しゃれぼん交代こうたいばんさかえ(1754))

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契約けいやく (けいやく)
contract

契約けいやくとは,たがいに対立たいりつする複数ふくすう行為こうい主体しゅたい意思いし表示ひょうじ一致いっち合意ごうい)によって成立せいりつする行為こういである。法律ほうりつてきには後述こうじゅつのように債権さいけん債務さいむ関係かんけい発生はっせいすることを意味いみする。

イギリスの歴史れきし法学ほうがくしゃH.J.S.メーンは《古代こだいほう》(1861)において〈身分みぶんから契約けいやくへ〉という社会しゃかい進化しんか図式ずしき提示ていじし,父権ふけんせい社会しゃかいなか身分みぶんてき拘束こうそくされていた人間にんげん解放かいほうされる過程かていをえがいた。このメーンの書物しょもつドイツ語どいつごばん(1880)に影響えいきょうけたドイツの社会しゃかい学者がくしゃF.テンニースは《ゲマインシャフトゲゼルシャフト》(1887)において,法律ほうりつてき行為こういとしての契約けいやく合理ごうりてき法律ほうりつ関係かんけい特質とくしつしめすと同時どうじに,あらゆる合理ごうりてき社会しゃかい関係かんけい表現ひょうげんでもあることをいた。かれはゲゼルシャフト(利益りえき社会しゃかい)や国家こっか個々人ここじん自由じゆう意思いしにもとづく契約けいやくからつとし,〈契約けいやくとは,ゲゼルシャフトてき行為こういとしての交換こうかんにおいて,あるいちてんまじわるふたつのそうことなる個別こべつてき意思いし合致がっちである〉と定義ていぎづけている。

 このような契約けいやく行為こういしん重要じゅうよう意味いみをもつのは,商品しょうひん交換こうかん商品しょうひん生産せいさん支配しはいてきとなる近代きんだい市民しみん社会しゃかい成立せいりつであった。市民しみん社会しゃかいとは絶対ぜったい主義しゅぎ国家こっか社会しゃかい関係かんけいのありかた対立たいりつし,それを克服こくふく止揚しようしたところに成立せいりつした資本しほん主義しゅぎてき自由じゆう社会しゃかい関係かんけい支配しはいする社会しゃかいである。このような市民しみん社会しゃかいなかで,独立どくりつした自由じゆう平等びょうどう関係かんけいにある商品しょうひん所有しょゆうしゃが,相互そうご利益りえき交換こうかんするために契約けいやく関係かんけいむすぶのは当然とうぜんのことであった。こうした契約けいやく関係かんけいれいとして,17~18世紀せいき支配しはいてき啓蒙けいもう思想しそうとしての社会しゃかい契約けいやくせつわすれるわけにはいかない。社会しゃかい契約けいやくせつは,国家こっか社会しゃかい)の起源きげん自由じゆう平等びょうどう個人こじん相互そうご契約けいやくもとめるかんがかたであるが,各人かくじんがそうした契約けいやくむすぶのは,各人かくじん生命せいめい安全あんぜんや,財産ざいさんなどの所有しょゆうけん国家こっかによって保障ほしょうされるからである。いずれにしても契約けいやくせつ支持しじされる社会しゃかいとは個人こじん主義しゅぎ支配しはいする社会しゃかいである。したがってしん契約けいやく関係かんけいとは独立どくりつした個人こじん自由じゆう意思いしによって決定けっていされるとする〈契約けいやく自由じゆう原則げんそく〉や,わたし人間にんげん契約けいやく関係かんけい私人しじん自治じちにゆだね,私人しじん意思いし法的ほうてき拘束こうそくりょくみとめる〈私的してき自治じち原則げんそく〉は,個人こじん主義しゅぎ社会しゃかいにおける契約けいやく特質とくしつ位置いちづけをもっと明確めいかくしめすものであろう。

 他方たほう集団しゅうだん主義しゅぎ伝統でんとうざす日本にっぽんでは西欧せいおうのようなきびしい契約けいやく意識いしきはみられない。契約けいやくしょ形式けいしき契約けいやくしょわすことは容易よういみとめながら,契約けいやく内容ないよう細部さいぶにまでわたって検討けんとうし,各人かくじん権利けんり義務ぎむ範囲はんい明確めいかくさだめておくといった当然とうぜんのことが省略しょうりゃくされがちである。日本にっぽんでは契約けいやく内容ないようかんしていちいち細部さいぶまできびしくさだめることは,相手あいてたいして信頼しんらい表明ひょうめいすることにもなりかねないからである。契約けいやく内容ないよう不備ふび当事とうじしゃ信頼しんらい関係かんけい義理ぎり人情にんじょう関係かんけいによって補完ほかんされたり,個人こじん責任せきにん集団しゅうだん責任せきにんとして個人こじんへの責任せきにん追及ついきゅう中止ちゅうししたりすることが期待きたいされる社会しゃかいであるということができる。しかし,国際こくさい進展しんてんしたがって国家こっかあいだ通商つうしょう関係かんけいだい規模きぼ企業きぎょうあいだしょう取引とりひき日常にちじょうてきなこととなった今日きょう契約けいやくたいする意識いしき変化へんかせざるをえないであろう。たとえ信頼しんらい関係かんけいうらづけられた人間にんげん関係かんけいなかでも,契約けいやく関係かんけい明瞭めいりょうさだめるという習慣しゅうかん必要ひつようとなっているのである。現代げんだいほう哲学てつがくしゃL.L.フラーは,親密しんみつ関係かんけい敵対てきたいてき関係かんけいにおいては秩序ちつじょづけの原理げんりとしての契約けいやく適当てきとうではなく,〈好意こういをよせあう他人たにん〉のあいだでのみ契約けいやく機能きのうするといったかんがかた提示ていじしたが,このようなかんがかた契約けいやく関係かんけいもっと困難こんなんてん表現ひょうげんしているとみてもよい。
執筆しっぴつしゃ

約束やくそくすること,またいいかわすことで,用語ようごとしては現代げんだいとほぼおなじだが,かならずしも法律ほうりつてき用語ようごとして限定げんていされてはおらず,現代げんだい日常にちじょうとしての約束やくそくにちかい。したがってその内容ないよう種々しゅじゅ多様たようであるが,とくに将来しょうらい行為こうい約束やくそくするために作成さくせいされる文書ぶんしょちぎりじょう契約けいやくじょうばれた。契約けいやく行為こういひろくみれば,もの取引とりひき譲与じょうよについて人間にんげん相互そうごわされる契約けいやく売買ばいばい貸借たいしゃく相伝そうでん預託よたく譲渡じょうとあずか寄進きしんなど)と,人格じんかく関係かんけい設定せってい僧俗そうぞくあいだ主従しゅうじゅう契約けいやくなど),しょく(しき)の補任ほにん(ぶにん)と請負うけおい人間にんげん相互そうご共同きょうどう目的もくてき実現じつげん一揆いっきなど)などについてわされる契約けいやくとに大別たいべつできるが,それぞれの行為こうい中世ちゅうせいでは分化ぶんか独立どくりつし,固有こゆう文書ぶんしょ作成さくせいされることがおおかった。一般いっぱん契約けいやく結果けっかとして作成さくせいされた文書ぶんしょ証文しょうもんという。
執筆しっぴつしゃ

法律ほうりつじょうは,契約けいやくとはひろ意味いみではなんらかの法律ほうりつ効果こうか発生はっせい目的もくてきとした,2人ふたり以上いじょう当事とうじしゃ合意ごうい一般いっぱんをいう。これをうらからいえば,合意ごうい内容ないようどおりの履行りこう強制きょうせいできたり,不履行ふりこう場合ばあいには,損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅうできるということなどを意味いみする。債権さいけん発生はっせい物権ぶっけん設定せってい目的もくてきとする合意ごうい婚姻こんいん離婚りこん養子ようし縁組えんぐみぎょう政庁せいちょう相互そうごあいだあるいは行政ぎょうせいちょうわたし人間にんげん合意ごういなど,この意味いみではすべて契約けいやくである。しかし,せまい意味いみ契約けいやくといわれるときには,債権さいけん発生はっせい目的もくてきとする合意ごういのみをいう(民法みんぽうだい3へん債権さいけんだい2しょう契約けいやく)。この意味いみでの,すなわち民法みんぽうじょう技術ぎじゅつてき意味いみでの契約けいやくは,対立たいりつするふた以上いじょう意思いし表示ひょうじ合致がっち定義ていぎされ,単独たんどく行為こうい合同ごうどう行為こうい対比たいひされつつ,それらとあわせて法律ほうりつ行為こういいち分類ぶんるいとして位置いちづけられる。

上記じょうきのように,契約けいやくは,合意ごういをそのもっと本質ほんしつてき要素ようそとするが,ローマほうにおいては,〈たんなる合意ごういからは訴権そけんしょうじない〉というほう格言かくげんしめすように,合意ごういだけでは法律ほうりつじょう保護ほごあたえられず,当事とうじしゃ一定いってい方式ほうしき一定いってい言語げんごもちいて問答もんどうおこなったり文書ぶんしょ作成さくせいしたりすること)を履行りこうしたり,一定いってい金額きんがくもの現実げんじつ授受じゅじゅしてはじめてうったえをもとめることができた。しかし,取引とりひき発達はったつにつれて,当事とうじしゃたっしようとする経済けいざい目的もくてき多様たようし,雑多ざった方式ほうしき合意ごういをするにつれ,このような方式ほうしき主義しゅぎ崩壊ほうかいかった。くわえて,行為こうい外形がいけい意思いしとを対立たいりつさせ,意思いしおもきをおくギリシア思想しそうや,主観しゅかんてき心情しんじょうおもんじるキリスト教きりすときょう思想しそう影響えいきょうにより,契約けいやく共通きょうつうする要素ようそ合意ごういであり,合意ごうい拘束こうそくりょく根拠こんきょであるというかんがかたまれ,合意ごういさえあれば法律ほうりつじょう保護ほごされうるとする思想しそう成立せいりつするにいたった。その中世ちゅうせいにおけるローマほう継受けいじゅとその学問がくもん自然しぜん法学ほうがくとくに理性りせいによるほう体系たいけいへの努力どりょくなどにより,およそ権利けんり義務ぎむ発生はっせい変更へんこう意思いしにもとづくという思想しそう成立せいりつした。これによって法律ほうりつ行為こういひとつとしての契約けいやく位置いちづけがおこなわれるようになり,せまい意味いみにおける契約けいやく観念かんねん完成かんせいしたのである。

合意ごうい法律ほうりつじょう保護ほごされるべきだという思想しそうは,いいかえれば,裁判所さいばんしょ当事とうじしゃ合意ごういによって形成けいせいされた内容ないようしたがって権利けんり義務ぎむ判断はんだんしなければならないということであり,合意ごういによって当事とうじしゃ自由じゆう法律ほうりつ関係かんけい形成けいせいできるということである。これは契約けいやく自由じゆう原則げんそくばれ経済けいざいてき自由じゆう主義しゅぎ政策せいさく法的ほうてき表現ひょうげんとして,各国かっこく民法みんぽう基本きほん原則げんそくとされ一般いっぱんみとめられている。契約けいやく自由じゆう原則げんそく具体ぐたいてき内容ないようとしては,上記じょうきのほか,一般いっぱんつぎのものがあげられる。(1)締約ていやく自由じゆう,すなわち当事とうじしゃ契約けいやく締結ていけつするかしないかの自由じゆうをもつ。(2)相手方あいてがた選択せんたく自由じゆう,すなわち契約けいやく締結ていけつするにさいして,どのような相手あいてえらぼうとも自由じゆうである。(3)契約けいやく内容ないよう自由じゆう,すなわち当事とうじしゃ契約けいやく内容ないよう自由じゆう決定けっていできる。その内容ないようが,公序良俗こうじょりょうぞくなどほう秩序ちつじょ実現じつげんしようとする価値かちはんするものであってはならないが(民法みんぽう90,91じょう),そうでないかぎりは自由じゆうであるというのが,この意味いみである。(4)方式ほうしき自由じゆう,すなわち契約けいやく原則げんそくとして合意ごういだけで成立せいりつし,一定いってい方式ほうしきをふむことを必要ひつようとしない。上記じょうきのように,歴史れきしてきにはおおきな意味いみをもつが,なお沿革えんかくてき理由りゆうによって,民法みんぽうはつねに合意ごういだけで成立せいりつするわけではない種類しゅるい契約けいやくようもの契約けいやく--後述こうじゅつ)をみとめている。

このような基本きほん観念かんねんささえられた契約けいやくたす機能きのうは,結局けっきょくのところ市場いちば機構きこうたす機能きのう,すなわち個人こじん自己じこ計算けいさんにもとづき私的してき利益りえき追求ついきゅうしつつ取引とりひき交渉こうしょうしてざいやサービスを生産せいさんし,交換こうかんするという機能きのう奉仕ほうしするところにある。つまり,契約けいやく合意ごういであるということは,権力けんりょく強制きょうせいによってざいうばうのではなく,たがいに対等たいとう立場たちば取引とりひき交渉こうしょうによってのみざいるということを意味いみするし,自由じゆう合意ごういにもとづくということは,自己じこほっしないような取引とりひきであれば,しなくてもよいということであるから,私的してき利益りえき追求ついきゅうする個人こじん一致いっちしたところではじめて拘束こうそくされるということになる。したがって,合意ごういによってのみざい交換こうかん可能かのうだということは,ざいについての私的してき支配しはいすなわち所有しょゆうけん承認しょうにんしているということであるので,契約けいやく所有しょゆうけんとならんで市場いちば機構きこう資本しほん主義しゅぎ体制たいせい)をささえる基本きほんてき法的ほうてき枠組わくぐみである。ところが,対等たいとう取引とりひき主体しゅたい自由じゆう交渉こうしょうするとしての市場いちばというイメージは,現在げんざいおおきく変容へんようしてきており,その結果けっかとしてこれを前提ぜんていとした契約けいやくほうのイメージもおおきく変化へんかしていることは,後述こうじゅつするとおりである。

民法みんぽうだい3へんだい2しょうを〈契約けいやく〉とだいし,契約けいやく総則そうそくすなわちすべての契約けいやくつうじて適用てきようされるべき規定きてい民法みんぽう521~548じょう)をかかげ,つぎに13しゅ契約けいやく類型るいけいをあげて(549~696じょう),それぞれにつき規定きていをおいている。13しゅとは,贈与ぞうよ売買ばいばい交換こうかん消費しょうひ貸借たいしゃく使用しよう貸借たいしゃく賃貸借ちんたいしゃく雇傭こよう請負うけおい委任いにん寄託きたく組合くみあい終身しゅうしん定期ていききん和解わかいであり,これらを典型てんけい契約けいやくという(それぞれの内容ないようについてはかく項目こうもく参照さんしょう)。しかし,契約けいやくかんする民法みんぽう規制きせいは,契約けいやくしょうぞくする規定きていだけではない。契約けいやく債権さいけん発生はっせい原因げんいんであるから,債権さいけん一般いっぱんかんする規定きてい適用てきようされることがあり,また契約けいやく法律ほうりつ行為こういもっと重要じゅうよう類型るいけいであるから,法律ほうりつ行為こういかんする民法みんぽう規定きてい(90じょう以下いか)は,契約けいやくもっと典型てんけいてき適用てきようをみる。したがって契約けいやくかんする民法みんぽう規制きせいには,だい1~3へん(いわゆる財産ざいさんほう全体ぜんたいおよんでいることに注意ちゅういしなければならない。具体ぐたいてきべると,大要たいようつぎのとおりである。

(1)契約けいやく成立せいりつ 契約けいやくあい対立たいりつするふたつの意思いし表示ひょうじ合致がっち成立せいりつすると説明せつめいされ,この意思いし表示ひょうじをそれぞれ申込もうしこみ・承諾しょうだくというが,民法みんぽうは,申込もうしこみと承諾しょうだくとによって契約けいやく成立せいりつする場合ばあいにつき,いくつかの規定きていをおいている(52じょう以下いか)。これらの規定きていはだいたいにおいて申込もうしこみが承諾しょうだくあわして契約けいやく成立せいりつせしめる場合ばあいについての規定きていであって,しゅとして手紙てがみでやりとりするへだたしゃあいだ着目ちゃくもくしたものであり,今日きょうでは実際じっさいてき意味いみとぼしい。なお,申込もうしこみと承諾しょうだく以外いがいでも契約けいやく成立せいりつする場合ばあい(526じょう2こうおよびいわゆる交叉こうさ申込もうしこみ--どういち内容ないよう申込もうしこみが相互そうごはっせられた場合ばあい)もあるほか,申込もうしこみと承諾しょうだく以外いがい要件ようけん必要ひつようとする契約けいやくがたようもの契約けいやく--587じょう消費しょうひ貸借たいしゃく,593じょう使用しよう貸借たいしゃく,657じょう寄託きたく)もあるので,契約けいやく成立せいりつについての問題もんだい個々ここ契約けいやく解釈かいしゃく問題もんだい帰属きぞくし,成立せいりつかんする規定きてい契約けいやく総則そうそくとしての意義いぎは,あまりおおきくない。

(2)契約けいやく効果こうか 契約けいやく成立せいりつすると,合意ごうい内容ないようどおりの権利けんり義務ぎむ関係かんけい契約けいやく当事とうじしゃあいだしょうじ,裁判官さいばんかんはそれを基準きじゅんとして裁判さいばんしなければならない。前述ぜんじゅつしたように,これが契約けいやくもっと基本きほんてき原則げんそくである。したがって,契約けいやく当事とうじしゃがいかなる法律ほうりつ効果こうかほっしていかなる内容ないよう合意ごういをしたかをあきらかにし,確定かくていする作業さぎょう,すなわち契約けいやく解釈かいしゃくが,あたかも法律ほうりつ解釈かいしゃくすべき重要じゅうよう作業さぎょうとなる。契約けいやく解釈かいしゃくという作業さぎょうについては,法律ほうりつ行為こうい解釈かいしゃくべられている一般いっぱんろんがそのままあてはまるので,ここではかえさない。公序良俗こうじょりょうぞくおよび強行きょうこう規定きていはんしない限度げんど効力こうりょくをもち,信義しんぎそく慣習かんしゅう任意にんい規定きていたすけをりて解釈かいしゃくする必要ひつようがあるなどのてんでは共通きょうつうしているが,ただ契約けいやくにあっては,原始げんしてき不能ふのう契約けいやく成立せいりつ以前いぜん履行りこう不能ふのうなことが確定かくていしていること)を目的もくてきとする契約けいやく無効むこうであるという法理ほうり承認しょうにんされていることに由来ゆらいする特殊とくしゅ問題もんだいがある(契約けいやく締結ていけつじょう過失かしつ)。このように契約けいやく効力こうりょく契約けいやく解釈かいしゃくによってまるというにつきるが,それだけではあまりにも漠然ばくぜんとしているので,民法みんぽう前述ぜんじゅつしたようにローマほう以来いらい伝統でんとう,あるいは日本にっぽん社会しゃかい慣行かんこう見通みとおしなどを加味かみして13しゅ契約けいやく類型るいけい典型てんけい契約けいやく)をかかげ,契約けいやく解釈かいしゃくをするさいたすけとしている。典型てんけい契約けいやく規定きていはこのような意味いみしかもたないので契約けいやく解釈かいしゃくさい無理むりひとつの典型てんけい契約けいやくにあてはめ,そこから演繹えんえきてき権利けんり義務ぎむ判断はんだんしてはならない,と指摘してきされることがおおい。なお,民法みんぽうは〈契約けいやく効力こうりょく〉とだいするしょうもうけているが,その内容ないよう双務そうむ契約けいやく特殊とくしゅ効力こうりょく同時どうじ履行りこう抗弁こうべんけん危険きけん負担ふたん)についてさだめたものであって,契約けいやく一般いっぱん効力こうりょくについてではない。

(3)契約けいやく違反いはんたいする救済きゅうさい 契約けいやく成立せいりつし,契約けいやく解釈かいしゃくによって効力こうりょくみとめられるならば(無効むこう取消とりけしの問題もんだいしょうじないならば),それにしたがって契約けいやく当事とうじしゃ権利けんりゆう義務ぎむう。その結果けっか権利けんりしゃは,相手方あいてがた義務ぎむ履行りこうおうじないならば,訴訟そしょうこし,判決はんけつて,強制きょうせいてき契約けいやく内容ないよう実現じつげんすることができる。さらに,一定いってい要件ようけんしたに,権利けんりしゃ損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅうでき(415じょう),双務そうむ契約けいやくからしょうじた債務さいむ不履行ふりこうがある場合ばあいには,これとならんで契約けいやく解除かいじょできる(540じょう以下いか)。これらが一般いっぱんてき契約けいやく違反いはんたいする救済きゅうさい手段しゅだんであるが,個々ここ契約けいやくについて特殊とくしゅ救済きゅうさい手段しゅだんみとめられていることがある(売主うりぬし担保たんぽ責任せきにんさだめた561じょう以下いかなど)。

契約けいやく種々しゅじゅ角度かくどから分類ぶんるいされる。主要しゅよう分類ぶんるいをあげればつぎのとおりである。

(1)有償ゆうしょう契約けいやく無償むしょう契約けいやく 契約けいやく当事とうじしゃ対価たいかてき意味いみ(たとえば売買ばいばい契約けいやくにおける目的もくてきぶつ代金だいきん)をもつとかんがえる財産ざいさんじょう損失そんしつ相互そうご負担ふたんする契約けいやく有償ゆうしょう契約けいやくで,そうでない契約けいやく無償むしょう契約けいやくである。前者ぜんしゃれいとしては売買ばいばい交換こうかん利息りそくづけ消費しょうひ貸借たいしゃく賃貸借ちんたいしゃく雇傭こよう請負うけおいとうが,後者こうしゃれいとしては贈与ぞうよ無利息むりそく消費しょうひ貸借たいしゃく使用しよう貸借たいしゃくとうが,それぞれあげられる。合意ごうい法律ほうりつじょう拘束こうそくりょくをもった(すなわち裁判さいばんによって強制きょうせいしうるものとなった)最初さいしょのものが(紛争ふんそう解決かいけつする合意ごういすなわち和解わかいのぞけば)有償ゆうしょう契約けいやくであったとかんがえられており,この意味いみで,この分類ぶんるいもっと基本きほんてきなものだとほぐされている。民法みんぽうじょう有償ゆうしょう契約けいやくには売買ばいばい規定きてい準用じゅんようされ(559じょう),このてんにおいて有償ゆうしょう契約けいやく無償むしょう契約けいやくとを区別くべつする意味いみがある。このほか,両者りょうしゃあいだには効力こうりょく差異さいがあることがおおい(たとえば贈与ぞうよしゃ担保たんぽ責任せきにんについて規定きていする551じょう売主うりぬし担保たんぽ責任せきにんについて規定きていする561じょう以下いかとの対比たいひ)。

(2)双務そうむ契約けいやく片務契約へんむけいやく 契約けいやく当事とうじしゃ双方そうほう対価たいかてき意味いみをもつとかんがえる債務さいむ負担ふたんする契約けいやく双務そうむ契約けいやく,そうでない契約けいやく片務契約へんむけいやくである。民法みんぽうじょう双務そうむ契約けいやくはすべて有償ゆうしょう契約けいやくである。片務契約へんむけいやくは,だいたいにおいて無償むしょう契約けいやくであるが,有償ゆうしょう契約けいやくである場合ばあいもある。たとえば利息りそくづけ消費しょうひ貸借たいしゃく有償ゆうしょう契約けいやくであるが,貸主かしぬしなんらの債務さいむ負担ふたんしないから(587じょう),片務契約へんむけいやくである。民法みんぽうじょう同時どうじ履行りこう抗弁こうべんけんおよび危険きけん負担ふたん双務そうむ契約けいやく特有とくゆう効果こうかとされるてんで,両者りょうしゃ区別くべつする意味いみがある。

(3)だくなり契約けいやくようもの契約けいやく 契約けいやく成立せいりつ合意ごういだけが要求ようきゅうされるものがだくなり契約けいやく合意ごうい以外いがいもの引渡ひきわたとう給付きゅうふ要求ようきゅうされるものがようもの契約けいやくである。民法みんぽうじょう消費しょうひ貸借たいしゃく使用しよう貸借たいしゃく寄託きたくようもの契約けいやくとされ,典型てんけい契約けいやくはいずれもだくなり契約けいやくである。ようもの契約けいやく合意ごういだけで成立せいりつしないのだから,契約けいやく成立せいりつ時期じきだくなり契約けいやくことなることになり,このてん両者りょうしゃ差異さいがみられる。ようもの契約けいやくは,たんなる合意ごういだけでは契約けいやく拘束こうそくりょくみとめられなかった時代じだい思想しそう反映はんえいであって歴史れきしてきなものにすぎないというかんがかた有力ゆうりょくであり,たとえば,契約けいやく解釈かいしゃくとしてだくなりてき消費しょうひ契約けいやく効力こうりょくみとめられるとほぐされている。

(4)継続けいぞくてき契約けいやく継続けいぞくてき一時いちじてき契約けいやく 賃貸借ちんたいしゃく契約けいやく(とくに不動産ふどうさん賃貸借ちんたいしゃく),雇傭こようなどのように,契約けいやく当事とうじしゃあいだ契約けいやく期間きかんちゅう契約けいやく当事とうじしゃ継続けいぞくして給付きゅうふをするものが継続けいぞくてき契約けいやく売買ばいばい(とくに私人しじんがする不動産ふどうさん売買ばいばい)・贈与ぞうよなどのように1かいかぎりの給付きゅうふわるものが常態じょうたいである契約けいやく継続けいぞくてき一時いちじてき契約けいやくばれることがある。しゅとして,学者がくしゃによって主張しゅちょうされたもので,前者ぜんしゃ契約けいやく効力こうりょく将来しょうらいかって消滅しょうめつさせるものであるてん解除かいじょ遡及そきゅうこうさだめた620,630じょう参照さんしょう),1かい債務さいむ不履行ふりこうではただちに解除かいじょすることがゆるされず,当事とうじしゃあいだ信頼しんらい関係かんけい顧慮こりょしなければならないとほぐされるてん同時どうじ履行りこう抗弁こうべんけん適用てきよう差異さいみとめむべきてんなどにおいて,後者こうしゃ区別くべつされる意味いみがあるとかれている。

(5)典型てんけい契約けいやく典型てんけい無名むめい契約けいやく 前記ぜんきのように民法みんぽう規定きていされている13しゅ契約けいやく典型てんけい契約けいやく,そうでない契約けいやく典型てんけい無名むめい契約けいやくである。前述ぜんじゅつのように,契約けいやく効力こうりょくは,まず当事とうじしゃ合意ごうい内容ないようそくして(すなわち契約けいやく解釈かいしゃくによって)さだめるべきものであり,民法みんぽう規定きていはそのたすけとなるにすぎないものだから,この区別くべつ意味いみおおきなものではないが,用語ようごとしては頻繁ひんぱんもちいられる。

自由じゆう独立どくりつ対等たいとう当事とうじしゃめた合意ごうい内容ないようがそのまま裁判さいばんじょう強制きょうせいできるものとなる,という契約けいやく基本きほん理念りねんは,市民しみん革命かくめい経済けいざい社会しゃかい現実げんじつ反映はんえいしたものであったとかんがえられる。そのような理念りねんは,権力けんりょく拘束こうそくから解放かいほうされ,市場いちばにより自律じりつてきざい生産せいさん配分はいぶんされることにもっとおおきな利益りえき人々ひとびと,すなわち市民しみん階級かいきゅう利益りえきイデオロギーてき表現ひょうげんであり,また,おそらくはどう程度ていど規模きぼをもった多数たすういえ共同きょうどうたい事業じぎょういとなんで取引とりひき生産せいさん主体しゅたいであった段階だんかい社会しゃかい産物さんぶつである。ところが市場いちば経済けいざい進展しんてんにつれ,取引とりひき主体しゅたいあいだ経済けいざいてき格差かくさしょうじてくると,契約けいやく自由じゆう強者きょうしゃ富者ふしゃ自由じゆう転化てんかし,社会しゃかいてき対立たいりつ紛争ふんそうしょうじるようになる。まず問題もんだいは,雇用こようやとい関係かんけいにあらわれた。雇用こよう関係かんけい当事とうじしゃ自由じゆう契約けいやくにゆだねれば,やとしゅ相対そうたいてき供給きょうきゅう需要じゅよう上回うわまわることがおお労働ろうどうりょくたいして,優位ゆういつから,自己じこ有利ゆうり条件じょうけん契約けいやく労働ろうどうしゃしつけることが可能かのうであり,その契約けいやく効力こうりょくをそのまま承認しょうにんすれば,賃金ちんぎんによってのみ生活せいかつするしかない労働ろうどうしゃ生活せいかつ条件じょうけん劣悪れつあくとなる。これを改善かいぜんするために労働ろうどう争議そうぎ労働ろうどう運動うんどうしょうじ,社会しゃかいてき対立たいりつ深刻しんこくとなった。そこで国家こっか労働ろうどう関係かんけい介入かいにゅうし,契約けいやく内容ないよう規制きせいくわえることになる。労働ろうどうほうばれるほう分野ぶんやがこうしてまれ,日本にっぽんではだい2大戦たいせん展開てんかいをみた。同様どうよう法規ほうきせいは,借地しゃくち借家しゃくや関係かんけい地主じぬし小作こさく関係かんけい高利貸こうりかし借主かりぬし関係かんけいにおいても発展はってんした(借地しゃくちほう借家しゃくやほう農地のうちほう利息りそく制限せいげんほうとう)。つぎに,交通こうつう手段しゅだん電気でんき・ガス,大量たいりょう生産せいさんされ規格きかくされた商品しょうひん供給きょうきゅうとうだい規模きぼ設備せつびようし,生活せいかつ不可欠ふかけつざい供給きょうきゅうだい企業きぎょうにより多数たすう相手方あいてがたたいしてなされるが,取引とりひき多数たすう定型ていけいされていることは,契約けいやく内容ないよう定型ていけいみちびき,利用りようしゃは,たとえ不利ふり内容ないようのものであっても生活せいかつ必需ひつじゅひんである以上いじょう契約けいやく拒否きょひする自由じゆうがない(締約ていやく強制きょうせい)。そこで,このような契約けいやく内容ないよう公平こうへい合理ごうりてきなものにするため,いわゆる付合つきあい契約けいやくないし普通ふつう契約けいやく約款やっかん規制きせい現在げんざい契約けいやくおおきな問題もんだいとなってくる。さらにこれと関連かんれんして,だい企業きぎょう消費しょうひしゃとのあいだ経済けいざいてき情報じょうほうじょう格差かくさちぢめて対等たいとう取引とりひき主体しゅたい立場たちばたせるための,消費しょうひしゃ保護ほごばれるほう技術ぎじゅつ発達はったつする。こうして現在げんざい契約けいやくにおいては,契約けいやく自由じゆう原則げんそくがそのまま妥当だとうする領域りょういきすくなくなってきている。そのことは,契約けいやく自由じゆう原則げんそく妥当だとうせいと,それをささえる自由じゆう意思いしのイデオロギーとの妥当だとう範囲はんいは,いったいどこまでなのか,をいなおすことになる。現代げんだい契約けいやくほうはこうした問題もんだいてんかかえている。
執筆しっぴつしゃ

くに地方ちほう公共こうきょう団体だんたい行政ぎょうせい活動かつどうにともない締結ていけつされる契約けいやくのうち,個人こじんあいだ契約けいやくであれば当然とうぜん適用てきようされる民法みんぽう商法しょうほうなどの私法しほう規定きていが,行政ぎょうせい目的もくてきである公益こうえき見地けんちから法令ほうれいまたは解釈かいしゃくじょう適用てきようされず,行政ぎょうせい特有とくゆうほう公法こうほう)にふくするものをいう。法令ほうれいじょう用語ようごではなく,学説がくせつ判例はんれい行政ぎょうせいほう解釈かいしゃく理論りろんにおいてもちいられる概念がいねんである。おなじく行政ぎょうせいじょう契約けいやくであっても,私法しほう規定きてい適用てきようがある〈私法しほうじょう契約けいやく〉と区別くべつされる。公法こうほうじょう契約けいやくとしては,行政ぎょうせいじょう事務じむ委託いたく公用こうよう負担ふたん契約けいやく報償ほうしょう契約けいやく公害こうがい防止ぼうし協定きょうてい,および行政ぎょうせい当事とうじしゃとしないが土地とち収用しゅうようにおける起業きぎょうしゃ土地とち所有しょゆうしゃ和解わかいなどがある。適用てきようされるべき公法こうほう法理ほうり内容ないようについては,たとえば,当事とうじしゃあいだ利害りがい調整ちょうせい見地けんちからさだめられた契約けいやく解除かいじょなどにかんする私法しほう規定きてい適用てきようはないとかれているが,いまだ一般いっぱんてき体系たいけいてき法理ほうり確立かくりつしていない。他方たほう行政ぎょうせい活動かつどうにともなう売買ばいばい請負うけおいなどの政府せいふ契約けいやく私法しほうじょう契約けいやくかいされてきたが,これらについても法令ほうれいじょう特別とくべつさだめがあり,公法こうほうじょう契約けいやくとの差異さい区別くべつ基準きじゅんかならずしも明確めいかくではない。このため,公法こうほうじょう契約けいやく私法しほうじょう契約けいやく区別くべつすることに消極しょうきょくてき学説がくせつおおい。
行政ぎょうせい契約けいやく
執筆しっぴつしゃ

たとえば,日本にっぽん電気でんき機器ききメーカーAとアメリカ輸入ゆにゅう業者ぎょうしゃBとがロンドンで締結ていけつしたAの製品せいひん売買ばいばい契約けいやくとか,日本にっぽん商社しょうしゃのパリ支店してんがその従業じゅうぎょういんとしてベルギーじんやとれるさい雇用こよう契約けいやくなどのように,契約けいやく当事とうじしゃ国籍こくせき住所じゅうしょ契約けいやく締結ていけつ履行りこうなど,契約けいやくかんするしょ要素ようそが2こく以上いじょうにまたがっているとき,その契約けいやく国際こくさい契約けいやくまたは渉外しょうがい契約けいやくという。

国際こくさい契約けいやくには,売買ばいばい契約けいやく雇用こよう契約けいやく金銭きんせん貸借たいしゃく契約けいやく運送うんそう契約けいやく保険ほけん契約けいやく合弁ごうべん契約けいやく代理だいりてん契約けいやく技術ぎじゅつ援助えんじょ契約けいやくなど,さまざまなものがあって,今日きょう活発かっぱつ国際こくさいてき社会しゃかい経済けいざい活動かつどうささえている。このような活動かつどう法的ほうてき円滑えんかつかつ安全あんぜんおこなわれるためには,国際こくさい契約けいやく,ことにしょう取引とりひきかんする国際こくさい契約けいやく当事とうじしゃ権利けんり義務ぎむ関係かんけい直接ちょくせつ規律きりつするほう世界せかいてき統一とういつされていることがのぞましく,そのための努力どりょく私法しほう統一とういつ国際こくさい協会きょうかいUNIDROIT)や国連こくれんしょう取引とりひきほう委員いいんかいUNCITRAL)などによってつづけられている。しかし現在げんざいまでのところ,海上かいじょう航空こうくう陸上りくじょう運送うんそう契約けいやく動産どうさん売買ばいばい契約けいやくなどにかんして若干じゃっかん統一とういつほう条約じょうやく成立せいりつしているにすぎず,そのかず統一とういつ対象たいしょうとなっていることがらもかぎられている。そのためおおくの場合ばあい国際こくさい契約けいやくあいことなった内容ないよう併存へいそんする諸国しょこく国内こくないほうのうちのどれかによって規律きりつされるほかはないことになる。この場合ばあいに,契約けいやく規律きりつするほう契約けいやく準拠じゅんきょほう)がどのくにほうであるかをめるのが国際こくさい私法しほうである。ところで,この国際こくさい私法しほうも,現在げんざいのところ世界せかいてきには統一とういつされていない。もし,契約けいやく準拠じゅんきょほうかんするすべてのくに国際こくさい私法しほう規則きそく同一どういつであるならば,どのくに国際こくさい私法しほうによっても,同一どういつ契約けいやくには同一どういつほう適用てきようされることになるから,契約けいやく法的ほうてき効力こうりょくがどのくに問題もんだいとなろうとも,法的ほうてきおな結果けっかられることになり,このてん法的ほうてき安全あんぜんたもたれるであろう。それゆえ,前記ぜんきの,当事とうじしゃ権利けんり義務ぎむ関係かんけい直接ちょくせつ規律きりつするほう実質じっしつほう)の統一とういつとはべつに,契約けいやく準拠じゅんきょほう決定けっていする国際こくさい私法しほう抵触ていしょくほう)を統一とういつしようという努力どりょくもなされている。ハーグ国際こくさい私法しほう会議かいぎによって,1955ねん採択さいたくされ,64ねん発効はっこうした〈有体ありてい動産どうさん国際こくさいてき性質せいしつゆうする売買ばいばい準拠じゅんきょほうかんする条約じょうやく〉(北欧ほくおう諸国しょこくとう9ヵ国かこく批准ひじゅんまたは加入かにゅう日本にっぽん署名しょめい)はそのいちれいである。しかし,いままでのところこのような統一とういつ条約じょうやくすくなく,国際こくさい契約けいやく準拠じゅんきょほうはそのほとんどが,各国かっこく国内こくないほうとして存在そんざいしている国際こくさい私法しほうによって決定けっていされる。

契約けいやく準拠じゅんきょほう決定けっていのしかたには,おおきくけてふたつある。ひとつは客観きゃっかん主義しゅぎばれるもので,これには,契約けいやく締結ていけつとか履行りこうのような契約けいやく関係かんけいのある要素ようそひとつを媒介ばいかいとして,締結ていけつほうとか履行りこうほう準拠じゅんきょほうとする立場たちばと,契約けいやくのもろもろの要素ようそ事情じじょう検討けんとうして,契約けいやくもっともふさわしいとかんがえられるほう準拠じゅんきょほうとする立場たちばとがある。もうひとつは,準拠じゅんきょほう指定してい当事とうじしゃ意思いしにゆだね,当事とうじしゃ指定していしたほう準拠じゅんきょほうとするという当事とうじしゃ自治じち原則げんそく依拠いきょする立場たちばであり,当事とうじしゃ主観しゅかんてき意思いし媒介ばいかいとするところから主観しゅかん主義しゅぎばれる。当事とうじしゃ自治じち原則げんそくは,日本にっぽん法例ほうれい7じょう)もふくめたおおくのくに国際こくさい私法しほうにより採用さいようされている。しかし,当事とうじしゃ明示めいじ準拠じゅんきょほう指定していのみをゆるすのか,黙示もくし指定していみとめるのか,また,指定していできるほう契約けいやくなんらかの関連かんれんゆうするほうかぎられるのかどうか,さらに,契約けいやく準拠じゅんきょほう指定していがなかった場合ばあいにどのように準拠じゅんきょほう決定けっていするかなどについて,各国かっこく規定きてい一様いちようではない。

 以上いじょうのように,契約けいやく準拠じゅんきょほう決定けっていは,契約けいやくにつきしょうじた紛争ふんそうがどのくに問題もんだいとなるかによってことなる可能かのうせいおおきい。そこで,契約けいやく準拠じゅんきょほう予測よそく可能かのうとするために,当事とうじしゃは,あらそいがしょうじたときにはどのくに裁判所さいばんしょ訴訟そしょうをするかにつきあらかじめ合意ごういをすることがある(国際こくさいてき裁判さいばん管轄かんかつ合意ごうい)。また,当事とうじしゃあいだ権利けんり義務ぎむ内容ないようをできるかぎ詳細しょうさい契約けいやく条項じょうこう規定きていすることによって,実質じっしつほう相違そうい当事とうじしゃあたえる影響えいきょうをできるかぎすくなくしようとすることもおこなわれている。これらの条項じょうこうは,契約けいやく準拠じゅんきょほう強行きょうこう規定きていはんしなければ有効ゆうこうとなるからである。
国際こくさい商法しょうほう
執筆しっぴつしゃ


契約けいやく (けいやく)
covenant

ここでのべる〈契約けいやく〉という概念がいねんは,今日きょう法律ほうりつ分野ぶんやもちいられるものと区別くべつされ,聖書せいしょてき世界せかいにさかのぼるふる宗教しゅうきょうてき概念がいねんである。聖書せいしょ旧約きゅうやく新約しんやくと2しょあるが,〈やく〉というのは契約けいやくの〈やく〉であって,それがしめすように聖書せいしょてき宗教しゅうきょう中心ちゅうしん概念がいねんとなっている。旧約きゅうやく聖書せいしょにおいて契約けいやく(ベリース)というかたりは285かいもちいられてイスラエル宗教しゅうきょう骨格こっかくかたちづくっている。ヘブライの〈ベリースberîṯ〉はアッカドのbarû(しばる)の名詞めいしがたbirîtu(束縛そくばく)と関係かんけいがあると推測すいそくされ,元来がんらい一定いってい約束やくそくのもとに個人こじんまたは集団しゅうだん相互そうご拘束こうそく関係かんけいはいることを意味いみしている。旧約きゅうやく聖書せいしょにおいてはこのかたりかみとイスラエルのみんとの宗教しゅうきょうてき関係かんけい適用てきようし,モーセがみん代表だいひょうしてシナイさんかみ契約けいやくむすび,かみがイスラエルのかみとなり,イスラエルがかみみんとなるという契約けいやく関係かんけい成立せいりつした。これを〈シナイ契約けいやく〉とぶ。それはかみ人間にんげんとの関係かんけい人格じんかくてき倫理りんりてきであるという性格せいかく確立かくりつし,こののちイスラエル宗教しゅうきょう人間にんげんがわ契約けいやく違反いはんつみとそれにたいする審判しんぱん,そして契約けいやく再建さいけん更新こうしんという仕方しかた展開てんかいする。

 新約しんやく聖書せいしょはこの契約けいやく元来がんらい遺言ゆいごん〉を意味いみするギリシア〈ディアテケdiathēkē〉というかたりでいいあらわしたが,それは旧約きゅうやくの〈ベリース〉の訳語やくごであり旧約きゅうやく思想しそうけついだものである。しかし旧約きゅうやく契約けいやくは〈ふる契約けいやく〉(《コリントじんへのだい2の手紙てがみ》3:14)であって,それによってはかみ人間にんげんとの契約けいやく関係かんけい成立せいりつできず,それゆえイエス・キリストは〈あたらしい契約けいやく〉を樹立じゅりつしたとおしえる。それは〈ふる契約けいやく〉においては人間にんげんつみのゆえに契約けいやくまもることができないのであるが,キリストはそのつみを贖(あがな)うことによって人間にんげんかみとの関係かんけいへとかえらせるからである。〈あたらしい契約けいやく〉というのは旧約きゅうやく預言よげんしゃエレミヤの言葉ことばであるが,それがキリストにおいて成就じょうじゅし,そしてキリスト教会きょうかいはその〈あたらしい契約けいやく〉を聖餐せいさんしきにおいていわう(キリストが最後さいご晩餐ばんさん--それが聖餐せいさんしき起源きげん--のとき〈これは,おおくのひとのためにながすわたしの契約けいやくである〉とかたったことが《マルコによる福音ふくいんしょ》14しょう24せつにしるされており,《コリントじんへのだい1の手紙てがみ》11しょう25せつには〈このはいは,わたしのによるあたらしい契約けいやくである〉としるされている)。

 契約けいやく思想しそうは,かみ人間にんげんとの関係かんけい人格じんかくてき倫理りんりてきしつあたえただけでなく,〈ふる契約けいやく〉と〈あたらしい契約けいやく〉という歴史れきしてき視野しやあたえ,いわゆる〈救済きゅうさいHeilsgeschichte〉という世界せかいてき展望てんぼうをもつ神学しんがく思想しそうした。古代こだいキリスト教きりすときょう世界せかいではエイレナイオスが救済きゅうさい神学しんがく樹立じゅりつし,近代きんだいにおいては17世紀せいきイギリスおよびアメリカのピューリタンたちや,ヨーロッパ大陸たいりく改革かいかく神学しんがくしゃコッツェーユスJohannes Coccejus(1603-69)が〈契約けいやく神学しんがく〉によって契約けいやく概念がいねんあたらしく展開てんかいした。コッツェーユスの神学しんがく影響えいきょうは19世紀せいきドイツの歴史れきし哲学てつがく(ヘーゲル,マルクスなど)の発生はっせい背景はいけいとなったといわれる。一方いっぽう,イギリス,アメリカのピューリタンの契約けいやく神学しんがくは,中世ちゅうせい封建ほうけんてき忠誠ちゅうせい契約けいやく思想しそうやコモン・ローの伝統でんとうむすびつき,近代きんだい初頭しょとう絶対ぜったい主義しゅぎ体制たいせい克服こくふくする社会しゃかい契約けいやく人権じんけんなどの革命かくめいてき理念りねんした。それはホッブズやロックの契約けいやく思想しそう背景はいけいともなっている。ピューリタンてき社会しゃかい契約けいやく思想しそうは〈メーフラワー・コンパクト〉によるアメリカ建国けんこくにその現実げんじつてき表現ひょうげんた。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく国家こっか統合とうごう基本きほん理念りねんはフェデラル・ユニオンであり,そのフェデラルfederalはラテン語らてんごのフォエドゥスfoedusつまり契約けいやくからくるものである。ピューリタンの契約けいやく神学しんがくにおいて再興さいこうされた聖書せいしょてき契約けいやく概念がいねんが,アメリカという国家こっか成立せいりつ基本きほん理念りねんにまでなっていったことは注目ちゅうもくすべきことである。
執筆しっぴつしゃ

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日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ)契約けいやく」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

契約けいやく当事とうじしゃあいだ合意ごうい
けいやく

権利けんり義務ぎむ関係かんけい発生はっせい変更へんこう消滅しょうめつかんする当事とうじしゃあいだ合意ごうい広義こうぎ契約けいやくには、債権さいけん関係かんけい発生はっせい変更へんこう消滅しょうめつかんする債権さいけん契約けいやくだけでなく、物権ぶっけん変動へんどうしょうぜしめる物権ぶっけん契約けいやく(たとえば、地上ちじょうけん設定せってい契約けいやく抵当ていとうけん設定せってい契約けいやくなど)や結婚けっこん協議きょうぎ離婚りこんなど親族しんぞくてき身分みぶん関係かんけい変動へんどうかんする身分みぶんほうじょう契約けいやくふくまれる。しかし、狭義きょうぎにおいては、債権さいけん契約けいやくだけを意味いみする。この場合ばあい契約けいやく機能きのうは、財貨ざいか移転いてんしょうぜしめることである。民法みんぽうだい3へんだい2しょうにおいて規定きていしている契約けいやくは、債権さいけん契約けいやくかんするが、物権ぶっけん契約けいやくなどにも類推るいすい適用てきようすべきものとほぐされている。しかし、身分みぶんほうじょう契約けいやくは、財産ざいさんてき法律ほうりつ関係かんけいとは性質せいしつことにするから、これにたいしては類推るいすい適用てきようされえない。なお、契約けいやくは、複数ふくすうじん合意ごうい必要ひつようとするてんで、単独たんどく意思いし表示ひょうじである単独たんどく行為こうい(たとえば、取消とりけし、解除かいじょ相殺そうさい遺言ゆいごん寄付行為きふこういなど)と区別くべつされ、また、複数ふくすうじん対立たいりつてき交換こうかんてき意思いし表示ひょうじであるてんで、複数ふくすうじん平行へいこうてき求心きゅうしんてき意思いし表示ひょうじである合同ごうどう行為こうい(たとえば、社団しゃだん法人ほうじん設立せつりつ行為こういなど)と区別くべつされる。

淡路あわじ剛久たけひさ

沿革えんかく

近代きんだい以前いぜん契約けいやくは、身分みぶんてき支配しはい関係かんけい色彩しきさい濃厚のうこうであり、それにたいしては種々しゅじゅ社会しゃかいてき制約せいやく存在そんざいした。しかし、近代きんだいてき契約けいやくは、身分みぶんてき支配しはい関係かんけいともなわない(「身分みぶんから契約けいやくへ」)。また、自由じゆうにそれをむすぶことができる。近代きんだいてき契約けいやくにおけるこのような自由じゆう原則げんそくは、資本しほん主義しゅぎてき市民しみん社会しゃかい勃興ぼっこう(ぼっこう)において、自由じゆう競争きょうそう確保かくほし、自由じゆう主義しゅぎ経済けいざい発達はったつせしめる機能きのうたした。しかし、高度こうどされた資本しほん主義しゅぎ段階だんかいでは、社会しゃかい変動へんどうとともに契約けいやく自由じゆう原則げんそくにも種々しゅじゅ変質へんしつしょうじてきている。契約けいやくたいする法的ほうてき規制きせいは、このように社会しゃかい推移すいいとともにうつわる運命うんめいをもっているが、契約けいやく法的ほうてき人格じんかく私的してき所有しょゆうとともに近代きんだいてき取引とりひきほうにおけるさんだい要素ようそひとつであることはわらない事実じじつである。

淡路あわじ剛久たけひさ

分類ぶんるい

契約けいやく種々しゅじゅ観点かんてんからこれを分類ぶんるいすることができる。すなわち、だいいち典型てんけい契約けいやく有名ゆうめい契約けいやく)と典型てんけい契約けいやく無名むめい契約けいやく)の区別くべつである。前者ぜんしゃ民法みんぽうさだめる13種類しゅるい契約けいやく売買ばいばい交換こうかん贈与ぞうよ消費しょうひ貸借たいしゃく使用しよう貸借たいしゃく賃貸借ちんたいしゃく雇用こよう請負うけおい委任いにん寄託きたく組合くみあい終身しゅうしん定期ていききん和解わかい)をさし、後者こうしゃはそれ以外いがい契約けいやくをいう。だい双務そうむ契約けいやく片務契約へんむけいやくである。契約けいやくかく当事とうじしゃたがいに対価たいかてき意義いぎゆうする債務さいむ負担ふたんする契約けいやく双務そうむ契約けいやくであり(典型てんけい契約けいやくのうちでは、売買ばいばい交換こうかん賃貸借ちんたいしゃく雇用こよう請負うけおい有償ゆうしょう委任いにん有償ゆうしょう寄託きたく組合くみあい和解わかい)、そうでない契約けいやく片務契約へんむけいやくである(典型てんけい契約けいやくのうちでは、贈与ぞうよ消費しょうひ貸借たいしゃく使用しよう貸借たいしゃく無償むしょう委任いにん無償むしょう寄託きたく)。だいさん有償ゆうしょう契約けいやく無償むしょう契約けいやくである。契約けいやくかく当事とうじしゃたがいに対価たいかてき意義いぎゆうする出捐しゅつえん(しゅつえん)(他人たにん財産ざいさんじょう利益りえきあたえる行為こうい)をする契約けいやく有償ゆうしょう契約けいやくであり(双務そうむ契約けいやくはすべて有償ゆうしょう契約けいやくぞくする。そのほか、利息りそくづけ消費しょうひ貸借たいしゃく利得りとく分配ぶんぱい契約けいやく射倖しゃこう(しゃこう)契約けいやくなど)、そうでない契約けいやく無償むしょう契約けいやくである(典型てんけい契約けいやくのうちでは、利息りそくづけ消費しょうひ貸借たいしゃく以外いがい片務契約へんむけいやく)。だいよんだくなり契約けいやくようぶつ契約けいやくである。当事とうじしゃあいだ合意ごういだけで成立せいりつする契約けいやくだくなり契約けいやくであり(典型てんけい契約けいやくのうち、消費しょうひ貸借たいしゃく使用しよう貸借たいしゃく寄託きたくのぞ契約けいやく)、合意ごういのほかぶつ引渡ひきわたしなどの一定いってい給付きゅうふ必要ひつようとする契約けいやくようもの契約けいやくである(消費しょうひ貸借たいしゃく使用しよう貸借たいしゃく寄託きたく)。だいほん契約けいやく予約よやくである。前者ぜんしゃ意図いとする契約けいやくそのものであり、後者こうしゃ将来しょうらい希望きぼうしたときにほん契約けいやく締結ていけつする拘束こうそく設定せっていする契約けいやくをいう。だいろくゆういん契約けいやくいん契約けいやく区別くべつである。契約けいやく効果こうかが、それを成立せいりつせしめた原因げんいん事実じじつむすいており、その事実じじつがなければ債務さいむ発生はっせいしない、というのがゆういん契約けいやくであり(典型てんけい契約けいやくはいずれもゆういん契約けいやくである)、契約けいやく効果こうか原因げんいん事実じじつはなされていて、その事実じじつがなくても債務さいむ成立せいりつするのがいん契約けいやくである。

淡路あわじ剛久たけひさ

成立せいりつ効力こうりょく解除かいじょ

民法みんぽうだい3へん債権さいけんだい2しょうに「契約けいやく」にかんする規定きていいた。そのだい1せつは「総則そうそく」とだいし、契約けいやく成立せいりつ契約けいやく効力こうりょくおよび契約けいやく解除かいじょかんする規定きていく。契約けいやく成立せいりつについては、まず、すべて当事とうじしゃあいだ合意ごういがなければならない。これは普通ふつうは、申込もうしこみと承諾しょうだくによってなされる(民法みんぽう521じょう以下いか)が、交叉こうさ(こうさ)申込もうしこみ(りょう当事とうじしゃがおたがいに契約けいやく成立せいりつもうむこと)や意思いし実現じつげん申込もうしこみにたいして承諾しょうだく意思いし表示ひょうじみとめるべき事実じじつがなされること。526じょう2こう)による契約けいやく成立せいりつみとめられている。なお鉄道てつどうやバスへの乗車じょうしゃのように、当事とうじしゃあいだ合意ごうい外形がいけいてき事実じじつから認定にんていしにくいものについては、一定いってい社会しゃかいてき関係かんけいはいった(たとえば、乗車じょうしゃした)ことをもって契約けいやく関係かんけいはいったとみるかんがかた事実じじつてき契約けいやく関係かんけい理論りろん)もある。ようもの契約けいやくにおいては、以上いじょうのような合意ごういのほかに一定いってい給付きゅうふ必要ひつようである。つぎに、契約けいやく成立せいりつ時期じきについては、民法みんぽう原則げんそくとしては、意思いし表示ひょうじ通知つうち相手方あいてがた到達とうたつしたときに、その意思いし表示ひょうじ効力こうりょくしょうずることになっている(97じょう)が、契約けいやくについては特別とくべつ規定きていがあり、へだたしゃあいだ契約けいやくにおいて申込もうしこみと承諾しょうだく形式けいしきをとる場合ばあいには、原則げんそくとして承諾しょうだく通知つうちはっしたときに契約けいやく成立せいりつする(526じょう1こう)。

 契約けいやく効力こうりょくとしては、まずりょう当事とうじしゃ契約けいやくやくされたとおりの権利けんりゆうし、義務ぎむうことがあげられる。たとえば、売買ばいばい契約けいやくれいにとると、ぬし目的もくてきぶつぬし移転いてんする義務ぎむうと同時どうじ代金だいきん請求せいきゅうする権利けんりゆうし、ぬし代金だいきん支払しはら義務ぎむうと同時どうじ目的もくてきぶつ引渡ひきわたしを請求せいきゅうする権利けんりゆうすることである。そのほか、契約けいやくやくされたとおりの効力こうりょくしょうじる(ただし、民法みんぽう90じょう公序良俗こうじょりょうぞく違反いはんしたり、強行きょうこう規定きてい違反いはんしないことが必要ひつよう)。契約けいやく当事とうじしゃあいだ契約けいやく内容ないようについてあらそいがしょうじ、そのてんかんして契約けいやく別段べつだんめをしておかなかった場合ばあいには、それが典型てんけい契約けいやくのときには民法みんぽうかく典型てんけい契約けいやく規定きてい(549じょう以下いか)によって処理しょりされ、典型てんけい契約けいやくのときには類似るいじ法律ほうりつ関係かんけい基礎きそにして典型てんけい契約けいやく規定きてい類推るいすい適用てきようするなどして処理しょりされる。民法みんぽうはまた、契約けいやく総則そうそくのところで、契約けいやく効力こうりょくとして、同時どうじ履行りこう抗弁こうべんけん(533じょう)と危険きけん負担ふたん(534じょう以下いか)を規定きていしている。同時どうじ履行りこう抗弁こうべんけんとは、相手方あいてがた債務さいむ履行りこう提供ていきょうするまで自己じこ債務さいむ履行りこうこばむことができる権利けんり抗弁こうべんけん)であり(ただし、相手方あいてがた債務さいむ弁済べんさいにあることが必要ひつよう)、双務そうむ契約けいやく当事とうじしゃにはこの抗弁こうべんけんあたえられている。つぎに、危険きけん負担ふたん規定きていによると、双務そうむ契約けいやくにおける危険きけん原則げんそくとして債務さいむしゃうが、特定とくていぶつかんする物権ぶっけん設定せっていまたは移転いてん目的もくてきとする契約けいやく場合ばあいには、債権さいけんしゃうという重要じゅうよう例外れいがいそんする。

 契約けいやくは、りょう当事とうじしゃがその債務さいむ履行りこうして目的もくてき到達とうたつすると、終了しゅうりょうによって消滅しょうめつする。しかし、契約けいやく中途ちゅうと解除かいじょによって終了しゅうりょうする場合ばあいもある。民法みんぽう契約けいやく総則そうそく最後さいご契約けいやく解除かいじょかんする規定きていいた。それによると契約けいやく解除かいじょには約定やくじょう(やくじょう)解除かいじょ法定ほうてい解除かいじょとがあるが、民法みんぽう規定きてい一部いちぶ法定ほうてい解除かいじょけん発生はっせいかんするほか(541じょう~545じょう)、両者りょうしゃ共通きょうつう規定きていである。まず、法定ほうてい解除かいじょけん発生はっせい原因げんいんにはふたつある。すなわち、だいいち履行りこう遅滞ちたいによる解除かいじょけんであり、当事とうじしゃ一方いっぽうがその債務さいむ履行りこうしないときには、相手方あいてがた相当そうとう期間きかんさだめてその履行りこう催告さいこくし(一定いってい行為こういをせよと請求せいきゅうすること)、その期間きかんない履行りこうがないときには契約けいやく解除かいじょすることができる(541じょう)。だい履行りこう不能ふのうによる解除かいじょけんであり、履行りこう全部ぜんぶまたは一部いちぶ債務さいむしゃめにすべき事由じゆうによって不能ふのうとなったときには、債権さいけんしゃ催告さいこくなしにただちに契約けいやく解除かいじょすることができる(543じょう)。解除かいじょ効果こうかは、相互そうご原状げんじょう回復かいふく義務ぎむうことである(545じょう1こう)。しかし、損害そんがいがあれば損害そんがい賠償ばいしょう義務ぎむをもう(545じょう3こう)。これらにたいしては同時どうじ履行りこう抗弁こうべんけんかんする規定きてい準用じゅんようされる(546じょう)。なお、解除かいじょけん一定いってい場合ばあいには消滅しょうめつする(547じょう、548じょう)。このほか、典型てんけい契約けいやくかく規定きていには、特別とくべつ終了しゅうりょう原因げんいんさだめられている。

 なお、民法みんぽう契約けいやく総則そうそくかんする規定きていは、民法みんぽう典型てんけい契約けいやくすべてにつうずる総則そうそくというかたちをとっているが、それらすべてがかならずしも総則そうそくてき価値かちをもつとはかぎらないということが、研究けんきゅうによりあきらかにされつつある。

淡路あわじ剛久たけひさ

社会しゃかいがくてき概念がいねん

契約けいやくとは、ある契約けいやくじょう行為こうい実定法じっていほうらして規範きはんてき妥当だとうするかかをう、すぐれて法的ほうてき秩序ちつじょをめぐる概念がいねんであるが、同時どうじに、人々ひとびとがこのほう秩序ちつじょについての主観しゅかんてき表象ひょうしょうおうじて、一定いってい行為こういおこない、あるいはおこなわないという事実じじつについての経験けいけんてき概念がいねんでもある。この後者こうしゃ意味いみ契約けいやく社会しゃかいがくてき一般いっぱんすれば、2人ふたり以上いじょう主体しゅたいあいだ合意ごういによってしょうずる社会しゃかいてき行為こういいち形式けいしきということができる。しかし、ここで問題もんだいになるのは、契約けいやくてき行為こうい当事とうじしゃたちを拘束こうそくする――権利けんり義務ぎむ設定せってい制限せいげん消滅しょうめつ――のはなぜかということであり、拘束こうそく可能かのうにする根拠こんきょはなにかということである。近代きんだいほうでは、この根拠こんきょをつねに複数ふくすう主体しゅたいあいだ合意ごういもとめてきた。ということは、まずかく主体しゅたい独立どくりつ人格じんかくであること、すなわちかく個人こじん自由じゆう意思いし決定けってい能力のうりょくをもち、対等たいとう権利けんり主張しゅちょうしうる存在そんざいであることが前提ぜんていとなる。この意味いみ独立どくりつした個人こじんてき主体しゅたい存在そんざい歴史れきしじょう重要じゅうよう意味いみをもつようになったのは近代きんだい市民しみん社会しゃかい成立せいりつであり、それを理論りろんしたのは17~18世紀せいき登場とうじょうした自然しぜんほう思想しそうであり、その中心ちゅうしん社会しゃかい契約けいやくせつである。

 社会しゃかい契約けいやくせつ先駆せんくしゃであるホッブズは、市民しみん社会しゃかい到来とうらい自然しぜん状態じょうたい市民しみん状態じょうたいとの対立たいりつによって説明せつめいし、自然しぜんけんをもつまんにんまんにんたいしてたたか自然しぜん状態じょうたい克服こくふくして市民しみん状態じょうたい到達とうたつできるのは、しょ個人こじん自然しぜんけん放棄ほうきして国王こくおう譲渡じょうとする社会しゃかい契約けいやくによってのみ可能かのうであるとした。しかし、この自然しぜんけんやその根拠こんきょたるべき人間にんげんてき自然しぜん理解りかいなどをめぐって、ホッブズの思想しそうはそののJ・ロックやJ・J・ルソーの思想しそうするど対立たいりつする。おおまかにいえば、社会しゃかい契約けいやく結果けっかとして、ホッブズは絶対ぜったい王制おうせい擁護ようごし、ロックはこれを拒否きょひして立憲りっけん君主くんしゅせいを、ルソーはさらにすすんで人民じんみん主権しゅけんろん主張しゅちょうし、それぞれの時代じだい市民しみん革命かくめい理論りろんてき武器ぶきとなった。この三者さんしゃとも、政治せいじ理論りろんでは対立たいりつしつつ、社会しゃかい契約けいやくせつ共通きょうつう土台どだいとしていたことに注目ちゅうもくすべきである。

 しかし、18世紀せいき後半こうはんのイギリスでは、A・ファーガソンとともにA・スミスが、孤立こりつした個人こじんあいだ契約けいやく市民しみん社会しゃかい基礎きそとみることは幻想げんそうであると批判ひはんし、自由じゆう交換こうかん分業ぶんぎょうこそがその基礎きそであって、むしろ市場いちば社会しゃかい経済けいざい法則ほうそく)の国家こっか政治せいじ)からの独立どくりつ展望てんぼうした。ついで19世紀せいきには、H・スペンサーもまた自由じゆう交換こうかん分業ぶんぎょうをもって産業さんぎょう社会しゃかい結合けつごう原理げんりとしたが、スミスではなお盲目的もうもくてきであった社会しゃかい発展はってん方向ほうこう(たとえば「えざる」による社会しゃかい調和ちょうわ)を社会しゃかい有機ゆうきたい進化しんかろんによって体系たいけいづけた。スミスもスペンサーも、市民しみん社会しゃかいほう秩序ちつじょ問題もんだいとして、契約けいやく自由じゆう分業ぶんぎょう当然とうぜん帰結きけつであって、政治せいじ権力けんりょく法的ほうてき強制きょうせいによらない交換こうかん自由じゆうという倫理りんり支柱しちゅうとし、むしろ権力けんりょくほうはこの倫理りんり守護しゅごすべしとする功利こうり主義しゅぎてき個人こじん主義しゅぎもとづく市民しみん社会しゃかいかん完成かんせいさせた。他方たほう、フランスのデュルケームは、契約けいやく成立せいりつさせる根拠こんきょ契約けいやく以前いぜん拘束こうそくにあるとみて、自由じゆう意志いしもとづく社会しゃかいかん拒否きょひし、そもそも契約けいやく成立せいりつさせうる社会しゃかいてき事実じじつおもみを問題もんだいとした。ドイツのM・ウェーバーもまた、契約けいやく自由じゆう形式けいしきてき一般いっぱん市場いちば社会しゃかい強者きょうしゃによって一方いっぽうてき強制きょうせい転化てんかしうることを指摘してきしていた。これらの理論りろん背景はいけいには、すでにマルクスが分業ぶんぎょう所有しょゆう関連かんれんづけて問題もんだいとし、市民しみん社会しゃかい資本しほんてき社会しゃかい転化てんかするメカニズムを解明かいめいして、市民しみん社会しゃかいろん克服こくふくざしていたことに留意りゅういすべきである。

田原たはらおとかず

『ホッブズちょ水田すいでんようやく『リヴァイアサン』ぜん4さつ岩波いわなみ文庫ぶんこ)』『ロックちょ鵜飼うかい信成のぶなりやく市民しみん政府せいふろん』(岩波いわなみ文庫ぶんこ)』作田さくた啓一けいいちやく社会しゃかい契約けいやくろん」(『ルソー全集ぜんしゅう だい5かん所収しょしゅう・1979・白水しろみずしゃ)』『スミスちょべいはやし富男とみおやく道徳どうとく情操じょうそうろん』(1978・未来社みらいしゃ)』『デュルケムちょ宮島みやじまたかしやく社会しゃかいがく講義こうぎ』(1974・みすず書房しょぼう)』『ウェーバーちょ世良せらあきら志郎しろうやくほう社会しゃかいがく』(1974・そうぶんしゃ)』『H. SpencerPrinciples of Sociology, 3 vols. (1876~96, Appleton, U. K.)』


契約けいやく(ユダヤきょう、キリストきょう
けいやく

ユダヤきょう、キリストきょうにおけるかみひととの関係かんけい元来がんらい法的ほうてき観念かんねんである契約けいやく(ベリートberīth、ヘブライ)を宗教しゅうきょう思想しそうとして発展はってんさせたのは古代こだいイスラエルじんである。聖書せいしょには、だい洪水こうずい人類じんるい自然しぜんかみ調和ちょうわ回復かいふく物語ものがたる「ノアの契約けいやく」(「創世そうせい」9しょう)、子孫しそん増加ぞうか土地とち授与じゅよ約束やくそく内容ないようとする「アブラハム契約けいやく」(どう17しょうほか)、ダビデ王朝おうちょう永続えいぞく約束やくそくする「ダビデ契約けいやく」(「詩篇しへん(しへん)」89へん)など、かみひととの関係かんけい契約けいやくとして理解りかいされることがおおい。なかでも重要じゅうようなのが、エジプト脱出だっしゅつたしたイスラエルのみんが、シナイさんにてモーセをかいしてかみむすぶ「シナイ契約けいやく」(「いずるエジプト」24しょうほか)である。伝承でんしょうによれば、ここで、十戒じっかいかくとするりつほうみんあたえられ、りつほう宗教しゅうきょうユダヤきょう基礎きそえられた。しかし、かみイエスの十字架じゅうじかじょうにより、りつほうおこないえなくとも、まんにんつみからのすくいがあたえられたとしんじるキリスト教きりすときょうでは、イエスの贖罪しょくざい(しょくざい)のごう(わざ)をあたらしい契約けいやくとよび(「ルカでん福音ふくいんしょ(ふくいんしょ)」22しょう20せつ)、りつほうふる契約けいやくとする。『きゅうやく聖書せいしょ』『しんやく聖書せいしょ』のやくは、このようなかみひととのあいだ契約けいやく意味いみしている。

月本つきもと昭男あきお

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ブリタニカ国際こくさいだい百科ひゃっか事典じてん しょう項目こうもく事典じてん契約けいやく」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

契約けいやく
けいやく
berîth; testamentum

ユダヤきょう,キリストきょうにおいて,かみひとむす約束やくそく意味いみもちいられる。契約けいやく思想しそうふるくからあり,古代こだい近東きんとうでは権利けんり義務ぎむともな相互そうごぞくてき関係かんけい意味いみしていた。これにたいしてかみひとむす契約けいやくかみ一方いっぽうてき所与しょよであるてん相違そういがあるが,それによって義務ぎむしょうじるてん同一どういつである。これは「わたしがイスラエルのいえてる契約けいやくはこれである。すなわちわたしわたしりつほうかれらのうちにおき,そのしんしるす。わたしかれらのかみとなり,かれらはわたしみんとなる」 (エレミヤしょ 31・33) というあるじ言葉ことば定式ていしきされる。歴史れきしてきにはすでにモーセの時代じだいにイスラエル宗教しゅうきょう契約けいやく宗教しゅうきょうとして出発しゅっぱつしており,国家こっか滅亡めつぼうなどのさまざまな民族みんぞくてき苦難くなんはイスラエル民族みんぞくがわ契約けいやく不履行ふりこうによるとされた。また『イザヤしょ』 42しょう6,49しょう8においてはあたらしい契約けいやく仲介ちゅうかいしゃ出現しゅつげん預言よげんされており,キリストきょうではのちのイエスこそその仲介ちゅうかいしゃとみなされた。キリストきょう契約けいやくはユダヤきょうとはことなり,特定とくてい民族みんぞくをこえたぜん人類じんるいかみとの契約けいやくである。

契約けいやく
けいやく
contract

私法しほうじょう意思いし表示ひょうじ合致がっち (合意ごうい) によって成立せいりつするほう行為こういをいう。通常つうじょう申込もうしこみと承諾しょうだくによって成立せいりつする。すくなくとも2意思いし表示ひょうじ存在そんざい必要ひつようとするてんで,単独たんどく行為こういことなり,また意思いし表示ひょうじ相対そうたいたたしているてんで,どう一方向いちほうこうけられている社団しゃだん法人ほうじん設立せつりつ行為こういなどの合同ごうどう行為こういことなる。契約けいやくには,典型てんけい契約けいやく典型てんけい契約けいやく双務そうむ契約けいやく片務契約へんむけいやく有償ゆうしょう契約けいやく無償むしょう契約けいやくだくなり契約けいやくようぶつ契約けいやく物権ぶっけん契約けいやく債権さいけん契約けいやくなどのさまざまな分類ぶんるいおこなわれている。近代きんだいほう契約けいやく自由じゆう原則げんそくつので,社会しゃかい生活せいかつしゅとして契約けいやくによって処理しょりされる。

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契約けいやく】けいやく

約束やくそく

どおりちぎり」の項目こうもく

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世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん旧版きゅうばんうち契約けいやく言及げんきゅう

【押書】より

契約けいやくじょう一種いっしゅ。〈あそ〉〈あっそ〉〈あしょ〉ともむ。…

債権さいけん譲渡じょうと】より

…たとえば,AがBに金銭きんせんし,3ねん返済へんさいしてもらうと契約けいやくしたとする。この場合ばあいA(債権さいけんしゃ)がB(債務さいむしゃ)にたいする金銭きんせん返還へんかんもとめる債権さいけん行使こうししうるのは3ねんである。…

日本にっぽん社会しゃかいろん】より

… シューの見解けんかいしたがえば,日本にっぽんの〈はら組織そしき〉イエモトの編成へんせい運用うんよう原理げんりは,それのふくあいてき性格せいかく反映はんえいした〈えんやく原理げんりkintract principle〉ということになる。それは,中国ちゅうごくの〈はら組織そしき〉である〈ぞく(ツウ)〉における〈親族しんぞく原理げんりkinship principle〉と,欧米おうべいの〈はら組織そしき〉であるクラブ(自由じゆう結社けっしゃ)の〈契約けいやく原理げんりcontract principle〉との折衷せっちゅうであって,血縁けつえん集団しゅうだんにおけるような,固定こていされたヒエラルヒーてき秩序ちつじょへの自動的じどうてき全面ぜんめん参加さんかと,自由じゆう結社けっしゃへの義務ぎむづけられた限定げんてい参加さんかとの接合せつごうされた形態けいたいしている。日本人にっぽんじんがみずからの自発じはつてき意思いしもとづいてイエモトにくわわれば,その擬似ぎじ親族しんぞく組織そしきたいして,自発じはつてきに,また限定げんていてき忠誠ちゅうせいくすことになることをいうのである。…

法律ほうりつ行為こうい】より

…このことから,〈法律ほうりつ行為こうい自由じゆう原則げんそく〉が支配しはいすることになる。具体ぐたいてきには,法律ほうりつ行為こうい一類いちるいがたである〈契約けいやく自由じゆう原則げんそく〉や遺言ゆいごん自由じゆう法人ほうじん設立せつりつ自由じゆうなどとなってあらわれる。
法律ほうりつ行為こういにおける意思いし
 法律ほうりつ行為こうい効力こうりょくは,意思いし存在そんざいしない場合ばあい(心裡しんり(しんり)留保りゅうほ錯誤さくご虚偽きょぎ表示ひょうじ場合ばあい)には無効むこう意思いし瑕疵かし(かし)ある場合ばあい(詐欺さぎ強迫きょうはく場合ばあい)には取消とりけし可能かのう意思いし完全かんぜんである場合ばあいには有効ゆうこう意思いし合致がっちすると契約けいやく効力こうりょくしょうずるというように意思いしとの関連かんれん統一とういつてき決定けっていされるよう体系たいけいづけられている。…

※「契約けいやく」について言及げんきゅうしている用語ようご解説かいせつ一部いちぶ掲載けいさいしています。

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