目次 結晶の形態 面角一定の法則 有理指数の法則 面指数 晶帯 結晶の構造 結晶格子 結晶の微視的対称 並進対称 回転対称 回反対称 鏡映対称 らせん対称 映進対称 空間群 結晶の巨視的対称 点群,結晶族 結晶系 ブラベ格子 点群記号 点群と結晶形態 水晶 すいしょう の結晶 けっしょう が図 ず 1に見 み られるように六 ろく 角柱 かくちゅう の形 かたち をとることはよく知 し られている。しかし,結晶 けっしょう には必 かなら ずしも,このような規則正 きそくただ しい外形 がいけい をとらないものも多 おお く,結晶 けっしょう の本質 ほんしつ は次 つぎ に述 の べるようなそれが示 しめ す性質 せいしつ に関連 かんれん している。
自由 じゆう に選 えら んだ一 ひと つの方向 ほうこう においての物質 ぶっしつ のある性質 せいしつ の測定 そくてい 値 ち が,その物質 ぶっしつ 中 ちゅう のすべての点 てん で互 たが いに等 ひと しいとき,その物質 ぶっしつ は均質 きんしつ であるという。その性質 せいしつ の測定 そくてい 値 ち をベクトルで表 あらわ せば,物質 ぶっしつ が均質 きんしつ であることは図 ず 2のように示 しめ される。物質 ぶっしつ の内部 ないぶ の任意 にんい の点 てん O において,ある性質 せいしつ の測定 そくてい 値 ち (例 たと えば電気 でんき 伝導 でんどう 度 ど の値 ね )が,図 ず 3のaやbのように方向 ほうこう によって異 こと なるとき,その物質 ぶっしつ はその性質 せいしつ について異 あや 方 かた 的 てき であるといい,cのようにそれが方向 ほうこう に無関係 むかんけい に一定 いってい しているとき,等 ひとし 方 かた 的 てき であるという。
ともに異 あや 方 かた 的 てき であっても,図 ず 3のaとbとは互 たが いに異 こと なる。点 てん O における測定 そくてい 値 ち のベクトルの先端 せんたん の図形 ずけい は,aではO の周 まわ りに180度 ど 回転 かいてん しないと最初 さいしょ に与 あた えられている図形 ずけい とは一致 いっち しないが,bでは90度 ど 回転 かいてん ごとに最初 さいしょ のものに重 かさ なる。このように,ある図形 ずけい (あるいは物体 ぶったい )X を動 うご かして最初 さいしょ の形 かたち に重 かさ ね合 あ わせることをX の対称 たいしょう 操作 そうさ といい,X のもつすべての対称 たいしょう 操作 そうさ の集 たか りをX の対称 たいしょう symmetryという。対称 たいしょう 操作 そうさ を具体 ぐたい 的 てき に表 あらわ すものを対称 たいしょう 要素 ようそ という。図 ず 3のaは360度 ど 回転 かいてん の間 あいだ に2回 かい 最初 さいしょ の形 かたち に重 かさ なり,bは4回 かい 重 かさ なるので,aの対称 たいしょう 操作 そうさ は2回 かい 回転 かいてん ,bのそれは4回 かい 回転 かいてん ,またO 点 てん で紙面 しめん に垂直 すいちょく な軸 じく を考 かんが えて,aの対称 たいしょう 要素 ようそ を2回 かい 回転 かいてん 軸 じく ,bのそれを4回 かい 回転 かいてん 軸 じく という。以上 いじょう に対 たい して,図 ず 3のcの等 ひとし 方 かた 的 てき な場合 ばあい には,測定 そくてい 値 ち の図形 ずけい はO 軸 じく の周 まわ りに任意 にんい の角度 かくど 回 まわ せばそれ自身 じしん に重 かさ なるところの円 えん だけである。すなわち,対称 たいしょう の種類 しゅるい が問題 もんだい となるのは,図形 ずけい や物体 ぶったい が異 あや 方 かた 的 てき である場合 ばあい に限 かぎ られる。
均質 きんしつ な固体 こたい 物質 ぶっしつ が図 ず 4のaのようにある性質 せいしつ について異 あや 方 かた 的 てき であるとき,その物質 ぶっしつ は結晶 けっしょう 質 しつ crystallineであるといい,あらゆる性質 せいしつ が図 ず 4のbのように等 ひとし 方 かた 的 てき であるとき,その物質 ぶっしつ は無定形 むていけい 質 しつ あるいは非 ひ 晶 あきら 質 しつ (アモルファスamorphous)であるという。結晶 けっしょう 質 しつ の物質 ぶっしつ の中 なか には,ある性質 せいしつ については異 あや 方 かた 的 てき であるが,他 た の性質 せいしつ については等 ひとし 方 かた 的 てき であるようなものもある。例 たと えば食塩 しょくえん NaClの結晶 けっしょう は,熱 ねつ 膨張 ぼうちょう 率 りつ については異 あや 方 かた 的 てき であるが,その中 なか を通 とお る光 ひかり の速度 そくど については等 ひとし 方 かた 的 てき である。
物体 ぶったい 全体 ぜんたい が一様 いちよう に結晶 けっしょう 質 しつ である場合 ばあい ,これを単 たん 結晶 けっしょう と呼 よ ぶ。また,それが小 ちい さな単 たん 結晶 けっしょう が多 おお く集 あつ まって,互 たが いに不規則 ふきそく に向 む きを異 こと にしてくっつきあっているものを多 た 結晶 けっしょう と呼 よ ぶ。単 たん 結晶 けっしょう の例 れい には図 ず 1のような天然 てんねん に産 さん する六 ろく 角柱 かくちゅう 状 じょう の水晶 すいしょう SiO2 の結晶 けっしょう がある。またダイヤモンド をはじめ,透明 とうめい な宝石 ほうせき はいずれも単 たん 結晶 けっしょう から切 き り出 だ して磨 みが いたものである。多 た 結晶 けっしょう の例 れい には,器具 きぐ 類 るい や機械 きかい 類 るい の材質 ざいしつ である種々 しゅじゅ の金属 きんぞく がある。なお,2個 こ の単 たん 結晶 けっしょう が向 む きを異 こと にしてくっつきあっていて,その接合 せつごう に一定 いってい の規則 きそく 性 せい がある場合 ばあい があり,それを双 そう 晶 あきら と呼 よ ぶ。図 ず 5は向 む きあった二 ふた つの柱 はしら 面 めん が大 おお きくなることによって扁平 へんぺい となった水晶 すいしょう の2個 こ の単 たん 結晶 けっしょう の双 そう 晶 あきら である。また無定形 むていけい 物質 ぶっしつ の例 れい としてはゴムやガラスがある。さらに,多 た 結晶 けっしょう 中 ちゅう で単 たん 結晶 けっしょう が連続 れんぞく 的 てき な向 む きの変化 へんか をもって分布 ぶんぷ しているものがあり,その代表 だいひょう 的 てき なものには木材 もくざい などの繊維 せんい 質 しつ のものがある。以後 いご ,本 ほん 項目 こうもく において結晶 けっしょう という場合 ばあい はすべて単 たん 結晶 けっしょう のこととする。
結晶 けっしょう の形態 けいたい 紀元前 きげんぜん のギリシア では,水晶 すいしょう は氷 こおり が異常 いじょう な低温 ていおん に冷 ひ やされたために,常温 じょうおん でも水 みず にもどらなくなったものと考 かんが えられた。そのために,水晶 すいしょう は氷 こおり (ギリシア語 ご でkrystallos)と同 おな じとみられ,これがcrystal(水晶 すいしょう ,結晶 けっしょう )の語源 ごげん である。
面 めん 角 かく 一定 いってい の法則 ほうそく 前述 ぜんじゅつ の水晶 すいしょう の結晶 けっしょう が六 ろく 角柱 かくちゅう の形 かたち をとるように,結晶 けっしょう は,平面 へいめん で囲 かこ まれた形 かたち をとることができるのがその特徴 とくちょう であって,これらの平面 へいめん のおのおのを結晶 けっしょう 面 めん という。同 おな じ種類 しゅるい の結晶 けっしょう 面 めん でも,結晶 けっしょう ができたときの環境 かんきょう 次第 しだい で,互 たが いに異 こと なった大 おお きさになることがある。しかし,対応 たいおう する面 めん の間 あいだ の角度 かくど は一定 いってい している。図 ず 6のように水晶 すいしょう の柱 はしら に垂直 すいちょく な切断 せつだん 面 めん が互 たが いに異 こと なった形 かたち になっていても,隣 とな りあった面 めん の間 あいだ の角度 かくど は,この場合 ばあい には120度 ど と一定 いってい していることが経験 けいけん 的 てき にわかっている。これを面 めん 角 かく 一定 いってい の法則 ほうそく ,あるいは面 めん 角 かく 不変 ふへん の法則 ほうそく という。このように,結晶 けっしょう 形態 けいたい において一定 いってい に保 たも たれるものは,面 めん の相互 そうご の位置 いち ではなくて,それら相互 そうご の傾 かたむ きであり,それゆえ任意 にんい の1点 てん O から各面 かくめん に下 お ろした垂線 すいせん の束 たば がその結晶 けっしょう について一定 いってい しているのである。すなわち,結晶 けっしょう 形態 けいたい の考察 こうさつ においては,結晶 けっしょう 面 めん を自由 じゆう に平行 へいこう 移動 いどう させて考 かんが えてもさしつかえない。
有理 ゆうり 指数 しすう の法則 ほうそく 結晶 けっしょう 形態 けいたい に現 あらわ れる稜 りょう (結晶 けっしょう 面 めん の交線)の中 なか で,同 どう 一 いち 平面 へいめん 上 じょう にない任意 にんい の3稜 りょう を選 えら んで,これらをこの結晶 けっしょう の結晶 けっしょう 軸 じく a ,b ,c と名 な づけ,結晶 けっしょう 形態 けいたい を記述 きじゅつ する座標軸 ざひょうじく とすることができる。これらの座標軸 ざひょうじく は一般 いっぱん には一 ひと つの斜 はす 交座標 ざひょう 系 けい を構成 こうせい する。次 つぎ に結晶 けっしょう 軸 じく のいずれとも交 まじ わる面 めん の中 なか の任意 にんい の一 ひと つをとって,これを基準 きじゅん 面 めん とする。結晶 けっしょう 軸 じく と基準 きじゅん 面 めん P 0 との関係 かんけい を図 ず 7のaに示 しめ す。次 つ いでbのように,1点 てん O からaの3軸 じく にそれぞれ平行 へいこう に軸 じく a ,b ,c をとり,基準 きじゅん 面 めん に平行 へいこう な面 めん P 0 をおくと,前 まえ に述 の べたように結晶 けっしょう 面 めん は平行 へいこう 移動 いどう して考 かんが えてもさしつかえないから,bはaと同等 どうとう なものである。P 0 と3軸 じく との交点 こうてん をそれぞれA 0 ,B 0 ,C 0 とする。aで3軸 じく と基準 きじゅん 面 めん とを定 さだ めたことは,bで3軸 じく の方向 ほうこう とOA 0 :OB 0 :OC 0 の比 ひ の値 ね を決 き めたことに相当 そうとう する。この比 ひ を結晶 けっしょう 軸 じく a ,b ,c のそれぞれの方向 ほうこう の長 なが さの単位 たんい の比 ひ と考 かんが え,それを軸 じく 率 りつ と呼 よ ぶ。またbのように軸 じく 間 あいだ の角 かく をα あるふぁ ,β べーた ,γ がんま と名 な づけて,それらを軸 じく 角 かく という。このように決 き めることは,一般 いっぱん には斜 はす 交軸をとり,さらに各 かく 軸 じく 方向 ほうこう の長 なが さの単位 たんい が互 たが いに異 こと なるという複雑 ふくざつ な座標 ざひょう 系 けい をとることになる。しかし,この座標 ざひょう 系 けい を用 もち いれば,結晶 けっしょう には次 つぎ に述 の べる法則 ほうそく が成立 せいりつ し,結晶 けっしょう の記述 きじゅつ が結局 けっきょく はたいへん簡単 かんたん になる。
基準 きじゅん 面 めん P 0 以外 いがい の面 めん P が3軸 じく を切 き る長 なが さをOA ,OB ,OC とし, とおく。結晶 けっしょう に成立 せいりつ する簡単 かんたん な法則 ほうそく というのは,H ,K ,L のおのおのは簡単 かんたん な有理数 ゆうりすう ,すなわち分数 ぶんすう の形 かたち にしたときにその分子 ぶんし ・分母 ぶんぼ ともにあまり大 おお きな整数 せいすう とはならないような有理数 ゆうりすう となるというもので,これを有理 ゆうり 指数 しすう の法則 ほうそく という。
面 めん 指数 しすう H ,K ,L の分母 ぶんぼ の最小公倍数 さいしょうこうばいすう をM ,分子 ぶんし の最大公約数 さいだいこうやくすう をD とし,MH /D =h ,MK /D =k ,ML /D =l とすれば,h ,k ,l は1以外 いがい の公約 こうやく 数 すう をもたない整数 せいすう のうち値 ね の小 ちい さなものであり,H :K :L =h :k :l であるから,(1)は となる。これらのh ,k ,l を面 めん P の指数 しすう といい,面 めん P を(hkl )によって表 あらわ して,これを面 めん 記号 きごう という。基準 きじゅん 面 めん の面 めん 記号 きごう は(111)である。図 ず 8のaは面 めん がa ,b ,c の3軸 じく の単位 たんい の長 なが さをそれぞれ1/2,1/2,1/3で切 き る(223)である場合 ばあい を示 しめ し,bはb 軸 じく を正 せい の方向 ほうこう で切 き る右側 みぎがわ の(212)と,負 まけ の方向 ほうこう で切 き る左側 ひだりがわ の場合 ばあい が示 しめ されており,後者 こうしゃ は指数 しすう k の上 うえ にマイナス符号 ふごう をつけて,(21 2)と表 あらわ す。cは(210)である。
晶 あきら 帯 たい a ,b ,c 方向 ほうこう にそれぞれx ,y ,z 軸 じく をとって,原点 げんてん を通 とお る(hkl )の方程式 ほうていしき を書 か けば, となる。(h 1 k 1 l 1 )と(h 2 k 2 l 2 )との交線は,(3)の形 かたち の二 ふた つの方程式 ほうていしき の解 かい として, で与 あた えられる。二 ふた つ以上 いじょう の面 めん に共通 きょうつう する方向 ほうこう を晶 あきら 帯 たい といい,
U :V :W =(k 1 l 2 -k 2 l 1 ):(l 1 h 2 -l 2 h 1 ):(h 1 k 2 -h 2 k 1 )
によって,互 たが いに素 そ な整数 せいすう の中 なか で値 ね の小 ちい さなものU ,V ,W を選 えら ぶことができる。これを(h 1 k 1 l 1 )と(h 2 k 2 l 2 )が与 あた える晶 あきら 帯 たい の指数 しすう といい,その晶 あきら 帯 たい を[UVW ]という記号 きごう で表 あらわ す。 が晶 あきら 帯 たい [UVW ]を与 あた える方程式 ほうていしき で,a ,b ,c 3軸 じく 方向 ほうこう の座標 ざひょう の成分 せいぶん がそれぞれUa ,Vb ,Wc である点 てん に向 む かって原点 げんてん から引 ひ いた直線 ちょくせん が[UVW ]の方向 ほうこう を表 あらわ す。それゆえa 軸 じく は[100],b 軸 じく は[010],c 軸 じく は[001]とも表 あらわ すことができる。
結晶 けっしょう の構造 こうぞう 結晶 けっしょう が均質 きんしつ で異 あや 方 かた 的 てき であり,面 めん 角 かく 一定 いってい の法則 ほうそく と有理 ゆうり 指数 しすう の法則 ほうそく に従 したが うことは,結晶 けっしょう についての直接 ちょくせつ の観察 かんさつ ,すなわち結晶 けっしょう の巨視的 きょしてき 状態 じょうたい の測定 そくてい によって確 たし かめることができる。一方 いっぽう ,結晶 けっしょう の内部 ないぶ においては,結晶 けっしょう ごとにある定 さだ まった配列 はいれつ をした原子 げんし の集 たか りがその結晶 けっしょう の構成 こうせい 単位 たんい となって,それらの単位 たんい が空間 くうかん 的 てき に一定 いってい の繰返 くりかえ しを保 たも って互 たが いに平行 へいこう に配置 はいち している。このことは,結晶 けっしょう によるX線 せん ,電子 でんし 線 せん ,あるいは中性子 ちゅうせいし 線 せん の回折 かいせつ 現象 げんしょう を利用 りよう して知 し ることができる。これは結晶 けっしょう の微視的 びしてき 状態 じょうたい と呼 よ ばれるものである。例 たと えば図 ず 9のaは大円 だいえん で表 あらわ した原子 げんし と,その向 む かって左下 ひだりした 側 がわ にある小 しょう 円 えん の原子 げんし との1組 くみ で構成 こうせい 単位 たんい を形成 けいせい して,この単位 たんい が前後 ぜんご ・左右 さゆう ・上下 じょうげ にそれぞれの方向 ほうこう ごとに定 さだ まったある間隔 かんかく で繰 く り返 かえ して互 たが いに平行 へいこう に並 なら んでいる結晶 けっしょう 構造 こうぞう を示 しめ す。
結晶 けっしょう 格子 こうし これらの単位 たんい は図 ず 9のaに便宜 べんぎ 的 てき に描 えが いた破線 はせん の枠 わく に従 したが って配列 はいれつ しているとみることができるので,bのようにこの枠 わく (これを空間 くうかん 格子 こうし ,結晶 けっしょう 格子 こうし あるいは単 たん に格子 こうし という)を取 と り出 だ して,それが限 かぎ りない広 ひろ がりをもつと理想 りそう 化 か して考 かんが えることにする。bの前後 ぜんご ・左右 さゆう ・上下 じょうげ の3線 せん の交点 こうてん を格子 こうし 点 てん という。aでは格子 こうし 点 てん に大円 だいえん の原子 げんし が一致 いっち しているように描 えが いてあるが,もともと結晶 けっしょう 格子 こうし は構成 こうせい 単位 たんい の繰返 くりかえ しの方向 ほうこう と間隔 かんかく のみを表 あらわ すものであって,格子 こうし の原点 げんてん に当 あ たる格子 こうし 点 てん を結晶 けっしょう 構造 こうぞう のどこにとるかはまったく自由 じゆう である。任意 にんい の二 ふた つの格子 こうし 点 てん を結 むす ぶ線 せん を格子 こうし 線 せん という。その線上 せんじょう には格子 こうし 点 てん が等間隔 とうかんかく に並 なら んでいて,それは一 いち 次元 じげん 格子 こうし となっている。その上 うえ の隣 となり どうしの点 てん の間隔 かんかく を周期 しゅうき という。1格子 こうし 点 てん で交 まじ わる2本 ほん の格子 こうし 線 せん が乗 の る面 めん を格子 こうし 面 めん といい,格子 こうし 面 めん の上 うえ には格子 こうし 点 てん が二 に 次元 じげん 的 てき な平面 へいめん 格子 こうし をつくっている。結晶 けっしょう 格子 こうし の中 なか では,一 ひと つの格子 こうし 面 めん に対 たい して,それと合同 ごうどう でそれに平行 へいこう な格子 こうし 面 めん が限 かぎ りなく多 おお く存在 そんざい する。これら同種 どうしゅ で隣 とな りあう格子 こうし 面 めん の間 あいだ の垂直 すいちょく 距離 きょり を面 めん 間 あいだ 距離 きょり という。任意 にんい の格子 こうし 点 てん を通 とお る同 どう 一 いち 平面 へいめん 上 じょう にない3格子 こうし 線 せん をとり,それらの周期 しゅうき を3稜 りょう とする平行 へいこう 六面体 ろくめんたい を単位 たんい 胞あるいは単位 たんい 格子 こうし という。図 ず 9のcに見 み られるように,一 ひと つの空間 くうかん 格子 こうし において無限 むげん に多 おお くの単位 たんい 胞のとり方 かた がある。単位 たんい 胞の8隅 すみ のみに格子 こうし 点 てん があるとき,それを単純 たんじゅん 単位 たんい 胞といい(cの左側 ひだりがわ の2種 しゅ ),単位 たんい 胞の面 めん 上 じょう あるいは内部 ないぶ にも格子 こうし 点 てん を含 ふく むものを多重 たじゅう 単位 たんい 胞という(cの右側 みぎがわ のもの)。このように,結晶 けっしょう を微視的 びしてき に見 み ると,周期 しゅうき が通常 つうじょう 10⁻6 ~10⁻8 cm程度 ていど の格子 こうし 構造 こうぞう を形成 けいせい している。
結晶 けっしょう の微視的 びしてき 対称 たいしょう 並進 へいしん 対称 たいしょう 結晶 けっしょう 格子 こうし は結晶 けっしょう の構成 こうせい 単位 たんい がそれに従 したが って一定 いってい 間隔 かんかく で互 たが いに平行 へいこう に配列 はいれつ する枠 わく であるから,結晶 けっしょう 構造 こうぞう を限 かぎ りなく広 ひろ がったものと理想 りそう 化 か して考 かんが えれば--肉眼 にくがん で見 み える大 おお きさの結晶 けっしょう の中 なか には莫大 ばくだい な数 かず の構成 こうせい 単位 たんい が含 ふく まれているから,結晶 けっしょう の内部 ないぶ 構造 こうぞう を考 かんが える限 かぎ りは,構成 こうせい 単位 たんい の繰返 くりかえ しは無限 むげん であるとしても大 おお きな誤差 ごさ を与 あた えない--,結晶 けっしょう 格子 こうし の任意 にんい の2格子 こうし 点 てん 間 あいだ のベクトルに相当 そうとう するだけ結晶 けっしょう 構造 こうぞう 全体 ぜんたい を平行 へいこう 移動 いどう しても,その結果 けっか は移動 いどう 前 まえ のものとまったく区別 くべつ がつかない。このことは結晶 けっしょう 構造 こうぞう が三 さん 次元 じげん の並進 へいしん 対称 たいしょう (平行 へいこう 移動 いどう を対称 たいしょう 操作 そうさ とする対称 たいしょう )をもっていることであり,この並進 へいしん 対称 たいしょう を具体 ぐたい 的 てき に表 あらわ す結晶 けっしょう 格子 こうし は結晶 けっしょう 構造 こうぞう の対称 たいしょう 要素 ようそ の一種 いっしゅ である。最初 さいしょ に与 あた えられた図形 ずけい あるいは物体 ぶったい X の部分 ぶぶん A に,X に対称 たいしょう 操作 そうさ を施 ほどこ した結果 けっか においてX の部分 ぶぶん B が重 かさ なったときに,A とB とは互 たが いに対称 たいしょう 的 てき に同 どう 価 あたい であるという。すべての格子 こうし 点 てん は互 たが いに並進 へいしん 対称 たいしょう 的 てき に同 どう 価 あたい である。
回転 かいてん 対称 たいしょう 結晶 けっしょう によっては,格子 こうし 並進 へいしん 対称 たいしょう 以外 いがい の対称 たいしょう をも示 しめ すものがある。例 たと えばある軸 じく の周 まわ りに結晶 けっしょう 構造 こうぞう を360°/nだけ回転 かいてん させると,回転 かいてん 前 まえ のものと重 かさ なるというn回 かい 回転 かいてん 対称 たいしょう をもつことがある。この場合 ばあい に,結晶 けっしょう 構造 こうぞう は空間 くうかん 格子 こうし に従 したが った構造 こうぞう であり,空間 くうかん 格子 こうし とは同 おな じものがその格子 こうし の周期 しゅうき に従 したが って繰 く り返 かえ して互 たが いに平行 へいこう に並 なら んでいることを意味 いみ するから,同 おな じn回 かい 回転 かいてん 軸 じく が格子 こうし の周期 しゅうき に従 したが って互 たが いに平行 へいこう に並 なら んでいなければならない。これらのn回 かい 回転 かいてん 軸 じく の中 なか で軸 じく 間 あいだ の垂直 すいちょく 距離 きょり の最 もっと も短 みじか い2本 ほん をN 1 とN 2 とする。図 ず 10はこれらの軸 じく の方向 ほうこう から見 み たもので,N 1 はn回 かい 回転 かいてん 軸 じく であるから,その周 まわ りにN 2 から360°/nだけ隔 へだ たったところにはN 2 と同 どう 価 あたい なn回 かい 回転 かいてん 軸 じく N 3 がなければならない。図 ず 10のaにおいて,もしn>6であれば,N 2 N 3 <N 1 N 2 となって,N 1 N 2 が軸 じく 間 あいだ の最短 さいたん 垂直 すいちょく 距離 きょり であるという最初 さいしょ に決 き めたことに矛盾 むじゅん する。それゆえn≦6でなければならない。またn=5のときには,図 ず 10のbによってN 3 N 4 <N 1 N 2 となることがわかり,これも不都合 ふつごう である。残 のこ るn=1,2,3,4および6の場合 ばあい にはこのような不都合 ふつごう は生 しょう じない。それゆえ結晶 けっしょう には1回 かい ,2回 かい ,3回 かい ,4回 かい および6回 かい 回転 かいてん 軸 じく だけしか存在 そんざい しない。この事実 じじつ を回転 かいてん 対称 たいしょう の結晶 けっしょう 学 がく 的 てき 制限 せいげん という。これら5種 しゅ の回転 かいてん 軸 じく を図 ず 11に示 しめ す。球 たま 上 じょう に亜鈴 あれい が配列 はいれつ した図形 ずけい はそれぞれの回転 かいてん 対称 たいしょう をもった図形 ずけい の例 れい である。回転 かいてん 対称 たいしょう は1,2,3,4および6と単 たん なる数字 すうじ で表 あらわ すことになっている。
回 かい 反対称 はんたいしょう 上記 じょうき の回転 かいてん のほかに,並進 へいしん 対称 たいしょう でない対称 たいしょう として結晶 けっしょう がもちうるものには回 かい 反対称 はんたいしょう がある。これは図 ず 12のようにある軸 じく (これを回 かい 反 はん 軸 じく と呼 よ ぶ)の周 まわ りのn回 かい 回転 かいてん 操作 そうさ に引 ひ き続 つづ いてその回転 かいてん 軸 じく 上 じょう に定 さだ められた1点 てん O での反転 はんてん --その点 てん を座標 ざひょう の原点 げんてん とするとき,(x ,y ,z )の点 てん を(-x ,-y ,-z )に移 うつ す操作 そうさ --を与 あた える合成 ごうせい 操作 そうさ をn回 かい 回 かい 反 はん 操作 そうさ といい,回転 かいてん と反転 はんてん の順序 じゅんじょ を入 い れ換 か えても結果 けっか は同 おな じである。結晶 けっしょう 構造 こうぞう がn回 かい 回 かい 反対称 はんたいしょう をもつとき,その結晶 けっしょう 格子 こうし はn回 かい 回転 かいてん 対称 たいしょう をもたねばならないことが容易 ようい に証明 しょうめい されるから,回 かい 反 たん の場合 ばあい のnも結晶 けっしょう 学 がく 的 てき 制限 せいげん に従 したが い,それらを1 ,2 ,3 ,4 ,6 で表 あらわ す。図 ず 13で示 しめ す1 は反転 はんてん そのものであり,この対称 たいしょう 要素 ようそ は対称 たいしょう 心 しん と呼 よ ばれる。
鏡 かがみ 映 うつ 対称 たいしょう また図形 ずけい が2 をもつと,それは反転 はんてん の点 てん を通 とお って回 かい 反 はん 軸 じく に垂直 すいちょく な面 めん の側 がわ の図形 ずけい の部分 ぶぶん が,他 た の側 がわ の部分 ぶぶん をその面 めん で映 うつ したような関係 かんけい になっているので,その対称 たいしょう 要素 ようそ は鏡 かがみ 映 うつ 面 めん と呼 よ ばれ,この場合 ばあい は2 の代 かわ りに鏡 かがみ mirrorのm で表 あらわ す。
らせん対称 たいしょう さらに,回転 かいてん と回転 かいてん 軸 じく の方向 ほうこう の並進 へいしん t との合成 ごうせい であるらせん(螺旋 らせん )も結晶 けっしょう 構造 こうぞう の対称 たいしょう 操作 そうさ となりうる。この名 な はこれを繰 く り返 かえ すと点 てん が軸 じく を取 と り巻 ま くらせんの上 うえ に並 なら ぶことによる(図 ず 14)。結晶 けっしょう 構造 こうぞう がn回 まわ らせん対称 たいしょう をもつとき,その結晶 けっしょう 格子 こうし はn回 かい 回転 かいてん 対称 たいしょう をもつことが証明 しょうめい できるから,らせんも結晶 けっしょう 学 がく 的 てき 制限 せいげん に従 したが う。またn回 まわ らせん操作 そうさ をn度 ど 繰 く り返 かえ すと,回転 かいてん の結果 けっか は最初 さいしょ にもどるから,らせん軸 じく 方向 ほうこう の単 たん なる並進 へいしん nt となり,それによって結晶 けっしょう 構造 こうぞう がそれ自身 じしん に重 かさ ねられるのであるから,nt は結晶 けっしょう 格子 こうし の並進 へいしん の一 ひと つに一致 いっち しなければならない。その方向 ほうこう の周期 しゅうき を表 あらわ すベクトルをl (|l |>|t |),mをnより小 ちい さい自然 しぜん 数 すう とすれば,上 うえ のことはml =nt が成立 せいりつ することを意味 いみ し,らせんをnm の形 かたち に表 あらわ すことができるわけである。したがって,らせんには21 ,31 ,32 ,41 ,42 ,43 ,61 ,62 ,63 ,64 ,65 の11種類 しゅるい があり,図 ず 15で示 しめ すように,これらの中 なか で31 と32 ,41 と43 ,61 と65 および62 と64 とはそれぞれの対 たい の中 なか の二 ふた つが右 みぎ 回 まわ りと左 ひだり 回 まわ りの関係 かんけい にあり,また42 と62 と64 は2を兼 か ね,63 は3を兼 か ねている。
映 うつ 進 すすむ 対称 たいしょう 回転 かいてん と並進 へいしん との合成 ごうせい でらせんが生 しょう じたが,回 かい 反 たん と並進 へいしん との合成 ごうせい では,n=2以外 いがい の場合 ばあい には,同 どう じ回 まわ 反 はん 軸 じく が異 こと なった位置 いち に移 うつ されたものとなるだけである。n=2のときには,鏡 かがみ 映 うつ とその面 めん に平行 へいこう な並進 へいしん t との合成 ごうせい である映 うつ 進 すすむ と呼 よ ばれる新 あたら しい対称 たいしょう 操作 そうさ が生 しょう ずる(図 ず 16)。映 うつ 進 すすむ を2回 かい 繰 く り返 かえ すとt の方向 ほうこう の格子 こうし 並進 へいしん となる。それが結晶 けっしょう のa 方向 ほうこう の単位 たんい を表 あらわ すベクトルa となる場合 ばあい には,この映 うつ 進 すすむ をaで表 あらわ し,そのときはt =a /2である。同様 どうよう にb やc で表 あらわ される映 うつ 進 すすむ がある。t が1/2(a ±b ),1/2(b ±c ),1/2(c ±a )のいずれかに等 ひと しいとき,この映 うつ 進 すすむ をn で表 あらわ す。後 のち に述 の べるように格子 こうし が底 そこ 心 しん ,面 めん 心 こころ あるいは体 からだ 心 しん の場合 ばあい には,t が1/4(a ±b )などの一 ひと つ,あるいは1/4(a ±b ±c )に等 ひと しくなる映 うつ 進 すすむ が可能 かのう で,これらはd という記号 きごう で表 あらわ される。
空間 くうかん 群 ぐん 空間 くうかん 格子 こうし と上記 じょうき の回転 かいてん ,回 かい 反 はん (反転 はんてん と鏡 かがみ 映 うつ とを含 ふく む),らせん,映 うつ 進 すすむ などの対称 たいしょう 要素 ようそ とが空間 くうかん 的 てき にある配列 はいれつ をしていて,それらの対称 たいしょう 要素 ようそ のいずれもが一 ひと つの結晶 けっしょう 構造 こうぞう をそれ自身 じしん に重 かさ ね合 あ わせるとき,これらの対称 たいしょう 要素 ようそ の配列 はいれつ を空間 くうかん 群 ぐん という。すなわち空間 くうかん 群 ぐん とは一 ひと つの結晶 けっしょう 構造 こうぞう をそれ自身 じしん に重 かさ ね合 あ わせるあらゆる対称 たいしょう 操作 そうさ の集合 しゅうごう である。その最 もっと も簡単 かんたん な例 れい として,図 ず 17のaには格子 こうし 並進 へいしん T のみのもの,bにはT と紙面 しめん に垂直 すいちょく な2回 かい 回転 かいてん 軸 じく 2(黒 くろ いレンズで示 しめ した)との組合 くみあわ せ,cにはT と紙面 しめん に垂直 すいちょく な鏡 かがみ 映 うつ m (実線 じっせん で示 しめ した)との組合 くみあわ せの空間 くうかん 群 ぐん を示 しめ す。それぞれの図 ず に配列 はいれつ した小 しょう 円 えん は,これらの対称 たいしょう によって互 たが いに同 どう 価 あたい となる点 てん である。また矢印 やじるし は並進 へいしん の二 ふた つの周期 しゅうき を示 しめ し,第 だい 3の周期 しゅうき は紙面 しめん (投影 とうえい 面 めん )に垂直 すいちょく とする。いずれの図 ず も無限 むげん に広 ひろ がる図形 ずけい の一部 いちぶ を示 しめ す。
空間 くうかん “群 ぐん ”というのは次 つぎ の理由 りゆう による。与 あた えられた結晶 けっしょう 構造 こうぞう X をそれ自身 じしん に重 かさ ね合 あ わすすべての対称 たいしょう 操作 そうさ の集合 しゅうごう Gs において,その中 なか の任意 にんい の対称 たいしょう 操作 そうさ g 1 によってX の部分 ぶぶん A がX の他 ほか の部分 ぶぶん B に重 かさ ね合 あ わされながらX は全体 ぜんたい としてX に重 かさ ね合 あ わされ,それに引 ひ き続 つづ いて対称 たいしょう 操作 そうさ g 2 を施 ほどこ すことによってX の部分 ぶぶん B がX の部分 ぶぶん C に重 かさ ね合 あ わされながらX は全体 ぜんたい としてX に重 かさ ね合 あ わされる。すなわちg 1 に引 ひ き続 つづ いてg 2 をおこなった結果 けっか は,部分 ぶぶん A を部分 ぶぶん C に重 かさ ね合 あ わせながらX をX に重 かさ ね合 あ わせることになるから,これもまたX の対称 たいしょう 操作 そうさ の一 ひと つであって,それは例 たと えばg 3 と名 な づけられて既 すで にGs の中 なか にあるはずである。g 1 に引 ひ き続 つづ いてg 2 を施 ほどこ すことをこれら2操作 そうさ 間 あいだ の演算 えんざん ( で表 あらわ す)と定義 ていぎ すれば,上 うえ の事情 じじょう はg 1 g 2 =g 3 となることであり,この演算 えんざん に関 かん してGs は代数 だいすう 学 がく で定義 ていぎ される群 ぐん を構成 こうせい していることを示 しめ すことができる。そのためGs を空間 くうかん 群 ぐん という。
三 さん 次元 じげん のあらゆる種類 しゅるい の結晶 けっしょう 構造 こうぞう をそれ自身 じしん に重 かさ ね合 あ わせる対称 たいしょう 操作 そうさ の集合 しゅうごう ,つまり空間 くうかん 群 ぐん には,互 たが いに異 こと なった230種類 しゅるい のものがあることを,理論 りろん 的 てき にそれらを次々 つぎつぎ に導 みちび き出 だ して最後 さいご に数 かぞ えあげることによって証明 しょうめい することができる。
結晶 けっしょう の巨視的 きょしてき 対称 たいしょう 上述 じょうじゅつ の結晶 けっしょう の微視的 びしてき 対称 たいしょう との関連 かんれん において,結晶 けっしょう の巨視的 きょしてき 対称 たいしょう を考 かんが える。結晶 けっしょう の巨視的 きょしてき 観察 かんさつ における〈点 てん 〉とは,微視的 びしてき にはその中 なか にきわめて多 おお くの格子 こうし 点 てん を含 ふく むある半径 はんけい をもった球 たま とみることができる。この球 たま の互 たが いに異 こと なった位置 いち にあるものどうしを比較 ひかく すると,図 ず 18のように,格子 こうし 点 てん の配列 はいれつ はそれら二 ふた つの球 たま の内部 ないぶ では互 たが いに等 ひと しく,球面 きゅうめん に近 ちか いところでは球面 きゅうめん に相対 そうたい 的 てき に互 たが いに異 こと なる。しかし,これらの球面 きゅうめん 付近 ふきん の格子 こうし 点 てん の数 かず は,球 たま の内部 ないぶ の格子 こうし 点 てん の数 かず に比 ひ してきわめてわずかであるから,格子 こうし 点 てん の配列 はいれつ という観点 かんてん においては球 っきゅう 相互 そうご の差 さ はないとみてさしつかえない。このことは結晶 けっしょう が巨視的 きょしてき には均質 きんしつ となることを示 しめ している。
また,結晶 けっしょう の諸 しょ 性質 せいしつ は外部 がいぶ からの作用 さよう に対 たい する結晶 けっしょう の構成 こうせい 単位 たんい の反作用 はんさよう の合成 ごうせい であり,この合成 ごうせい 反作用 はんさよう は構成 こうせい 単位 たんい の配列 はいれつ の仕方 しかた を反映 はんえい するが,構成 こうせい 単位 たんい の配列 はいれつ は結晶 けっしょう 格子 こうし に従 したが っているからそれは異 あや 方 かた 的 てき であり,それゆえ結晶 けっしょう には巨視的 きょしてき に異 あや 方 かた 性 せい が観察 かんさつ されることになる。ただし,結晶 けっしょう の性質 せいしつ の対称 たいしょう は結晶 けっしょう 構造 こうぞう の対称 たいしょう Gs には含 ふく まれないある対称 たいしょう 操作 そうさ をGs につけ加 くわ えたものとなることが多 おお いので,結晶 けっしょう の巨視的 きょしてき 対称 たいしょう の幾何 きか 学 がく 的 てき 考察 こうさつ には,Gs に余分 よぶん なものをつけ加 くわ えることのないことが経験 けいけん 的 てき に知 し られているところの結晶 けっしょう 形態 けいたい の対称 たいしょう に注目 ちゅうもく しなければならない。
結晶 けっしょう 形態 けいたい に現 あらわ れる結晶 けっしょう 面 めん のおのおのはその結晶 けっしょう の構造 こうぞう のある格子 こうし 面 めん であることが経験 けいけん 的 てき に知 し られている。逆 ぎゃく にいえば,すべての格子 こうし 面 めん は結晶 けっしょう 面 めん となりうる可能 かのう 性 せい を多 おお かれ少 すく なかれもっている。また結晶 けっしょう 面 めん の交線である稜 りょう は格子 こうし 面 めん の交線である格子 こうし 線 せん であり,同 どう 一 いち 平面 へいめん 上 じょう にないある3稜 りょう を結晶 けっしょう 軸 じく としたのであるから,結晶 けっしょう 軸 じく のおのおのはある格子 こうし 線 せん である。このことは,結晶 けっしょう 軸 じく は必 かなら ずしも結晶 けっしょう 形態 けいたい に現 あらわ れた稜 りょう には限 かぎ らず,形態 けいたい の記述 きじゅつ に便利 べんり な格子 こうし 線 せん の方向 ほうこう にとりかえてもよいことを意味 いみ している。また,結晶 けっしょう 面 めん として現 あらわ れるある格子 こうし 面 めん と対称 たいしょう 的 てき に同 どう 価 あたい な他 ほか の格子 こうし 面 めん もやはり結晶 けっしょう 面 めん として形態 けいたい に現 あらわ れることも経験 けいけん 的 てき に知 し られている。
点 てん 群 ぐん ,結晶 けっしょう 族 ぞく 微視的 びしてき なn回 まわ らせんや映 うつ 進 すすむ の並進 へいしん 成分 せいぶん tは巨視的 きょしてき には見 み ることができないから,それらは巨視的 きょしてき にはそれぞれn回 かい 回転 かいてん と鏡 かがみ 映 うつ とに等 ひと しくなり,また微視的 びしてき な格子 こうし 並進 へいしん も巨視的 きょしてき には均質 きんしつ な連続 れんぞく 体 たい となるから,その結晶 けっしょう の任意 にんい の点 てん O を原点 げんてん にとって,すべての対称 たいしょう 要素 ようそ がO を通 とお るとみなしてよいことになる。互 たが いに平行 へいこう に繰 く り返 かえ して存在 そんざい する結晶 けっしょう 構造 こうぞう の微視的 びしてき な対称 たいしょう 要素 ようそ と,それらと方向 ほうこう を同 おな じくして原点 げんてん O を通 とお る巨視的 きょしてき な対称 たいしょう 要素 ようそ との対応 たいおう を矢印 やじるし で示 しめ せば,n回 かい 回転 かいてん およびらせん軸 じく →n回 かい 回転 かいてん 軸 じく ,n回 かい 回 かい 反 はん 軸 じく (n>2)→n回 かい 回 かい 反 はん 軸 じく ,鏡 かがみ 映 うつ 面 めん および映 うつ 進 すすむ 面 めん →鏡 かがみ 映 うつ 面 めん ,対称 たいしょう 心 しん →対称 たいしょう 心 しん となる。これらの対応 たいおう によって得 え られる巨視的 きょしてき な対称 たいしょう 操作 そうさ の集合 しゅうごう も数学 すうがく 上 じょう の群 ぐん をなすことが証明 しょうめい され,しかもこれらの対称 たいしょう 要素 ようそ はいずれも原点 げんてん O を通 とお るから,この群 ぐん は点 てん 群 ぐん とよばれる。結晶 けっしょう を微視的 びしてき に見 み た場合 ばあい ,空間 くうかん 群 ぐん は230種類 しゅるい 可能 かのう であったが,巨視的 きょしてき に見 み るとその対称 たいしょう は32種 しゅ の点 てん 群 ぐん に限 かぎ られ,これらを結晶 けっしょう 族 ぞく または晶 あきら 族 ぞく という。
結晶 けっしょう 系 けい 空間 くうかん 格子 こうし の格子 こうし 点 てん の一 ひと つを固定 こてい しての運動 うんどう によって,格子 こうし をそれ自身 じしん に重 かさ ね合 あ わすような対称 たいしょう 操作 そうさ をすべて含 ふく む点 てん 群 ぐん を求 もと めると,表 ひょう における第 だい 4列 れつ の7種 しゅ のものが得 え られ,これらを完 かん 面 めん 像 ぞう 点 てん 群 ぐん (晶 あきら 族 ぞく )という。これらの点 てん 群 ぐん によってそれ自身 じしん に重 かさ ねられる結晶 けっしょう 格子 こうし は,その格子 こうし 線 せん の方向 ほうこう や周期 しゅうき が対称 たいしょう を反映 はんえい しており,今後 こんご は結晶 けっしょう 軸 じく も対称 たいしょう を表 あらわ す格子 こうし 線 せん の方向 ほうこう にとりかえることにする。そのようにしたときに得 え られる3軸 じく の周期 しゅうき と軸 じく 角 かく にみられる関係 かんけい を第 だい 2列 れつ に示 しめ す。完 かん 面 めん 像 ぞう 点 てん 群 ぐん によって分類 ぶんるい される7種 しゅ の結晶 けっしょう 軸 じく のとり方 かた による結晶 けっしょう の分類 ぶんるい を結晶 けっしょう 系 けい もしくは晶 あきら 系 けい といい,これら7晶 あきら 系 けい の名称 めいしょう を第 だい 1列 れつ に与 あた える。これらの中 なか で三 さん 方 ぽう 晶 あきら 系 けい のみには,完 かん 面 めん 像 ぞう 点 てん 群 ぐん 3 m によってそれ自身 じしん に重 かさ ねられる格子 こうし には軸 じく のとり方 かた が異 こと なる2種類 しゅるい のものがある。
ブラベ格子 こうし 表 ひょう の第 だい 2列 れつ の指定 してい に従 したが って結晶 けっしょう 軸 じく をとったときに,結晶 けっしょう 系 けい によっては単純 たんじゅん 単位 たんい 胞以外 がい に多重 たじゅう 単位 たんい 胞をもとれる場合 ばあい があり,これらを数 かぞ えあげると第 だい 3列 れつ と図 ず 19に示 しめ した合計 ごうけい 14の型 かた の格子 こうし が得 え られる。この14の型 かた の格子 こうし を,これを研究 けんきゅう したA.ブラベの名 な を冠 かん してブラベ格子 こうし と呼 よ ぶ。図 ず 19はブラベ格子 こうし のおのおのの単位 たんい 胞を示 しめ し,後 うし ろ下方 かほう の格子 こうし 点 てん を原点 げんてん として,前 まえ ,右 みぎ ,上 うえ の方向 ほうこう ((10))のみは,下方 かほう の格子 こうし 点 てん を原点 げんてん として,前 まえ ,右 みぎ ,左 ひだり の方向 ほうこう がそれぞれa ,b ,c 軸 じく である。第 だい 3列 れつ のP は単純 たんじゅん 格子 こうし ,C は底 そこ 心 こころ 格子 こうし ,I は体 からだ 心 こころ 格子 こうし ,F は面 めん 心 こころ 格子 こうし ,R は菱 ひし 面体 めんてい 格子 こうし を表 あらわ す記号 きごう で,それぞれに付 つ けた(10)などは記号 きごう ではなく,図 ず 19に対比 たいひ させる番号 ばんごう である。単純 たんじゅん 格子 こうし は単位 たんい 胞の角 かく にだけ格子 こうし 点 てん がある。底 そこ 心 こころ 格子 こうし は単位 たんい 胞の角 かく と底面 ていめん の中心 ちゅうしん に格子 こうし 点 てん がある。体 からだ 心 こころ 格子 こうし は単位 たんい 胞の角 かく と中央 ちゅうおう に格子 こうし 点 てん がある。面 めん 心 こころ 格子 こうし は単位 たんい 胞の角 かく と各面 かくめん の中心 ちゅうしん に格子 こうし 点 てん がある。
完 かん 面 めん 像 ぞう 点 てん 群 ぐん のおのおののある部分 ぶぶん に相当 そうとう する点 てん 群 ぐん (完 かん 面 めん 像 ぞう 点 てん 群 ぐん の部分 ぶぶん 群 ぐん )には,第 だい 3列 れつ のブラベ格子 こうし をそれ自身 じしん に重 かさ ね合 あ わせるものがあり,それらすべてを第 だい 5列 れつ に示 しめ す。例 たと えば完 かん 面 めん 像 ぞう 点 てん 群 ぐん mmm の部分 ぶぶん 群 ぐん は,それ自身 じしん も自己 じこ の部分 ぶぶん とみなして形式 けいしき 的 てき に部分 ぶぶん 群 ぐん に含 ふく めれば,mmm ,mm 2,222,2/m ,m ,2,1 ,1の8種 しゅ であるが,この中 なか でmmm と同 おな じく(4)(5)(6)および(7)のブラベ格子 こうし をそれ自身 じしん に重 かさ ね合 あ わせるものはmmm ,mm 2,222の3種 しゅ のみである。斜 はす 方 かた 晶 あきら 系 けい とはこれら3種 しゅ の点 てん 群 ぐん の集 たか りであるということもできる。
点 てん 群 ぐん 記号 きごう 各 かく 結晶 けっしょう 系 けい における点 てん 群 ぐん の記号 きごう が対応 たいおう する方向 ほうこう とそれらを書 か き表 あらわ す順序 じゅんじょ を表 ひょう の第 だい 6列 れつ に示 しめ す。そこでa とか[110]とかいうときには,その方向 ほうこう にある回転 かいてん 軸 じく あるいは回 かい 反 はん 軸 じく の種類 しゅるい ,またはその方向 ほうこう に垂直 すいちょく な鏡 かがみ 映 うつ 面 めん m があることが示 しめ され,ある方向 ほうこう に2,4あるいは6の回転 かいてん 軸 じく があるとともにそれに垂直 すいちょく なm がある場合 ばあい には,それぞれ2/m ,4/m あるいは6/m で表 あらわ す。三 さん 斜 はす 晶 あきら 系 けい 以外 いがい では,1は略 りゃく して書 か かない。第 だい 6列 れつ の(1)(2)などは図 ず 20の同 おな じものに対応 たいおう する。
点 てん 群 ぐん と結晶 けっしょう 形態 けいたい 点 てん 群 ぐん の例 れい として図 ず 21のaにm 3m ,bに432,cに23を示 しめ す。これらの図 ず の中 なか の四角形 しかっけい ,三角形 さんかっけい ,レンズ形 がた はそれぞれ4回 かい ,3回 かい ,2回 かい 回転 かいてん 軸 じく を,またaの面 めん はいずれも鏡 かがみ 映 うつ 面 めん m である。この中 なか で完 かん 面 めん 像 ぞう 点 てん 群 ぐん m 3m では,a に垂直 すいちょく なm と[111]方向 ほうこう の3と[110]方向 ほうこう に垂直 すいちょく なm とがあれば,aに示 しめ されている4と2などの他 ほか の対称 たいしょう 要素 ようそ は必然 ひつぜん 的 てき に現 あらわ れてくることになる。これらの3点 てん 群 ぐん のそれぞれにおいて,面 めん (321)が現 あらわ れたとすると,それと対称 たいしょう 的 てき に同 どう 価 あたい な面 めん も結晶 けっしょう 形態 けいたい に現 あらわ れ,図 ず 22に示 しめ すように,m 3m ではaの48面体 めんてい となり,これは完 かん 面 めん 像 ぞう と呼 よ ばれる。432はbの24面 めん から成 な り,完 かん 面 めん 像 ぞう の半分 はんぶん の面 めん 数 すう をもつため半面 はんめん 像 ぞう と呼 よ ばれる。23はcの12面 めん からなり,完 かん 面 めん 像 ぞう の1/4の面 めん 数 すう をもつため四 よん 半面 はんめん 像 ぞう と呼 よ ばれる。 →結晶 けっしょう 学 がく →結晶 けっしょう 光学 こうがく →結晶 けっしょう 構造 こうぞう →結晶 けっしょう 成長 せいちょう →鉱物 こうぶつ →固体 こたい 執筆 しっぴつ 者 しゃ :定永 さだなが 両 りょう 一 いち