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防火(ボウカ)とは? 意味や使い方 - コトバンク

防火ぼうかみ)ボウカ

デジタル大辞泉だいじせん防火ぼうか」の意味いみみ・例文れいぶん類語るいご

ぼう‐か〔バウクワ〕【防火ぼうか

火災かさいこるのをふせぐこと。また、引火いんか延焼えんしょうふせぐこと。「防火ぼうか設備せつび」「防火ぼうか訓練くんれん
[類語るいご]防水ぼうすい防風ぼうふう風防ふうぼう防暑ぼうしょ防寒ぼうかんじょしも防雪ぼうせつ防湿ぼうしつ防砂ぼうさ防潮ぼうちょう防臭ぼうしゅう防腐ぼうふ防毒ぼうどく防食ぼうしょく防疫ぼうえき防縮ぼうしゅく防空ぼうくう

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ぼう‐かバウクヮ防火ぼうか

  1. 名詞めいし 火災かさいこらないようにまえもってふせぐこと。また、延焼えんしょうをくいとめること。
    1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「江戸えどろう翫中に防火ぼうか模造もぞう児童じどうもっぱあいこれ」(出典しゅってん随筆ずいひつまもりさだ漫稿(1837‐53))

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改訂かいてい新版しんぱん 世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん防火ぼうか」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

防火ぼうか (ぼうか)

わざわい〉という文字もじかわみず)ととで構成こうせいされている。両者りょうしゃは,人間にんげん生活せいかつゆたかにした反面はんめん人間にんげん自然しぜんきびしさをおしえることにもなった。利用りようしたくらしは,火災かさい抑止よくしするくふうをおこたってはりたない。えやすいいえ都市としつくると大火たいかでその努力どりょく無駄むだになるし,火事かじ対策たいさくなしにだい規模きぼまたは高層こうそうあるいは地下ちかなんかいもある建物たてものつくると大量たいりょう発生はっせい覚悟かくごしなければならない。ふせぐという内容ないようにはつぎみっつの意味いみがある。(1)火災かさい予防よぼう 火事かじにならないように火気かき管理かんり十分じゅうぶんおこなうこと。〈用心ようじん〉という名言めいげんは,徳川とくがわ家康いえやす家臣かしんほん多作たさく左衛門さえもん留守るすたくつまおくった手紙てがみで,〈用心ようじん。おせんかすな。うまやせ〉といたのが最初さいしょといわれる。日本にっぽん住宅じゅうたく構造こうぞうかんがえれば,〈用心ようじん〉がもっと重要じゅうよう予防よぼう対策たいさくひとつであることは自明じめい事実じじつである。(2)消火しょうか防火ぼうか 火事かじになっても拡大かくだいさせないよう消火しょうかしたり,防火ぼうか区画くかくもうけておさえたりすること。スプリンクラー設備せつび有力ゆうりょく消火しょうか手段しゅだんであり,防火ぼうか閉鎖へいさ火炎かえんけむり拡散かくさんふせぐために不可欠ふかけつであることなどがそのれいである。(3)類焼るいしょう防止ぼうし となりとうなど外部がいぶ発生はっせいした火災かさいから自分じぶん建物たてものまもり,うつらせないようにすること。このような性能せいのうをもった構造こうぞう建築けんちく基準きじゅんほうでは防火ぼうか構造こうぞうしょうしている。また,類焼るいしょうする危険きけんのある敷地しきち境界きょうかいせんなどからの範囲はんい法律ほうりつでは延焼えんしょうのおそれある部分ぶぶん定義ていぎしている。これらは,古来こらい大火たいかなやまされてきた日本にっぽんかんがえられた独特どくとく表現ひょうげんである。

火災かさい安全あんぜん防火ぼうか対象たいしょうぶつ構造こうぞうやそこに設備せつびされた機器ききのみでは保証ほしょうされないことからしょうじた対策たいさく手法しゅほうで,防火ぼうかめん人間にんげんたすべき役割やくわりかんする内容ないようである。消防しょうぼう計画けいかくをたて,消防しょうぼう設備せつびなどの保守ほしゅ点検てんけん実施じっし方法ほうほうさだめたり,火気かき管理かんり避難ひなん誘導ゆうどう初期しょき消火しょうか役目やくめめて避難ひなん訓練くんれん定期ていきてきおこなうことなどもふくまれる。過去かこ火災かさいのほとんどは防火ぼうか管理かんりじょう欠陥けっかん関与かんよし,日本にっぽんれいではせんにちビル(大阪おおさか,1972),大洋たいようデパート(熊本くまもと,1973),川治かわじプリンスホテル(栃木とちぎ,1980),ホテルニュージャパン(東京とうきょう,1982)などのだい惨事さんじをひきこしている。ひとつのビルがおおくの用途ようと使つかわれているもの(ふくあい用途ようとビル,雑居ざっきょビル)では,出火しゅっか警報けいほうおくれがちであるから,共同きょうどう防火ぼうか管理かんり体制たいせい的確てきかく運用うんようのありかた防火ぼうかじょう重要じゅうよう課題かだいとなっている。

都市とし大火たいか抑止よくしする抜本ばっぽんてき手段しゅだん都市とし不燃ふねんである。ロンドン,パリ,シカゴ,サンフランシスコなど欧米おうべいしょ都市とし例外れいがいではなく,耐火たいか建築けんちくやすことによって大火たいか撲滅ぼくめつした。これを可能かのうとしたのが,地域ちいきおうじて建築けんちくできる建物たてもの防火ぼうかじょう構造こうぞうめたことである。日本にっぽんでは都市とし計画けいかくほうにもとづき市町村しちょうそん防火ぼうか地域ちいきおよびじゅん防火ぼうか地域ちいき指定していすることとなっている。防火ぼうか地域ちいき都市とし中核ちゅうかくてき地域ちいき指定していされることがおおく,建築けんちく基準きじゅんほうによりおおくの人々ひとびとあつまる一定いってい規模きぼ以上いじょう建物たてもの耐火たいか建築けんちくぶつとしなければならない地域ちいきであり,よわ木造もくぞう建築けんちく原則げんそくとして禁止きんしされている。じゅん防火ぼうか地域ちいきでは,簡易かんい耐火たいか建築けんちくぶつでも建築けんちく可能かのうである。木造もくぞう屋根やねかわら鋼板こうはんでふき,外壁がいへきのきうらをセメントモルタルぬりあるいは不燃材ふねんざいりょうりとすれば,かなり類焼るいしょうふせぐことができる。日本にっぽんでは市街地しがいち区域くいきてられるだい部分ぶぶん木造もくぞう建築けんちくがこうした防火ぼうか木造もくぞうとなっている。過去かこ頻発ひんぱつした大火たいか現在げんざいではめったにこらなくなった。1976ねん10がつ29にち発生はっせいした酒田さかた大火たいか例外れいがいてきともいえる。

昭和しょうわ30年代ねんだい後半こうはんから40年代ねんだいにかけては,経済けいざい高度こうど成長せいちょう関連かんれんしてすうおおくのビルがてられ,また,石油せきゆ化学かがく発展はってん代表だいひょうされる素材そざい産業さんぎょう拡充かくじゅう多様たようあたらしい建築けんちく材料ざいりょうし,おお利用りようされたが,そのなかにはえると有毒ゆうどくガス発生はっせいするものもおおかった。その結果けっかけむりいつめられて死亡しぼうする惨事さんじ続発ぞくはつした。けむり拡散かくさん防止ぼうしは,ビル管理かんりにかかわる汚染おせん空気くうき排除はいじょとともに,安心あんしんできるビル生活せいかついとなむための必須ひっす条件じょうけんとなっている。けむり危険きけん理由りゆうつぎふたつである。(1)見通みとお距離きょり減退げんたい けむりはすすやきりじょう微粒子びりゅうしからるためひかり散乱さんらんしたり透過とうかしにくくなる。したがって,避難ひなんこう誘導ゆうどうとうなどがつけられずにまよ脱出だっしゅつできなくなる原因げんいんとなる。(2)有毒ゆうどくガスの存在そんざい 火事かじのときに噴出ふんしゅつするけむりには,一酸化いっさんか炭素たんそ多量たりょうふくまれているし,酸素さんそすくない。また羊毛ようもう,アクリル樹脂じゅしけい繊維せんいきぬ,ナイロンなど窒素ちっそ含有がんゆうする製品せいひんシアン化合かごうぶつ発生はっせいする危険きけんがある。塩化えんかビニル樹脂じゅしなどのハロゲンけい物質ぶっしつ刺激しげきせいのガスを発生はっせいし,この微粒子びりゅうしつよ酸性さんせいしめ金属きんぞく腐食ふしょくさせるおそれもある。こうしたけむり抑止よくしする方法ほうほうつぎふたつである。(1)排煙はいえん 圧力あつりょくによってけむり排除はいじょする方法ほうほうであり,自然しぜん排煙はいえん機械きかい排煙はいえんとにけられる。後者こうしゃ吸引きゅういんしき加圧かあつしきとがある。火災かさい発生はっせいするけむりりょう膨大ぼうだいであり,ふうりょう十分じゅうぶん留意りゅういしてファンをもうける必要ひつようがある。(2)さえぎけむり シャッターかべ降下こうかさせてけむり透過とうか防止ぼうししたり,電線でんせんかん給排水きゅうはいすいかん換気かんきかん空調くうちょうダクトなどがかべゆか貫通かんつうする部分ぶぶんうめもどしをおこなうことによってけむり漏出ろうしゅつふせ方法ほうほうである。
火事かじ
執筆しっぴつしゃ

歴史れきしてき木造もくぞう建築けんちくぶつおお日本にっぽんでは,建物たてもの自体じたいえることをふせ対策たいさくと,隣接りんせつ建物たてものからの延焼えんしょうふせ対策たいさく今日きょうまで並行へいこうして発達はったつしてきた。このため日本にっぽんでは,狭義きょうぎ延焼えんしょう防止ぼうし対策たいさくほどこした建物たてもの防火ぼうか建築けんちくび,被災ひさいしてもさい使用しよう可能かのうなことが目的もくてきである耐火たいか建築けんちく区別くべつしている。

木材もくざいは,人類じんるい文明ぶんめいをもたらす原動力げんどうりょくとなった燃料ねんりょうであり,また入手にゅうしゅ加工かこう容易ようい材料ざいりょうであったため,人間にんげんじゅう生活せいかつ密接みっせつむすびつき,ふるくから建物たてもの構造こうぞうざい内装ないそうその多方面たほうめん使つかわれてきた。そのうえ木材もくざいかぎらず,人間にんげんじゅう生活せいかつにおいて利用りようする材料ざいりょうたいてい可燃かねんぶつなので,古代こだいから出火しゅっか危険きけん日常にちじょうてきであった。古代こだいローマの建築けんちくウィトルウィウスも,安価あんか施工しこうせいのよい木造もくぞうかべ火災かさいさい松明たいまつ(たいまつ)のようにえることをなげき,また,隣接りんせつした建物たてものからの延焼えんしょうふせぐために,外壁がいへきえにくい材料ざいりょう使用しようするよう主張しゅちょうしている。

 このように,むねからの火災かさい延焼えんしょうしないこと,およびできるだけ出火しゅっかしにくくすることのふたつが建物たてものにとってつねに重要じゅうよう課題かだいであった。

 人口じんこう稠密ちゅうみつ西欧せいおう中世ちゅうせい都市としでは,土地とちをできるだけ有効ゆうこう利用りようしようと隣地りんち境界きょうかいせんじょう石造せきぞうもしくは煉瓦れんがづくり構造こうぞうかべつくられ,これがだい1の課題かだいである延焼えんしょう防止ぼうしのための防火ぼうかかべとしての役割やくわりたした。パーティ・ウォールparty wallとばれるこのかべは,土地とち所有しょゆうしゃ双方そうほうからおなはば敷地しきち供出きょうしゅつしてつくるもので,かべあつさ,たかさや費用ひよう分担ぶんたん方法ほうほうについては,規則きそくさだめられた。ロンドンでパーティ・ウォールの規則きそくかんする最初さいしょ記述きじゅつみとめられるのは1189ねんである。

 これにたいして,木材もくざい豊富ほうふ不燃材ふねんざいりょうめぐまれなかった日本にっぽんでは,近世きんせいいたるまで住宅じゅうたく大半たいはん木造もくぞうで,延焼えんしょうふせぐにはとなりとうあいだ距離きょりをできるだけとるしかなかった。しかし,土地とち利用りようからみて都市としでは十分じゅうぶん距離きょりをとることは不可能ふかのうであり,結果けっかとして江戸えどでは延焼えんしょう距離きょりが2kmにおよ火災かさい江戸えど時代じだい250年間ねんかんに100かいちかくもあった(ロンドンではこの期間きかんどう規模きぼ火災かさいは1666ねんロンドン大火たいかの1かいしかこっていない)。木造もくぞうでの延焼えんしょう防止ぼうしにはほかに,建物たてもの外周がいしゅう防火ぼうかてきにする,すなわち木材もくざい露出ろしゅつ部分ぶぶん可能かのうかぎすくなくする方法ほうほうがあるが,江戸えど時代じだい採用さいようされた瓦葺かわらぶき,ぬり建物たてもの外部がいぶあつさ3~5cm程度ていどまわしたもの)などの方策ほうさくは,飛火とびひによる延焼えんしょうげんじたであろうものの,結局けっきょくとなりとうからの延焼えんしょうふせげず,火災かさい実験じっけんからられた温度おんど曲線きょくせん利用りようした科学かがくてき防火ぼうか構造こうぞう提案ていあんは,昭和しょうわ初期しょきいたるまでなされなかった。

 一方いっぽうだい2の課題かだいである出火しゅっか防止ぼうしする方法ほうほうとして,近世きんせい以前いぜんでは,表面ひょうめんをわざと炭化たんかさせた木材もくざい使つかうなど,はだか影響えいきょうける部分ぶぶん不燃ふねんすることと,土間どまへかまどをつくって調理ちょうりするなど,ゆか生活せいかつ中心ちゅうしんから分離ぶんりさせて出火しゅっか場合ばあい被害ひがいちいさくする以外いがい方法ほうほうがなかった。近代きんだいには,利用りようできる材料ざいりょう増加ぞうか機械きかいりょく技術ぎじゅつりょく進展しんてんから上述じょうじゅつ手法しゅほうくわえてあたらしい防火ぼうか手法しゅほう発達はったつした。たとえば,可燃かねん材料ざいりょう化学かがくてき処理しょりをしてえにくくすること(なんもえ処理しょり)や,にんがいなくても火災かさいつけたり(火災かさい感知かんち),自動的じどうてきしてしまう(自動じどう消火しょうか設備せつび)などの手法しゅほうである。以上いじょう防火ぼうか手法しゅほうをまとめてひょうしめす。

 ところで,現代げんだいでは建物たてもの高層こうそうともない,従来じゅうらい防火ぼうか手法しゅほうだけでは解決かいけつできないあらたな問題もんだいしょうじている。すなわち,火災かさいにより発生はっせいするけむり問題もんだいである。高層こうそうビルでは,にん・エネルギーの移動いどうおよび空気くうき調和ちょうわのために,エレベーター,階段かいだん,ダクトなど建物たてものないたて方向ほうこう経路けいろおおく,これらをつうじてけむり上方かみがた伝播でんぱし,たとえ火炎かえんおよばなくとも,死亡しぼうしゃ火災かさい増加ぞうかしている。このため,防火ぼうかくわえてぼうけむり今後こんご問題もんだいとして重要じゅうようとなっている。以下いか建物たてもの火災かさい特性とくせいと,ひょう防火ぼうか手法しゅほうのうち重要じゅうようなものについて説明せつめいする。

室内しつない火災かさい進行しんこう過程かていちいさな火元ひもとからしだいにそだっていく時期じき成長せいちょう),内装ないそうざいなどが着火ちゃっか急激きゅうげき燃焼ねんしょうりょう増大ぞうだいし,温度おんど急上昇きゅうじょうしょうする時期じき(フラッシオーバーflush over),それにつづ最盛さいせいの3段階だんかいおおきくけることができる。

 成長せいちょう一般いっぱんには,原因げんいんほのお着火ちゃっかはつえん着火ちゃっか出火しゅっかいた過程かていで,燃焼ねんしょう性状せいじょう火元ひもとおよび可燃かねんぶつ種類しゅるい配置はいちによりまるため千差万別せんさばんべつである。たとえば,布団ふとんなかのタバコのからの出火しゅっかなんあいだもかかるが,石油せきゆこんろの転倒てんとうによる出火しゅっか瞬間しゅんかんである。火災かさい成長せいちょうし,火炎かえん天井てんじょうたっするほどになると,ほのおからの放射ほうしゃ可燃かねんせいガスの増加ぞうかにより,燃焼ねんしょう加速度かそくどてき増大ぞうだいし,しつ全体ぜんたい火炎かえんつつまれるような状態じょうたいとなる。これがフラッシオーバーで,この時期じきいたると,消火しょうか容易よういでないし,火災かさいしつから噴出ふんしゅつするけむり多量たりょうのうえに,不完全ふかんぜん燃焼ねんしょうによる一酸化いっさんか炭素たんそふく毒性どくせいたかい。このため,後述こうじゅつする火災かさい感知かんち自動じどう消火しょうか設備せつびは,当然とうぜんフラッシオーバー以前いぜん作動さどうしなければならない。また,建物たてものないでの延焼えんしょうふせぐためにも,出火しゅっか部分ぶぶん避難ひなん完了かんりょうし,防火ぼうか区画くかくとびらなど開口かいこうざされるのも,フラッシオーバーまででなければならない。

 フラッシオーバー燃焼ねんしょう供給きょうきゅうされる酸素さんそ空気くうき)のりょうによって左右さゆうされる。すきまがおおく,また屋根やねなどがちる木造もくぞう建築けんちくでは,開口かいこう増加ぞうかおうじて燃焼ねんしょうりょう増加ぞうかし,温度おんど上昇じょうしょうはげしいが,そのぶんはやきて温度おんど降下こうかはじまる(1)。これにたいして周壁しゅうへき天井てんじょうなどが不燃材ふねんざいでできた耐火たいか建築けんちくでは,まどなど一定いってい面積めんせき開口かいこうから温度おんど換気かんきによって流入りゅうにゅうする空気くうきりょう燃焼ねんしょうりょう制限せいげんされるため,わずかずつ室温しつおん上昇じょうしょうする最盛さいせいながつづ結果けっかとなる(2)。

日本にっぽんでは木造もくぞう家屋かおく圧倒的あっとうてき多数たすうめるため,となりとうあいだ延焼えんしょうをいかにふせぐかが建築けんちく防火ぼうか都市とし防火ぼうかにとっての重要じゅうよう課題かだいであった。これにたいし,標準ひょうじゅんてき木造もくぞう家屋かおくでの火災かさい温度おんどさだめ,これをもちいてとなりとう火炎かえん熱気ねっきりゅうからける熱量ねつりょう推定すいていする方法ほうほう以下いかのようにさだめられ,これにしたがって延焼えんしょうふせぐための防火ぼうか構造こうぞう開発かいはつされた。まず,1930年代ねんだいすうおおくの実物じつぶつだい木造もくぞう家屋かおく火災かさい実験じっけんおこなわれ,3の標準ひょうじゅん火災かさい温度おんど曲線きょくせんもとめられ,さらに実験じっけん結果けっか検討けんとうして,任意にんい間隔かんかくでのとなりとう壁面へきめん温度おんど上述じょうじゅつ温度おんど曲線きょくせん関係かんけいさだめられた(4)。4から任意にんいとなりとう間隔かんかくたかさにおける壁面へきめん温度おんど変化へんかもとめることができる。たとえば3mはなれたはだか木造もくぞう家屋かおく火災かさいになった場合ばあいたかさ1.8m(ちゅうの●しるし)での壁面へきめん温度おんど3の3きゅう火災かさい温度おんど曲線きょくせんしたがって変化へんかする。そこで,延焼えんしょうしないためには,たとえ壁面へきめん温度おんど木材もくざい発火はっか危険きけん温度おんどである260℃以上いじょうがっても,モルタルぬりなどで木材もくざい部分ぶぶん温度おんどは260℃以下いかたもたれるような構造こうぞうかべたいとすればよい。このかんがかたは,〈建築けんちくぶつ木造もくぞう部分ぶぶん防火ぼうか試験しけん方法ほうほう〉(JIS A 1301)の基本きほんとなっている。ただし注意ちゅういしなければならないのは,延焼えんしょう原因げんいんとなる火炎かえん接触せっしょくねつ放射ほうしゃ飛火とびひの3要素ようそのうち,飛火とびひ上述じょうじゅつかんがかたでは考慮こうりょされていないことである。

はだか周囲しゅういにある可燃かねんぶつちいさな火種ひだねではさないようなものであれば,タバコの始末しまつなど注意ちゅういによる火災かさい進展しんてんおさえられるし,いぶしやかしているあいだ発見はっけんされ,消火しょうかされるかくりつす。この意味いみ宿泊しゅくはく施設しせつなどのシーツやカーテンになんもえぼうえん処理しょりおこなわれることは宿泊しゅくはく部分ぶぶんからの失火しっかりつげる効果こうかがある。

 なんもえ処理しょりのおもな方法ほうほうとしては,不燃ふねんせいねつ伝導でんどうりつちいさい皮膜ひまく表面ひょうめんもうける方法ほうほうと,可燃かねん材料ざいりょう薬剤やくざい添加てんかして化学かがくてき作用さようによりはつえん燃焼ねんしょうふせ方法ほうほうがある。ただし,材料ざいりょうそのものが不燃ふねんになるわけではないので,火災かさい拡大かくだいし,おおきな放射ほうしゃげんになってしまうとがたもえ処理しょりおおくを期待きたいすることはできない。

統計とうけいてき出火しゅっか場所ばしょ無人むじんもしくはひとがいても就寝しゅうしんちゅうである場合ばあいおおい。このため,火災かさい発生はっせいをいちはやくひとらせ,初期しょき消火しょうか消防署しょうぼうしょへの通報つうほうとう被害ひがいらそうとする設備せつび火災かさい感知かんちである。火災かさいにより発生はっせいするねつけむりのどちらを感知かんちするかにより構造こうぞうてきねつ感知かんちけむり感知かんちの2種類しゅるいかれ,一般いっぱんけむり感知かんちのほうが,熱容量ねつようりょう影響えいきょうけるねつ感知かんちより作動さどう時期じきはやいといわれている。感知かんち感度かんどたかいほうが早期そうき火災かさい発見はっけんできるが,日常にちじょう生活せいかつにはストーブからの発熱はつねつ会議かいぎしつでの喫煙きつえんなど火災かさい初期しょき類似るいじ現象げんしょうおおく,感度かんどげると火災かさいほう火災かさいでないのに感知かんち作動さどうすること)がえるなど,早期そうき発見はっけん日常にちじょう利便りべんさとが相反あいはんする結果けっかとなる。この矛盾むじゅん解決かいけつし,情報じょうほう確度かくどげるために,複数ふくすうのセンサーをもつ感知かんち情報じょうほう時間じかん変化へんかのパターンを判別はんべつする手法しゅほうなどが開発かいはつされている。

駐車ちゅうしゃじょうのように初期しょき消火しょうか失敗しっぱいするとだい火災かさいになる可能かのうせいたか場所ばしょや,大型おおがた計算けいさんしつ美術館びじゅつかんのようにひとたび火災かさいになれば致命ちめいてき損害そんがいける場所ばしょには,火災かさい感知かんち同時どうじ消火しょうかおこなわれる設備せつび必要ひつようである。このような火災かさい感知かんち消火しょうか両方りょうほう機能きのうをもつ設備せつび自動じどう消火しょうか設備せつびといい,噴出ふんしゅつさせる消火しょうかざい種類しゅるいにより分類ぶんるいされる。19世紀せいき後半こうはんから穀物こくもつ倉庫そうこなどに設置せっちされた歴史れきしをもつスプリンクラー設備せつびは,統計とうけいてきにも信頼しんらいせいたかいものである。その駐車ちゅうしゃじょうなどに使つかわれるあわ消火しょうか設備せつび二酸化炭素にさんかたんそ消火しょうか設備せつび計算けいさんしつなどに使つかわれるハロゲン化物ばけもの消火しょうか設備せつびなどがある。
消火しょうか設備せつび

初期しょき消火しょうか失敗しっぱいして火災かさいがある程度ていどおおきくなった段階だんかいでは,延焼えんしょうふせもっと有効ゆうこう方法ほうほうは,耐火たいか構造こうぞうゆかかべ天井てんじょう出火しゅっか部分ぶぶんかこみ,火災かさい建物たてもの一部分いちぶぶんめることである。このためには,あらかじめ建物たてもの耐火たいか構造こうぞうゆかかべでいくつかのブロック(防火ぼうか区画くかくという)にけておく必要ひつようがある。これを建物たてもの防火ぼうか区画くかくといい,欠陥けっかんなくおこなわれれば延焼えんしょうふせぐだけでなく,高層こうそうビルの火災かさい人命じんめいにとって最大さいだい脅威きょういであるけむり伝播でんぱふせぐことができるので,単純たんじゅんかつ確実かくじつ防火ぼうか手法しゅほうのきめといえる。ところで,防火ぼうか区画くかく形成けいせいする隔壁かくへき建物たてもの内部ないぶ区切くぎるのであるから,前述ぜんじゅつのパーティ・ウォールとはことなり,にん出入でいり,また空気くうき調和ちょうわようのダクト,給排水きゅうはいすいかんなどのために開口かいこうかならずできる。この開口かいこう火災かさい閉鎖へいさされないと,とくに垂直すいちょく方向ほうこうにつながった区画くかく階段かいだんしつ,エレベーターシャフト,ダクト・配管はいかんのためのシャフト)は容易よういけむり伝播でんぱ経路けいろとなるため,この区画くかく開口かいこう処理しょりには十分じゅうぶん注意ちゅうい必要ひつようである。一般いっぱんに,人間にんげん出入口でいりぐちには防火ぼうかが,またダクトにはねつけむり感知かんちしてながれじる防火ぼうかダンパーが設置せっちされる。
執筆しっぴつしゃ


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百科ひゃっか事典じてんマイペディア防火ぼうか」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

防火ぼうか【ぼうか】

火災かさいふせぐことをいい,ひろくは,1.火気かき管理かんりおこなって火災かさいにならないようにする火災かさい予防よぼう,2.火事かじになってもその拡大かくだいふせいで消火しょうか,3.外部がいぶ発生はっせいした火災かさいうつりをふせ類焼るいしょう防止ぼうしなどがふくまれる。木造もくぞう建築けんちくぶつおお日本にっぽんでは,建物たてもの自体じたいえることをふせ対策たいさくと,隣接りんせつ建物たてものからの延焼えんしょうふせ対策たいさく重点じゅうてんかれてきた。古代こだいから火災かさい日常にちじょうてきだったようで,古代こだいローマのウィトルウィウスも,木造もくぞうかべ危険きけんせい指摘してきして,えにくい材料ざいりょう外壁がいへきつくるようべている。西欧せいおう中世ちゅうせい都市としでは延焼えんしょう防止ぼうしのために隣地りんちとの境界きょうかいせんじょう煉瓦れんがづくり構造こうぞうかべつくられ,これが防火ぼうかかべとしての役割やくわりたした。一方いっぽう近世きんせいいたるまで住宅じゅうたく大半たいはん木造もくぞう建築けんちくであった日本にっぽん場合ばあい延焼えんしょうふせぐには隣家りんかとの距離きょり十分じゅうぶんるしかなかった。しかし都市としではそれは不可能ふかのうであり,結果けっかとして江戸えど時代じだい江戸えどだけでも,延焼えんしょう距離きょりが2kmにおよぶ火事かじが100かいちかくもこっている。もちろん建物たてもの外部がいぶりをしたり,瓦葺かわらぶきを採用さいようするなどの対策たいさくもとられたが,科学かがくてき手法しゅほうもとづく防火ぼうか構造こうぞう提案ていあんされるのは昭和しょうわ初期しょきはいってからのことである。現在げんざい法的ほうてきには,都市とし計画けいかくほうもとづき,市町村しちょうそん防火ぼうか地域ちいきおよびじゅん防火ぼうか地域ちいき指定していすることになっており,防火ぼうか地域ちいきでは建築けんちく基準きじゅんほうにより,おおくのひとあつまる一定いってい規模きぼ以上いじょう建物たてもの耐火たいか建築けんちくぶつとしなければならないとさだめられている。なお,建物たてもの高層こうそうともなって,火災かさいともなけむり排除はいじょ伝播でんぱ防止ぼうし重要じゅうよう課題かだいとなっている。→火事かじ

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防火ぼうか
ぼうか
fire prevention

火災かさい発生はっせいおよび拡大かくだい防止ぼうしすること。火災かさいは,可燃かねんぶつ酸素さんそおよび着火ちゃっかげんの3条件じょうけんがそろった場合ばあい発生はっせいするが,通常つうじょう大気たいきちゅうでは酸素さんそ遮断しゃだんによる防火ぼうかはむずかしいので,物体ぶったい不燃ふねん火気かき管理かんり主体しゅたいとなる。建物たてものなどでは不燃材ふねんざいりょうもちいた防火ぼうか構造こうぞうまたは耐火たいか構造こうぞうとし,着火ちゃっかげん管理かんりをきびしく,危険きけんおお場所ばしょ火気かき禁止きんし区域くいきとするなど,用心ようじん徹底てっていする。まんいち出火しゅっかしたときは早期そうきにこれを発見はっけんして消火しょうかし,火災かさい拡大かくだい防止ぼうしするため,火災かさい感知かんち手持てもち消火しょうか各種かくしゅ消防しょうぼう設備せつび消火しょうか用水ようすい防火ぼうかかべなどのしょ設備せつびもうけるほか,定期ていきてき防火ぼうか訓練くんれん実施じっしするなど,防火ぼうか対象たいしょうぶつ種類しゅるい規模きぼなどにおうじた防火ぼうか対策たいさく必要ひつようである。これらは消防しょうぼうほう (昭和しょうわ 23ねん法律ほうりつ 186ごう) およびその関連かんれん法令ほうれい規定きていされている。

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世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん旧版きゅうばんうち防火ぼうか言及げんきゅう

火事かじ】より

木材もくざい引火いんか温度おんどは260℃前後ぜんこう発火はっか温度おんどは450℃前後ぜんこうであるが,ほのお熱気ねっきにより木材もくざいが260℃前後ぜんこう加熱かねつされると,ねつ分解ぶんかいさかんになり分解ぶんかいガス(一酸化いっさんか炭素たんそガスCO,水素すいそガスH2,メタンガスCH4など)がおお放出ほうしゅつされる。そこで建築けんちく防火ぼうかのほうでは,260℃を木材もくざいの〈出火しゅっか危険きけん温度おんど〉として,防火ぼうか試験しけんなどの基準きじゅんひとつにしている。最近さいきん室内しつないにはプラスチック製品せいひんおお使用しようされているが,これらが火災かさいにより加熱かねつされると,一酸化いっさんか炭素たんそガス,炭酸たんさんガスのほか,塩酸えんさんガス,シアンガスなど有害ゆうがいガスを発生はっせいする。…

※「防火ぼうか」について言及げんきゅうしている用語ようご解説かいせつ一部いちぶ掲載けいさいしています。

出典しゅってん株式会社かぶしきがいしゃ平凡社へいぼんしゃ世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん旧版きゅうばん)」

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