レンタルなんもしない人ひとが言葉ことば狩かりをしているらしいという話はなし

こんなツイートが回まわってきました。

パクってる人にんがめちゃくちゃちゃんとした人ひとでおもしろかった pic.twitter.com/0oW4siPxzJ

— レンタルなんもしない人ひと (@morimotoshoji) April 17, 2021

真似まねする人ひとが多おおすぎるのでライセンス料りょうをとることにしました pic.twitter.com/8XnWcsPGnj

— レンタルなんもしない人ひと (@morimotoshoji) September 2, 2019

ご自分じぶんで始はじめられたサービスですし、現在げんざいもご自分じぶんで営いとなまれているようですから商標しょうひょうブローカーとまでは言いいませんが、
ドラマホリック見みてたので、まぁなんというか非常ひじょうに残念ざんねんです。

２ふたつめの３０万まん円えん要求ようきゅうしてるのは商標しょうひょう登録とうろく前まえのことみたいですが。

で、まずは対象たいしょうの商標しょうひょう登録とうろくを見みてみます。

登録とうろく6269072(商しょう願ねがい2019-120042)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2019-120042/CE8B646A1FBF39C57B2AE7FC9B9B41A0466965BC534B530C67A4F9D84524269A/40/ja

指定してい役務えきむは
第だい４５類るい　犬いぬの散歩さんぽの代行だいこう，個人こじんのニーズに合あわせて手配てはいや情報じょうほう提供ていきょうなどを行おこなうコンシェルジュの役務えきむ，護衛ごえい，行方ゆくえ不明ふめい者しゃの捜索そうさく，私信ししんの代筆だいひつ，社交しゃこう界かいにおける付つき添そい，身体しんたい上じょうの保安ほあんに関かんする助言じょげん，留守番るすばん，ファッション情報じょうほうの提供ていきょう，ペットの世話せわ，家事かじの代行だいこう，個人こじんの身元みもと又または行動こうどうに関かんする調査ちょうさ，施設しせつの警備けいび，身みの上うえ相談そうだん，身辺しんぺんの警備けいび，占うらない，ベビーシッティング，衣装いしょうの選定せんてい，遺失いしつ物ぶつの捜索そうさく・返還へんかん

となっています。
ので、この商標しょうひょう権けんで仮かりに何なにかを禁止きんしできるとしたら、それは上記じょうきの指定してい役務えきむの提供ていきょうに際さいして「レンタルなんもしない人ひと」という表示ひょうじを行おこなうことです。

なので、「なんもしませんけど、呼よばれたら行いきます」というサービスで「レンタルなんもしない人ひと」という表示ひょうじを行おこなっても、この商標しょうひょう権けんには抵触ていしょくしません。

また、商標しょうひょう権けんによって他者たしゃの行為こういを制限せいげんできるのは、あくまでも「指定してい商品しょうひん、役務えきむにおける商標しょうひょうの使用しよう」であって、「特定とくていの商売しょうばいを営いとなむこと、特定とくていの行為こういを提供ていきょうすること」ではありません。
例たとえば、「なんもしない人ひとの貸かし出だし」を提示ていじして「レンタルなんもしない人ひと」という表示ひょうじを行おこなったとします。
その上うえで、「なんもしない人ひとを１人ひとりお願ねがいします」と依頼いらいを受うけて出でかけて行いった先さきで上記じょうきの「犬いぬの散歩さんぽの代行だいこう，個人こじんのニーズに合あわせて手配てはいや情報じょうほう提供ていきょうなどを行おこなうコンシェルジュの役務えきむ，etc」といった指定してい役務えきむや類似るいじする物事ものごとを頼たのまれ、それに応こたえたとしてもセーフです。

個人こじん的てきには、「なんもしない人ひとの貸かし出だし」「なんもしない人ひとのあっせん」というのが商標しょうひょう法ほう上じょうの指定してい役務えきむ（認みとめられるとしたらおそらく３５類るい）として認みとめられるのかは非常ひじょうに興味きょうみがありますｗ

人材じんざい派遣はけんに関かんする役務えきむはそのままでは認みとめられず、派遣はけんにより行おこなう業務ぎょうむを具体ぐたい的てきに特定とくていする必要ひつようがあります。
「なんもしない」のがそもそもサービスなのか？という、禅問答ぜんもんどうのようなハナシになってきますね。
その他た、妥当だとうな指定してい役務えきむを考かんがえるとすればなんなのか、、、
「寄より添そい」「同行どうこう」「遊あそび相手あいて」「話はなし相手あいて」とかでしょうか。どの区分くぶんに属ぞくするのかは検討けんとうもつきませんが。
どれも既存きそんの登録とうろくには見みられないものばかり。
４５類るいで微妙びみょうな商標しょうひょう登録とうろくするくらいならば、サービスが多様たよう化かする中なか、「新あたらしいサービス」としてこの程度ていどの検討けんとうはした上うえで出願しゅつがんした方ほうが良よかったんじゃないでしょうかね。

出願しゅつがん経過けいかを見みても、微妙びみょうな指定してい役務えきむの登録とうろくにチャレンジした形跡けいせきはありません。
なぜ、少すくなくとも「なんもしない人ひとの貸かし出だし」「なんもしない人ひとのあっせん」での登録とうろくをチャレンジしなかったんだろう。

というか、「なんもしない」って言いってんのに「犬いぬの散歩さんぽの代行だいこう，個人こじんのニーズに合あわせて手配てはいや情報じょうほう提供ていきょうなどを行おこなうコンシェルジュの役務えきむ，etc」といった各種かくしゅの役務えきむが指定していされていることにもジワジワくるものがあります。

これは笑わらい事ごとではなくて、商標しょうひょう法ほう上じょうの無効むこう要件ようけんに該当がいとうしちゃったりなんかするのではないか、、、等ひとしと考かんがえたりします。

第だい四よん条じょう　次つぎに掲かかげる商標しょうひょうについては、前条ぜんじょうの規定きていにかかわらず、商標しょうひょう登録とうろくを受うけることができない。
＜略りゃく＞
十じゅう六ろく　商品しょうひんの品質ひんしつ又または役務えきむの質しつの誤認ごにんを生しょうずるおそれがある商標しょうひょう
＜略りゃく＞

商標しょうひょうは「レンタルなんもしない人ひと」なので、それを見みた人ひとは「なんもしない人ひとのレンタルなんだな」と理解りかいします。
それに対たいして具体ぐたい的てきな役務えきむが指定していされた時点じてんで「なんもしない」という意味いみに反はんします。
これについて、「役務えきむの質しつの誤認ごにんだ！」という指摘してきはあながち的外まとはずれでも無ないと思おもいます。
この出願しゅつがんは、拒絶きょぜつ理由りゆうの通知つうちもなく登録とうろくされているので、審査しんさ段階だんかいではこの条項じょうこうはスルーされていますが、第三者だいさんしゃが無効むこうを申もうし立たてたらどうなるのか非常ひじょうに興味きょうみがあります。

ともかく、「なんもしませんけど、呼よばれたら行いきます」というサービスを「レンタルなんもしない人ひと」というサービス名めいで行おこないたい人ひとは、とりあえず既存きそんの商標しょうひょう登録とうろくは気きにせず安心あんしんして行おこないましょう。

で、

そんなことだけ言いってもつまらないのでもう少すこし突つっ込こみます。

そもそも、「なんもしない人ひと」の貸かし出だし、あっせんのサービスで「レンタルなんもしない人ひと」という表示ひょうじを制限せいげんすることなんてできるのか？
というオハナシ。

この手ての話はなしは過去かこにもたくさん書かいたので自分じぶん的てきには今更いまさら感かんじアリアリのネタですが、

できません。

以下いか、過去かこ記事きじの再掲さいけい

商標しょうひょう権けんが及およばない範囲はんい

第だい二に十じゅう六ろく条じょう　商標しょうひょう権けんの効力こうりょくは、次つぎに掲かかげる商標しょうひょう（他たの商標しょうひょうの一部いちぶとなつているものを含ふくむ。）には、及およばない。
＜中略ちゅうりゃく＞
二に　当該とうがい指定してい商品しょうひん若もしくはこれに類似るいじする商品しょうひんの普通ふつう名称めいしょう、産地さんち、販売はんばい地ち、品質ひんしつ、原材料げんざいりょう、効能こうのう、用途ようと、形状けいじょう、生産せいさん若もしくは使用しようの方法ほうほう若もしくは時期じきその他たの特徴とくちょう、数量すうりょう若もしくは価格かかく又または当該とうがい指定してい商品しょうひんに類似るいじする役務えきむの普通ふつう名称めいしょう、提供ていきょうの場所ばしょ、質しつ、提供ていきょうの用ように供きょうする物もの、効能こうのう、用途ようと、態様たいよう、提供ていきょうの方法ほうほう若もしくは時期じきその他たの特徴とくちょう、数量すうりょう若もしくは価格かかくを普通ふつうに用もちいられる方法ほうほうで表示ひょうじする商標しょうひょう
三さん　当該とうがい指定してい役務えきむ若もしくはこれに類似るいじする役務えきむの普通ふつう名称めいしょう、提供ていきょうの場所ばしょ、質しつ、提供ていきょうの用ように供きょうする物もの、効能こうのう、用途ようと、態様たいよう、提供ていきょうの方法ほうほう若もしくは時期じきその他たの特徴とくちょう、数量すうりょう若もしくは価格かかく又または当該とうがい指定してい役務えきむに類似るいじする商品しょうひんの普通ふつう名称めいしょう、産地さんち、販売はんばい地ち、品質ひんしつ、原材料げんざいりょう、効能こうのう、用途ようと、形状けいじょう、生産せいさん若もしくは使用しようの方法ほうほう若もしくは時期じきその他たの特徴とくちょう、数量すうりょう若もしくは価格かかくを普通ふつうに用もちいられる方法ほうほうで表示ひょうじする商標しょうひょう
＜後略こうりゃく＞

ざっくり言いえば、

商品しょうひんやサービスの説明せつめいになっているような言葉ことばには商標しょうひょう権けんの効力こうりょくは及およびません

という条文じょうぶんです。

例たとえば、ＡＩによって商標しょうひょうの自動じどう検索けんさくや商標しょうひょうの願書がんしょを自動的じどうてきに作成さくせいするサービスを構築こうちくしたとして、そのサービスを「ＡＩ商標しょうひょう」として公開こうかいしたとしましょう。
すると、サービス内容ないよう的てきには「ＡＩ商標しょうひょう」の指定してい役務えきむである、第だい45類るい「工業こうぎょう所有しょゆう権けんに関かんする手続てつづきの代理だいり又または鑑定かんていその他たの事務じむ,訴訟そしょう事件じけんその他たに関かんする法律ほうりつ事務じむ,知的ちてき財産ざいさん権けんに関かんする助言じょげん・相談そうだん・指導しどう及および情報じょうほうの提供ていきょう」に当あたりますから、形式けいしき的てきには商標しょうひょう権けんの侵害しんがいという事ことになります。
しかし、サービス内容ないよう的てきに「ＡＩ商標しょうひょう」というのはサービスの内容ないようを示しめしている言葉ことばですよね。従したがって、上述じょうじゅつした２６条じょうの条文じょうぶんが適用てきようされ、権利けんり行使こうしは否定ひていされます。

商標しょうひょう的てきな使用しよう態様たいようではない

上述じょうじゅつした２６条じょうの議論ぎろんとあまり変かわらない議論ぎろんだと思おもっているのですが、「その言葉ことばの使つかい方かたは商標しょうひょうとしての使用しよう態様たいようではない」という判断はんだんにより商標しょうひょう権けん侵害しんがいが否定ひていされる場合ばあいもあります。
というか、上記じょうきの２６条じょうが適用てきようされるよりもこちらの議論ぎろんで権利けんり行使こうしが否定ひていされている場合ばあいの方ほうが多おおいような気きがします。

その言葉ことばの使つかい方かたは商品しょうひんやサービスの説明せつめいのために用もちいられている言葉ことばであって、商品しょうひんやサービスの提供ていきょう元もとである出所でどころを表示ひょうじするために用もちいられていないから、そもそも「商標しょうひょう」として使つかわれているわけではない。だから権利けんり行使こうしの対象たいしょうとはならない。

という議論ぎろんです。
なるほどなぁと思おもいつつ、そのような判断はんだんができるなら２６条じょうの条文じょうぶん要いらなくない？なんて思おもいます。

判例はんれい

では、そんな感かんじで権利けんり行使こうしが否定ひていされた商標しょうひょう権けん侵害しんがいの判例はんれいを見みてみます。
といっても、過去かこの記事きじで書かいた内容ないようのコピペです。

◆タカラ本ほんみりん事件じけん（平成へいせい１３年ねん（ネ）第だい１０３５号ごう）
宝たから醤油じょうゆ株式会社かぶしきがいしゃが「タカラ本ほんみりん」という商標しょうひょう権けんを持もっているのに対たいして、他たの業者ぎょうしゃが（実際じっさいにタカラ本ほんみりんが使つかわれている商品しょうひんに）「タカラ本ほんみりん入いり」と表示ひょうじして売うってもセーフ。

◆がん治療ちりょう最前線さいぜんせん事件じけん（平成へいせい１６年ねん（ネ）第だい２１８９号ごう）
新聞しんぶん・雑誌ざっしを対象たいしょうとした「がん治療ちりょう最前線さいぜんせん」という商標しょうひょう権けんがあるのに対たいして、「がん治療ちりょうの最前線さいぜんせん」と表示ひょうじされた書籍しょせき（実際じっさいにがん治療ちりょうの最前線さいぜんせんに関かんする内容ないよう）を出だしてもセーフ。

◆ドーナツクッション事件じけん（平成へいせい２２（ネ）１００８４）
クッション，座布団ざぶとん，まくら，マットレス等とうを対象たいしょうとした「ドーナツ」という商標しょうひょう権けんがあるのに対たいして、ドーナツ型がたのクッションに「ドーナツクッション」と表記ひょうきして売うってもセーフ。

◆HP（ヒューレット・パッカード） QuickLook事件じけん（平成へいせい２２年ねん（ワ）第だい１８７５９号ごう）
パソコン関係かんけいを対象たいしょうとした「QuickLook」という商標しょうひょう権けんがあるのに対たいして、HPが「Quick Look」という名称めいしょうをソフトウェアの機能きのうとして用もちいても、それはファイルのプレビュー機能きのうを表現ひょうげんしているのに過すぎないからセーフ。

こんな感かんじで、どれもこれも権利けんり行使こうしが否定ひていされています。
ただ、すべて「商標しょうひょう的てき使用しよう態様たいようではない」という判断はんだん。
やっぱり、26条じょうの条文じょうぶん要いらないんじゃ。。。

＜再掲さいけい終おわり＞
※２０２１年ねん４月がつ２５日にち追記ついき
関連かんれんする判例はんれいをアップデートしています。

ということで、過去かこの判例はんれいを見みても「なんもしない人ひとの貸かし出だし」で「レンタルなんもしない人ひと」という表示ひょうじを行おこなうことはセーフになると思おもわれます。

後追あとおいサービスとの区別くべつを狙ねらうならどうすればよかったか？

で、回まわってきたツイートを見みる限かぎり、後追あとおいで同おなじことする人ひとに対たいして「あの、ドラマになったレンタルさんだ」と勘違かんちがいして依頼いらいされることを避さけたいだけなのかな？とも思おもいます。
３０万まん要求ようきゅうしちゃったりとかもしてるので必かならずしもそうとも言いえない可能かのう性せいもありますが。

とりあえず、後追あとおいサービスとの区別くべつを狙ねらうならどうすれば良よかったか。

色いろんな方法ほうほうがあると思おもいますが、少すくなくとも商標しょうひょう法ほうでやるのならば思おもい浮うかぶのは２ふたつ
・レンタルさんとして有名ゆうめいになってるTwitterのアイコンを商標しょうひょう登録とうろくして、「このアイコンが目印めじるし。これ以外いがいは偽物にせもの！」として押おし出だす
・「レンタルなんもしない人ひと」をロゴ化かして商標しょうひょう登録とうろくし、「公式こうしきロゴが無ないものは偽物にせもの！」として押おし出だす

単たんに「レンタルなんもしない人ひと」という言葉ことばを独占どくせんできないのであれば、独占どくせんできるものをトレードマークにすればいいのです。
これは顧問こもん先さきを始はじめとしたクライアントが商品しょうひん名めいやサービス名めいを決きめるときに毎回まいかい言いってることですが、

商標しょうひょう法ほうで独占どくせんできない言葉ことばを商品しょうひん名めいやサービス名めいにしても他者たしゃに使つかわれ放題ほうだいなのでやめときなさい。

というオハナシ。
パッと見みで商品しょうひんやサービスの内容ないようがわかりつつ、上うえで説明せつめいしたように商標しょうひょう権けんの権利けんり行使こうしが認みとめられないという判断はんだんにならない程度ていどに造語ぞうご感かんのあるものにしましょう、ということです。

ただ、今回こんかいはすでに「レンタルなんもしない人ひと」で決きまっちゃっていて、それを変かえるというのも微妙びみょうな話はなし。
だとすれば、「レンタルなんもしない人ひと」をロゴ化かして公式こうしきロゴとして商標しょうひょう登録とうろくし、そのロゴの無断むだん使用しようを商標しょうひょう法ほうで禁止きんしし、そのロゴで本物ほんものと偽物にせものを識別しきべつするのが関せきの山やまかなぁと。

不ふ競きおい法ほうや民法みんぽうは？

じゃあ本物ほんもののレンタルさん以外いがいの人ひとが「レンタルなんもしない人ひと」を使つかう際さいに一切いっさいの注意ちゅういが必要ひつようないかと言いえばそうでもありません。

商標しょうひょう法ほう上じょうは上記じょうきの通とおりだけど、不ふ競きおい法ほう（不正ふせい競争きょうそう防止ぼうし法ほう）や民法みんぽう上じょうの責任せきにんが発生はっせいする可能かのう性せいもあります。

が、これは一言ひとこと「※ドラマになったレンタルさんとは別べつの人ひとです」と表示ひょうじしておけば万事ばんじ解決かいけつです。
「ドラマになったあのレンタルさんだ！」と騙だまして客きゃくを取とる行為こういに対たいしては、不ふ競きおい法ほうや民法みんぽうによる損害そんがい賠償ばいしょうの責任せきにんの他ほか、刑事けいじ罰ばつもあり得えるので絶対ぜったいにやめましょうね。

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