徳川とくがわ慶喜よしのぶによる議会ぎかい制せいの提案ていあん

日本にっぽんに憲法けんぽうの概念がいねんが生うまれたのは明治維新めいじいしん以後いごとされていますし、今いまでも多おおくの人ひとがそう考かんがえていることでしょう。

これまでの通説つうせつでは、国内こくないで国会こっかい開設かいせつ運動うんどうが高たかまった結果けっか、政府せいふも憲法けんぽう制定せいていを決定けっていし、大日本帝国だいにっぽんていこく憲法けんぽうの施行しこうによって、君主くんしゅを憲法けんぽうで制御せいぎょする立憲りっけん君主くんしゅ制せいが日本にっぽんでも誕生たんじょうしたことになっています。

しかし近年きんねんの学説がくせつでは、こうした流ながれは否定ひていされています。

明治維新めいじいしん以後いごどころか、幕末ばくまつ期き、江戸えど幕府ばくふではすでにそれに近ちかい政治せいじ体制たいせいが考案こうあんされていたのです。

今回こんかいは、江戸えど幕府ばくふが発案はつあんしていた立憲りっけん君主くんしゅ制せいと、幻まぼろしと消きえた「徳川とくがわ新しん政府せいふ」の政治せいじ構想こうそうについて見みていきましょう。

徳川とくがわ慶喜よしのぶは、自分じぶんが将軍しょうぐんに就任しゅうにんりた理由りゆうについて、後年こうねんこう述のべています。

「徳川とくがわ家康いえやすは日本にっぽんのために幕府ばくふを開ひらいたが、自分じぶんは日本にっぽんのために幕府ばくふを葬ほうむる任にんにあたるべきだと覚悟かくごを決きめた」

将軍しょうぐん在任ざいにん時じの徳川とくがわ慶喜よしのぶ（Wikipediaより）

もともと、慶喜よしのぶは幕まく藩はん体制たいせいの限界げんかいをよく理解りかいしており、時代じだいが明治めいじへと変かわる前まえから、新あたらしい政治せいじ体制たいせいへの移行いこうを模索もさくしていました。

ここで慶喜よしのぶが目指めざした新あたらしい政治せいじ体制たいせいの中核ちゅうかくが議会ぎかいの開設かいせつでした。実際じっさい、大政奉還たいせいほうかんの上表じょうひょう文ぶんにも「広こうク天下でんかノ公儀こうぎヲ尽つきクシ」という一文いちぶんがあり、これは幕府ばくふ消滅しょうめつ後ごの議会ぎかい開設かいせつを謳うたったものと解釈かいしゃくされています。

つまり徳川とくがわ幕府ばくふは、明治維新めいじいしん後ごに自由じゆう民権みんけん運動うんどうでようやく実現じつげんしたとされている議会ぎかい制せいの導入どうにゅうを、それよりもずっと以前いぜんから計画けいかくしていたことになります。

2ページ目め 西にし周あまねによる立憲りっけん君主くんしゅ制せいと「象徴しょうちょう」天皇てんのう制せい