「席せきで１人にん、家族かぞくの写真しゃしんを見みていた」灘なだ→東大とうだい→ハーバード卒そつ・史上しじょう最年少さいねんしょう市長しちょう　超ちょう内気うちきだった子こどもを変かえた「対等たいとうな子育こそだて」

　4月がつ23日にちに投開票とうかいひょうされた兵庫ひょうご県けんの芦屋あしや市長しちょう選せんで、市長しちょうとして史上しじょう最年少さいねんしょうの26歳さい2カ月かげつで当選とうせんを果はたした高島たかしま崚輔氏し。屈指くっしの難関なんかん校こうとして知しられる灘なだ中高なかだかから東大とうだいを経へてハはーバばード大どだい、さらには市長しちょうという挑戦ちょうせんも実みのらせた逸材いつざいはどう育そだったのだろう。

内気うちきだった子こども時代じだい

　普通ふつうのサラリーマン家庭かていで、男おとこ３兄弟きょうだい。家いえの中なかでおもちゃのバットで野球やきゅうごっこをして、叱しかられたこともあったという高島たかしま氏しだが、母はは（55）は「昔むかしは体からだが弱よわくて引ひっ込こみ事案じあんで、幼稚園ようちえんでも一人ひとり自分じぶんの席せきで家族かぞくの写真しゃしんをずっと見みているような子こどもでした 」と振ふり返かえる。そんな我わが子こに「なんとか自分じぶんに自信じしんを持もってほしい」と、母ははは、友達ともだちのお母かあさんに挨拶あいさつできた時とき、靴くつをちゃんと揃そろえられた時とき、友達ともだちの鞄かばんを持もってあげた時とき…どんな小ちいさなことでも見みつけ、褒ほめた。

　マジックのショーでアシスタントを求もとめられ、手てを挙あげたものの当あてられても前まえに出でることができず悔くやしそうにしていたこともあった。「どうしたら傷きずつけずに励はげませるだろう」。数日すうじつ間あいだ悩なやんで、かけた言葉ことばは「チャンスの神様かみさまには前髪まえがみしかないの。チャンスが来きたら、すぐにつかまないと、後うしろからはつかむことはできないんだよ」。高島たかしま氏しは言いう。「その時ときの母ははの言葉ことばで、変かわりたい、と思おもったんです」。少すこしずつ自分じぶんのしたいことが口くちにできるようになり、結果けっかにつながると嬉うれしくなって、また次つぎの挑戦ちょうせんをしようと思おもえるようになった。

「ぼくも」で始はじまった家族かぞく会議かいぎ→「お年玉としだま査定さてい」まで！？

　もう一ひとつの軸じくが、「子こどもを子こども扱あつかいしない」ことだ。きっかけは、次男じなんが生うまれる前まえに名前なまえを考かんがえていたときのこと。当時とうじ２歳さいの高島たかしま氏しが「ぼくも一緒いっしょに考かんがえる」と両親りょうしんの話はなし合あいに入はいってきた。そこで一人ひとり二ふたつずつ候補こうほを出だすことに。結局けっきょく、高島たかしま氏しが考かんがえた名前なまえに決きまったのだという。

　以来いらい、高島たかしま家かでは何なにか家族かぞくの重おも大事だいじがあるたび、「家族かぞく会議かいぎ」が開ひらかれるようになった。灘なだ中ちゅうを中学ちゅうがく受験じゅけんする時ときも、東大とうだいを受うけて米べいハはーバばード大どだいに挑戦ちょうせんする時ときも、決きめたのは高島たかしま氏しだったという。会議かいぎのポイントは決けっして提案ていあんを否定ひていしないこと。代かわりに「なぜしたいのか」「他たの選択肢せんたくしではだめなのか」「予算よさんは」「交通こうつう手段しゅだんは」など具体ぐたい的てきに質問しつもんする。まるで企業きぎょうのプレゼンだ。父ちちは静しずかに議事ぎじ録ろくを取とる。全員ぜんいんを説得せっとくできれば計画けいかくは承認しょうにんされるし、説得せっとくできなければ、また別べつのアプローチ方法ほうほうを考かんがえて再さい招集しょうしゅうする。

　次第しだいに、何なにかしたいことがある人ひとが家族かぞくに呼よびかけて会議かいぎを招集しょうしゅうするように。それは、子こどもの特権とっけん「お年玉としだま」にも及およぶ。元々もともと、野球やきゅう好すきで阪神はんしんファンという高島たかしま家か。毎まいオフに選手せんしゅたちの契約けいやく更改こうかいのニュースがスポーツ紙しを賑にぎわせるのを見みて、「うちも導入どうにゅうしよう」となったらしい。システムは、１年ねんの始はじめに目標もくひょうを立たて、年末ねんまつに達成たっせい度どを項目こうもく別べつに評価ひょうかする。未み達成たっせいなら減俸げんぽう。逆ぎゃくに目標もくひょうを超こえる成果せいかを出だしていたら大幅おおはばアップも期待きたいできる…かも？そこはそれぞれの交渉こうしょう力りょく次第しだいだ。

高島たかしま家か史上しじょう、最大さいだいの家族かぞく会議かいぎ

　そして今回こんかいの市長しちょう選せんをめぐる会議かいぎは、昨年さくねん夏なつに開ひらかれた。ハはーバばード大どだい卒業そつぎょう後ご、大量たいりょうのお菓子かしのお土産みやげを買かって家いえに帰かえってきた高島たかしま氏しが「今後こんごの進路しんろの話はなしがしたい」と切きり出だした。カナダ・ブリティッシュコロンビア大だいから帰宅きたくしていた次じ弟おとうとの崇たかし輔さんや、現役げんえき灘なだ高だか生せいの末弟ばってい・晟あきら輔さんも一緒いっしょに。夜よる11時じになり、日付ひづけが変かわり…、もう眠ねむくて終おわろうとしたら「まだお菓子かしが残のこってるし､お茶ちゃ飲のむ？」と終おわらない。そうしてようやく「市長しちょう選せんに出でようと思おもう」と打うち明あけた。

　真ま夜中よなかだが、まさに「青天せいてんのへきれき」だった。そこからは怒濤どとうの質問しつもん攻ぜめ。「なんで市長しちょうになりたいの？」「費用ひようはどうやって工面くめんするの」…。それでも高島たかしま氏しのビジョンと熱あつい気持きもちに、両親りょうしんも応援おうえんすると決きめた。時間じかんは午前ごぜん３時じ近ちかくになっていた。その後ご、高島たかしま氏しと二人ふたりの弟おとうとは朝あさまで寝ねないで選挙せんきょのプランを練ねっていたという。

　高島たかしま家か史上しじょう、最大さいだい・最長さいちょうの家族かぞく会議かいぎだった。

磨みがかれた「聞きく力ちから」と「対話たいわ力りょく」

　「小ちいさい頃ころから、『対等たいとうな存在そんざい』として見みてくれていると感かんじてきた。言いわれてするのは嫌いやだけれど、自分じぶんで考かんがえて選えらんだことなら楽たのしんで頑張がんばれるし、失敗しっぱいしても再さいチャレンジしようと思おもえる。もし意見いけんが対立たいりつしてもなぜそう考かんがえるのかしっかり聞きいて解決かいけつ策さくを探さぐりたい。自分じぶんでも、めっちゃポジティブだとは思おもいます（笑）」と高島たかしま氏し。家族かぞくそれぞれが自由じゆうで、お互たがいをリスペクトする。選挙せんきょ戦せんでも、高齢こうれい者しゃから子こどもまで寄よせられた意見いけんに一ひとつ一ひとつ真摯しんしにき入きいり、一緒いっしょに解決かいけつ策さくを探さぐろうとする姿勢しせいが共感きょうかんを呼よび、支持しじを広ひろげる要因よういんにもなった。

　否定ひていせずそばで励はげまし、とことん対等たいとうに。そんな高島たかしま家かには、20年ねん以上いじょうにわたる家族かぞく会議かいぎの議事ぎじ録ろくが、大切たいせつに保管ほかんされているのだという。