「子育てのために、マイホームを買おう」
家を購入するきっかけとして、子どもができたことや、子どもが成長してきたことをあげる方はたくさんいらっしゃいますね。子どもがのびのびと過ごせる空間や、子ども部屋を用意してあげたいとの思いから、マイホームを取得するケースは少なくありません。その一方で「子育て世帯だけれども、あえて子ども部屋は作らなかった」というご家族も実はじわじわ増えているようです。
今回は「家を購入するときに、個室としての子ども部屋を用意しなかった」という方にその理由を聞いてきました。
3LDKと2LDKで価格が全然違うから
経理事務職としてメーカーに時短勤務するAさん(関東在住、40代、事務職)一家は、営業として同じ会社にお勤めの夫、保育園に通う長女の三人家族です。
元々異動の少ない会社で、夫が責任ある立場に抜擢されたことをきっかけに、通勤に便利な場所でマイホーム探しをはじめたそうです。共働き&車ナシで便利に過ごせる場所を探して、マンションを中心に物件を見て回ったAさん家族ですが、折からのマンション価格高騰でイメージしていた価格帯では駅徒歩圏内に新築マンションを見つけるのはどうも現実的ではなさそう……。
中古マンションまで選択肢を拡げるか、駅から10分以内という条件を20分以内、もしくはバス乗車まで拡げるか…と悩んでいたAさん夫婦ですが、ある時不動産の営業担当から言われたこんな言葉で方針転換しました。
「お嬢さんおひとりですよね?3LDKから2LDKに条件替えて頂けたら、このマンションでご予算にピッタリです。ウチも娘なんですけど、小学生でまだ家族で寝てるんですよ。周りのお友達も結構そうみたいで。あと最近は机買わないお家も増えてます。使うかどうか分からない将来の個室確保よりも、ここからの10年、快適に過ごす方がよくないですか?」
確かに、今まで見てきたマンションをチェックしてみても、3LDKと2LDKでは「こんなに違うの!?」という価格差。
いざとなれば一つを子ども部屋にして、夫婦はリビング横の部屋で寝ればいい…。無理をしない価格帯の物件を購入して、今の生活を優先しよう!と決断、2LDKで問題なく暮らされています。
家で勉強なんてしないから、2段ベッドが置ければ十分
Bさん(関東在住、40代、主婦)一家が購入したのは、3階建ての分譲戸建て。昔から犬が飼いたくて一戸建てを探したそうですが、予算の都合で広い庭は断念。完全室内飼いの小型犬シーズーを2匹お迎えして、部屋の一室を「シーズー専用ルーム」にしました。
個室は1階に1室、3階に2室ありますが、「シーズー専用ルーム」のためにふたりの子どもたちそれぞれに個室は持てません。
「子どもたちもずっと犬が飼いたいと言っていて、お迎えするなら子ども部屋はふたりで一つになるけどいい?って聞いてたので、大丈夫です。上の子は中学生ですけど、今どき、塾に自習室があるから、勉強は家ではほとんどしませんし。2段ベッドが置ければそれでじゅうぶん。数年後には家を出るわけだし、子ども部屋が絶対必要とは思わなかったですね。その代わり、ベッドにカーテンが付けれるタイプを選びました。ひとりになりたい時ってありますよね!」
子ども自身も納得しての「個室なし」だそうです!
もしも子ども部屋がなければ
Cさん(関西在住、30代、パート)夫婦は現在注文住宅を建築中。建築士さんの提案で、家の中がスキップフロアやロフト、腰高の仕切りなどを活用し、家全体が緩やかにつながる大きなワンルームのようなデザインを取り入れました。
夫は「小さい頃はいいけれど、思春期になったら不満を言いそうだなあ」と心配しているものの、Cさんとしては「ベッドや収納の造作である程度視界を遮ることもできるし」と建築士さんのアイデアを推したそうです。
というのも、Cさんの兄がひきこもりで、今も実家の子ども部屋に閉じこもっているからだそうで……。
「兄は小学校でいじめに遭って、中学から不登校になりました。兄は悪くない、可哀そうにと両親はどんどん兄の部屋を快適にしていきました。部屋に冷蔵庫やテレビをつけてあげて、お手洗いもシャワーブースも2階にあって……。今でも私は『快適な個室がなければ兄はひきこもらなかったんじゃないか』って思ってます。早く自立して一人の部屋を持ちたいな、って思ってもらえる方がいいです」
将来「そんな心配いらなかったね」と笑い話になるといいのですが、身近だからこそ心配になるのかもしれませんね。