親世帯+子世帯+孫という「三世代世帯」は、2001年には1割程度ありましたが、2022年には3.8%と、減少の一途を辿っています。結婚の条件として「両親と別居する」ことを決めたという夫婦も少なくありません。しかし、「別居」とは具体的にどのような状態なのでしょう。細かい定義について、2人で話し合ったことはありますか?
Aさん(東海在住、30代、育休中)は義父母からの“ビッグプレゼント”で、夫婦間の「同居の定義」の違いが明らかになってしまい、とても悩んでいるそうです。
将来像は夫婦で合致していたはずだった
Aさんが夫と知り合ったきっかけは友人の紹介。お互いに「そろそろ結婚も視野に入れて、真剣に将来のことを考えられる人と出会いたい」と思ったタイミングでの紹介だったので、子どもは欲しいか、将来的にどんなところに住みたいか…といった「結婚の条件」について、ふたりとも早い段階でお互い意見を聞きあったそうです。
「生まれ育った県も同じで将来的にもこの地域で暮らしたい」「将来は子どもが欲しいと思っていて、夫も育休、自分は時短を使いながら、夫婦二人で家のことも子育てもしていきたい」「できれば庭のついた一戸建てで伸び伸び子どもを育て、家族で可愛がれるペットも迎えたい」…そんなAさんが思い描いていた理想的な「将来像」は、夫の思いと見事に合致。両家の顔合わせや結婚式でも大きく意見が分かれることなく、無事に結婚生活をスタートさせたはずでした。
それぞれの会社への通勤に便利な駅チカ1LDKを借り、そこに暮らして2年目には待望の第一子を妊娠したAさん。義理の実家とは、盆暮れや父母の誕生日に日帰りで遊びに行く程度でしたが、ある日父母から「孫にも関係するすごいプレゼントがあるから、ゆっくり遊びに来て」と声をかけられました。
ウチの土地を半分あげる…そこに家を建てなさいよ
義理実家は同じ市内でも少し郊外にあり、家庭菜園というには広めの畑と10台は停められる駐車スペースがある一戸建て。初めて見たときは「大きな家だなあ」とAさんは心底ビックリしたそうです。そして今回の訪問で、驚きの提案を受けることになりました。
「ウチは敷地が広いでしょう? 趣味で家庭菜園もやってきたけれど、もう満足しているし、駐車場もそんなにたくさん要らないし。それでね、ウチの土地をあなたたちに半分あげようと思うの。そこに家を建てなさいよ。最近、いろいろと物価も上がって、大変なんでしょう?」
ニコニコと話す義理父母に、まんざらでもなさそうな夫を見てさらにビックリ。なぜなら最初の結婚に向けての話の中で「同居は考えてないね」と言っていたからです。
「ウチの両親も同居していないし、もう亡くなった祖父母だって自分で判断できるうちに、って高齢者施設を探して家を売って自分で入居したくらいだから。お互いいい関係を保つためにも、同じ屋根の下では暮らさない方がいいって、母も言っていたよ」と語る夫に、Aさんは安心していたのでした。しかし、これは一大事です。
マンションの隣人と変わらなくない?…いやいやいや、違うだろ
帰宅して夫を問い詰めると、「いや、僕も今日初めて聞いた話だよ? …でも、一緒に建て直して同じ家に住むのと違うじゃない? 完全に別の家を建てて、僕たちは自分の好きな新築戸建てに住めるんだよ?」と夫は笑顔で、逆にAさんを諭す雰囲気です。
「もともと僕が実家に暮らしてた時も、干渉してくる親じゃなかったし、今マンションの隣に住んでいる人と変わらなくない? これって同居って言わなくない? 土地代かからないなら家にお金かけられるし、車も借りやすいよ?これから子育てするのに、急に病気になっても安心だよ…!?」と、なにやら前向きな様子です。
「いやいや、建物が別なら同居じゃない、なんてことある!?」…Aさんは納得できません。
同居はしないって言っていたのにどういうことなのか…この事態を友達や親に愚痴ってみたりもするのですが、意外にも「まあ確かに同居ではないよね」と言われてしまい、Aさんはますます落ち込んでいます。とりあえず「せっかく便利な駅チカの物件を借りているのだし、一人目の子どもが小学校に入る前までは今の賃貸で」と問題を先送りにしているそうです。
【参考】
▽厚生労働省/国民生活基礎調査の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/02.pdf