地震じしん後ご、避難ひなん所しょを離はなれようとしない中年ちゅうねん男性だんせい　閉鎖へいさ直前ちょくぜん、男性だんせいが発はっしたSOSとは【防災ぼうさいアドバイザーの体験たいけん談だん】

とある地域ちいきを襲おそった地震じしんの影響えいきょうで自宅じたくが半壊はんかいしてしまったため、Aさんは避難ひなん所しょへとやってきました。人命じんめいにかかわるような被害ひがいはなかったものの家屋かおくが被害ひがいにあった多おおくの人ひとが、Aさんと同おなじように避難ひなん所しょに身みを寄よせていました。避難ひなんしている人ひとたちは不安ふあんな表情ひょうじょうを浮うかべながらも、周囲しゅういとコミュニケーションをとりながら避難ひなん生活せいかつを送おくっています。

Aさんが避難ひなん所しょにいる人ひとたちを見渡みわたしたところ、あまり周囲しゅういとコミュニケーションを取とろうとしていない中年ちゅうねん男性だんせいBさんを見みつけます。Bさんは地震じしんの前まえから近所きんじょとは交流こうりゅうを持もたず、ほとんど自宅じたくから出でない生活せいかつを送おくっていました。避難ひなん所しょでは、一いち日にち中外ちゅうがいに出でようとせず、自宅じたくのようすを見みに行いく気配けはいもありません。配給はいきゅうされる食事しょくじを食たべては、自分じぶんのスペースでごろごろするばかりです。

Bさんの家いえは近所きんじょで有名ゆうめいなごみ屋敷やしきで、近所きんじょからクレームが届とどくような場所ばしょでした。行政ぎょうせいや支援しえん団体だんたいが何なんらかの形かたちでBさんを支援しえんしようとしていたのですが、Bさんは断固だんこ拒否きょひしていたのです。支援しえんを拒否きょひする姿勢しせいは避難ひなん所しょでも同おなじで、相談そうだん員いんがBさんの自宅じたくを見みに行いこうと声こえをかけても聞きく耳みみすら持もちませんでした。

時間じかんが経たつにつれて避難ひなんしていた人ひとたちも自宅じたくや親戚しんせきの家いえへと移うつっていき、避難ひなん所しょを利用りようする人ひとが少すくなくなってきたころ、避難ひなん所しょが閉所されることが発表はっぴょうされました。Bさんはその時ときになってようやく重おもい腰こしをあげ、自宅じたくへと帰かえろうとします。その時ときになって初はじめてBさんは、相談そうだん員いんに自宅じたくのことを相談そうだんするのでした。

避難ひなん所しょで実際じっさいにBさんのような人ひとを見みかけたという防災ぼうさいアドバイザーの佐さ村むら河内かわうちさんから、具体ぐたい的てきに話はなしを聞ききました。

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ーBさんのような人ひとが避難ひなん所しょにいる理由りゆうは何なにでしょうか。

私わたしが見みかけた人ひとは、Bさんのようにもともとごみ屋敷やしきに住すんでいる人ひとでした。普段ふだんから近隣きんりん住民じゅうみんから匂においがしたり、危険きけんじゃないかと思おもわれたりしており、何なにかしら支援しえんが必要ひつようなのではと声こえがあがっていたそうです。それでも本人ほんにんは何なにの問題もんだいもないと思おもっており、家いえに入はいられたくないという理由りゆうで支援しえんを断たっていました。

地震じしんの影響えいきょうで家いえの中なかのごみが崩くずれてしまい、その人ひとの家いえは片付かたづけない限かぎり住すめなくなっていました。自分じぶんひとりでは片付かたづけられないにもかかわらず、支援しえんも受うけたくないと思おもっており、それであれば食事しょくじも配給はいきゅうされる避難ひなん所しょで生活せいかつしようということだったようです。

ーごみが散乱さんらんしたとはいえ、自宅じたくに帰かえろうとしないのはなぜなのでしょうか

自宅じたくに帰かえるとごみでめちゃくちゃになった部屋へやと向むき合あわなければなりません。それよりも避難ひなん所しょにいたほうが、食事しょくじも提供ていきょうされ自分じぶんのスペースも確保かくほされます。彼かれにとっては自宅じたくを片付かたづけるより、避難ひなん所しょにいた方ほうが安心あんしんだったのかもしれません。

ー避難ひなん所しょが閉所されたあと、その人ひとはどうされたのですか。

避難ひなん所しょが閉所されることになり、その人ひとも自宅じたくに帰かえらないといけなくなりました。そこで初はじめてその方ほうは福祉ふくしの手助てだすけを受うけ入いれる道みちを選えらばれました。地震じしんの前まえは社会しゃかい福祉ふくし協議きょうぎ会かいや地域ちいき包括ほうかつ支援しえんセンターなどの支援しえんを拒否きょひしていた人ひとだったので、支援しえんする側がわとしてもつながることができて胸むねをなでおろしたそうです。

本人ほんにんが拒否きょひしていては、どうしても支援しえんの手ては届とどきません。地震じしんという災害さいがいがきっかけではありましたが、支援しえんの手てが届とどいたという点てんでは、Bさんのこれからの人生じんせいに変化へんかをもたらすのではないでしょうか。

◆佐さ村むら河内かわち　力ちから（さむらこうち・つとむ）／防災ぼうさいアドバイザー　大学だいがく卒業そつぎょう後ご、社会しゃかい福祉ふくし協議きょうぎ会かいに勤務きんむ、総務そうむ、地域ちいき支援しえん担当たんとうなど経験けいけん。大阪おおさか北部ほくぶ地震じしん（2018年ねん）の際さいには、災害さいがいボラセン責任せきにん者しゃとして前線ぜんせんで指揮しきをとる。現在げんざいは、独立どくりつし、北きたおおさか社会しゃかい福祉ふくし士し事務所じむしょを開所かいしょ。防災ぼうさいのアドバイザー、福祉ふくし系けいのコンサルなどに携たずさわり、今いまも災害さいがい支援しえんを行おこなう。