持続じぞく可能かのうな日本にっぽんへ、経済けいざい成長せいちょう神話しんわから転換てんかんを　広井ひろい良典よしのり・京大きょうだい教授きょうじゅ

　格差かくさ社会しゃかい化かが叫さけばれて久ひさしい。若年じゃくねん層そうの不安定ふあんていな雇用こようや生活せいかつが少子化しょうしかや人口じんこう減少げんしょうに追おい打うちをかける一方いっぽう、財政ざいせい赤字あかじは拡大かくだいし、膨大ぼうだいな借金しゃっきんは将来しょうらい世代せだいへつけを回まわすことになる。持続じぞく可能かのうな社会しゃかいのあり方かたを研究けんきゅうしてきた広井ひろい良典よしのり京都大きょうとだい教授きょうじゅに、求もとめられる日本にっぽんの将来しょうらい像ぞうと政治せいじが今いまなすべきこと、衆院しゅういん選せんで問とわれるべきことを聞きいた。【鈴木すずき英生ひでお】

　――日本にっぽん社会しゃかいの目指めざすべき将来しょうらい像ぞうと、その実現じつげんのために政治せいじがすべきことはなんでしょうか？

　◆経済けいざい成長せいちょうがあらゆる問題もんだいを解決かいけつするという昭和しょうわ的てきな発想はっそうから脱却だっきゃくし、持続じぞく可能かのうな福祉ふくし社会しゃかいへと転換てんかんすべきです。その筋道すじみちをつけることが、政治せいじに求もとめられます。大前提だいぜんていとして、まずは1200兆ちょう円えんを突破とっぱした国くにの借金しゃっきんをなんとかしなければなりません。

　私わたしは、京都大きょうとだいに設置せっちされた日立ひたち京大きょうだいラボとの共同きょうどう研究けんきゅうとして、AI（人工じんこう知能ちのう）を用もちいて2050年ねんの日本にっぽんがどうしたら持続じぞく可能かのうかをシミュレーションし、その結果けっかを17年ねんに発表はっぴょうしました。人口じんこうや高齢こうれい化か、エネルギーや環境かんきょうなどの要素ようそを基もとに作つくった約やく2万まん通とおりのシナリオを分析ぶんせきした結果けっか、日本にっぽん社会しゃかいの未来みらいにとって、東京とうきょう一いち極きょく集中しゅうちゅうに象徴しょうちょうされるような都市とし集中しゅうちゅう型がたか、地方ちほう分散ぶんさん型がたかという選択せんたくがもっとも本質ほんしつ的てきで、後戻あともどりできなくなる分岐ぶんき点てんは25年ねんから27年ねんごろに起おきるという結果けっかが出でました。前者ぜんしゃは、一見いっけん効率こうりつ的てきだが格差かくさが拡大かくだいし人口じんこう減少げんしょうがさらに進すすんでいく社会しゃかい、後者こうしゃは持続じぞく可能かのうな福祉ふくし社会しゃかい、私わたしの言葉ことばで「定常ていじょう型がた社会しゃかい」に親和しんわ性せいが高たかいと言いえます。

　AIが新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいを予言よげんしたとまでは思おもいませんが、今回こんかいのコロナ禍かはこうした分岐ぶんき点てんと関連かんれんする面めんが大おおきいのではないでしょうか。東京とうきょうなど大都市だいとし圏けんで感染かんせんが拡大かくだいして、都市とし集中しゅうちゅう型がた社会しゃかいの弱よわさを見みせつけました。リモートワークの普及ふきゅうだけでなく、地方ちほうや郊外こうがいへの移住いじゅうの動うごきも一部いちぶで出でてきました。今年ことしは東京とうきょう五輪ごりんが開催かいさいされ、25年ねんには大阪おおさか・関西かんさい万博ばんぱくが開ひらかれます。大だい規模きぼイベントや金融きんゆう緩和かんわなどでカンフル剤ざいを打うち続つづけてきたつけが、今後こんご噴ふき出でるのかもしれません。

　平成へいせいの失うしなわれた30年ねんは、昭和しょうわの成功せいこう体験たいけんにしがみつく世代せだいが、がむしゃらな経済けいざい成長せいちょうがまだ可能かのうだと思おもい込こんできた結果けっかです。安倍晋三あべしんぞう元もと首相しゅしょうが…