大地震の直前、ある「異常」がはるか上空で観測されていたという複数の報告がある。京都大の研究チームは、この異常が起こる物理的なメカニズムを解明したと発表した。ただ、慎重な見方をする地震学者も多い。地震予知につながる可能性はあるのか。
この異常は、上空約60~1000キロにわたって広がる「電離圏」と呼ばれる領域で観測されてきた。太陽からの強い紫外線で大気中に含まれる窒素や酸素の原子が電離して、電子やイオンが多く存在しており、特に上空300キロ程度で電子の密度が高くなる。
京都大の梅野健教授(通信工学)によると、東日本大震災(2011年)や熊本地震(16年)、今年1月の能登半島地震など、規模の大きな地震が起きる40分から1時間ほど前に、この電離圏に含まれる電子の密度に変化が生じる現象が見られてきたという。北海道大の研究チームも、いずれも大津波をもたらしたスマトラ沖地震(04年)、チリ地震(10年)などで、直前に震源域付近上空の電離圏に含まれる電子の密度が相対的に高くなっていたと11年に報告している。
異常が起こるメカニズムを提唱
電離圏の電子数は、国土地理院が全国約1300カ所に設置しているGNSS(全球測位衛星システム)観測網を活用することでリアルタイムに把握できる。測位衛星から受信局に送信された電波は電離圏を通過する際にわずかに遅延を起こすため、その差を利用して電離圏内の電子の密度を測定する仕組みだ。
ただ、なぜそうした異常が起きるのかは分かっていなかった。そこで梅野教授らのチームは…