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25年後のアフリカ:モロッコはアフリカではないのか? 大陸の中に入り組んだ差別 | 毎日新聞

連載れんさい

25ねんのアフリカ ~藤原ふじわら章生あきお

かつて特派とくはいんとしてらした記者きしゃが25ねんのアフリカにタイムスリップし、うつくしい大陸たいりく日本にっぽんかんがえる「私的してきノンフィクション」です。

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25ねんのアフリカ ~藤原ふじわら章生あきお

モロッコはアフリカではないのか? 大陸たいりくなかんだ差別さべつ

広々とした大理石張りのモロッコのカサブランカ駅。出口を間違えると戻るのが大変=2023年11月15日、藤原章生撮影
広々ひろびろとした大理石だいりせきりのモロッコのカサブランカえき出口でぐち間違まちがえるともどるのが大変たいへん=2023ねん11月15にち藤原ふじわら章生あきお撮影さつえい

 モロッコはわたしにとってはじめての「アフリカ」だった。27さい正月しょうがつけ、日本にっぽん商社しょうしゃカナリア諸島かなりあしょとう駐在ちゅうざいだった友人ゆうじんたく居候いそうろうしながら、わたしはスペイン学校がっこうかよっていた。ある、その友人ゆうじんが「モロッコまですごくやすけるぞ」といだし、わたしたちはかれやすみにわせ2はく3にちのマラケシュ旅行りょこうをした。

3まよわず「ヨハネスブルク!」

 あさのフライトでうみわたると、サハラ砂漠さはらさばくえた。ひかり加減かげんか、地平線ちへいせん黄色きいろというよりあかえた。そこにそら群青ぐんじょうがかぶさり蜃気楼しんきろう(しんきろう)のようだった。「あっちがマリかな」とみなみながら、きな音色ねいろ国名こくめいおもいつくと、あこがれがぐっといてきた。7ねんにアフリカにむとはゆめにもおもっていなかった。

 どうしてだろう。アフリカには魔力まりょくてきひびきがある。サハラも、ヒマラヤもそうだ。アマゾンも開高かいこうけんりにったころまでそうだったが、米国べいこくのネット通販つうはん大手おおて社名しゃめいにしたせいで、価値かち一気いっきちた。デンマークの作家さっか、カレン・ブリクセンの小説しょうせつ「アウト・オブ・アフリカ」は「かつてわたしはアフリカに農場のうじょうっていた」という言葉ことばはじまる。映画えいがではメリル・ストリープが「アーッフリカ」とかたっていた。もの魔術まじゅつをかけるような声色こわいろで。

 そのモロッコきのすこまえ鹿児島かごしまけん北部ほくぶ菱刈ひしかり鉱山こうざんはたらいていたころ、地元じもと山岳さんがくかいのクライミング仲間なかまに、ケニアにくという小学校しょうがっこう先生せんせいがいた。5さいじょうのカッコいいじんだった。26さいわたしはそれだけでそのひととそのつまにひかれ、サバンナの青空あおぞら教室きょうしつきょうべんをとる姿すがたおもい、むねくるしくなるような気分きぶんになった。あとからおもえば、そのひとはナイロビの日本人にっぽんじん学校がっこうに2ねん任期にんき赴任ふにんし、大使館たいしかん商社しょうしゃ子供こどもおしえる教員きょういんだとわかるのだが、赤土あかつち大地だいち黒板こくばんき、アフリカの子供こどもりゅうちょうな英語えいご算数さんすうおしえる姿すがたひと合点がてん妄想もうそうしたのだ。

 だからだろうか、33さいなつ毎日新聞まいにちしんぶん長野ながのけん信濃大町しなのおおまち駐在ちゅうざいから国際こくさい報道ほうどうあつか外信がいしんうつっていたわたしは、「きみ、シドニー、ニューデリー、ヨハネスブルク、みっつのうちどこがいい」とかれ、まよわず「ヨハネスブルク!」とこたえていた。スペイン独学どくがく勉強べんきょうしていたためメキシコを希望きぼうしていたが、先輩せんぱい記者きしゃ赴任ふにんまっていた。おしゃれなスーツ姿すがた香水こうすいのいいにおいがした部長ぶちょうは、小汚こぎたな別室べっしつわたしびつけると、ぶっきらぼうに3をいいわたした。

 即答そくとうしたわたしに「きみ、いまこたえなくてもいいよ。おくさんとよく相談そうだんしてこいよ」とわれ、それもそうだとおもったわたしはそのばんおないをつまげた。彼女かのじょ即座そくざに「ヨハネスブルク」とおうじ、「本当ほんとう? アフリカ? すごいね」とよろこんだ。

 そういうものだろう。だれだって…

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