<Ray A. Smith/2024年7月18日>
米国人は2~3年前に比べると仕事に対して落ち着きを取り戻している。
新型コロナウイルス下で転職ラッシュが起きた「大退職時代」に比べ、自発的離職を考える米国の成人が減っていることが、数多くの調査で分かっている。また、仕事への満足度が高まっていることを示すデータもある。労働者へのインタビューでは、以前は転職を繰り返していた人々が、現在のポジションで生活のバランスが取れていることに満足していると答えた。
一方、政府統計によると、転職しようとした場合は、労働需給の逼迫(ひっぱく)や転職による昇給幅の縮小という現実に直面する。
「いま求人に応募しても無駄骨を折るだけだ」。ロサンゼルスの企業でソーシャル戦略とコピーライティングの責任者を務めるヘザー・サンデルさん(39)は言う。
現在のムードは、雇用情勢の過熱を背景に米国人が大量に離職したここ数年の傾向から大きく転換している。
あまりにも状況が一変したため、職場にとどまり続ける新たな傾向を「ビッグ・ステイ」と名付ける労働経済学者もいる。
サンデルさんは転職活動に1年余りを費やし、昨年10月に現在の職に就く前に、たった1度しか面接していないという。彼女は現在の会社も同僚も気に入っている。気のめいるオンライン応募手続きを再び経験したいとは思わないと話す。そうした手続きでは、大量の履歴書の中から人工知能(AI)やソフトウエアが優秀なものを選び出すことが多い。
2人の子を持つ母親であり、組織心理学の博士課程に通う大学院生でもあるサンデルさんは、今ほど柔軟で仲間意識の強い職場環境を見つけるのは難しい…
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