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• 水島みずしま新司しんじの読よみ切きり作品さくひんが心しんに沁しみる - ONE-SHOT COMICS TO THE HEART -

先日せんじつ、部屋へやの整理せいりをしていたところ、水島みずしま新司しんじの短たん編集へんしゅうが出でてきました。

（小学館しょうがくかん　少年しょうねんサンデーコミックス　「野球やきゅうどアホウ伝でん」全ぜん5巻かん）

　「野球やきゅうどアホウ伝でん」というタイトルですが、シリーズものではなく、掲載けいさい誌しも年代ねんだいも異ことなる様々さまざまな作品さくひんが収録しゅうろくされています（サブタイトルは“⚾水島みずしま新司しんじ傑作けっさくまんが選せん⚾”）。つまり、高橋たかはし留美子るみこの「るーみっくわーるど」と同おなじタイプの単行本たんこうぼんです。

　小学館しょうがくかんから「少年しょうねんサンデーコミックス」レーベルとして全ぜん5巻かん、のちにデラックス版ばん（「スーパー・ビジュアル・コミックス」レーベル）として全ぜん3巻かんで刊行かんこうされています。

　収録しゅうろくされている作品さくひんは以下いかのとおりです。

（順番じゅんばんは「少年しょうねんサンデーコミックス」版ばんに準拠じゅんきょ）

• 出刃でばとバット
• パンダ球団きゅうだん
• 幻まぼろし球だま秘話ひわ
• 酔よいどれ90番ばん
• 少年しょうねん甲子園こうしえん
• 赤あかいプロテクター
• スマイル五ご郎ろう
• 野球やきゅうどアホウ
• ルーキー30
• ああ球たま魂たましい
• 怪物かいぶつ誕生たんじょう!
• 江川えがわ投手とうしゅとおれ
• ほえろ若わかトラ
• ガラスのシンデレラ
• 水島みずしま新司しんじ伝でん

　スピンオフ作品さくひんあり、水島みずしま新司しんじの構成こうせいを基もとにアシスタントが作画さくがを務つとめた作品さくひんあり、果はては影かげ丸まる譲ゆずる也の手てによる、漫画まんが家か・水島みずしま新司しんじとの回想かいそう録ろくあり、とバラエティに富とんだ作品さくひん群ぐんですが、この中なかで筆者ひっしゃの心しんにいちばん沁しみ入はいるのが「出刃でばとバット」です。

　小学館しょうがくかん漫画まんが賞しょうを受賞じゅしょうしたこの作品さくひんは、野球やきゅう好すきの主人公しゅじんこうが、家業かぎょうを継つぐために高校こうこう進学しんがくを断念だんねんし野球やきゅうを諦あきらめるところから話はなしが始はじまる、という、まさに作者さくしゃの生おい立たちを彷彿ほうふつとさせるものです。ネタバレになるので詳細しょうさいは書かきませんが、この時期じきの水島みずしま新司しんじ作品さくひんに色濃いろこく表あらわれる、ある種しゅ“浪花節なにわぶし”的てきなストーリー展開てんかいにグッとくるのです。

　水島みずしま新司しんじといえば、「ドカベン」や「男おとこどアホウ甲子園こうしえん」といった、長編ちょうへん連載れんさいもので人気にんきを博はくしてきましたが、個人こじん的てきには、こと“ストーリーテリング”という視点してんに立たってみると、短編たんぺん／読よみ切きりの作品さくひんにその才能さいのうが凝縮ぎょうしゅくされているような気きがしてなりません。たとえ主人公しゅじんこうが挫折ざせつしたとしても、その中なかにはペーソスも希望きぼうもあり、それらを読よみ切きりというフォーマットでコンパクトに描えがき切きるのがとても小気味こきみよいのです。

　「出刃でばとバット」以外いがいでも、正せい捕手ほしゅの座ざを巡めぐる争あらそいから波乱はらんの展開てんかいを見みせる「赤あかいプロテクター」、飄々ひょうひょうとした風貌ふうぼうから、訳わけありの“魔球まきゅう”を繰くり出だす「スマイル五ご郎ろう」、主人公しゅじんこうも監督かんとくもとにかく熱あつい「野球やきゅうどアホウ」など、魅力みりょく的てきな作品さくひんが目白押めじろおしです。

　ただ、残念ざんねんながら、現在げんざい「野球やきゅうどアホウ伝でん」は絶版ぜっぱんなので、古本ふるほんで入手にゅうしゅするか、あるいは図書館としょかんや漫画まんが喫茶きっさで読よむか、ということになってしまいます。

　「出刃でばとバット」に関かんしては、翔しょう泳およげ社しゃからも「名作めいさくMANGA選集せんしゅう」として刊行かんこうされていたので、他たの作品さくひんより比較的ひかくてきチャンスは多おおいかもしれません。

　ちなみに、「ルーキー30」は、初出しょしゅつ時じと単行たんこう本ほん掲載けいさい時じでは、セリフの中身なかみが違ちがっています。

（『ビッグコミックオリジナル号ごう』1972年ねん10月がつ20日にち号ごうより）

（少年しょうねんサンデーコミックス　「野球やきゅうどアホウ伝でん」3巻かん125ページ）

　おそらく、青年せいねん誌しでは問題もんだいがなくても、“少年しょうねん”サンデーコミックスに収録しゅうろくするにはきわどいだろうという忖度そんたくが働はたらいたのかもしれません。

（単行本たんこうぼんの掲載けいさい情報じょうほうには『ビッグコミック』とありますが、厳密げんみつには、増刊ぞうかん号ごうの『ビッグコミックオリジナル号ごう』です）

　他たの作品さくひんまでは調査ちょうさしきれていませんが、ここまでくると、奥深おくふかいというか抜ぬけ出だせないおそれがあるので、ほどほどにしておかないとえらいことになりそうです。

　もしもあなたが、「ドカベン」プロ野球やきゅう編へん以前いぜんの水島みずしま新司しんじ作品さくひんに接せっしていないのならば、たとえ古本屋ふるほんや巡めぐりをしてでも、紹介しょうかいした作品さくひんをぜひとも読よんでいただきたい。それほどの素晴すばらしさが水島みずしま新司しんじの読よみ切きりには詰つまっているのです。

（ホントは、野球やきゅう漫画まんがを描えがく以前いぜんの、よりディープな水島みずしま新司しんじワールドもあるのですが、それはまた別べつの話はなし…）

（文中ぶんちゅう敬称けいしょう略りゃく）