映画えいが主題歌しゅだいか、CMきょく展覧てんらんかいのBGMなど、様々さまざま楽曲がっきょくまった表情ひょうじょうゆたかな作品さくひんしゅう

 映画えいが、ドラマ、CMなど、幅広はばひろ分野ぶんや活躍かつやくするシンガー・ソングライター/作曲さっきょく、コトリンゴ。その幅広はばひろさを一望いちぼうできるコンピレーション・アルバム『小鳥ことりひゃくけい Kotringo Works』がとどけられた。彼女かのじょがこれまで依頼いらいけて提供ていきょうした楽曲がっきょくあつめたほんさくくと、その多彩たさい仕事しごとぶりにおどろかされる。こうした〈そと仕事しごと〉は依頼いらいぬしのイメージがさい優先ゆうせん。CMは1ふん前後ぜんこうきょくおおく、オリジナル作品さくひんとは勝手かってちがうが、彼女かのじょってはやりがいがある仕事しごとだという。

 「なにもないところからつくるより、〈こんなかんじのものを〉ってわれたり、まった分数ぶんすうつくほうえるんですよね(笑)。みちしるべがあるほうつくりやすいというか。つくったものになおしをれられることもあるんですけど、最近さいきんはそういうこともふくめてたのしんでつくれるようになりました」

コトリンゴ 小鳥ことりひゃくけい Kotringo Works』 コロムビア(2023)

 収録しゅうろくきょくのなかでもっとられているのは、劇場げきじょうアニメ「この世界せかい片隅かたすみで」の主題歌しゅだいかかなしくてやりきれない”だろう。彼女かのじょのカヴァー・アルバム『picnic album 1』に収録しゅうろくされたきょくって、かたふち須直監督かんとくからクラウドファンディングようのティザーに使つかいたいともうがあったという。

 「でも、そのヴァージョンははげしいギターがはいっていたりして映画えいがわないとおもったんです。それでオーケストラ・サウンドでろくなおしたい、と監督かんとく提案ていあんしました。ヴォーカルは自宅じたくで、普通ふつううたには使つかわない特殊とくしゅなマイクを使つかってろくったんです。あたたかいおとろくれるマイクなのでうた使つかったらどうかな?とおもって」

 映画えいが主題歌しゅだいかくのは“楽園らくえんをふたりで”だ。作詞さくし坂本さかもと慎太郎しんたろう作曲さっきょく/コトリンゴというユニークなわせで、ハナレグミとデュエットしたこのきょくは、坂本さかもと龍一りゅういちとの共同きょうどうプロデュースでつくられた。

 「この映画えいがのサントラは教授きょうじゅつくられていたので、一番いちばん最初さいしょのデモを提出ていしゅつしたのちこまかくアドバイスをいただいて、教授きょうじゅ相談そうだんしながらつくっていきました。坂本さかもと慎太郎しんたろうさんは教授きょうじゅからの推薦すいせんで、男性だんせいヴォーカルをれるというのも教授きょうじゅ提案ていあんでした。ハナレグミさんのお名前なまえわたしからですね。教授きょうじゅわたしにとって先生せんせいみたいな存在そんざいでした」

 また、ほんさくにはCMきょく数多かずおお収録しゅうろくされているのもうれしいところ。様々さまざまなミュージシャンがアレンジを手掛てがけてきた“My Favorite Things”のカヴァー(JR東海とうかい)をはじめ、鉄道てつどう会社かいしゃのCMがおおいのが面白おもしろいが、広島電鉄ひろしまでんてつのアプリよう提供ていきょうした“あなたがそこでりるなら”には地元じもと風景ふうけい歌詞かしえがきこまれていてローカルしょくているのもたのしい。

 「このきょくつくったときはパンデミックちゅうだったので、ひろでんりにけなかったんです。だから広島ひろしまいに電話でんわしたり、地図ちずたりして風景ふうけいおもかべながら歌詞かしきました。広島ひろしまかないとけないきょくなので、アルバムにれられてよかったです」

 収録しゅうろくきょくのなかでめずらしいのが、ムーミンてん会場かいじょうのBGMとして制作せいさくされた“彼女かのじょ世界せかい仲間なかまたち~THE ART AND THE STORY~”だ。最初さいしょにタイプライターのおとこえて、そこに次第しだいおとかさなっていくアレンジは、トーベ・ヤンソンが部屋へやなかでムーミンの世界せかいしていく様子ようす音楽おんがく表現ひょうげんしてみたとか。「会場かいじょうのおきゃくさんがムーミンだににいるような気持きもちになってくれたらいいなとおもって」と彼女かのじょ微笑ほほえんだ。

 おもえばほんさくおさめられたきょくも、コトリンゴの部屋へやなかからまれた物語ものがたりきょくかれた時期じき目的もくてきちがうのに統一とういつかんかんじさせるのは、色彩しきさいゆたかなオーケストレーションやあたたかなメロディ、イノセントな歌声うたごえなど、コトリンゴの作家さっかせいそと仕事しごとでもしっかりといきづいているからだろう。

 そんなか、ちょっと異色いしょくなのが、パンデミックちゅうにライヴハウス支援しえんプロジェクトのためにろした“DOOR”。このきょく演奏えんそうやプログラミングは、すべて彼女かのじょ手掛てがけてたくろくされた。「インストでもいいですよ、とわれたんですけど、言葉ことばせたくなって」いた歌詞かしで、彼女かのじょは「ドアがひらいたら あなたにいにこう」とうたう。その親密しんみつ歌声うたごえ彼女かのじょ素顔すがお垣間見かいまみえたがしたが、ほんさくでは様々さまざま表情ひょうじょうのコトリンゴのうた出会であえるだろう。

 


コトリンゴ(kotringo)
音楽家おんがくか。5さいからピアノをはじめる。バークリー音楽おんがく大学だいがく留学りゅうがくし、ジャズ作曲さっきょく、パフォーマンス専攻せんこう坂本さかもと龍一りゅういち才能さいのういだされ、commmonsから2006ねんにデビュー現在げんざい映画えいが、ドラマ、アニメのサウンドトラックや、CMなどをがけ、演奏えんそうのみならずオーケストラアレンジの表現ひょうげんふかめ、音楽家おんがくかとしてたか評価ひょうかけている。また、近年きんねんはナレーションなど、こえでの表現ひょうげんはばひろげている。