東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいに被災ひさいし、今いまでもたまにあの時ときのことが今いま起おきているかのような、フラッシュバックに悩なやまされることがある。

まず、震度しんど6超こえの横よこ揺ゆれの地震じしんそのものも恐おそろしかった。当時とうじ小学しょうがく6年生ねんせいで、道徳どうとくの授業じゅぎょうで阪神はんしん淡路あわじ大震災だいしんさいのことを学まなんだけれど、まさか自分じぶんも大おおきな地震じしんに遭遇そうぐうするなんて思おもってもみなかった。

3.11当日とうじつはインフルエンザで姉あね弟おとうと揃そろって熱ねつを出だし、自宅じたくで寝込ねこんでいた。父親ちちおや以外いがいの家族かぞく3人にん、親戚しんせき2人にんで洋画ようがを観みながらリビングで過すごしていたところ、あの巨大きょだいな揺ゆれが襲おそってきた。

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とりあえずダイニングテーブルの下したに避難ひなんしようと思おもったのも束つかの間ま、家いえの中なかのモノというモノがバッタンバッタン倒たおれてくる。携帯けいたい電話でんわからはあの想像そうぞうするだけで不快ふかいな不協和音ふきょうわおんがひっきりなしに流ながれていた。
全員ぜんいんで家いえの前まえにある誰だれかの畑はたけに避難ひなんする。飼かい犬いぬのロングコートチワワを誰だれも連つれて行いこうとしないから、私わたしが身みを挺ていして抱だっこして連つれて行いった。その間あいだ手しゅを噛かまれまくったが、死しなせるよりマシだと思おもった。
畑はたけにいる間あいだも何なん度ども地面じめんが割われるんじゃないかというほどの揺ゆれが起おこったが、犬いぬに対たいして誰だれも関心かんしんがなかったのがむごくて怖こわがっているどころじゃなかった。

それから近ちかくの公共こうきょう施設しせつの駐車ちゅうしゃ場じょうに車くるまを停とめて過すごしていると、誰だれかに福祉ふくし施設しせつが避難ひなん所しょになっているということを教おしえてもらったのか移動いどうした。そこで確たしか父親ちちおやと合流ごうりゅうしたような気きがする。
2、3泊はくしただろうか。ドラッグストアで仕入しいれてきた塩しおのせんべいを停電ていでんで真まっ暗くらな中なかみんなで食たべたのは、数少かずすくない心温こころあたたまる思おもい出でである。いつもよりも味あじが濃こく感かんじられて、食たべ物もののありがたみが分わかった。

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そんな中なか関東かんとう南部なんぶに住すむ親戚しんせきから電話でんわがかかってきて、「こっちに来きたら？」と言いってくれたので、ところどころ道路どうろが割われたり陥没かんぼつしている中なか父親ちちおやが車くるまを走はしらせ避難ひなんした。
着つくとそっちは別世界べっせかいのようで、電気でんきは通かよっているし水道すいどうも通かよっている。テレビを観みると津波つなみや崩壊ほうかいした建造けんぞう物ぶつの映像えいぞうがずっと流ながれていた。観光かんこうで足あしを運はこんだことのある町まちの変かわり果はてた様子ようすや被災ひさい者しゃの姿すがたを見みて、心しんが痛いたんだ。

母親ははおやの携帯けいたい電話でんわには、知しり合あいからチェーンメールがたくさん届とどいていた。私わたしはその頃ころからデジタル依存いぞんだったので母親ははおやの携帯けいたいをよく見みていたのだが、子供こどもながらに「これは嘘うそだ」と真実しんじつを見抜みぬくようにしてそのメールを読よんでいた。放射能ほうしゃのうの雨あめが降ふるとか、もう今いまの場所ばしょに住すめなくなるとかそんな内容ないようだったと思おもう。
「え、あの人ひとがこんなこと送おくってくるの？」と思おもった。それで人間にんげんという存在そんざいの恐おそろしさとリテラシーの大切たいせつさを知しったのだった。
1週間しゅうかんほど滞在たいざいさせてもらい故郷こきょうに帰かえると、家いえの中なかは散乱さんらんし買かったばかりのテレビ画面がめんも無惨むざんにも割われていた。

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今いまとなっては自分じぶんの命いのちをぞんざいに扱あつかうことも多おおいけれど、「今日きょうという日ひを生いきたくても生いきられなかった人ひとがいる」という言葉ことばをいつかどこかで聞きいて、その通とおりだと思おもった。
自然しぜん災害さいがいも人災じんさいも、ある日ひ突然とつぜん私わたしたちの身みに降ふりかかってくる。
防災ぼうさい意識いしきを高たかめることはもちろん大事だいじだが巨大きょだいな災害さいがいは防ふせぎようがなく、どうすることもできない。

震災しんさい後ご3年ねんほど経たち、仙台せんだいに住すむ祖父母そふぼに震災しんさい遺構いこう小学校しょうがっこうに連つれていってもらったことがある。ランドセルや学習がくしゅう机つくえなどが泥どろだらけになって置おかれていた。当時とうじのまま時じが過すぎているようで、自分じぶんと同どう学年がくねんや年下とししたの子こ達たちが犠牲ぎせいになったのだという現実げんじつをまざまざと感かんじた。
当時とうじよく使用しようされていた「絆きずな」という言葉ことばの重厚じゅうこうさと軽薄けいはくさを、両方りょうほう感かんじてしまった。私わたしにはどちらかなんて到底とうてい決きめられなかった。

14年ねん前まえは助たすけ合あいというより、被災ひさい者しゃとして助たすけられることの方ほうが多おおい立場たちばだった。これからもしあのような災害さいがいがまた身近みぢかで起おこったら、微力びりょくであっても何なにか人助ひとだすけになるような行動こうどうをしようと思おもう。募金ぼきんも僅わずかではあるが、継続けいぞくするつもりでいる。