デビューから貫つらぬいてきた真摯しんしな姿勢しせいで役やくと向むき合あう佐藤さとう健けん。『竜りゅうとそばかすの姫ひめ』は「人間にんげんの生理せいりに直接ちょくせつ訴うったえかけてくる作品さくひん」

7月がつ16日にちに公開こうかいされ、公開こうかい3日間にちかんで動員どういん数すう60万まん人にん、8.9億おく円えんを超こえるロケットスタートを切きった細田ほそだ守まもる監督かんとく『竜りゅうとそばかすの姫ひめ』。細田ほそだ監督かんとくいわく「ものすごい表現ひょうげん力りょくが必要ひつような役やく」という竜りゅう役やくを託たくされたのが佐藤さとう健けんだ。公開こうかい初日しょにちに佐藤さとうを直撃ちょくげきし、細田ほそだ組ぐみの魅力みりょくや、デビュー以来いらい一貫いっかんしている役やくへの真摯しんしな想おもいを語かたってもらった。

ミュージシャンの中村なかむら佳穂かほが演えんじる主人公しゅじんこうは、幼おさないころに体験たいけんした母親ははおやの死しをきっかけに、大好だいすきな歌うたが歌うたえなくなったすずこと内藤ないとう鈴りん(中村なかむら佳穂かほ)。すずが50億おく人にんが集つどうインターネット上じょうの仮想かそう世界せかい＜Ｕ＞に参加さんかし、そこで＜As(アズ)＞と呼よばれる自分じぶんの分身ぶんしんを「ベル」と名付なづけて美うつくしい歌声うたごえを披露ひろうしたことで一躍いちやく脚光きゃっこうを浴あびる。ところがある日ひ、ベルが開催かいさいした大だい規模きぼなコンサートを、乱暴らんぼうな竜りゅうが妨害ぼうがいしてしまう。

テレビアニメ「仮面かめんライダー電でん王おう+しん王おう」、映画えいが『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』(19)に続つづいて声優せいゆうとしての作品さくひん参加さんかは3度目どめとなった佐藤さとう。竜りゅう役やくについて「オファーをいただけたことは純粋じゅんすいにうれしかったのですが、 声こえの仕事しごとは普段ふだんやっている俳優はいゆう業ぎょうとは違ちがって、まったく慣なれていないことなので、果はたして自分じぶんに務つとまるのだろうか？という不安ふあんはありました」と当時とうじを振ふり返かえった。

細田ほそだ監督かんとくが、名作めいさく「美女びじょと野獣やじゅう」をモチーフとした本ほん作さくで、竜りゅうは野獣やじゅう的てきなポジションを担になう役やくどころだ。やがてベルは、竜りゅうが抱かかえている大おおきな心しんの傷きずを知しり、少すこしずつ心しんを通かよわせていく。佐藤さとうは演えんじるうえで「竜りゅうがどんな声こえをしているのか、台本だいほんや絵えコンテだけでは想像そうぞうがつかなくて。どうやって演えんじたらいいのかわからず、最初さいしょは戸惑とまどうばかりでした」と告白こくはく。

「細田ほそだ監督かんとくは、僕ぼくが質問しつもんするたび、丁寧ていねいに答こたえてくれました。でも、監督かんとくから『こういうふうに演えんじてほしい』というリクエストは一切いっさいなかったです。あまりにも早はやい段階だんかいで、細田ほそだ監督かんとくが『いいね！』と言いってくださったので、非常ひじょうにありがたい反面はんめん、僕ぼく自身じしんは『本当ほんとうですか!?』と疑心暗鬼ぎしんあんきになっていました(笑)かっこわらい。アフレコ時じは完成かんせいした映像えいぞうも歌うたも入はいってなかったのですが、細田ほそだ監督かんとく率ひきいるすばらしいクリエイターの皆みなさんが、きっと音楽おんがくも含ふくめてすごい世界せかい観かんを構築こうちくされるんだろうなと思おもい、ワクワク感かんも大おおきかったです」。

「細田ほそだ監督かんとくの現場げんばは、全体ぜんたいを包つつんでいる空気くうきが非常ひじょうに温あたたかかったです」

『竜りゅうとそばかすの姫ひめ』は、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオで、数すう多おおくのキャラクターデザインを手掛てがけてきたジン・キムや、プロダクション・デザインを担当たんとうした建築けんちく家か/デザイナーのエリック・ウォンなど、世界せかいで活躍かつやくするトップクリエイターも参加さんかしている。細田ほそだ監督かんとく作品さくひん史上しじょう、最大さいだい規模きぼといっていい座ざ組ぐみによる本ほん作さくで、細田ほそだ監督かんとくはどんな演出えんしゅつをしてみせたのか。佐藤さとうは「現場げんば全体ぜんたいを包つつんでいる空気くうきが非常ひじょうに温あたたかかった」と感想かんそうを口くちにする。

「例たとえば、中村なかむらさんは今回こんかいが声優せいゆう初はつ挑戦ちょうせんでしたし、僕ぼくも含ふくめて、細田ほそだ監督かんとくが普段ふだん仕事しごとで組くんできた人ひととは違ちがう挑戦ちょうせん的てきなキャストもたくさんいたと思おもいますが、細田ほそだ監督かんとくの前まえではみんながのびのびと安心あんしんして臨のぞめている気きがしました。やはり現場げんばで萎縮いしゅくしてしまうと、いいお芝居しばいはできないのですが、細田ほそだ組ぐみではたとえ迷まよったとしても、監督かんとくを信しんじてやっていけばいいんだと思おもわせてくれる。みんなが細田ほそだ監督かんとくのためになんとしてもいいものを作つくりたいという気持きもちになるんです。そういう空気くうき感かんから細田ほそだ組ぐみが愛あいされる理由りゆうがわかってきました」。

さらに佐藤さとうは、その演出えんしゅつについても「僕ぼくはこれまで声優せいゆうの仕事しごとをそう多おおくはやってきていないので比くらべられないですが、おそらくアニメーション監督かんとくのなかでは、すごく実写じっしゃ映画えいが的てきな手法しゅほうを取とられる監督かんとくなのではないかと思おもいます」とその特徴とくちょうを述のべる。

「普段ふだん、俳優はいゆうの仕事しごとでは、会話かいわを交かわす相手あいてがいて、そのやり取とりや、相手あいての反応はんのうによって自分じぶんの台詞せりふの“感かんじ”も変かわります。細田ほそだ監督かんとくの演出えんしゅつにも、そういうものを引ひき出だしたいという想おもいを感かんじました。自分じぶんのキャラクターのパートを1人ひとりだけで撮とるのではなく、2人ふたり以上いじょうのシーンはなるべく役者やくしゃ同士どうしの掛かけ合あいを録ろくっていくとか。何なん回かいもテイクを重かさねるとどうしても新鮮味しんせんみがなくなってくるので、1回かい目めのテイクを大事だいじにしたいとか。そういう点てんは、普段ふだん自分じぶんがやっている芝居しばいと近ちかいなと思おもいました」。

自分じぶんが生いきている現実げんじつとは違ちがう人生じんせいを送おくれる仮想かそう世界せかい＜Ｕ＞については、佐藤さとうも興味きょうみをそそられたそうだ。「もしあれば、自分じぶんも参加さんかしてみたいとは思おもいました。ただ、そっちに人生じんせいの主軸しゅじくを置おこうとは思おもわないでしょうね。あくまでもエンターテインメントとして楽たのしむと思おもいました」。

インターネットを舞台ぶたいにしており、ネット上じょうでの反響はんきょうや表現ひょうげん者しゃへのバッシングなどのテーマにも触ふれられている本ほん作さく。佐藤さとうはSNSでの活動かつどうも行おこなっているが、書かき込こみの内容ないようについては「SNSは人ひとの声こえですので、当然とうぜん気きにします」としつつ、「それを見みて、昔むかしは多少たしょうなりとも落おち込こむことがありました。でも、僕ぼくの勝手かってな印象いんしょうとしては、昔むかしよりも人ひとが優やさしくなっている気きがします。もちろんネガティブな意見いけんがゼロではないんですが、気きになるくらいの数かずを見みることは、ここ何なん年ねんもないと思おもいます」と語かたる。