ポン・ジュノ監督かんとくの次回じかい作さくで共演きょうえん!?韓国かんこく・ソウルで行おこなわれた役所広司やくしょこうじ×ソン・ガンホの『PERFECT DAYS』トークを現地げんちからレポート

日にち韓かんのカンヌ国際映画祭かんぬこくさいえいがさい最優秀さいゆうしゅう男優だんゆう賞しょう受賞じゅしょう者しゃ、役所広司やくしょこうじとソン・ガンホがソウルでトークを繰くり広ひろげた。ヴィム・ヴェンダース監督かんとく、役所やくしょ主演しゅえんの『PERFECT DAYS』(23)の韓国かんこく公開こうかいに合あわせたイベントが開催かいさいされ、ユーモアたっぷりの2人ふたりの発言はつげんに会場かいじょうは笑わらいに包つつまれた。

トークイベントは7月がつ21日にち、ソウルの映画えいが館かん「シネキューブ」で開ひらかれ、韓国かんこくの映画えいが雑誌ざっし「CINE21」のキム・ソミ記者きしゃが進行しんこう役やくを務つとめた。『PERFECT DAYS』は韓国かんこくでは7月がつ3日にちに公開こうかいされ、5万まん人にんを超こえる観客かんきゃく(7月がつ23日にち現在げんざい)を動員どういんし、好評こうひょうを得えている。役所広司やくしょこうじは周防すおう正行まさゆき監督かんとく作さくの『Shall we ダンス？』(96)、今村いまむら昌平しょうへい監督かんとく作さくの『うなぎ』(97)、黒沢くろさわ清きよし監督かんとく作さくの『CURE』(97)などの作品さくひんを通とおして韓国かんこくにも長年ながねんのファンが多おおいうえ、「役所広司やくしょこうじ15年ねんぶりの来らい韓かん」と大々的だいだいてきに報ほうじられ、トーク付つきの上映じょうえい回かいはチケット争奪そうだつ戦せんとなった。

「もしポン・ジュノ監督かんとくだったら、平山ひらやまはソン・ガンホさんが演えんじていたと思おもう」(役所やくしょ)

『PERFECT DAYS』は、東京とうきょう都と渋谷しぶや区くに個性こせい豊ゆたかな公共こうきょうトイレを設もうけるプロジェクト「THE TOKYO TOILET」の一環いっかんで作つくられた作品さくひんで、役所やくしょが演えんじた主人公しゅじんこう・平山ひらやまはトイレの清掃せいそう員いんだ。プロジェクトで設もうけたトイレを舞台ぶたいに清掃せいそう員いんの短編たんぺん映画えいがを作つくるということで、脚本きゃくほんもない、監督かんとくも決きまっていない状態じょうたいでオファーを受うけたが、「とても素晴すばらしいプロジェクトなので、なんとか参加さんかしたいと思おもった。まさかと思おもったがヴィム・ヴェンダース監督かんとくがオファーに応おうじ、短編たんぺんでなく長編ちょうへんになり、この映画えいがの旅たびの最後さいごに韓国かんこくでソン・ガンホさんとご一緒いっしょできることになり、本当ほんとうに夢ゆめのよう」と、満面まんめんの笑顔えがおを見みせた。さらに「もしポン・ジュノ監督かんとくだったら、ソン・ガンホさんが平山ひらやまをやっていたと思おもう。でも早はやい者しゃ勝がちだったので、幸運こううんでした」と言いって、冒頭ぼうとうから会場かいじょうを沸わかせた。

役所広司やくしょこうじとソン・ガンホは昨年さくねんのカンヌ国際映画祭かんぬこくさいえいがさいの閉幕へいまく式しきで初はじめて会あい、今回こんかいが2度目どめの対面たいめんだった。ソン・ガンホは『PERFECT DAYS』の韓国かんこく公開こうかいにあたって「無心むしんな木この葉はの間あいだに差さす一筋ひとすじの光ひかり、役所広司やくしょこうじという偉大いだいな職人しょくにんの微笑びしょうは計はかり知しれない」というコメントを寄よせ、「俳優はいゆうの演技えんぎの深ふかさや『PERFECT DAYS』の追求ついきゅうする我々われわれの人生じんせいの美うつくしさの深ふかさは、到底とうてい計はかり知しれない。そう感かんじた」と述のべた。映画えいがの中なかでは、木漏こもれ日びを見上みあげて平山ひらやまが微笑ほほえむ場面ばめんがたびたび登場とうじょうする。ソン・ガンホは5月に個人こじん的てきなスケジュールで東京とうきょうを訪おとずれた際さい、都庁とちょうの近ちかくの公園こうえんでまったりしながら木漏こもれ日びを見上みあげ、「しばらくの間あいだ、平山ひらやまさんになってみた」という実体験じつたいけんを語かたった。ただ、「その公園こうえんにトイレはなかった」とも付つけ加くわえた。

平山ひらやまがどんな過去かこを生いきてきたのか、劇げき中ちゅうでは具体ぐたい的てきには分わからない。ヴェンダース監督かんとくから役所やくしょには平山ひらやまについて詳細しょうさいが書かかれた「平山ひらやまメモ」が渡わたされたが、その内容ないようについては口止くちどめされているそうだ。一ひとつ観客かんきゃくに教おしえてくれたのは、「木漏こもれ日びによって平山ひらやまが救すくわれた」ということだ。「太陽たいように向むかって微笑ほほえむのは、その木漏こもれ日びを作つくってくれる太陽たいように感謝かんしゃする思おもい」とだけ語かたり、「この映画えいがは5回かい観みると、ものすごくよく分わかる」と、役所やくしょは宣伝せんでんに努つとめた。

一方いっぽうソン・ガンホは、多おおくの人ひとが名めい場面ばめんとして挙あげる、平山ひらやまが運転うんてんしながら笑わらったり泣ないたり、様々さまざまな表情ひょうじょうを見みせるエンディングについて、「あの場面ばめんを撮影さつえいする前まえ、監督かんとくから役所やくしょさんに感情かんじょうや演技えんぎのポイントについてどんな注文ちゅうもんがあったのか」と問といかけた。役所やくしょは「俳優はいゆう人生じんせいの中なかであんな自分じぶんのでかい顔かおをスクリーンで見みたのは初はじめて。運転うんてんしているという設定せっていなので、目線めせんをカメラの方向ほうこうから外はずせず、照てれ臭くさかった。ト書とがきには『バックミラーに平山ひらやまの目めに涙なみだが見みえる。でも悲かなしそうではない。これからまた自分じぶんが選えらんだ仕事しごとに向むかう』というような非常ひじょうに詩的してきな文ぶんが書かいてあり、監督かんとくに『やっぱり涙なみだを見みせたほうがいいんですよね？』と言いったら、『泣なかなくてもいい、でも、泣ないたほうがいいかな』と言いわれた」と、打うち明あけた。エンディングで流ながれる「Feeling Good」は、実際じっさいに現場げんばでもかけながら撮影さつえいしたという。

役所やくしょは「『Feeling Good』を歌うたうニーナ・シモンの魂たましいがすごく影響えいきょうしたと思おもう」とも振ふり返かえる。平山ひらやまはカセットテープで音楽おんがくを聴きくのが趣味しゅみで、たくさんの名曲めいきょくが流ながれるが、なかでもルー・リードの「Perfect Day」が最もっとも演技えんぎに大おおきな影響えいきょうを与あたえたという。「毎日まいにち毎日まいにちをせかされることなく、マイペースで生いきていく雰囲気ふんいきがとても好すき」と言いう役所やくしょは、平山ひらやまに近ちかい感性かんせいを持もっているようだ。

また、ソン・ガンホがエンディング以外いがいに印象いんしょう的てきだった場面ばめんとして挙あげたのは、突然とつぜん訪たずねてきた姪めいのニコとしばらく過すごした後のち、平山ひらやまの妹いもうとがニコを迎むかえに来きた場面ばめんだ。「運転うんてん手付てつきの車くるまで迎むかえに来きたところを見みれば、平山ひらやまがかなり裕福ゆうふくな環境かんきょうにいたことが類推るいすいできる。なのになぜ一人ひとりで質素しっそに暮くらしているのか。役所広司やくしょこうじさんの感情かんじょうを抑おさえた演技えんぎが、特とくに記憶きおくに残のこっている」と語かたった。