1979年ねんの『エイリアン』はなにが斬新ざんしんだったのか？公開こうかい当時とうじの衝撃しょうげきをいま振ふり返かえる

1979年ねんに公開こうかいされた『エイリアン』は、そのすべてが当時とうじとしては斬新ざんしんだった。製作せいさくの過程かていにおいてなんらかのリファレンスや発想はっそうのヒントは存在そんざいするが、劇場げきじょうのスクリーンで我々われわれが遭遇そうぐうしたそれは、誰だれも過去かこに出会であったことない夢魔むまへと昇華しょうかされ、世界中せかいじゅうの観客かんきゃくを恐怖きょうふと絶望ぜつぼうの深淵しんえんに陥おとしいれたのだ。

【写真を見る】H・R・ギーガーが意匠を凝らした禍々しいエイリアンのデザイン — 【写真しゃしんを見みる】H・R・ギーガーが意匠いしょうを凝こらした禍々まがまがしいエイリアンのデザイン[c]Everett Collection/AFLO

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実じつ世界せかいの延長えんちょう上じょうにあるようなリアリティを追求ついきゅうしたプロダクションデザイン

まず驚おどろかされたのが、劇げき中ちゅうで構築こうちくされたプロダクションデザインの数々かずかず。ユーズドフューチャー(使つかいこなされた未来みらい)と呼称こしょうされたそれらは、惨劇さんげきの舞台ぶたいとなる宇宙うちゅう貨物かもつ船せん「ノストロモ号ごう」の外観がいかんから内部ないぶ構造こうぞう、そして居住きょじゅう空間くうかんに至いたるまで、すべてが実じつ世界せかいの延長えんちょう上じょうにあるようなリアリティを醸かもしだしていた。

惨劇の舞台となる宇宙貨物船「ノストロモ号」 — 惨劇さんげきの舞台ぶたいとなる宇宙うちゅう貨物かもつ船せん「ノストロモ号ごう」[c]Everett Collection/AFLO

こうした意匠いしょうはSF映画えいがの偉大いだいなクラシック『2001年ねん宇宙うちゅうの旅たび』(68)を起点きてんに『スター・ウォーズ』(77)などで試こころみられてきたが(後者こうしゃは未来みらい設定せっていではないものの、本ほん作さくに与あたえた影響えいきょうは大おおきい)、『エイリアン』はそれをさらに発展はってんさせ、遠とおい先さきのストーリーでありながらも、あたかも自分じぶんたちが劇げき中ちゅうの当事とうじ者しゃであるような感触かんしょくを観みる者ものに抱いだかせたのだ。

小惑星にあった宇宙船を調査する乗組員たち — 小惑星しょうわくせいにあった宇宙船うちゅうせんを調査ちょうさする乗組のりくみ員いんたち[c]Everett Collection/AFLO

H・R・ギーガーが手掛てがけたエイリアンのデザイン

そしてなにより衝撃しょうげき的てきだったのが、タイトルキャラクターであるエイリアンの存在そんざいだろう。スイスのシュルレアリスム画家がかH・R(ハンス・リューディ)・ギーガーによってデザインされたその容姿ようしは、ビッグチャップ(当時とうじゼノモーフと呼よぶ人ひとはマイノリティだった)を基調きちょうとし、幼体ようたいから成体せいたいに至いたるまでの成長せいちょう段階だんかいそれぞれの形状けいじょうが、これまでに見みたことのないクリーチャー像ぞうを成なしていたのだ。

乗組員たちはさらに無数の巨大な卵を発見する — 乗組のりくみ員いんたちはさらに無数むすうの巨大きょだいな卵たまごを発見はっけんする[c]Everett Collection/AFLO

さらには劇げき中ちゅうで短みじかいショットでしかその姿すがたは映うつらず、クライマックスで全身ぜんしんがわかる頃ころには、それまでの恐怖きょうふ展開てんかいが布石ふせきとなり、誰だれもが半はん目め状態じょうたいで直視ちょくしを警戒けいかいしていたのである。加くわえてエイリアンの穏おだやかでないライフサイクルも独創どくそう的てきで、人間にんげんに寄生きせいして体内たいないにタネを宿やどし、やがて幼体ようたいが胸部きょうぶを突つき破やぶって生うまれる肉体にくたいジャックのシステムは、前代未聞ぜんだいみもんな侵略しんりゃく生物せいぶつの特徴とくちょうとして観みる者ものを生理せいり的てきな嫌悪けんおへと導みちびいている。