欠かけ品ひんなしですぐ読よめる電子でんし書籍しょせきの魅力みりょく

──今回こんかいはコミックシーモア20周年しゅうねんを記念きねんして、これまでの売うれ筋すじ作品さくひんを振ふり返かえっていく企画きかくです。まず吉田よしださん自身じしんは電子でんし書籍しょせきとどんなふうに付つき合あっていますか？

僕ぼくはもともと中学生ちゅうがくせいくらいの頃ころから、マンガを年間ねんかん100冊さつ以上いじょうは買かっていました。社会しゃかい人じんになってからは年間ねんかん500冊さつ以上いじょう。なので、社会しゃかい人じんになって気きづいたら所有しょゆうするマンガが1万まん冊さつ以上いじょうになってしまって、物理ぶつり的てきに死しぬって思おもったんです。でも、マンガって捨すてられないじゃないですか。

──捨すてたくないですよねえ。

だから、その頃ころからもう電子でんしに切きり替かえていきました。2010年代ねんだいの初はじめくらいまでは電子でんしで出でていない作品さくひんもけっこうあったので紙かみで買かっていましたが、今いまはほぼすべての作品さくひんが電子でんしで買かえる。なので、最近さいきんはマンガに関かんしては99％電子でんしです。

──所蔵しょぞうスペースももちろんですけど、電子でんし書籍しょせきは読よみ直なおしたいと思おもったときにパッと出だせますしね。

それなんです。だから、最近さいきん多おおいのが紙かみで持もっているはずのマンガを電子でんしで買かい直なおすパターン。だって、（持もっているけど）見みつからないんですもん。

──すごくわかります！ 探さがすくらいなら買かっちゃえってなりますもんね。

うちに大島おおしま弓子ゆみこ作品さくひんが（紙かみ・電子でんし合あわせて）何なん冊さつあるか……。

──うちだと吉野朔実よしのさくみ作品さくひんがそれですね（笑）。あと、藤子とうこ・F・不二雄ふじお作品さくひんとか。

F先生せんせいに関かんしては子供こどもの頃ころに買かってもらった藤子とうこ不二雄ふじおランド版ばんがそもそもあって、2009年ねんに藤子とうこ・F・不ふ二に雄大ゆうだい全集ぜんしゅうが出でてそれを買かって、電子でんしでまた買かっちゃうという。

──ありがち!! じゃあ、電子でんし書籍しょせきデビューはかなり早はやいほうなんですね。

2010年代ねんだい初はじめにはもう買かい始はじめてました。僕ぼくが発起人ほっきにんを務つとめる「マンガ大賞たいしょう」が2008年ねんに始はじまったんですが、その当時とうじはまだ電子でんし書籍しょせきは周まわりでも浸透しんとうしていなかった。買かい始はじめたのはたぶん4年ねん目めくらい……2011年ねん頃ごろだったと思おもいます。

──2010年ねんには初代しょだいiPadが登場とうじょうして、日本にっぽんでもこの年としが電子でんし書籍しょせき元年がんねんと呼よばれています。

2011年ねんの「マンガ大賞たいしょう」で「進撃しんげきの巨人きょじん」が初はじめてノミネートされたんですが、話題わだいになりすぎていて店頭てんとうにあまりなかったんですよね。「本屋ほんやさんに行いってもない。なら電子でんし書籍しょせきという選択肢せんたくしもあるんだ」という感かんじで手てを出だし始はじめた人ひとがいた記憶きおくがあります。

──店頭てんとう在庫ざいこがなくならないというのは電子でんし書籍しょせきの大おおきな魅力みりょくですよね。品薄しなうすもそうですが、紙かみの単行本たんこうぼんは完結かんけつすると意外いがいとすぐに店頭てんとうからなくなっていきますし。

そうなんです。あと、僕ぼくは最近さいきん大おおきなテレビでマンガを読よむのにハマってます。今いま、端末たんまつからUSB-Cケーブル1本ほんでつなげられたりするじゃないですか。それで大だい画面がめんで読よむんです。

──うわ！ 面白おもしろそう！

大おおきい画面がめんで見みるとやっぱり迫力はくりょくがすごいですから。「こんなに描えがき込こんでたんだ！」とか新あたらしい発見はっけんもある。入はいってくる情報じょうほう量りょうが違ちがいますから、オススメです。

携帯けいたい電話でんわというパーソナルな画面がめんだからこそ売うれた作品さくひん

──では、どんな作品さくひんがコミックシーモアではヒットしてきたのか、2004年ねんから2023年ねんまでのデータを見みていきましょう。最初さいしょ期きは古ふるい作品さくひんが多おおいですね。

2004年ねんだとまず上あがっているのが「サラリーマン金太郎きんたろう」（本宮もとみやひろ志こころざし）！ ほかにも「俺おれの空そら」や「男おとこ樹じゅ」（ともに本宮もとみやひろ志こころざし）なんかも入はいってたり、本宮もとみや先生せんせい強つよいですねえ。あ、この頃ころからもう「静しずかなるドン」（新田にったたつお）が入はいってるんですね。「静せいドン」がこんなに売うれるなんて思おもわなかったですね。

──2020年ねんには年間ねんかん売うり上あげ6億おく円えんを記録きろくしたり、電子でんし書籍しょせきでのヒット作品さくひんの代名詞だいめいしですよね。

我々われわれ世代せだいからすると床屋とこやさんにあるマンガという感かんじなので「なぜ今いま!?」と思おもいましたね。

──長ながい作品さくひんですし、電子でんしでないと改あらためて1巻かんから読よむ機会きかいがなかったのもあるんでしょうね。で、読よむと止とまらなくなる。

面白おもしろいですからねえ。あと、早はやいうちから女性じょせい向むけ作品さくひんも人気にんきですね。2005年ねんには「快感かいかん♥フレーズ」（新しん條じょうまゆ）や「闇やみのパープル・アイ」（篠原しのはら千絵ちえ）、「BASARA」（田村たむら由美ゆみ）などが入はいっている。

──早はやくから電子でんし化かしていたんですね。

2006年ねん頃ごろになるとちょっとエッチな作品さくひんが盛もり上あがってきますね。前年ぜんねんから入はいっている「快感かいかん♥フレーズ」に加くわえ、やはり新しん條じょうまゆ先生せんせいの「悪魔あくまなエロス」とか、「まんがグリム童話どうわ 金瓶かなかめ梅うめ」（竹崎たけざき真実まなみ）、「夜よるまで待まてない。」（太田おおた早紀さき）、「罪つみに濡ぬれたふたり」（北川きたがわみゆき）……携帯けいたい電話でんわ向むけならではという感かんじがしますね。

──本棚ほんだなに並ならべておくのはちょっと恥はずかしいけど、携帯けいたい電話でんわというパーソナルな場所ばしょなら読よみやすい、と。

「東京大学とうきょうだいがく物語ものがたり」（江川えがわ達也たつや）とか男性だんせい向むけの作品さくひんも多おおいですが、やっぱり女性じょせい向むけが目めを引ひきますね。2009年ねん頃ごろは人気にんき上位じょういの多おおくが女性じょせい向むけ。当時とうじは「レディコミ」なんて呼よばれてましたが、こういった市場いちばを電子でんしで開拓かいたくしてきたのが2000年代ねんだい後半こうはんなんでしょうね。それにしても「金瓶かなかめ梅うめ」は強つよい！ 2006年ねんから2015年ねんまでずっと売うれ筋すじ作品さくひんに入はいってる。

──コミックシーモアのヒット作さくといえばこれというイメージがありますね。

電子でんし発はつのヒット作さくという感かんじですよね。僕ぼく、「金瓶かなかめ梅うめ」の紙かみの単行本たんこうぼんって見みたことがないですもん（笑）。

小ちいさなガラケーでも読よみたいと思おもわせるマンガ

──この時期じき、「金瓶かなかめ梅うめ」だけでなく、ぶんか社しゃの「まんがグリム童話どうわ」シリーズとして「吉原よしはら 華はなの乱らん」（岡田おかだ純子じゅんこ）なんかも売うれ筋すじに入はいっています。

あー、そうそう！ この頃ころ、ぶんか社しゃの作品さくひんはみんな電子でんしになってるイメージがありました。ほんわら（本当ほんとうにあった笑わらえる話はなし）系けいの実録じつろくもの作品さくひんとか早はやいうちから充実じゅうじつしていたイメージです。

──この頃ころは携帯けいたい向むけサイトが盛もり上あがっていた時期じきですよね。魔法まほうのiらんど発はつの「恋こい空そら」が書籍しょせき化かされて大だいヒットしたり。

ニッポン放送にっぽんほうそうの会員かいいん制せい携帯けいたいサイトもものすごく人気にんきになっていました。上司じょうしからコンテンツの相談そうだんを受うけたりしましたね。

──2000年代ねんだい前半ぜんはんは完結かんけつ済ずみの作品さくひんが多おおく、懐なつかしさで買かい直なおしている人ひとが多おおそうな印象いんしょうでしたが、2000年代ねんだい後半こうはんになってくるとリアルタイムで連載れんさい中ちゅうの作品さくひんが増ふえてきた感かんじがします。

2008年ねんには「すんドめ」（岡田おかだ和人かずと）や「ふたりエッチ」（克かつ・亜樹あき）、「都立とりつ水すい商しょう！」（原作げんさく：室積むろづみ光ひかり、作画さくが：猪熊いのくましのぶ）なんかが入はいってますね。「すんドめ」とか書店しょてんにもめちゃくちゃ置おいてありました。

──ただ、時代じだい的てきに言いうと、iPhoneが日本にっぽんで発売はつばいされたのが2008年ねん。この頃ころはまだいわゆるガラケーの時代じだいですね。2000年代ねんだいはやはり黎明れいめい期きという感かんじがします。

みんな、ガラケーの小ちいさい画面がめんで読よんでたんですもんね。

──携帯けいたい向むけにコマ単位たんいで切きって縦たてに並ならべて見みせたりしていた頃ころですよね。

浦沢うらさわ直樹なおき先生せんせいは2021年ねんまで自分じぶんの作品さくひんの電子でんし書籍しょせき化かを解禁かいきんしていなかったんですが、スマホの小ちいさな画面がめんで読よむものがマンガとは思おもえないというのがその理由りゆうだったそうです。それはひとつの考かんがえ方かたとして正ただしい部分ぶぶんがありますよね。でも、スマホよりも液晶えきしょうが小ちいさかったガラケーでも、これだけいろんな作品さくひんが読よまれていた。やっぱりマンガには人ひとに読よみたいと思おもわせる根源こんげん的てきな力ちからがあるんでしょうね。