「名めい探偵たんていコナン 犯人はんにんの犯はん沢さわさん」の見みどころ

連載れんさいから23年ねん、「名めい探偵たんていコナン」初はつのスピンオフ

2017年ねん、「名めい探偵たんていコナン」にとって史上しじょう初はつとなる公式こうしきスピンオフコメディの始動しどうが告知こくちされた。1994年ねんの連載れんさい開始かいしからおよそ23年ねんが経たったときのことである。「名めい探偵たんていコナン」の本編ほんぺんで正体しょうたい不明ふめいの犯人はんにんが黒くろいシルエットで描写びょうしゃされるのはおなじみだが、ついに、いやまさか、その犯人はんにんを主人公しゅじんこうとしたマンガ「名めい探偵たんていコナン 犯人はんにんの犯はん沢さわさん」がスタートすることになったのだ（参照さんしょう：「名めい探偵たんていコナン」犯人はんにんが主役しゅやくのギャグ新しん連載れんさい、黒くろい人ひとが犯罪はんざい都市とし・米べい花はな町まちへ）。

本編ほんぺんへの容赦ようしゃない切きり込こみ

連載れんさい開始かいし時じ、掲載けいさい誌しであるサンデーS（小学館しょうがくかん）に書かかれていたのは、「世界せかいトップの犯罪はんざい都市とし・米べい花はな町まち」。第だい一いちに「あ、それ言いっていいんだ……」と感かんじた文面ぶんめんであったが、マンガではこれだけに留とまらず、「登場とうじょう人物じんぶつたちが殺人さつじん現場げんばに見慣みなれている」「事件じけんそっちのけでキャラクターたちがイチャイチャする」「子供こどもが当あたり前まえに事件じけん現場げんばにいる」などと、本編ほんぺんで突つっ込こみたいけど読者どくしゃみんながそっとしているようでしていないような部分ぶぶんに、なんの迷まよいもなくズカズカと踏ふみ込こんでいくところが潔いさぎよくて気持きもちがいい。

親近しんきん感かんのある主人公しゅじんこう

「錦にしき田た警部けいぶはどろぼうがお好すき」「迷宮めいきゅう入いり探偵たんてい」などで知しられるかんばまゆこが描えがく犯はん沢さわさんは、目的もくてきこそ“とある人物じんぶつの殺害さつがい”ではあるが、随所ずいしょに非常ひじょうに親近しんきん感かんを覚おぼえるキャラクターとして描写びょうしゃされているのも魅力みりょくだ。彼かれ（彼女かのじょ）の真しんの目的もくてきを忘わすれ、思おもわず「がんばれ……っ！」と応援おうえんしたくなってしまう瞬間しゅんかん、そして哀愁あいしゅうがある。

愛あいくるしい相棒あいぼう・ポメ太郎たろう

この作品さくひんで忘わすれてはいけないのがポメラニアンのポメ太郎たろう。物語ものがたりの中盤ちゅうばんで犯おかせ沢さわさんと出会であい、家族かぞくとなり相棒あいぼうとなり、犯はん沢さわさんに癒いやしをもたらす存在そんざいになるのだが、このポメ太郎たろうが非常ひじょうに、非常ひじょうに愛あいくるしいのである。ポメ太郎たろうにデレデレになってしまう犯はん沢さわさんの姿すがたは、動物どうぶつを愛あいする人ひとにとってはとても共感きょうかんできるのではないだろうか（ちなみにポメ太郎たろうは作者さくしゃのかんばの愛犬あいけんであるポメラニアンがモデルになっているという）。

と、簡単かんたんにではあるものの「犯人はんにんの犯はん沢さわさん」の魅力みりょくを綴つづったが、「犯はん沢さわさん」を生うみ出だしたきっかけの人物じんぶつであり、前ぜんサンデー編集へんしゅう長ちょうの市原いちはら武法たけのり氏しが過去かこのインタビューで本ほん作さくについて語かたった際さいのこのコメントに尽つきると思おもう。「結局けっきょく原作げんさくが好すきな人ひとが描えがかないと面白おもしろくないんですよ。愛あいがないとおちょくりようがないし、詳くわしくないと描えがけないから」（参照さんしょう：週刊しゅうかん少年しょうねんサンデー特集とくしゅう 編集へんしゅう長ちょう・市原いちはら武法たけのりインタビュー）。「名めい探偵たんていコナン」を愛あいする作者さくしゃだからこそ描えがける、「犯人はんにんの犯はん沢さわさん」ワールドをマンガでもアニメでも楽たのしもう。

蒼あおい井い翔太しょうたインタビュー

真しんの目的もくてきとのギャップで笑わらいがこみ上あげる

──アニメ「名めい探偵たんていコナン 犯人はんにんの犯はん沢さわさん」はオファーがあってご出演しゅつえんが決きまったのでしょうか？

そうですね、お声こえをかけていただきました。後日ごじつ、原作げんさくを読よませていただいて、セリフ量りょうの多おおさと謎なぞ多おおき人物じんぶつというところで「わっ、難むずかしそうなキャラクター！」「自分じぶんが犯おかせ沢さわさんを演えんじられるだろうか？」っていうプレッシャーみたいなものを感かんじました。それと同時どうじに、読よめば読よむほどハマっていく部分ぶぶんがあったので、演えんじられるのがうれしい気持きもちもめちゃくちゃありましたね。

──作品さくひん自体じたいにはどんな印象いんしょうを抱いだきました？

もう、テンポが速はやい！ アフレコする側がわの視点してんからすると、まずそれを感かんじました。でもそれも読よみやすいテンポの速はやさですよね。日頃ひごろからリアルに自分じぶんたちがいろいろと物事ものごとを考かんがえているリズムにすごく近ちかくて、だからすんなりと読よめる。ボケとかも自分じぶんの中なかに入はいり込こみやすいし、元気げんきをもらえる作品さくひんだなと思おもいました。

──「名めい探偵たんていコナン」に登場とうじょうする“犯人はんにん”を題材だいざいにしているので、殺人さつじんという目的もくてきを掲かかげているにしても、内容ないようとしては日常にちじょうコメディという感かんじですもんね。

そうなんですよ。犯はん沢さわさんの一番いちばんの目的もくてきである、とあるターゲットを“チョメチョメ”したいっていうこと以外いがいは、僕ぼく自身じしんもそうですし、皆みなさんにとっても共感きょうかんできることがすごく溢あふれているっていうのがこの作品さくひんのポイントで。犯はん沢さわさんの真しんの目的もくてきとのギャップがあるからこそ、日常にちじょう的てきな“あるある”のシーンで笑わらいが込こみ上あげて来きてしまうんだろうなって思おもいます。

──私わたしは2017年ねんに連載れんさいが始はじまったときに、「世界せかい最大さいだいの犯罪はんざい都市とし・米べい花はな町まち」って書かかれていた衝撃しょうげきがいまだに忘わすれられなくて。「あっ、それ言いっていいんだ」って。

それで言いうと第だい1話わの1ページ目めから面白おもしろいですもんね。誰だれも米べい花はな町まちで（電車でんしゃから）降ふりたがらない。「ここで降おりるのか!?」「早はやまるな!!」くらいの勢いきおいで（笑）。スタートからかんば先生せんせいの掴つかみ方かたがすごいなって思おもいます。アニメのPVでも「死神しにがみが潜ひそむ……」とか言いってますから（笑）。

──本編ほんぺんの主人公しゅじんこう（コナン）のことを死神しにがみ呼よばわりですからね（笑）。第だい1話わは米べい花はな町まちがいかに犯罪はんざい都市としとして認識にんしきされているかが描えがかれているだけでも面白おもしろいのに、犯はん沢さわさんがその米べい花はな町まちの改札かいさつにうまく入いれないというエピソードのみで終おわったのも、当時とうじ第だい1話わを楽たのしみにしていた身みとしてはまた衝撃しょうげきを受うけました。

ICカードの存在そんざいを知しらなくて改札かいさつでべコーン！ってなるという。その話はなし、噂うわさによるとかんば先生せんせいの実体験じつたいけんだってお聞ききして。すごくかわいらしいなって思おもいました。

──あっ、そうなんですね（笑）。でもこのマンガってきっとかんばさんにとっての“あるある”が詰つまってる作品さくひんなんだろうなと随所ずいしょで感かんじます。

そうですよね、きっと。あとはそうやって共感きょうかんできる部分ぶぶんもありながら、犯はん沢さわさん自身じしんは性別せいべつ不明ふめいなところだとか、謎なぞ多おおき人物じんぶつというのもこの作品さくひんの面白おもしろさだなと思おもいます。

コナンくんのパラパラ、今いまでも踊おどれます

──そもそも蒼あお井いさんは「名めい探偵たんていコナン」になじみはありましたか？

そうですね。テレビっ子こだったので青春せいしゅん時代じだいからアニメは観みていましたし、コナンくんが（オープニング映像えいぞうで）パラパラを踊おどったあの時期じきは、次つぎの日ひ学校がっこうで話題わだいになって、録画ろくがして何なん回かいも観みました。みんなも踊おどってましたし、僕ぼくも今いまでも踊おどれます。だからマンガの1巻かんの表紙ひょうしもそうですし、アニメのキービジュアルのポーズも見みた瞬間しゅんかんに「あのパラパラだ！」って思おもいました。これを表紙ひょうしに持もってくるのも心しんの掴つかみ方かたがさすがですよね。

──「あれだ！」「それもネタにするんだ！」ってファンのツボを突ついてきますよね。

あとは音楽おんがくが好すきな自分じぶんとしては、主題歌しゅだいかにも耳みみを奪うばわれていました。先日せんじつ僕ぼくのファンクラブイベントでカバーライブをやらせていただいたんですけど、そのときに倉木くらき麻衣まいさんの「Secret of my heart」を歌うたわせていただいたんです。本当ほんとうはもっと「コナン」の曲きょくを歌うたいたかったんですけどね。「恋こいはスリル、ショック、サスペンス」（コナンがパラパラを踊おどった愛あい内ない里菜りなによるオープニング主題歌しゅだいか）も歌うたいたかったんですけど……。そうしたら「犯はん沢さわさん」のエンディングが倉木くらき麻衣まいさんの「Secret, voice of my heart」になるということを知しって。倉木くらきさんが歌うたってくださるなんてすごく豪華ごうかですよね。

──すごいですよね、倉木くらきさんも乗のっかってくれるんだ！っていう。

オープニングも新浜にいはまレオンさんが歌うたう歌謡かようテイストなサウンドが「犯はん沢さわさん」の世界せかい観かんにすごくぴったりで。僕ぼく自身じしんも最後さいごまで聴きかせていただくのが楽たのしみです。

──大地だいち丙へい太郎たろう監督かんとくのコメントによると、劇げき中ちゅうのBGMにも仕掛しかけがあるとか。

そうなんです。よく音楽おんがくを聴きいたときの表現ひょうげんで「スルメ曲きょく」とか言いうじゃないですか。「聴きけば聴きくほど味あじが出でる」って。この作品さくひんに関かんしては「味あじの濃こいスルメ」なんですよ。なので噛かんだときのインパクトがまずあって。で、1枚まい終おわったらまた1枚まいいきたくなる。それこそスルメのように。だから最初さいしょのインパクトとやみつきになる感かんじの両方りょうほうが楽たのしめる作品さくひんだと思おもいます。

──確たしかにやみつきになる要素ようそはたくさんありますよね。ギャグもそうですし、「コナン」のパロディに関かんしてもそうですし。「あれ？ この人ひと見みたことあるぞ？」と思おもったら「あ、やっぱり本編ほんぺんに出でてたあの人ひとだ」とか、照てらし合あわせる楽たのしさもあるなと。

出会であう人出ひとで会あう人にんそうですからね。どちらの世界せかいでも「あ、やっぱり米べい花はな町まちだな」ってしっくり来きてしまうパワーがあるのもすごいなと思おもいます。