連載れんさい決定けっていから紆余曲折うよきょくせつあった10年間ねんかん

──「古代こだい戦士せんしハニワット」（以下いか「ハニワット」）は武富たけとみ先生せんせいが子供こどもの頃ころに描えがいたマンガがもとになっていると伺うかがいました。どういうきっかけからできあがったお話はなしなんでしょう？

武富たけとみ健治けんじ　はい、小学生しょうがくせいのときにテレビで観みた「大だい魔神まじん」などの映画えいがに刺激しげきを受うけて描えがいたマンガが、そもそもの始はじまりでした。最初さいしょハニワットはかなり大おおきいサイズだったんですが、中学生ちゅうがくせいのときに仮面かめんライダーのような人間にんげんと同おなじサイズのヒーローが戦たたかう話はなしに描えがき直なおしたんですよ。

劔持けんもち聡さとし人じん　webアクション（双葉社ふたばしゃのマンガ無料むりょう配信はいしんサイト）で「『古代こだい戦士せんしハニワット』中ちゅう二に版はん」として公開こうかいしたことがありましたよね。

──そうだったんですね。「ハニワット」は2018年ねんに連載れんさいがスタートしましたが、連載れんさい開始かいしまでの経緯けいいを伺うかがえますか？

武富たけとみ　大学生だいがくせいぐらいのときに第だい1話わだけ描えがいたものを他社たしゃに持もち込こんだことがあったんですが、掲載けいさいには至いたらなくて寝ねかせておいたんです。そのあと双葉社ふたばしゃさんで「鈴木すずき先生せんせい」を連載れんさいさせていただいて、その終おわりぐらいに当時とうじの担当たんとう編集へんしゅうと次回じかい作さくのアイデアを出だしあったときに、「どうせ選えらばないだろうけど、（作品さくひんの）数すうを多おおく出だしたい」と思おもって提出ていしゅつしたら「ハニワット」が通かよってしまって（笑）。それが2010年ねんでした。連載れんさいは決きまったものの、紆余曲折うよきょくせつあって始動しどうまで8年ねんかかってしまったんですが……。

──具体ぐたい的てきには何なにがあったんでしょうか。

武富たけとみ　その頃ころの僕ぼくは「鈴木すずき先生せんせい」の終盤しゅうばんで、頭あたまがパンパンだったんですよ。だから次つぎは原作げんさくや原案げんあんがあるものを担当たんとうしたいな、絵えを描えがきたいなというモードだったので、「ルームメイト」や「惨殺ざんさつ半島はんとう 赤目あかめ村むら」など他社たしゃからの仕事しごとをけっこうな数すう受うけていたんです。なかなか「ハニワット」の執筆しっぴつに取とりかかれなくて、描えがけないことがだんだんプレッシャーになっていって。

──後回あとまわしにしているようで気きになっていたんですね。

武富たけとみ　はい。他社たしゃの仕事しごとを順番じゅんばんに終おえていって、いよいよ「ハニワット」に向むき合あわないと、という段階だんかいになったときに、又吉またよし（直樹なおき）さんご本人ほんにんからご指定していで「火花ひばな」のコミカライズの依頼いらいをいただいたんです。このオファーは断ことわれないなと思おもったので、双葉社ふたばしゃさんに「あと1年ねん延のばさせてもらえないか」と土下座どげざに近ちかい形かたちで謝あやまってお願ねがいして……。僕ぼくにとっては連載れんさいが始はじまるまでのプレッシャーが大おおきかったですね。だから連載れんさいが始はじまって、肩かたの荷にが降おりたという感かんじで。でも普段ふだんから古代こだい史しを扱あつかった本ほんを読よむのが好すきだったので、構想こうそうを練ねるという意味いみでは充実じゅうじつした時間じかんでした。

──結果けっかとしては準備じゅんび期間きかんをたっぷり取とれて、満まんを持もたして連載れんさいを開始かいしすることができたとも言いえますね。

武富たけとみ　双葉社ふたばしゃさんにそう思おもってもらえていたらいいんですけど……。

劔持けんもち　（笑）。

「評価ひょうかの割わりには部数ぶすうが出でない」を払拭ふっしょくしたい

──大学生だいがくせいの頃ころに他社たしゃに持もち込こんだ「ハニワット」が今こん連載れんさいされている物語ものがたりの土台どだいとのことですが、もともとのお話はなしと現在げんざいの「ハニワット」と変かわってしまった部分ぶぶんはありますか？

武富たけとみ　ほとんどやりたいようにやらせていただいていてるので、あんまりないんですよ。双葉社ふたばしゃさんに「こう変かえてほしい」と言いわれるよりも、自分じぶんが自主じしゅ的てきに変かえている、というのが本当ほんとうのところで。でもしいて言いえば、第だい1部ぶ（単行本たんこうぼん1巻かん～4巻かん収録しゅうろく）で僕ぼくは仁じんを殺ころすつもりで描えがいていたんです。

劔持けんもち　ああ、そうでした！

──仁じんは第だい1部ぶの最初さいしょの戦たたかいに挑いどんだ埴輪はにわ徒いたずらですね。自信じしんに満みち溢あふれたみんなの兄貴あにき、という印象いんしょうでした。当初とうしょ仁じんが主人公しゅじんこうだと思おもっていたので、展開てんかいに驚おどろきましたが……。

武富たけとみ　ですよね。でも連載れんさい直前ちょくぜんぐらいになって、劔持けんもちさんから「仁ひとしどうします？ まさか死しなないですよね？」と（笑）。よっぽど譲ゆずれないときは押おし切きることもあるんですけど、基本きほん的てきにそういう意見いけんは聞きいたほうがいいと思おもっているので、「じゃあ」と仁じんは残のこすことにしたんです。

──劔持けんもちさんは何なにか予感よかんがあったんですか？

劔持けんもち　なんか武富たけとみさんは仁じんを殺ころしそうな気きがしていたんで……（笑）。純粋じゅんすいに彼かれを殺ころしてほしくなかったから、そのとき止とめたんだと思おもいます。

武富たけとみ　予感よかんしてたんだ（笑）。結果けっかこんなに長ながく登場とうじょうさせることになるとは思おもってませんでした。

──まだ読よんでない方ほうには単行本たんこうぼんで仁じんがどうなるか確認かくにんしてほしいですね。「鈴木すずき先生せんせい」はヒューマンドラマで、「ハニワット」はバトルアクションなので、連載れんさいを続つづけるうえでご苦労くろうされる点てんもまったく変かわってくるのではと思おもいました。その点てんはいかがでしたか？

武富たけとみ　「鈴木すずき先生せんせい」は初はじめての連載れんさい作さくで、映像えいぞう化かもしていただいて僕ぼくの代表だいひょう作さくになったんですけど、あんまり部数ぶすうが出でなかったことが僕ぼくにとってはコンプレックスになっているんです。当時とうじ雑誌ざっしで「ヒットしたけど実じつは売うれてないマンガ」みたいに書かかれちゃったこともあり……。その記事きじ自体じたいは気きにしていないんですけど、評価ひょうかの割わりには部数ぶすうが出でないっていうのは僕ぼくのパターンになっていたので、「ハニワット」ではなんとか部数ぶすうを出だしたいと話はなしてたんです。「マンガ好すきの人ひとも、マンガをあまり読よまない人ひともかっさらっていくぞ！」というのが、連載れんさいを始はじめるときの誓ちかいだったんですよ。

──そうだったんですね。

武富たけとみ　特撮とくさつ寄よりのマンガって、そういう世界せかい感かんが好すきな人ひとには受うけるけど、そうでない人ひとは遠とおざかっていくような閉とじた感かんじが出でてしまうことがあるので、なんとかそうならないように苦労くろうしていましたが、打うち切きりの可能かのう性せいが出でてきてしまって。いつも通とおりの感かんじになっちゃって、どうしたらいいんだろうな……と。

「いつ首しゅを切きられるんだろうか」と怯おびえながらの連載れんさい

──武富たけとみ先生せんせいがSNSに投稿とうこうされたことでファンも知しるところとなりましたが、今年ことしの5月がつに9巻かんをもって打うち切きりになることが発表はっぴょうされました。話はなしにくいこともあるかもしれませんが、打うち切きりを宣告せんこくされたときのお気持きもちを伺うかがえますか？

武富たけとみ　ついに来きたかって。「鈴木すずき先生せんせい」のときの“信用しんよう貯金ちょきん”があったから、連載れんさい開始かいしまでだいぶ待まってもらえたし、「ハニワット」は長ながく続つづけていったら面白おもしろくなると思おもってもらえたと思おもうんですけど、とにかく1巻かんと2巻かんが全然ぜんぜん売うれなくてヤバいと感かんじていたんです。普通ふつうの編集へんしゅう者しゃは1、2巻かんが売うれなければだいたい4巻かんで完結かんけつに持もっていくのが仕事しごととして当あたり前まえですから、そこをされなかっただけでもよかったと思おもっていました。それでも、いつ首しゅを切きられるんだろうかとはずっと心配しんぱいしていて。第だい2部ぶ（単行本たんこうぼん5巻かん～）を描えがき終おえるまでは言いわれないんじゃないかと、正直しょうじき気きが緩ゆるんでいたときに打うち切きりの話はなしが来きたので、「あちゃー、今来こんらいたかー」と。

──連載れんさいスタート時じから武富たけとみ先生せんせいと一緒いっしょに走はしってこられた劔持けんもちさんも、打うち切きりのお話はなしはしづらかったのではと思おもいます。

劔持けんもち　そうですね……何なにより「悔くやしい」という気持きもちが大おおきかったです。話はなすときはやっぱりかなり緊張きんちょうしました。

武富たけとみ　ですよねえ。

劔持けんもち　部数ぶすうのことは武富たけとみさんもご自身じしんでわかってらっしゃったので、「（打うち切きりが）いつ来くるか……」「いつ話はなすか……」っていうのはたぶんお互たがいに考かんがえていたと思おもいます。それに、当初とうしょの予定よていよりも第だい2部ぶの構想こうそうが膨ふくらんでいて、もともと10巻かんで第だい2部ぶを終おえる予定よていだったものを9巻かんまででどう収おさめよう、どうしようっていう心配しんぱいも大おおきかったです。

武富たけとみ　打うち切きり自体じたいは覚悟かくごしていたんですけど、第だい2部ぶの内容ないようを詰つめて描えがかないといけなくなったことがつらかったですね。構想こうそうが膨ふくらみきっていたので。どうしても9巻かんで収おさまらない。珍めずらしくけっこう先さきのお話はなしまでプロットを切きって、なんとか9巻かんまでで収おさまるようなストーリー構成こうせいを苦労くろうして作づくりました。それでもやっぱり、「なんとか連載れんさい続行ぞっこうにならないかな……」という気持きもちがありましたが。