二兎凛原作、凛愛がマンガを描く「失恋したのでVtuberはじめたら年上のお姉さんにモテました」の単行本5巻が5月27日に発売された。どこでもヤングチャンピオン(秋田書店)で連載中の同作は、小説家になろうで発表された小説のコミカライズ。女の子と見間違えられるほどかわいらしい男の子・姫村優希が、失恋をきっかけにVTuber・白姫ゆかとしてデビューするところから始まるラブコメディだ。
コミックナタリーでは単行本の発売を記念して「失恋したのでVtuberはじめたら年上のお姉さんにモテました」の特集を展開。優希と同じく自身もバーチャル美少女受肉(以下、バ美肉)であることを公表しているVTuber・兎鞠まりに、同じVTuberの視点から同作の魅力を語ってもらった。
取材・文 / 佐藤希
「失恋したのでVtuberはじめたら年上のお姉さんにモテました」あらすじ
男子高校生・姫村優希は、ある日好意を寄せていた先輩が男性と歩いているところを見てしまい、傷心からヤケッパチでVTuberになることを決意する。好きな絵師にキャラクターデザインを依頼するも、優希を女の子だと誤解した絵師から美少女のアバターが届いてしまう。これをきっかけにVTuber・白姫ゆかとしてデビューした優希は、活動を通して絵師や大手事務所のVTuberといったさまざまな年上女性と出会い、好意を寄せられていくことになる。
ヤンチャンWebで読む
失恋したのでVtuberはじめたら年上のお姉さんにモテました | 秋田書店
男も女も虜にする主人公に「天性の人たらし!」
──「失恋したのでVtuberはじめたら年上のお姉さんにモテました」は、VTuberデビューを決意した少年・姫村優希が、ある行き違いから少女の見た目で、いわゆるバ美肉VTuberとして活動を始めることから物語が展開されます。そもそも兎鞠さんは、この作品のことはご存じでしたか?
SNSで話題になってたことがあったので、知ってました! やっぱり、兎鞠とは“界隈”的に近い作品なので(笑)。「兎鞠、もしかしたらこの作品読んでるんじゃないかな」ってリスナーさんがつぶやいていたのも見かけたことがあります。
兎鞠まり
──そうだったんですね。5巻までの収録エピソードを読んでいただきましたが、率直なご感想をお聞かせください。
主人公の優希くんを取り巻く環境とか、リスナーさんが配信中に打ってくれるコメントの感じがものすごく「わかるー!」って思いました。それに優希くんがめちゃくちゃかわいらしいし、天性の人たらし! 友達の男の子も優希くんを好きになりかけてましたし。
「失恋したのでVtuberはじめたら年上のお姉さんにモテました」1巻#2「自己紹介動画を作ろう!」より。VTuber好きの友人に白姫ゆかの動画を見せたところ、その友人がハートを射抜かれてしまう。
──クラスメイトの裕翔はVTuberオタクで、優希が白姫ゆかのビジュアルを見せたときに、叶わぬ恋に落ちかけていましたね。
ね、めちゃくちゃ狂ってましたよね。でも兎鞠も昔、これに近いことがあったんですよ。男性のお友達が、兎鞠が兎鞠だっていうことを知らずに「この子かわいいよね」って言ってくれて。それで「あ、実はそれ……」って打ち明けました(笑)。やっぱり周囲に内緒にしていると、活動の規模が大きくなればなるほどこういうことが起きやすくなりますね。
──そのお友達はとてもびっくりされたんじゃないかと思います。白姫ゆかとしてデビューした優希は、天真爛漫かつ無自覚にあざとい言動で見る間にファンを増やしていきます。同じVTuberとしての視点で見た、ゆかの魅力はなんなんでしょうか?
優希くんがゆかちゃんになるスイッチが入ったときに出る、あのあざといセリフとか仕草ですね。あのかわいらしいムーブを最初からパーフェクトにできるっていうのが一番の魅力なんだろうなって思っています。自分の思う“かわいい”が根底にちゃんとあって、それを表現できるのはもう天才だからとしか言いようがないですよ。そのうえで声までかわいいなんて!
「失恋したのでVtuberはじめたら年上のお姉さんにモテました」1巻#4「料理動画を撮ろう!」より。視聴者を“お兄ちゃん”“お姉ちゃん”と呼び、かわいく振る舞う優希扮するゆか。
──VTuberになるべくしてなったような人物ですよね。
それに序盤から、中途半端に費用をかけるんじゃなくて、成功するために投資は惜しまないぞっていうスタンスでしたよね。だから絶対に成功してやる!っていう勢いを感じました。
デビュー日はニコニコしながら1日中更新ボタンを連打
──優希は憧れていた先輩に失恋したことがきっかけでVTuberになろうと決意しましたが、兎鞠さんがVTuberになったきっかけを改めてお聞かせいただけますか?
2018年の春頃に自分の好きだったイラストレーターさんが知らないうちにバ美肉VTuberとしてデビューして、美少女になっていたんです。だからやってみようかなと思って。VTuberになりたいというよりは、とりあえずバ美肉してみようかな、自分の描いたイラストを動かしたいなっていう気持ちのほうが大きかったです。かわいい姿になって、ボイスチェンジャーを使ったら意外と面白くて「いけるじゃん!」みたいな。そうやってチャレンジしてみたら思いのほか多くの人の目に留まってしまったっていう流れですね。
兎鞠まり
──活動の初期から男性であることを公表されていますが、あえて正直にお話しされたのはなぜだったのか気になります。公になっていても、兎鞠さんが男性だと知って驚く人はまだまだ多いですが(笑)。
いやー、そんな器用に噓つけないので……(笑)。それに兎鞠がデビューした2018年の7月頃って、バ美肉にすごく寛容な時期だったんです。なのでまあ言っちゃっても大丈夫かなって感じたので、すぐ言いました。
──ちなみに、初配信のときに優希はかなり緊張していましたが、兎鞠さんは初配信のときの気持ちって覚えてますか?
めちゃくちゃ覚えてます。優希くんと同じく、兎鞠も配信じゃなくて動画のほうが先に出たんですが、アップしたときにはそれはもうドッキドキで心臓飛び出るかと思いました! それまで正直、人前で話すのも得意じゃなかったんですよね。動画をアップした直後に更新ボタンを連打して、すごくポジティブな応援のコメントをシャワーのように浴びるのが気持ちよくて……! ずっとニコニコしながら1日中更新ボタンを押していました(笑)。
──優希も初めて動画を投稿したあとに、兎鞠さんと同じく反応を気にしていましたね。今ではすっかり配信に慣れたようですが、優希の配信テクニックは“同業”として見ていていかがですか?
いや、もう最初からあんなにうまくできないですよ……! どこかサポートしてくれる企業に所属しているんじゃないかなってくらいしっかりした配信をしているのですごいですよね。兎鞠がデビューした時期は、Live2D(※)が今ほど主流じゃなくて動くこと自体がすごかったから、「やっとLive2Dができました!」っていう配信をすることもあったぐらいなので。
※平面イラストを立体的に動かすことができる技術。
──優希はモーションキャプチャーで表情のみならず全身の動きが反映される3Ⅾでデビューしていますね。3Ⅾモデルのお披露目は、VTuberたちにとってはかなり重要度の高いおいごと、というイメージです。
3Ⅾでデビューして、緊張もせずに堂々と配信をしていて……。本当にすごいなあと思います。
「失恋したのでVtuberはじめたら年上のお姉さんにモテました」1巻#2「自己紹介動画を作ろう!」より。美少女の3Dモデルで活動することを決め、撮影に挑む優希。