27年ねん前まえに企画きかくが頓挫とんざした「箱はこ男おとこ」が因縁いんねんの地ちで上映じょうえいを果はたす、その軌跡きせきが明あきらかに

石井いしい岳たけし龍りゅうが監督かんとく、永瀬ながせ正敏まさとしが主演しゅえんを務つとめた「箱はこ男おとこ」。1997年ねんに製作せいさくが決定けっていしたものの一いち度どは頓挫とんざした本ほん作さくの、27年ねん前まえ当時とうじにロケ地ちであるドイツ・ハンブルグで撮影さつえいされた写真しゃしんと、2024年ねんに公開こうかいされるまでの経緯けいいが、“ハコの日ひ”である本日ほんじつ8月がつ5日にちに明あかされた。

安部あべ公房こうぼうの小説しょうせつを映画えいが化かした本ほん作さくの主人公しゅじんこうは、ダンボールを頭あたまからすっぽりとかぶり、一方いっぽう的てきに世界せかいをのぞき見みる“箱はこ男おとこ”に魅みせられたカメラマンの“わたし”。自身じしんも箱はこ男おとことしての一いち歩ほを踏ふみ出だすが、数々かずかずの試練しれんと危険きけんに襲おそわれる。“わたし”を永瀬ながせ、箱はこ男おとこの存在そんざいを乗のっ取とろうとするニセ箱ばこ男おとこを浅野あさの忠信ただのぶが演えんじ、“わたし”を誘惑ゆうわくする謎なぞの女おんな・葉は子役こやくで白しろ本ほん彩いろどり奈、箱はこ男おとこを完全かんぜん犯罪はんざいに利用りようしようとたくらむ軍医ぐんい役やくで佐藤さとう浩市こういちが出演しゅつえんした。

「箱はこ男おとこ」は石井いしい岳たけし龍りゅう（当時とうじは石井いしい聰さとし亙わた）監督かんとくのもと、主演しゅえんに永瀬ながせ、助演じょえんに佐藤さとうらを迎むかえて日にち独どく合作がっさく映画えいがとして製作せいさくが決きまっていた。しかしハンブルクでのクランクイン前日ぜんじつに日本にっぽん側がわの製作せいさく資金しきんの問題もんだいで突如とつじょ撮影さつえいが中止ちゅうしとなってしまう。当時とうじ30歳さいで、自宅じたくや宿泊しゅくはく先さきでも箱はこに入はいって生活せいかつするほど役やくに入いれ込こんでいた永瀬ながせは、気持きもちが追おい付つかず俳優はいゆう業ぎょう復帰ふっきに数カ月すうかげつを要ようしてしまったという。同おなじく石井いしいも「私わたしも2年ねんくらい立たち直なおれなかった。でもその間あいだもずっとあきらめていなかった」と語かたっている。

石井いしいはあきらめず、2003年ねんごろに映画えいが化かを再度さいど交渉こうしょう。その権利けんりはハリウッドの会社かいしゃへと渡わたっており、リドリー・スコットの製作せいさく会社かいしゃが40分ぶんのパイロットフィルムまで完成かんせいさせていたが実現じつげんしなかった。その後ごもフランスでの企画きかく開発かいはつのうわさもあったが結局けっきょく映画えいが化かには至いたらず、ついには世界せかいのマーケットで「安部あべ公房こうぼう原作げんさくの映像えいぞう化かは不可能ふかのうだ」とささやかれるようになる。

原作げんさく権けんがハリウッドから戻もどってくる機会きかいを待まっていた石井いしいは、2013年ねんごろにコギトワークスのプロデューサー・関せき友彦ともひこに相談そうだんを持もちかけ、今回こんかい共同きょうどうで脚本きゃくほんを担当たんとうした、いながききよたかと企画きかく開発かいはつを重かさねることに。そして2016年ねん3月がつ、改あらためて正式せいしきな原作げんさく権けんの許諾きょだくを得えた石井いしいは、安部あべの生誕せいたん100年ねんにあたる2024年ねんに公開こうかいの照準しょうじゅんを合あわせ、永瀬ながせと佐藤さとうに声こえをかける。佐藤さとうは、永瀬ながせと共演きょうえんしていた「64-ロクヨン-」の舞台ぶたい挨拶あいさつで「本当ほんとうはこの映画えいがではなく昔むかし共演きょうえんをするはずだった」という趣旨しゅしの発言はつげんをしていたことから、石井いしいは「心しんのどこかにずっと『箱はこ男おとこ』が残のこっていたのではないか」という可能かのう性せいに賭かけた。さらに石井いしい組ぐみに多おおく参加さんかしてきた浅野あさのにもオファーをし、それぞれが快諾かいだくしたことで本ほん作さくの製作せいさくが現実げんじつのものに。“因縁いんねんの地ち”であるドイツ・ベルリン国際こくさい映画えいが祭さいでのワールドプレミアを経へて、8月がつ23日にちより全国ぜんこくで公開こうかいされる。