映画えいが「アンダーカレント」予告編よこくへん公開こうかい中ちゅう

めちゃくちゃ僕ぼくの作品さくひんを知しってくれている人ひとの反応はんのう（今泉いまいずみ）

──今泉いまいずみさんは以前いぜん、SNSで豊ゆたか凡さんが今泉いまいずみ監督かんとく作品さくひん好すきを公言こうげんしていることを知しり喜よろこんでいらっしゃいましたが、豊ゆたか凡さんが今泉いまいずみさんの作品さくひんをお好すきだと知しったのはどういったきっかけだったのでしょう？

今泉いまいずみ力つとむ哉　エゴサーチしているときに、豊ゆたか凡さんがあるテレビ番組ばんぐみで僕ぼくの作品さくひんの話はなしをしてくださっていたというファンの方ほうの書かき込こみを見みつけました。番組ばんぐみも観みたのですが、めちゃくちゃ僕ぼくの作品さくひんを知しってくれている人ひとの反応はんのうだったので、それがすごくうれしくて（笑）。

許もと豊ゆたか凡　あれ、本当ほんとうに仕込しこみじゃないですからね！（笑）

今泉いまいずみ力つとむ哉

──そもそもの豊ゆたか凡さんの今泉いまいずみ作品さくひんとの出会であいは？

許もと　コロナ禍かの自粛じしゅく期間きかんにいろいろな映像えいぞう作品さくひんを観みていたのですが、その中なかの1つが「愛あいがなんだ」。ちょうど隔離かくりの孤独こどく感かんも相あいまって、すごく響ひびくものがありました。そのあと「his」を観みて、同おなじ監督かんとくの作品さくひんなんだというところまではわかっていたのですが、そこから特とくに深ふか掘ほりはしなくて。でもそのあと、友達ともだちで俳優はいゆうの青木あおき柚ゆずくんが……。

今泉いまいずみ　えっ、青木あおき柚ゆずと友達ともだちなの!? 僕ぼくは一いち度ど、舞台ぶたいを一緒いっしょにやったことがあるよ。

許もと　知しり合あったのはここ1年ねんくらいなのですが、柚ゆずくんが、出会であった初日しょにちからずっと今泉いまいずみさんの話はなしをしてくれたんです。僕ぼくが「愛あいがなんだ」みたいな作品さくひんが好すきなんだよねって話はなしをしたら、そこからいろいろ教おしえてくれて。それが今泉いまいずみ監督かんとくの作品さくひんを深ふか掘ほりするきっかけになりました。

今泉いまいずみ監督かんとくの作品さくひんって本当ほんとうにリアル（許もと）

──今泉いまいずみ監督かんとく作品さくひんのどういうところに惹ひかれましたか？

許もと　今泉いまいずみ監督かんとくの作品さくひんって本当ほんとうにリアルなんですよね。1回かい目め観みるときは、なぜか自分じぶんのことを考かんがえちゃってあまり話ばなしが入はいってこないくらいです。

今泉いまいずみ　それはたぶん“映画えいがに隙間すきまがあるか”みたいな話はなしですね。セリフにしろ、内容ないようにしろ、テンポにしろ、最初さいしょから最後さいごまで詰つまっている映画えいがだと、観みている間あいだに自分じぶんのことを考かんがえられないんですが、僕ぼくは、観みている間あいだに映画えいがから離はなれて「自分じぶんもこういうことあったな」とか自分じぶんのことを考かんがえちゃうほうが豊ゆたかな映画えいが体験たいけんだと思おもっていて。そのためになるべく隙間すきまを作つくろうとしているので、豊ゆたか凡さんのその感想かんそうはうれしいですね。

許もと　よかったです。観みながらすぐ自分じぶんのことを考かんがえて共感きょうかんしてしまうから、少すこし内容ないようが抜ぬけてしまって（笑）。なのでだいたい2回かい観みています。「愛あいがなんだ」は3回かい観みました。今泉いまいずみさんの作品さくひんは、いい意味いみですごくラフですよね。たまに、セリフもスッと流ながれていっちゃうくらい。

今泉いまいずみ　そこに関かんしては、正直しょうじき、作つくっていてどっちがいいのか迷まようんですけどね（笑）。今いま「ラフ」と言いってくれましたけど、あんまり言いわれたことがないからうれしいです。実じつはナチュラルさやラフさというのは、作つくるうえで意識いしきしています。映画えいがはフィクションだし、実際じっさいには存在そんざいしない人ひとたちを描えがくけど、隣となりに住すんでいそう、近ちかくにいそうな人ひとにしたいという思おもいが常つねにあって。あとは、リアルにするために劇的げきてきな絵えやセリフを排除はいじょしたりしてますね。例たとえば、告白こくはくするシーンだったら「好すきです」って言いう人ひとを寄よりで撮とって、そのあと言いわれた人ひとの反応はんのうを切きり返かえして捉とらえるというのが普通ふつうなんですが、僕ぼくは2ショットで撮とり続つづけたり。なるべく決きめゼリフみたいなものを書かかないようにしたり。今いまこうやってしゃべっているような言葉ことばでセリフを書かくようにしています。

許もと　それはすごく感かんじています。それこそ決きめゼリフが出でてこないことで、身近みぢかに感かんじられます。特とくに印象いんしょうに残のこったのは「街まちの上うえで」の部屋へやの中なかでの長ちょう回まわしのシーン。すごくリアルでした。パンフレットを買かって読よんだのですが、あのシーンはワンカット撮影さつえいだったんですよね。あの空気くうき感かんはすごかったです。

今泉いまいずみ　実じつは長ちょう回まわしって、役者やくしゃさんの力ちからはもちろんですが、俳優はいゆうだけじゃなくて、衣装いしょう、メイクしかり、カメラのレンズとの距離きょり感かんだったり、照明しょうめい、音おと、全部ぜんぶが成なりたないと成立せいりつしないんですよね。あのシーンは自分じぶんでもラッシュで観みたときにすごく手応てごたえがあったし、自分じぶんにとっての手形てがたみたいなものになったなという感かんじがしました。

許もと　映画えいがであんなに長ながいワンカットは観みたことないです。

“undercurrent”な感情かんじょうを最初さいしょから最後さいごまで感かんじました（許もと）

──ここからは新作しんさく映画えいが「アンダーカレント」について聞きかせてください。まずは豊ゆたか凡さん、ご覧らんになられての率直そっちょくな感想かんそうを教おしえてください。

今泉いまいずみ　さっきの1回かい目め、2回かい目めの話はなしじゃないけど、いつもより難むずかしく感かんじたかなとは思おもうんですけど……どうでした？

許もと　原作げんさくに忠実ちゅうじつな分ぶん、今いままでの今泉いまいずみさんの空気くうき感かんがありつつも、今いままでにはあまりなかった不穏ふおんさもあって。タイトル通どおり“undercurrent”な感情かんじょうを最初さいしょから最後さいごまで感かんじました。ちょっと息苦いきぐるしさもあって、これまでの今泉いまいずみ監督かんとくの作品さくひんとは違ちがってあまり気軽きがるには観みられないかなって。

映画えいが「アンダーカレント」場面ばめん写真しゃしん

今泉いまいずみ　ありがとうございます。そもそも原作げんさくがめちゃくちゃ面白おもしろくて。でもマンガ自体じたいが「映画えいがのようだ」と言いわれているので、そんな作品さくひんをどう映像えいぞう化かするかはすごく迷まよいました。だけど過去かこに作つくった「退屈たいくつな日々ひびにさようならを」にトーンが似にているというか。人間にんげんの隠かくれている部分ぶぶんについてや、今いままさに言いってくれましたけど、“不穏ふおんさ”や“明あかるくない空気くうき感かん”には興味きょうみがあったので、自分じぶんなりに作品さくひんにできるのではと思おもいました。確たしかにこれまでの作品さくひんとは雰囲気ふんいきは違ちがいますが、根底こんていにある寂さびしさや孤独こどくについては、恋愛れんあい映画えいがの中なかでこれまでも描えがいてきているので、挑戦ちょうせん的てきだという気持きもちはありませんでした。ただ、映像えいぞう美びで魅みせる表現ひょうげんなどについては、今いままでほとんどやったことがなくて。というのも僕ぼくの映画えいがはほとんど会話かいわで作つくっているから。幼少ようしょう期きの心象しんしょう風景ふうけいや水中すいちゅうでの表現ひょうげんをどう映像えいぞうで表現ひょうげんするか、というのはカメラマンの岩永いわなが洋ひろしさんと相談そうだんしながら作つくっていきました。

許もと　まさにおっしゃっている通とおりで、今回こんかいは今いままでの作品さくひんに比くらべて、映像えいぞうで表現ひょうげんするシーンが多おおいですよね。そこが、僕ぼくが今いままでの作品さくひんと違ちがうと感かんじた一番いちばんの理由りゆうなのかなって、話はなしを聞きいていて思おもいました。映画えいが館かんでもう1回かい観みたいです。音おともよかったので、いい環境かんきょうでまた観みたくて。

今泉いまいずみ　環境かんきょうでまた変かわるかもしれないですね。