「細野ゼミ」メインビジュアル

細野ほそのゼミ 10コマ後編こうへん[バックナンバー]

細野ほその晴臣はるおみとテクノ

テクノをテクノたしめるものとはなにか? 細野ほその晴臣はるおみ体験たいけんをもとに定義ていぎする

84

908

この記事きじかんするナタリー公式こうしきアカウントの投稿とうこうが、SNSじょうでシェア / いいねされたかず合計ごうけいです。

  • 187 515
  • 206 シェア

活動かつどう50周年しゅうねんいまなお、日本にっぽんのみならず海外かいがいでも熱烈ねつれつ支持しじあつめ、あらためてその音楽おんがく注目ちゅうもくされている細野ほその晴臣はるおみ音楽おんがくナタリーでは、かれしてきた作品さくひんやリスナー遍歴へんれきつうじてそのキャリアをあらためてげるべく、さまざまなジャンルについて探求たんきゅうする連載れんさい企画きかく細野ほそのゼミ」を展開てんかいちゅうだ。

ゼミせいとして参加さんかしているのは、敬愛けいあいしてやまない安部あべいさむすりnever young beach)とハマ・オカモト(OKAMOTO'S)というどう世代せだいアーティスト2にん毎回まいかいさまざまなジャンルについてそれぞれの見解けんかいまじえながらかたっている。10コマのテーマとしてピックアップしているのは「テクノ」。ぜん3かいにわたるかい最終さいしゅうかいでは、細野ほそののテクノかん変化へんかあらたな世代せだいによるテクノミュージックにたいする印象いんしょうについてく。

※「細野ほその晴臣はるおみとテクノ」前編ぜんぺんこちら中編ちゅうへんこちら

取材しゅざいぶん / 加藤かとう一陽いちよう 題字だいじ / 細野ほその晴臣はるおみ イラスト / 死後しごくん

ダンスをさせない”音楽おんがくきだった

──ここまで2かいにわたって、YMOのはなし中心ちゅうしんにテクノについてまなんできました。テクノへん最終さいしゅうかいとなる今回こんかいは、1990年代ねんだいごろから台頭たいとうしてきた“ダンスミュージックとしてのテクノ”だったり、2000年代ねんだい以降いこうのトピックだったりにれながら、まとめにはいっていきたいとおもっています。

細野ほその晴臣はるおみ “ダンスミュージックのひと”って、たとえばどういうひとたち?

──たとえば、デリック・メイやジェフ・ミルズなどのデトロイトテクノの面々めんめんなどはシンボリックかと……。

細野ほその そのあたり、あまりわからないな。だってYMOとは全然ぜんぜんちがうものだからね。

ハマ・オカモト ……おしえてくれるひとがいない!(笑) ぼくももう、あかてんをもらうてますよ。そのあたりのがくはないですね。

安部あべいさむすり ぼくもまったくハマくんとおなじです(笑)。なにもわからずにてしまいました。

──あとは、以前いぜんこのゼミで名前なまえがったAutechreやエイフェックス・ツインだったり、細野ほそのさんとも関連かんれんふかいThe Orbだったり、あるいはrei harakamiさんなどのはなしもいいかもしれません。“ダンス”とくくるのが適当てきとうではないかもしれませんが。

細野ほその かれらの音楽おんがくいてたよ。でもそれは“アーティスト”としてだね。“おどりたい”じゃなくて、“音楽おんがくきたい”っていう気持きもちでいたから。ダンスミュージックとうと違和感いわかんがある。ダンスミュージックって、よっちのイメージになってしまうしね。それにEDMなんかもそうだけど、いまはDJのひとたちの音楽おんがくでしょ。そうなってくると、ぼくらミュージシャンにはあまり関係かんけいないから。

──よっちは、ディスコやハウスをはじめ、ダンスミュージックで多用たようされるリズムです。もちろんテクノでもたくさん使つかわれています。

安部あべ そうか、“おどりたくて音楽おんがくいているひと”がいるのか。音楽おんがくきというだけじゃなくて、音楽おんがくきなんだけど、“おどりたい”がつ。

細野ほその でもYMOの初期しょきとくに1まい(「イエロー・マジック・オーケストラ」)は、ディスコでかかることを想定そうていしていたんだよ。みんなにいてもらいたいために、あえてね。でもそれも1ねんつづかないくらいのみじか期間きかん。それから完全かんぜん逸脱いつだつしちゃったのが「BGM」だね。「BGM」でおどってるひとたことがない。だからYMOはほとんどよっちはやってないんだ。よっちがきらいになっちゃったからね(笑)。

安部あべ きらいになるきっかけはあったんですか?

細野ほその そういう音楽おんがくにあまり興味きょうみかなかったから。あとは、“おどらせよう”という音楽おんがくには作意さくいがあるじゃない? それがいやだったんだ。だからぼく音響おんきょうけいにいっちゃったんだよね。Autechreだって音響おんきょうけいで、おどるってものでもない。

──たしかにほん連載れんさいのエレクトロニカへんで、細野ほそのさんはAutechreのことを「おどらせるための音楽おんがくじゃない、リスニングけい」とおっしゃっていました。

細野ほその そう。そしてそのころは、“ダンスをさせない”音楽おんがくきだったんだよ。ただ、The Orbはクラブでアンビエントハウスという音楽おんがくをやっててきた。ドラッグカルチャーもすごくいジャンルで、ようするにチルアウトとダンスをけないでトランス状態じょうたいにさせる……“おどりながら沈静ちんせいしていく”みたいな、すごく呪術じゅじゅつてき音楽おんがく。これと関連かんれんしてアシッドハウスもあるけれど、それらはよっちじゃないといやだったね。

ハマ そのよっちはいやじゃなかったんですね(笑)。

細野ほその そうかんがえると、ぼくきらいなよっちは“あるせまいジャンル”だけのはなしかもしれない(笑)。

ハマ それはもう、“体感たいかん”ですよね。「これがこうだからいい、わるい」っていうものでもない。

──ダンスというところに焦点しょうてんてると、ポピュラーミュージックとおどることははなせない側面そくめんはありますよね。細野ほそのさんのブギウギのライブでもおどっているおきゃくさんをよくかけます。OKAMOTO’Sやネバヤンのライブも、おきゃくさんがおどっていますし。

ハマ そうですね。

安部あべ うごいたほうがただたのしい、っていうだけなんですけど。

細野ほその ぼく音楽おんがくはじめたころは、おどりながらいていたからね。

ハマ そういえば、我々われわれがデビューしたころ日本にっぽんのロックフェスって、本当ほんとうよっちがすごかったよね。

安部あべ ロックバンドのきょくがみんなよっちで。

ハマ かされすぎて嫌悪けんおかんいだくくらいに……って、これナタリーにるんだよ。おこられますよ。ぼく自身じしん当時とうじもそういう発言はつげんをしてすごく反感はんかんったことがあるから、かまわないんだけど。

安部あべ 「これをっちゃだめ」みたいになっているのがよくない。あの当時とうじは、よっちに快楽かいらくもとめて、そっちにはしりすぎて思考しこう停止ていしになってるみたいな状況じょうきょうがあったよ。

ハマ 創造そうぞうせいもなく、「これが一番いちばんがるから正義せいぎだ」っていう。

安部あべ 単純たんじゅん下品げひんだったんですよ。でも細野ほそのさんのうような、上品じょうひんよっちもある。音響おんきょうてき工夫くふうされていたりして、カッコいいのもあるから。

ハマ チャットモンチーの「シャングリラ」はちょうカッコいいわけだからね。ああいうものじゃなくて、愛情あいじょうみたいなものがえないものがいやだったのかもしれない。

──これはこれで面白おもしろいんですけど、はなしもどしましょう(笑)。

安部あべ ちなみに細野ほそのさんはディスコやクラブはきだったんですか?

細野ほその むかしはニューウェイブけいのクラブがけっこうあって、きだったよ。そのの80年代ねんだいだと、六本木ろっぽんぎのディスコで照明しょうめいちる事故じこなんかがあって(※1988ねん1がつにトゥーリアで発生はっせいした照明しょうめい事故じこ)、それからディスコブームがちょっとしずかになっちゃった印象いんしょうがある。それまではわりと面白おもしろかった時代じだいすうねんあった。DJもざっくばらんで、きなきょくしかかけない。ダンスけいかぎっていないからニューウェイブとかもかける。そういう時代じだいがあったんだよね。新宿しんじゅくのとあるディスコにYMOがKraftwerkをれていって、おどっていたこともあるよ。

安部あべ へええ。

ハマ そのくらいのころは、細野ほそのさんもかれていたんですね。

細野ほその そうそう。一方いっぽうで、そのうちにジュリアナ東京とうきょうみたいなところもてくるでしょ。ああいうかんじだとぼくらミュージシャンには関係かんけいないから……。

ハマ シンパシーはないんですね、そこに(笑)。

現代げんだいは“なにかをどこかにわすれている世界せかい

──では、比較的ひかくてき最近さいきんのトピックにれていきます。Daft Punkなどはいかがですか? デビューは90年代ねんだいですが、2000年代ねんだい世界せかいてきにヒットして、かたもコンセプチュアルで、電子でんし音楽おんがくをやる。前々回ぜんぜんかい名前なまえがったジョルジオ・モロダーとの共演きょうえんさく「Giorgio by Moroder」も話題わだいになりましたよね。

安部あべ Daft Punkをテクノだとおもっていたことないんだよな。

ハマ “Daft Punkとして”だよね(笑)。でも、本当ほんとうにカッコいい。なんかわからないけどカッコいいなって。

安部あべ そう。“カッコいい、スペイシーなひとたち”みたいな。

細野ほその ぼくはあまりらないんだ(笑)。うっすらみみはいってきたけどダメだったな、としだからだとおもうけど。

安部あべ 意外いがいですね。

ハマ Daft Punkのトーマ・バンガルテルのおとうさんが、70年代ねんだいにYamasukiっていうグループをやっていたんです。どこでいたのかわからないような日本語にほんごあやういかんじできょくれているへんなグループなんだけど、不思議ふしぎ魅力みりょくがあって。細野ほそのさんにいてみてほしいな。でも、細野ほそのさんはDaft Punkの存在そんざいりつつも、あまりかんじではなかったんですね。

細野ほその そう。だいたい、最近さいきんテクノがあまりきじゃなかったんだよね。

ハマ モードってありますからね。

細野ほその テクノに責任せきにんはないんだけどね。というのも、最近さいきんのテクノロジーがあまりきじゃないんだ。メタバースじゃないけど、どんどんそういう方向ほうこう社会しゃかいおこなってるでしょ。それがいやでね。テクノ自体じたいをやりたいとおもうときはあるけど、そういうことがあたまによぎって、どうもない。KreftwerkやYMOのころはロマンがあったんだよ。未来みらいに。

安部あべ メタバースみたいな言葉ことばくと、前向まえむきな気持きもちよりも、「やりすぎじゃない?」「どうなの?」っていう気持きもちになるんですかね。

細野ほその うーん……というか、きらいなんだよ。

安部あべ 嫌悪けんおかん(笑)。

細野ほその ネットショッピングもあまりきじゃない。ものがないのがいやなんだ。五感ごかんおとろえるから。ゆびさわったりとか、五感ごかん大事だいじにしないと人間にんげん衰退すいたいしちゃう。そういう意味いみでも、最近さいきんのテクノロジーと、それが中心ちゅうしんになっている社会しゃかい仕組しくみが気持きもわるくて。

──そもそもはテクノロジーにたいする理解りかいたかいほうなのに。

ハマ そうですよね。テクノロジーの進化しんか自分じぶん面白おもしろいとかんじる物差ものさしにうまくっけていらっしゃったわけじゃないですか。だからこそ、いま状況じょうきょう気持きもわるいっていうのは、ただの悪口わるぐちとはちが説得せっとくりょくがあります。

細野ほその ただの悪口わるぐちだよ(笑)。いやなことがいろいろあるなかの、中心ちゅうしんにあるのがテクノロジーなんだよね。いまは、“なにかをどこかにわすれている世界せかい”だね。それをすごくかんじる時代じだいになってきちゃった。

つぎのページ
Perfumeはテクノ文脈ぶんみゃくなのか? 注目ちゅうもく新鋭しんえいLAUSBUBの面白おもしろさとは

読者どくしゃ反応はんのう

細野ほその晴臣はるおみ Haruomi Hosono _information @hosonoharuomi_

細野ほその晴臣はるおみとテクノ | 細野ほそのゼミ 10コマ後編こうへん) https://t.co/QhdWnRexNy

コメントを(84けん

細野ほその晴臣はるおみのほかの記事きじ

あなたにおすすめの記事きじ

このページは株式会社かぶしきがいしゃナターシャ音楽おんがくナタリー編集へんしゅう作成さくせい配信はいしんしています。 細野ほその晴臣はるおみ / OKAMOTO'S / never young beach / Perfume / LAUSBUB / チャットモンチー最新さいしん情報じょうほうはリンクさきをごらんください。

音楽おんがくナタリーでは国内こくないアーティストを中心ちゅうしんとした最新さいしん音楽おんがくニュースを毎日まいにち配信はいしん!メジャーからインディーズまでリリース情報じょうほう、ライブレポート、番組ばんぐみ情報じょうほう、コラムなど幅広はばひろ情報じょうほうをおとどけします。