写真しゃしんは同おなじ時間じかん・場所ばしょで撮とられたものでも、どんな画が角かくでカメラのシャッターを押おすのかによって、その風景ふうけいや被写体ひしゃたいが違ちがって見みえる。そして日常にちじょうをどのように写うつし出だすかという点てんにおいて、写真しゃしんはポピュラーミュージックとよく似にている。中なかでもアーティストによってその違ちがいが顕著けんちょに表あらわれるのがラブソングだと思おもう。例たとえば1組くみの男女だんじょが駅えきの改札かいさつで手てを振ふっている瞬間しゅんかんを楽曲がっきょくにしたとして、アーティストそれぞれの視点してんによって、それが甘酸あまずっぱくも切せつなくも感かんじられる。7coの楽曲がっきょくはラブソングの切きり取とり方かたが抜群ばつぐんに上手じょうずで、描えがき出だす情景じょうけいの解像度かいぞうどが高たかく、主人公しゅじんこうにも感情かんじょう移入いにゅうしやすい。

2022年ねんにリリースされた1stシングル「APPLE PIE」は、浮気うわきをした恋人こいびとに仕返しかえしをしたい気持きもちを表現ひょうげんした失恋しつれんソングだ。好すきな人ひとに裏切うらぎられて落おち込こむラブソングは数かずあれど、「A・P・P・L・E More アップルパイ / 君くんの顔面がんめんめがけて投なげたい / ブランドシャツ汚よごれちゃった？」と復讐ふくしゅうする描写びょうしゃは実じつに斬新ざんしんで、聴きいていてスカッとした気持きもちになる。2023年ねんにリリースされた3rdシングル「SORRY」は“憎にくいけれど愛あいしてはほしい”という、複雑ふくざつな女性じょせいの心しんを見事みごとに表現ひょうげんしている。2023年ねんリリースの9thシングル「TOMATO」は、“たぶんトマトが嫌きらいだった”元もとカレからのアプローチを撃退げきたいする、強気つよきでかわいい女おんなの子この歌うた。7coの楽曲がっきょくはどれも物語ものがたり性せいが高たかく、思おもわずその世界せかい観かんに惹ひき込こまれてしまうのだ。

また、歌詞かしは誰だれもが経験けいけんしている“あるある”というよりも、“こうだったらいいのに”を表出ひょうしゅつしているように思おもう。例たとえば、今年ことし2月がつにリリースされた「0.0000%」。“アタシ”の彼かれはいつもバイト先さきの女おんなの子ことイチャイチャし、“アタシ”が風邪かぜを引ひいたときには気きにせず飲のみに出でかけてしまう。そういった態度たいどに不信ふしん感かんと怒いかりを募つのらせた結果けっか、“アタシ”は別わかれることを決意けついする。すると彼かれは必死ひっしに謝あやまるのだが、時ときすでに遅おそし。サビで「先輩せんぱい、話はなしかけないで / ヘンタイ、ヨリ戻もどすのは女神めがみのようなこのアタシでも / 0.0000%」と完全かんぜん拒否きょひをするのだ。さらにその拒絶きょぜつを表あらわすフレーズが切きれ味あじが鋭するどい。「あぁあごめんごめん / そんなに泣なかせるつもりじゃなくって。 / あっハナセレブあげるからさ / その代かわりに別わかれてくんない？」と破局はきょくの決定けってい打だを打うつのである。自分じぶんのことを雑ざつに扱あつかってきた相手あいての心しんにドスンと重おもい鉄槌てっついを下くだすことができたら、どれほど気持きもちがいいだろう。そんな“こうだったらいいのに”をさまざまな角度かくどから形かたちにしているところが、大おおきな魅力みりょくではないだろうか。

そんな7coは、芦田あしだ菜さい名子なご（Vo）と音楽おんがくプロデューサーのRYUJAによる音楽おんがくプロジェクトだ。芦田あしだは3歳さいからバイオリンを始はじめて、中学ちゅうがく1年生ねんせいのときには作詞さくし作曲さっきょくをするようになる。2018年ねんにSTARBASE x TWINPLANET主催しゅさいのオーディションでグランプリを受賞じゅしょうし、本格ほんかく的てきに音楽おんがく活動かつどうをスタートさせ、映画えいが「HiGH&LOW THE WORST X（クロス）」劇げき中歌なかうたのTHE RAMPAGE・RIKU「Stand by you」、にじさんじ所属しょぞくの▽▲TRiNITY▲▽による「XOXO」、東海とうかいオンエアのメンバーによるユニット・リサイタルズの「Choiced 漢かん Soul」、RPG「メメントモリ」に収録しゅうろくされた+αあるふぁ/あるふぁきゅん。の「Dokie Doggy Night」など、ジャンルレスに楽曲がっきょくを提供ていきょうしている。

RYUJAは1999年ねんに音楽おんがくプロデューサーとしてキャリアをスタート。これまでに安室あむろ奈美恵なみえ、w-inds.、AK-69、加藤かとうミリヤ、Crystal Kay、ちゃんみな、BTS、NiziUなど人気にんきアーティストの楽曲がっきょくを手てがけてきた。そんな2人ふたりは2022年ねんに7coとしての活動かつどうを開始かいしし、先述せんじゅつした歌詞かしに加くわえて、ヒップホップやR&Bをベースとしたトラックにポップスを融合ゆうごうさせたサウンドで注目ちゅうもくを浴あびている。

彼かれらの楽曲がっきょくはSpotifyの「RADAR: Early Noise」「Tokyo Rising」やApple Musicの「ブレイキング:J-Pop」など数々かずかずのプレイリストに選曲せんきょくされており、実みのらない恋こいに終止符しゅうしふを打うてず、信号しんごうが“Yellow”なのに進すすみつづけてしまう快速かいそくラブソング「Yellow.」、爽快そうかいなビートとキャッチーなフレーズが印象いんしょう的てきな「lonely night」、優やさしいメロディラインと鈴すずの音おとのようなボーカルが混まじり合あう「Late summer waves」など、リリースする毎ごとにバイラルヒットを生うみ出だしている。

ここで7coの最新さいしん曲きょくを紹介しょうかいしよう。3月7日にちに配信はいしんリリースされた「恋愛れんあい後遺症こういしょう」はTikTokの“踊おどってみた”動画どうがで話題わだいとなり、急遽きゅうきょリリースされることとなった楽曲がっきょくだ。心しんが離はなれてしまった恋人こいびとを忘わすれるために、ただ淡々たんたんと日常にちじょう生活せいかつを送おくる心情しんじょうが表現ひょうげんされている。別わかれても消きえることがないであろう恋人こいびとへの思おもいを「恋愛れんあい後遺症こういしょう」と表現ひょうげんするセンスも素晴すばらしい。曲きょくを聴きいて印象いんしょう的てきだったのは、言葉ことば遊あそびの上手じょうずさだ。「ねぇ君きみはさ 明日あしたになったら / 全部ぜんぶ忘わすれてしまうのだろうか」から「ねぇ君きみはさ 冷蔵庫れいぞうこのキンピラ / 腐くさらせて捨すてちゃうんだろな」と2人ふたりの思おもい出でを冷蔵庫れいぞうこに例たとえたうえで「タバコやめたのあの娘むすめのためでしょ / ごめん、ありがとう。 / 最後さいごまでの嘘うそタッパーに詰つめ込こんだ」と着地ちゃくちする一連いちれんの言葉ことば運はこびは見事みごと。また「悲かなしい」や「寂さびしい」という直接的ちょくせつてきな言葉ことばを使つかわずに、比喩ひゆ表現ひょうげんを盛もり込こみながらもはっきりとブルージーさ伝つたえているのも特徴とくちょうだ。

それでいてサウンドはバラード調ちょうではなく、あえて心地ここちいいクラップとドリーミーなサウンドを重かさねているのも面白おもしろい。音おとでわかりやすい起伏おきふしを作つくらないことによって、き手きてが主人公しゅじんこうの心情しんじょうを想像そうぞうできるように余白よはくを与あたえる狙ねらいがあるのかもしれない。音おとと歌詞かしの絶妙ぜつみょうなバランスが光ひかっているからこそ、“踊おどってみた”動画どうがも広ひろまっているのだろう。

また、7coはTikTokとSpotifyが共同きょうどうでアーティストを応援おうえんするプログラム「Buzz Tracker」2025年ねん3月がつ度ど（第だい36弾だん）のMonthly Artistに決定けってい。TikTokではショートムービーや楽曲がっきょくページを通つうじてアーティストの魅力みりょくが掘ほり下さげられ、Spotifyでは「Buzz Tracker」をはじめとするさまざまなプレイリストを通とおしてユーザーに楽曲がっきょくが届とどけられる。

個人こじん的てきには7coの音楽おんがくは映像えいぞうが見みえるからこそ、ドラマ仕立したてのMVも見みてみたくなる。2人ふたりはどんな楽曲がっきょくを発表はっぴょうしてくれるのか、これからの活動かつどうに注目ちゅうもくしたい。