「GENE」に込こめた意気込いきごみ

──「Steal your heart」（2023年ねん12月発表はっぴょうの3rd EP）のインタビューで、自分じぶんが好すきな音おととポップスのバランスについて「今いまは6対たい4で、目標もくひょうは2対たい8」だとおっしゃっていましたよね（参照さんしょう：a子こ「Steal your heart」インタビュー）。「GENE」はそのバランスに近付ちかづいたというか、よりポップになった印象いんしょうを受うけました。

本当ほんとうですか？ 私わたしとしてはポップ7割わりくらいのつもりで進すすめていたんですけど、全然ぜんぜんポップじゃない曲きょくもできちゃって（笑）。例たとえば「天使てんし」はやりたいことが7、8割わり、ポップ要素ようそが2、3割わりという感かんじになったと思おもいます。全体ぜんたい的てきには5対たい5くらいにはなったのかな。

──確たしかに曲くせごとにその割合わりあいは違ちがいますよね。

長ながい歴史れきしの中なかで音楽おんがくのジャンルは出尽でつくしているけど、私わたしは組くみ合あわせ次第しだいで「全然ぜんぜん違ちがうジャンルに聞きこえる」とか「a子こにしか出だせない音楽おんがく性せいだ」と言いってもらえるような曲きょくを作つくりたいんです。それは今回こんかいのアルバムでは実現じつげんできなかったんですけど、今いまの自分じぶんが最大限さいだいげん、妥協だきょうせずに制作せいさくに打うち込こんだ成果せいかは表あらわれていると思おもいます。

──「Steal your heart」リリース前まえに作つくっていた曲きょくも入はいっているんですか？

はい。「つまらん」は私わたしが音楽おんがくを始はじめてから最初さいしょに作つくった曲きょくなんです。サビの歌詞かしはほとんど変かえましたけど、ほかのだいたいの歌詞かしとメロディは小学しょうがく6年生ねんせいか中学ちゅうがく1年生ねんせいの頃ころに作つくったもので。それ以外いがいは、去年きょねんの12月がつぐらいからバーッと一気いっきに作つくって仕上しあげた曲きょくばかりですね。

──「ポップスとご自身じしん好すきな音楽おんがくのバランス」という命題めいだいが明確めいかくになってから、ということですね。

メジャーに行いったことで、音楽おんがくを作つくるうえで「いろんな人ひとに聴きいてもらえるように」という意識いしきは強つよくなりました。「GENE」はそういった意識いしきの中なかで、自分じぶんたちの目標もくひょうである“新あたらしい音楽おんがく性せい”を表現ひょうげんできたらいいなという挑戦ちょうせんのアルバムですね。先さきほどお話はなししたように目標もくひょうを達成たっせいすることはできなかったんですけど、トラックメーカーの中村なかむら（エイジ）と「その意気込いきごみを感かんじ取とってもらえたらうれしいね」って話はなしをしていました。何なん年ねん後ごか何なに十じゅう年ねん後ごかわからないけど、いつか1曲きょくぐらい、a子こにしか出だせない音楽おんがく性せいの曲きょくを作つくることができたらうれしいですね。

──ご自身じしんの理想りそう通どおりではないにせよ、a子こという音楽家おんがくかの個性こせいは徐々じょじょに確立かくりつされてきているように感かんじます。ちなみに「これはがんばったな」と手応てごたえを感かんじる曲きょくはありますか？

「samurai」ですね。この曲きょくは自分じぶんの個性こせいを出だすという目標もくひょうにほんのちょっとだけ近付ちかづけた気きがしています。ほかにもエンジニアの浦うら本ほん雅史まさしさんと初はじめてご一緒いっしょできたり、私わたしが大好だいすきな竹村たけむら仁ひとしくんというめちゃくちゃうまいドラマーに叩たたいてもらったり、斎藤さいとうネコさんにストリングスを入いれていただいたりして。本当ほんとうにお気きに入いりなんです。

シンプルを意識いしきした「ボーダーライン」

──周囲しゅういの人ひとから評判ひょうばんがいい曲きょくは？

「ボーダーライン」です。さわやかなポップスを作つくってみたくて、聴ききやすいトラックとメロディを目標もくひょうにがんばりました。私わたしと中村なかむらは足たし算ざんは得意とくいなんですけど、引ひき算ざんがめちゃくちゃ苦手にがてなんですよ。「ボーダーライン」のトラックを作つくるときはシンプルにすることを意識いしきして、中村なかむらと「引ひき算ざんができないんだから足たすときから気きを付つけよう」と話はなしながらすごく慎重しんちょうに作つくりました。あとAメロとBメロはウィスパーを使つかってないから、それも新鮮しんせんに感かんじてもらえたのかも。

──この曲きょくはどこから作つくっていったんですか？

最初さいしょの「チャーチャチャッチャッチャ」っていうギターです。あのフレーズは以前いぜんlondogに所属しょぞくしていたギターの齊藤さいとう真純ますみくんと一緒いっしょに考かんがえて。あとは「samurai」で叩たたいてもらった仁ひとしくんに、「さわやかなポップスにしたい」というイメージを伝つたえてドラムを入いれてもらいました。

──制作せいさくはトラック先行せんこうで始はじまることが多おおい？

その場ばのノリと雰囲気ふんいきで決きまってくるというか。「この曲きょくは絶対ぜったいメロディを際立きわだたせたいのでメロディから」みたいなときと、そのときハマっている曲きょくがあって「こういうのが作つくりたいから」とトラックから始はじめるときと、完全かんぜんにその日ひの気分きぶんですね。気きままにやってます。

──それは仲間なかまと一緒いっしょに作つくっているのが大おおきいんでしょうか。

そうですね。中村なかむらさんやほかのメンバーが「この曲きょくいいよ」って教おしえてくれたりもするので。それで気きに入いったら「じゃあ、このビートとテンポから作つくってみましょうか」という感かんじで進すすめています。

a子こサウンドを構成こうせいする雑多ざったな音楽おんがく

──今回こんかい、仲間なかまとの会話かいわの中なかでアイデアが生うまれた曲きょくはほかにありますか？

「LAZY」は、Two Door Cinema Clubの「I Can Talk」とBloc Partyの「Banquet」からヒントをもらってトラックから作つくりました。アレンジやギターの入いれ方かたはJ-ROCKを意識いしきしつつ、音おと作づくりはめちゃくちゃヨーロッパに寄よせて、テンポはTwo Door Cinema Clubぐらい速はやく、みたいな。

──a子こさんのリファレンスは具体ぐたい的てきで面白おもしろいですね。

（笑）。「miss u」もトラックから作つくってます。1990年代ねんだいから2000年代ねんだい初期しょきの感かんじを表現ひょうげんしたくて、JUDY AND MARYの「そばかす」をイメージしながら制作せいさくしました。ちょうどその頃ころにオリヴィア・ロドリゴのアルバム「Guts」を聴きいたから、途中とちゅうで「bad idea right?」がリファレンスに加くわわったりもしましたけど。あとはエンジニアのテルさん（照あきら内ない紀雄としお）がすごく向むき合あってくれて、ドラムのサウンドを私わたしの提案ていあんしたリファレンスに近付ちかづけていただけてうれしかったです。でも「オリヴィアのこの感かんじ」とか言いいつつ、全然ぜんぜん違ちがうアーティストの曲きょくを聴きいて「これも合あいそう」「これ好すき」ってどんどん引ひっ張ぱってくるから、結果けっか的てきにごちゃごちゃしちゃうんです（笑）。

──いろんな音楽おんがくを混まぜた結果けっか、a子こサウンドになるんですね。

リファレンスがはっきりしてるのも、たぶん中村なかむらさんと2人ふたりでやってるからなんですよ。自分じぶん1人にんなら「こんな感かんじの音おとを探さがそう」って1つずつシンセで音色ねいろを探さぐったりできますけど、人ひとと一緒いっしょに作つくる場合ばあい「ふわふわした音おと」とか「あの年代ねんだいのシンセ」みたいな抽象ちゅうしょう的てきない方いかただとなかなか伝つたわらない。なので自分じぶんが「いいな。いつか使つかいたい」と思おもったサウンドはメモしたり、覚おぼえるようにしています。

──「ふわふわした音おと」と言いっても、イメージしているものが各々おのおの違ちがったりしますものね。

そうなんですよね。何なん年ねんも一緒いっしょにやってるのに全然ぜんぜん通つうじなくてケンカになることも多おおいです（笑）。この前まえも中村なかむらさんに「いつものあの感かんじの音おとを入いれたいです」と伝つたえたら「え？ 何なにそれ」と言いわれて（笑）。ミュージックビデオの監督かんとくやスタイリストやヘアメイクと話はなすときも、内容ないようをしっかり詰つめて細こまかく具体ぐたい的てきに言いわないと、自分じぶんがやりたいイメージは伝つたわらない。それはチームで物もの作づくりをする中なかで強つよく実感じっかんすることですね。

──ずっと一緒いっしょにやっていても齟齬そごがあるなら、外部がいぶの人相にんそう手しゅだともっと大変たいへんですね。

本当ほんとうに。MVはメジャーに入はいってからShun Takedaくんという監督かんとくに撮とってもらっているんですけど、彼かれは私わたしのイメージを細こまかく聞きいて作品さくひんに落おとし込こんでくれるんです。「a子こがめっちゃ反応はんのういいときってないから、いつか飛とび跳はねて喜よろこぶくらいいい作品さくひんを作つくる」と言いってくれていて、そういう意識いしきで制作せいさくに臨のぞんでくれているのはうれしいですね。