K-POPアーティストの「ロッキン」出演しゅつえんは史上しじょう初はつ

ENHYPENが、K-POPアーティストとして初はじめて「ROCK IN JAPAN FESTIVAL（以下いか、ロッキン）」のステージに立たつ。彼かれらはK-POPシーンでは確固かっこたる実力じつりょくと多様たような音楽おんがく性せいで圧倒的あっとうてきな存在そんざい感かんを放はなっており、昨年さくねんは国内外こくないがいの話題わだいアーティストを広ひろく招聘しょうへいする「SUMMER SONIC」への出演しゅつえんも果はたしたが、「ロッキン」は邦楽ほうがくのロックアーティストを中心ちゅうしんにしたラインナップなので、初はじめてENHYPENに触ふれる人ひとも多おおいだろう。音楽おんがくナタリーでは、そんな人ひとたちのためにENHYPENというグループの特徴とくちょうとともに音楽おんがく的てきな魅力みりょくを紹介しょうかいしていく。

ENHYPENは、2020年ねんに配信はいしんされた韓国かんこくの超ちょう大型おおがたプロジェクト「I-LAND」から誕生たんじょうしたグローバルボーイグループだ。参加さんか者しゃ内ないでの投票とうひょうやプロデューサーの評価ひょうか、そして世界せかい各国かっこくの視聴しちょう者しゃによるグローバル投票とうひょうの結果けっか、メンバーとして選出せんしゅつされたHEESEUNG、JAY、JAKE、SUNGHOON、SUNOO、JUNGWON、NI-KIの7人にんは全員ぜんいんが並外なみはずれた実力じつりょく者しゃで、かつ容姿ようし端麗たんれい。さらに、それぞれがグループに深ふかみをもたらすキャラクターの持もち主ぬしであった。

ENHYPEN (P)&(C) BELIFT LAB Inc.

ENHYPENを構成こうせいする7人にんのメンバー

ここで簡単かんたんにメンバー紹介しょうかいをしたい。まずは2004年ねん生うまれのJUNGWON。グループ内ないでは“年下としした組ぐみ”のメンバーでありながら、ENHYPENのリーダーを務つとめている。非常ひじょうに勤勉きんべんな性格せいかくで、メンバーからの信頼しんらいも厚あつい。グループの中なかで最もっとも長ながい練習れんしゅう生せい期間きかんを経へてデビューを掴つかんだのは、2001年ねん生うまれの最年長さいねんちょう・HEESEUNG。絶対ぜったい音感おんかんを持もち、歌うたもダンスもハイレベルにこなすオールラウンダーだ。

JUNGWON（ジョンウォン） (P)&(C) BELIFT LAB Inc.

HEESEUNG（ヒスン） (P)&(C) BELIFT LAB Inc.

2002年ねん生うまれのJAYは、韓国かんこく語ごはもちろん英語えいごや日本語にほんごも堪能かんのうなマルチリンガル。今年ことし5月がつにリリースされたGLAYの62ndシングル収録しゅうろく曲きょく「whodunit-GLAY × JAY(ENHYPEN)-」でGLAYのTERU（Vo）とのツインボーカルを披露ひろうしたほか、自身じしんのパートの日本語にほんごでの作詞さくしにも参加さんか。昨年さくねん3月がつには優ゆう里さとともコラボレーションして注目ちゅうもくを浴あびた。2002年ねん生うまれのJAKEは幼少ようしょう期きを英語えいご圏けんで過すごしていたが、BTSに憧あこがれ渡わたり韓かん。海外かいがい公演こうえんでは、流暢りゅうちょうな英語えいごを武器ぶきに世界中せかいじゅうのファンを盛もり上あげる。JAKEと同おなじく2002年ねん生うまれのSUNGHOONは、なんと元もとフィギュアスケート選手せんしゅ。国際こくさい大会たいかいで銀ぎんメダルを獲得かくとくするほどの実力じつりょく者しゃだったが、彼かれもBTSに憧あこがれ練習れんしゅう生せいに。2018年ねんからの2年間ねんかんはフィギュアスケートをしながら練習れんしゅう生せい生活せいかつを送おくっていたのだという。2022年ねんから2023年ねんにかけては、IVEのウォニョンとともに音楽おんがくの番組ばんぐみのMCを務つとめた。

JAY （ジェイ）(P)&(C) BELIFT LAB Inc.

JAKE（ジェイク） (P)&(C) BELIFT LAB Inc.

SUNGHOON（ソンフン） (P)&(C) BELIFT LAB Inc.

塩しお顔がお好すきにたまらないSUNOOは2003年ねん生うまれ。上品じょうひんな雰囲気ふんいきを漂ただよわせる彼かれだが、グループでは朗ほがらかな“愛嬌あいきょう担当たんとう”として愛あいされている。そしてグループ最年少さいねんしょうの日本人にっぽんじんメンバーNI-KIは2005年ねん生うまれで岡山おかやま県けん出身しゅっしん。「I-LAND」に出演しゅつえんしたときはなんと14歳さいだった。練習れんしゅう生せいになる前まえからキッズダンサーとして活躍かつやくしていたとはいえ、猛者もさが集つどう韓国かんこくの大型おおがたオーディション番組ばんぐみにフレッシュな日本人にっぽんじんが参加さんかし、デビューをつかみ取とったことは当時とうじのK-POPファンの間あいだでかなり話題わだいになった。ちなみにNI-KIは現在げんざいもまだ10代だが、すでにオーラあふれるアーティストに成長せいちょうしている。

SUNOO（ソヌ） (P)&(C) BELIFT LAB Inc.

NI-KI（ニキ） (P)&(C) BELIFT LAB Inc.

洗練せんれんされた音楽おんがく性せいに潜ひそむ耽美たんびな陰かげ

ENHYPENがさまざまなジャンルを取とり入いれながらハイクオリティな“ENHYPEN色しょく”に染そめ上あげた音楽おんがくを世よに送おくり出だすことができるのは、個々ここが強烈きょうれつなキャラクターの持もち主ぬしであると同時どうじに、ENHYPENならではのコンセプトと表現ひょうげん力りょく、パフォーマンス、そして音楽おんがくの技術ぎじゅつと感性かんせいを常つねにアップデートし続つづけているからだろう。

彼かれらは今年ことし7月がつ12日にちに「ROMANCE : UNTOLD」というフルアルバムをリリースした。ENHYPENの音楽おんがく的てきな特徴とくちょうはボーカルに耽美たんびな陰かげを持もっていること。加くわえて全体ぜんたい的てきにベースの音おとが大おおきく、楽曲がっきょくの推進すいしん力りょくになっていることが多おおい。本ほん作さくでは今いまK-POPでブームになっているレトロサウンドが取とり入いれられているが、やはりボーカルの表現ひょうげん力りょくと強つよいベースによって、ENHYPENらしい洗練せんれんされたグルーヴのある作品さくひんに仕上しあげられている。

またENHYPENは複数ふくすうの感情かんじょうを同時どうじに表現ひょうげんすることに長たけたアーティストでもある。それは前述ぜんじゅつしたメンバーそれぞれの個性こせいと実力じつりょくによるものだが、同時どうじに制作せいさくチームも、多様たようで複雑ふくざつな感情かんじょうを楽曲がっきょくに落おとし込こむことを意識いしきしているように感かんじる。最新さいしん作さくのリード曲きょく「XO (Only If You Say Yes)」はミッドテンポのダンストラックだが、タイトルには“承諾しょうだく”と“反対はんたい”という正せい反対はんたいの意味いみが込こめられている。この曲きょくのプロデューサーは、アメリカの新しん世代せだいシンガーソングライター・JVKE。ビンテージシンセのドリーミーな音色ねいろ、ファンキーなギターカッティングとベースラインでリズムを牽引けんいんし、フックではボーカルにエフェクトをかけて刻きざんでしまうという、K-POPではあまり使つかわれない手法しゅほうを大胆だいたんに取とり入いれている。

“ENHYPENのベース音おん”として象徴しょうちょう的てきなのは、やはり昨年さくねん発表はっぴょうされた「Bite Me」ではないだろうか。この曲きょくはトラックに意識いしきを集中しゅうちゅうさせると、実じつはベースとパーカッションを中心ちゅうしんに据すえた音おと数すうが少すくないファンクであることがわかるが、ENHYPENの繊細せんさいかつ大胆だいたんなボーカル表現ひょうげんによって、楽曲がっきょくに耽美たんびで退廃たいはい的てきな印象いんしょうがもたらされている。なおENHYPENはこの楽曲がっきょくの日本語にほんごバージョンで、昨年さくねん末まつのTBS「第だい65回かい 日本にっぽんレコード大賞たいしょう」にて特定とくていの地域ちいきや国家こっかの人気にんきを越こえて優すぐれたグローバルな活躍かつやくを見みせたアーティストに与あたえられる賞しょう「特別とくべつ国際こくさい音楽おんがく賞しょう」を受賞じゅしょうした。

BTSの「Butter」「Dynamite」以降いこう、K-POPではマイケル・ジャクソンやブルーノ・マーズを彷彿ほうふつとさせるファンク、ソウルを全面ぜんめんに出だす流ながれができた。ENHYPENもそうしたムーブメントをしっかり取とり入いれている。まさに「ROMANCE : UNTOLD」の収録しゅうろく曲きょくである「Brought The Heat Back」がそうだ。ファンキーなディスコポップで、休やすむ間あいだもなく変化へんかするトラックと華麗かれいなメロディーの展開てんかいが強烈きょうれつな印象いんしょうを与あたえている。しかし、彼かれらは常つねにどの曲きょくにもデビュー曲きょく「Given-Taken」にあったダークな雰囲気ふんいきの片鱗へんりんを忍しのび込こませているように感かんじる。

“K-POPらしさ”を感かんじる理由りゆう

ENHYPENの楽曲がっきょくがもたらすイメージはメンバーのビジュアルから想起そうきされるものも大おおきい。例たとえばグループとして初はつのミリオンセラーを記録きろくした1stフルアルバム「DIMENSION : DILEMMA」（2021年ねん）に収録しゅうろくされている「Tamed-Dashed」は、“The 夏なつ！”なロックチューンだ（ちなみにこの曲きょくもベース音おんが非常ひじょうに大おおきい）。なのに、なぜか儚はかなさを感かんじてしまう。ENHYPENが紹介しょうかいされる際さい、「多様たような」という言葉ことばがよく使つかわれる。それは単たんに音楽おんがく性せいのみを指さしているのはでなく、おそらくメンバーのキャラクターや個性こせいがそれぞれの楽曲がっきょく表現ひょうげんの中なかに織おり込こまれているからだと思おもう。1人ひとりの人間にんげんの中なかにはさまざまな感情かんじょうが渦巻うずまく。一見いっけんすると相反あいはんするような感情かんじょうも共存きょうぞんしている。ENHYPENの軸じくとなるコンセプトは“儚はかなさと繊細せんさいさ”だと推測すいそくするが、彼かれらはあえてそこに縛しばられない多面ためん性せいを持もって活動かつどうしているように思おもえる。

個人こじん的てきにはデビュー作さくである1stミニアルバム「BORDER : DAY ONE」（2020年ねん）が好すきだ。K-POPでは、アルバム作品さくひんのリリース日びを迎むかえるまでの数すう週間しゅうかんを事前じぜんプロモーション期間きかんと位置付いちづけ、期間きかん中ちゅうにコンセプトフォトやティザー映像えいぞうといったコンテンツを通つうじて作品さくひんのムードを“チラ見みせ”するケースが多おおい。同どう作さくも例外れいがいではなく、アルバムの中核ちゅうかくをなすリード曲きょく「Given-Taken」が持もつ、どこか不穏ふおんさが滲にじむ世界せかいが表現ひょうげんされた。しかし蓋ぶたを開あけると、「Given-Taken」を除のぞくその他たすべての収録しゅうろく曲きょくにレゲエやダンスホールの要素ようそが盛もり込こまれている。デビュー1作さく目めから、グループコンセプトを象徴しょうちょうするようなダークなリード曲きょくと正せい反対はんたいの要素ようそをミックスさせて、1つの作品さくひんとして成立せいりつさせてしまうところにK-POPらしさ、ニューウェイブ的てきな実験じっけん精神せいしんを感かんじた。ENHYPENが送おくり出だす音楽おんがくにはさまざまなタイプのサウンドがあるが、どれもスタイリッシュで、いい意味いみでK-POP的てきな予想よそう外がいの驚おどろきを感かんじさせてくれる。

1stフルアルバムのリパッケージ作品さくひん「DIMENSION : ANSWER」（2020年ねん）はハウス、EDMのサウンドが中心ちゅうしんで、「Bite Me」が収録しゅうろくされた4thミニアルバム「DARK BLOOD」（2023年ねん）はタイトル通どおりダークサイドに振ふり切きっている。一方いっぽうその次つぎの5thミニアルバム「ORANGE BLOOD」（2023年ねん）では、情緒じょうちょ的てきでセンチメンタルなサウンドで人間にんげんの温あたたかみや生々なまなましさを感かんじさせた。最新さいしん作さく「ROMANCE : UNTOLD」はこれまでのグループやメンバーのキャリアを踏ふまえながら“2024年ねんの感性かんせい”で表現ひょうげんされたような作品さくひんに見みえる。同どう作さく収録しゅうろくの「Highway 1009」は初はつのファンソング（ファンに向むけた楽曲がっきょく）で、HEESEUNGがプロデュースを担当たんとう。作詞さくしにはメンバー全員ぜんいんが参加さんかしている。

ENHYPENといえば一糸いっし乱みだれぬパフォーマンス力りょくが際立きわだつが、彼かれらがリリースしてきたすべての作品さくひんに通つう底そこする魅力みりょくは、7人にんのカラフルな個性こせいとボーカルであるように思おもう。あくまで私わたしの予想よそうだが、おそらく8月がつ10日とおかの「ロッキン」ではロックテイストの日本語にほんご曲きょくを中心ちゅうしんにセットリストが組くまれるのではないだろうか。だが夏なつということもあるので、個人こじん的てきには「XO (Only If You Say Yes)」や「Royalty」のようなメロウなファンク、「ParadoXXX Invasion」や「Future Perfect (Pass the MIC)」のようなヒップホップ楽曲がっきょくも聴きいてみたい。当日とうじつ参加さんかされる方ほうは、ぜひ現場げんばで生なまのENHYPENの迫力はくりょくに圧倒あっとうされてもらいたい。