音楽おんがくのメニューいっぱいあります！

──5年ねんぶりのニューアルバム、アートワークの時点じてんで100点てんです！

やったー！ ありがとうございます！

──あのジャケ写じゃけしゃが公開こうかいされた時点じてんで、藤井ふじいさんがまたとんでもないものを出だしてきたと思おもいましたよ。特とくに初回しょかい盤ばんのメニュー型がたスペシャルパッケージがヤバそうで。

めちゃくちゃ気きに入いっているんです。ロイヤルホストさんがメニューの写真しゃしんをいっぱい貸かしてくださったんですよ。普通ふつうは貸かしてもらえないので、ありがたいなと思おもっています。

──そもそも、なんでこういうおかしなことになったんですか？

最初さいしょからそういうイメージがあったわけじゃないんです。去年きょねんの夏なつぐらいからアルバムの制作せいさくを始はじめたんですけど、改あらためていろんな種類しゅるいの音楽おんがくがあるなと思おもったんですね。「いろんなジャンルの曲きょくを用意よういしました」と伝つたえようと考かんがえたときに、ロイヤルホストのグランドメニューが頭あたまに浮うかんで。スパゲティがあってパンケーキもあって和食わしょくもあって……いっぱいあります！というイメージで、アルバムタイトルも「Music Restaurant Royal Host」にしました。

──いろんなメニューがある＝ファミレスじゃなくて、初はじめからロイヤルホストに限定げんていしていたんですね。

はじめはシズラーも考かんがえたんですけど、シズラーはサラダ中心ちゅうしんなので、よりバラエティ豊ゆたかなロイヤルホストにしました。

──基本きほん、藤井ふじいさんの作品さくひんのクオリティは保証ほしょう済ずみじゃないですか。

いやそんな（笑）。

──あとは間口まぐちがどう広ひろがるかということだと思おもってたので、今いま作さくは曲きょくも含ふくめてものすごくバランスがいいと思おもいました。

ありがとうございます！ 豪つよしさんが前まえに言いってくださった、「ダンスミュージックをやるのはもちろんいいけど、歌謡かよう曲きょくを忘わすれないほうがいい」という言葉ことばがテーマにありました。自分じぶんが好すきなものと自分じぶんらしさはちょっと違ちがうと思おもうから、そこは大事だいじにしています。

──そういう意味いみでは間口まぐちが広ひろがりそうな曲きょくがあって、いつもの藤井ふじいさんらしいダンスミュージックもあって、そしてこの異常いじょうにインパクトがあってとっつきやすいジャケですからね。見事みごとですよ。

うれしいです。このアルバムを作つくっているときは「light showers」（2017年ねん9月がつに発売はつばいされた4枚まい目めのオリジナルアルバム）を「いいね」と言いってくださった豪つよしさんと宇多うた丸まるさんの顔かおがずっと浮うかんでいたんです。そのときのミュージックビデオ（90年代ねんだいのテレビCMを模もした架空かくうのCM集しゅう）みたいに、「これはいいね」と言いってもらいたいという邪よこしまな気持きもちはちょっとありました。

「そんなこと言いってるのミッツ・マングローブさんと藤井ふじいさんだけですよ」

──ジャケット以外いがいにも100点てんポイントがいくつもありましたよ。

うれしいです！ ほかにはなんですか？

──先行せんこう配信はいしんされた「We Should be Dancing」に度肝どぎもを抜ぬかれたんですよ。鈴木すずき杏樹あんじゅさんがKAKKO名義めいぎでStock Aitken & Watermanプロデュースで90年ねんにイギリスでデビューしたときの曲きょくを、本人ほんにんも引ひっ張ぱり出だして一緒いっしょにセルフカバーするっていうのがとんでもないし、曲きょくも藤井ふじいさんの嗜好しこうドンピシャじゃないですか。

そうなんですよ！ 僕ぼくは杏樹あんじゅさんが出演しゅつえんしていた資生堂しせいどう「セレンシュア」のコマーシャルも、大森屋おおもりやの海苔のりのコマーシャルも“KAKKOが歌うたってる”という感覚かんかくが強つよくて。

──前まえに藤井ふじいさんと、女優じょゆうさんの音楽おんがく活動かつどうがいかに素晴すばらしいかという話はなしで盛もり上あがったこともあったし、それに藤井ふじいさんはStock Aitken & Watermanも好すきじゃないですか。だから、やりたいことをやりつつ、すごい狂くるったことをやっているのが伝つたわって。

狂くるってる自覚じかくはまったくなかったですけど（笑）、おっしゃることはわかります。

──なぜこれが実現じつげんできたんですか？

僕ぼくの杏樹あんじゅさんへの忠誠ちゅうせい心しんが認みとめられたんだと思おもいます。

──なるほど！

杏樹あんじゅさんと初はじめてご一緒いっしょしたのはタカラトミーのおもちゃのCMでした。ただ口くちゲンカするだけの演出えんしゅつで、監督かんとくさんが「ケンカしてください、用意よういスタート！」でいきなり始はじまる変かわった現場げんばで。杏樹あんじゅさんとはじめましてでこんな近ちかい距離きょりでケンカしなくちゃいけないし、当時とうじはフイルムで撮影さつえいしているからNGを出だす緊張きんちょう感かんもハンパじゃなくて、何なにか言いわないとと焦あせって、すっごい失礼しつれいなことを言いっちゃったんです。でも杏樹あんじゅさんは「アハハハハハハ！ なんですかー！」って笑わらい飛とばしてくれて、なんて優やさしい方ほうなんだろうと。結局けっきょく1本ほん目めの撮影さつえいは2人ふたりとも笑わらってしまって使つかえなかったんですけど、2本ほん目めでなんとかOKになりました。そのあと何なん度どかバラエティ番組ばんぐみで共演きょうえんして、2005年ねんにはレギュラー番組ばんぐみ「ベリーベリーサタデー！」（2005年ねん4月がつから2007年ねん3月がつまでフジテレビ系けいで放送ほうそうされた関西かんさいテレビ制作せいさくのワイドショー）でご一緒いっしょすることになったんです。そのときに「We Should Be Dancing」の音源おんげんを貸かしてもらえませんか？と頼たのんだら「ないですよー！」とおっしゃっていたんですけど、当時とうじ番組ばんぐみが大阪おおさかでの収録しゅうろくで、杏樹あんじゅさんのご実家じっかも関西かんさいだったので「でも実家じっかには絶対ぜったいありますよね？」「ちょっと実家じっかで探さがしてきてもらえませんか？」と食くい下さがって。

──ダハハハハ！ そこまで粘ねばった（笑）。

そしたら「もう！」って言いいながら、次つぎの週しゅうに12inchレコードを持もってきてくださったんです。お母様かあさまが大事だいじに保管ほかんされていたレコードなんですけど、ご実家じっかではプレーヤーがなくて聴きけないとおっしゃっていたので、吉本よしもとのレコード会社かいしゃの人ひとに頼たのんでCDにしてもらってお渡わたししたら、すごく喜よろこんでくれました。僕ぼくがKAKKOのことをすごく好すきだということは最初さいしょからずっとお伝つたえしていたんですけど、杏樹あんじゅさんはいつも「そんなこと言いってるのミッツ・マングローブさんと藤井ふじいさんだけですよ」とおっしゃるんですよね。そんなわけないじゃないですか！ 杏樹あんじゅさんってすごく明あかるい“陽ひ”のオーラをくれる人ひとなので、やっぱり歌うたってほしくて。陽気ようきで歌うたが好すきな杏樹あんじゅさんと、今回こんかいレコーディングをご一緒いっしょできたのは本当ほんとうにうれしかったです。鈴木すずき京香きょうかさんのときもそうですけど、口くちに出だせば夢ゆめは叶かなうんだなと思おもって。

──前まえに高田たかだ純じゅん次じさんにインタビューしたとき、高田たかださんが「鈴木すずき杏樹あんじゅさんの音楽おんがく活動かつどうには触ふれちゃいけないことになっている」みたいなことを言いっていて、それくらい黒くろ歴史れきしというかアンタッチャブルなものだとばかり思おもっていたから、こんな正面しょうめん突破とっぱできるんだなと驚おどろきました。

また高田たかだ純じゅん次じさんの適当てきとうな話はなしだったんですかね（笑）。杏樹あんじゅさんは「ただ聞きかれないだけです。聞きかれたら話はなしますけど、聞きかれないんです」「だからミッツさんと藤井ふじいさんだけなんです」と言いうんですよ。だから豪つよしさんが杏樹あんじゅさんにインタビューしてください！ 杏樹あんじゅさんはソニーの世界せかい的てきなコンペでイギリスに行いって、しかもStock Aitken & Watermanの事務所じむしょで電話でんわ番ばんみたいなことをしていて、カイリー・ミノーグやシニータらがどんどんデビューしていくところでデビューのタイミングを待まってたんですよ。で、実際じっさいにデビューして、カイリーとかDead or Aliveと一緒いっしょにツアーも回まわってるんです。プロモーションでUKツアーもアメリカツアーも行おこなったんですけど、湾岸わんがん戦争せんそうで日本にっぽんに帰かえってきたんです。この話はなし、壮絶そうぜつなんですよ。

──女優じょゆうデビュー前まえの話はなしをきちんと掘ほり下さげてみたいですね。

ホンマにやってください！ すごいプロジェクトだったのになんで言いわへんねやろと思おもって。

──わかりました！

お願ねがいします！

Spotifyだから出会であえたうれしい1曲きょく

──アルバムの話はなしに戻もどりますが、「東西とうざい南北なんぼく」は曲きょくがよすぎますね。

ありがとうございます！

──僕ぼくの年間ねんかんベスト級きゅうの名曲めいきょくでした。

うれしいです！ 堀込ほりごみ泰行やすゆきさんには絶対ぜったいに2曲きょく作つくっていただきたいとお願ねがいして、最初さいしょにできたのが「ヘッドフォン・ガール -翼つばさが無なくても-」だったんです。この曲きょくは自分じぶんからリクエストをせずに、「泰行やすゆきさんがいいと思おもうものをいただきたいです」とご相談そうだんしたんです。でも2曲きょく目めはさすがに何なにかあったほうがいいということで、「文字もじがそろっていなくていいから詞しを書かいてください」と言いわれて僕ぼくがいろいろ書かいたんですよ。だから「東西とうざい南北なんぼく」は半分はんぶん詞し先さきみたいな感かんじですね。でも実際じっさいに使つかってもらった歌詞かしは半分はんぶん以下いかです。「コーヒーとパン」とか「トチッたセリフ」とか。旅たび公演こうえんで岡山おかやまを周しゅうっているときにバスの中なかで書かいたので、「ホテルで鏡かがみの前まえで日記にっきにつぶやく」みたいな、旅たびしてる話はなしなんです。

──ちょっとすごかったです。

僕ぼくもすごい歌うたをもらったなと思おもって。泰行やすゆきさんの「なんでそんな瞬間しゅんかんを切きり取とるんですか？」みたいなところが好すきなんです。冨田とみた謙けんさんのアレンジもいきなり歌うた始はじまりで驚おどろきましたけど、歌うたってみたらすごく素敵すてきで。

──「東西とうざい南北なんぼく」とか安部あべ恭弘やすひろさんの「アイリーン」のカバーとか、わかりやすいポップスが間あいだに入はいることで、すごくバランスがよくなっていると思おもいます。

よかった！

──「アイリーン」を選曲せんきょくした理由りゆうはなんだったんですか？

「アイリーン」はお恥はずかしながら若わかい頃ころは全然ぜんぜん知しらなくて。1、2年ねん前まえに新あたらしい歌うたをいろいろ知しりたいと思おもってSpotifyを使つかい始はじめたんですけど、運転うんてんしているときに「アイリーン」が流ながれてきて。「何なにこれ、いい歌うた！」と、思おもわず車くるまを停とめて聴ききました。ここに来きてSpotifyで出会であえた、すごくうれしい1曲きょくです。

──確たしかシングルカットされていない曲きょくなんですよね。

Spotifyだったから出会であえたんだと思おもいます。Spotifyの「あなたが今年ことし一番いちばんよく聴きいた曲きょくはこれ！」みたいなのに上あがってきたのが和久井わくい映見えみさんの「抱だきしめたいのはあなただけ」と「アイリーン」で、全然ぜんぜん新あたらしい曲きょくと出会であっていないんですけど（笑）。カバーをやらせていただこうと思おもったのは、豪つよしさんから言いわれた「ダンスミュージックもいいけど」という言葉ことばの影響えいきょうが大おおきいです。