柏木ひなたインタビュー|ネガティブな歌姫がソロで歌い続ける理由

柏木かしわぎひなたの1stソロアルバムが完成かんせいした。そのは「1/24」。24さい誕生たんじょうむかえた2023ねん3がつ29にち、ソロデビューが正式せいしき決定けっていしたことを報告ほうこくした彼女かのじょの、ソロアーティスト1年生ねんせいとしてけた1年間ねんかん凝縮ぎょうしゅくした作品さくひんとして銘打めいうたれたタイトルだ。

ソロ始動しどう柏木かしわぎは7がつに「ここから。」、12月に「piece of me」と2さくのEPを配信はいしんリリース。ライブ活動かつどうひかに、オリジナルきょく着々ちゃくちゃく制作せいさくしてきた。アルバム「1/24」にはEPで配信はいしんされた10きょくに、川谷かわたにおん(indigo la End、ゲスのきわ乙女おとめ、ジェニーハイ、ichikoro、礼賛らいさんろしの「おどりましょ」、尾崎おざき雄貴ゆうき(Galileo Galilei、BBHF)が作詞さくし参加さんかした「19」などの新曲しんきょく5きょくくわえたぜん15きょく収録しゅうろく。サウンドの嗜好しこうせいはさまざまなバラエティにんだ楽曲がっきょくぐんで、シンガー柏木かしわぎひなたのいろとりどりの歌声うたごえたのしめる。

小学生しょうがくせいころから在籍ざいせきしていたアイドルグループ・私立しりつ恵比寿えびす中学ちゅうがく卒業そつぎょう躊躇ちゅうちょなくソロで活動かつどうしていくみちえらんだ柏木かしわぎだが、彼女かのじょはなぜうたうたつづけるのか? アルバム完成かんせいまでの1年間ねんかんについてはなしいていくうち、そんな根本こんぽんてき質問しつもんにたどりついた。

取材しゅざいぶん撮影さつえい / 臼杵うすきしげるあきら

とにかく基盤きばんづくりの1ねん

──昨年さくねん6がつにインタビューした段階だんかいではデビューきょく「From Bow To Toe」1きょくのみという状況じょうきょうでしたが(参照さんしょう柏木かしわぎひなたインタビュー|ソロアーティストとしての第一歩だいいっぽ、「From Bow To Toe」にめた感謝かんしゃ言葉ことば)、そこからEPを2さくリリースして、アルバムよう新曲しんきょくくわえると合計ごうけい15きょくがそろいました。オリジナルだけでワンマンができる分量ぶんりょうですね。

いっぱいつくりました。とにかくライブがしたいから。

柏木ひなた

──昨年さくねんの3がつ29にち、24さい誕生たんじょうにソロデビューすることを発表はっぴょうしてからの1ねんは、ソロとしての骨組ほねぐづくりに時間じかんいた?

はい。ライブはやりたいけど、カバーきょくはなるべくすくなくしたくて。自分じぶんのソロとしての楽曲がっきょくつくって、ちゃんと土台どだいつくってから本格ほんかくてきうごそうとかんがえてました。

──本格ほんかくてきなワンマンライブは2nd EP「piece of me」のリリース、12月にはじめておこなわれました(参照さんしょう柏木かしわぎひなた、ソロデューはつワンマンでちかった決意けつい「ありのままでみなさんをたのしませたい」)。

EPを2つした段階だんかいで10きょくできてたから、発表はっぴょうきょく1きょくと、カバーを4きょくれて90ふんくらい。ワンマンライブならそのくらいの時間じかん最低さいていラインで。あとはしゃべりに時間じかん使つかってもいいんだよとわれたけど、1人ひとりじゃ全然ぜんぜんはなせないから……ライブがわって楽屋がくやかえったらホントにぴったり90ふんで、わたしどんだけはなせないんだよとおもいました(笑)。でも、ファンのみんなにもやっぱり「ソロデビューから半年はんとしでオリジナルきょくが10きょくもできるなんて」とよろこんでもらえていて、それはうれしかったですね。

──すくないきょくすうでも、ひとまずそれをってたいバンライブなどにバンバン場数ばかずむという方法ほうほうもあったとおもいますけど、そうはしなかったんですね。

たしかに。でもそれは全然ぜんぜんかんがえてなかったです。とにかく基盤きばん基盤きばんおもっていたので。

全部ぜんぶ自分じぶんのソロアルバムは「こわい!」

──柏木かしわぎさんがソロデビューするといたときにまず想像そうぞうしたのは、10代のころからあこがれを公言こうげんしている安室あむろ奈美恵なみえさんのようなR&B、バラードの方向ほうこうせいで。あとはおなじくルーツとしてかたっているハロー!プロジェクトの、太陽たいようとシスコムーンに代表だいひょうされるソウル / ファンク路線ろせん想像そうぞうしていましたが、1stアルバムまでの15きょくでそれらの要素ようそかんじさせる楽曲がっきょくはないですよね。そこがちょっと意外いがいでした。

わたしにもスタッフさんにも、いままでたことのない柏木かしわぎひなたをたいというおもいがあって。もうはじめからいろんな方向ほうこういていたいなとかんがえた結果けっか、こんなバラバラでむっちゃくちゃなアルバムになりました(笑)。

──可能かのうせいひろげることを優先ゆうせんして。

はい。自分じぶんでもそうしたかったし、ソロになってからのディレクターさんはエビ(私立しりつ恵比寿えびす中学ちゅうがく時代じだいわたしをまったくてないからこそ、先入観せんにゅうかんなしにいろんなきょくってきてくれるんですよ。むかしからわたしのことをってるひとだったら「こういうきょく似合にあうだろうな」でかんがえてくれるとおもうんですけど、いい意味いみでそれがまったくない。わたしわたしで、自分じぶんかんがかたにとらわれたくないという気持きもちがあるので、とにかく挑戦ちょうせんしてあたらしい自分じぶんられているという実感じっかんはすごくあります。

──デビューきょく底抜そこぬけにあかるくアッパーな「From Bow To Toe」だった段階だんかいで「想像そうぞうとはちがうことをやりそうだぞ」というかんはありましたけど。

そう(笑)。そこからはじまって、本当ほんとうにバラバラな15きょくがそろったので……アルバムはきょくじゅんかんがえるのがすごく大変たいへんでした。

──EP2さく配信はいしんリリースという助走じょそうがあったものの、個人こじん名義めいぎでのフルアルバム、かつCDでのリリースは心持こころもちがちがう?

こわい! だって15きょくずっとわたしこえですよ? こわいとおもう(笑)。わたし自分じぶん音源おんげんけないんですよ。レコーディングされて、ばんになった自分じぶんこえくのがあまり得意とくいではなくて。

──それはむかしから?

むかしから。でもライブ音源おんげんけるんですよ。ライブ音源おんげんいて反省はんせいしたりする部分ぶぶんもあるんですけど、ちょっとあらくて生々なまなましいかんじが、「わっ、人間にんげん!」っておもうんです。なにってるかわからないですよね(笑)。

──(笑)。レコーディングのときは人間にんげんではない?

いや、人間にんげんなんですけど(笑)、「ちゃんと音程おんていわせなきゃ」とか「リズムを正確せいかくにしなくちゃ」とか「この言葉ことばはちょっとアクセントをつよくしなくちゃ」とか、かんがえることがおおいんですよ。ライブはその正確せいかくさをすこくずしたほうが気持きもちがいいし、なまかんがある。だからアルバムをとおしてしっかりくのがこわいです。きましたけどね(笑)。

──客観きゃっかんてきにどうおもいました? この「1/24」というアルバムを。

なんかもう、ホントにずかしいの(笑)。ずっと自分じぶんこえだから。

──ソロアーティストのアルバムですからね(笑)。

みんながよろこんでくれるのはうれしいけど……とにかくずかしい。これまでもずっといろんなうたかた挑戦ちょうせんしてきたけど、本当ほんとうにガラッとうたかたえたきょくがいくつかあるから、自分じぶんでも新鮮しんせんだな、あたらしいなとかんじました。

柏木ひなた
柏木ひなた

──これまで以上いじょう自分じぶんこえったからこそずかしい?

そうなんです。もちろんいままでもってなかったわけじゃないけど、グループで活動かつどうしていたときは、1人ひとりこえ使つかわれるのはソロパートしかなかったから、全部ぜんぶ自分じぶんこえとなると不思議ふしぎ感覚かんかくで。

──自分じぶんこえとしっかりなかで、自分じぶんでも意外いがいだなとかんじるようなこえたいする発見はっけんはありましたか? これだけバリエーションをひろげると「ここが得意とくいだとおもっていたけど、意外いがいとこっちのほうがいいな」みたいなきもあるのかなと。

年々ねんねんごえひくくなっているから、低音ていおんしやすくなったというのはあります。高音こうおんなくなったわけじゃなく、プラス低音ていおんしやすくなった。高音こうおん高音こうおんで、こえかたがソロになってから多少たしょうわっていて。いままではたかおとすとき、やっぱり“アイドルのうた”という意識いしきがあったんだとおもう。アイドルらしいあかるくてたかこえ苦手にがてだったし、ボイトレの先生せんせいからも「ひなたはせつないきょくくらきょく得意とくいなのに、なんで“あかるい”“たのしい”ができないの?」ってわれつづけてたんです。なにより、エビ時代じだいくらべるならやっぱり「ちゃんととしかさねてるんだな」というのが一番いちばんおおきいです(笑)。たとえば「We Know」の高音こうおんはエビのきょくわらないくらいげてうたってるけど、むかしだったらもっとさわやかなこえになってたとおもう。

普段ふだんわたしをそのままあらわした「piece of cake!」

──ではここからアルバム「1/24」の具体ぐたいてきなおはなしを。おもろくろしの新曲しんきょくについてくわしくかせてください。さきほどきょくじゅんめになやんだとおっしゃってましたけど、1きょくはなぜ「piece of cake!」になったんですか?

これはできたときから1きょく!っておもってました(笑)。なやんでない。

──アコースティック楽器がっきのラフな演奏えんそうで、うたかたもくだけていて、オープニングきょくとしては意表いひょうかれました。

デモをいただくときから「めちゃくちゃなきょくです」とわれていて、いて「うん」とおもいました(笑)。でも歌詞かしふくめて「1/24」というアルバムのことをあらわしてくれている楽曲がっきょくで。もともとデモにはいっていたピアノのおとがかわいかったからそのまま使つかったり、動画どうがで「え~」とかってるこえしてあたまれたり、普段ふだんわたしをそのままあらわしているかんじ。

柏木ひなた

──紗幕しゃまくにシルエットがかんでドン!みたいな、ライブで表現ひょうげんしやすいカッコいいオープニングにもできたとおもうんですけど、ぎゃくですよね。ふわっとはじまる。

そう。「piece of cake!」から「おどりましょ」のギャップをあたまからかんじていただきたいなということで、これを1きょくにしてみました。

──「piece of cake!」をふくめて新曲しんきょくは5きょくですけど、EPでリリースしていた10きょくふく全体ぜんたいのバランスはどのように意識いしきしました?

あたらしい5きょくはバラードが1つもないんですよ。それはすでにバラードてききょくがたくさんあったから。12月のライブのときに、ちょっとしずかになる時間じかんおおいなとおもったので、「たのしくノれるきょくがあるといいね」というはなしはしました。

──なるほど。ライブでの全体ぜんたいてきなトーンをかんがえたときに、りないピースをめていくような。

はい。そのさきのライブをイメージしてつくったところがおおきいです。