のんびりやってられない

──前作ぜんさく「M.R.I_ミライ」から約やく1年ねん弱じゃくというスパンで2ndアルバム「ウチュウノアバレンボー」が完成かんせいしました。リリースのペースがだいぶ早はやいなという印象いんしょうなんですが……。

向谷むくや実み（Key）　あ、そうですか？

櫻井さくらい哲夫てつお（B）　年とし1枚まいペースだから、そんなに早はやいとも思おもわないですけどね。

向谷むくや　カシオペアで一緒いっしょに活動かつどうしていた80年代ねんだい当時とうじは「1年ねんでアルバム2枚まい」とか「2年ねんで3枚まい」とかって契約けいやくがあったりもしたから、それに比くらべたら全然ぜんぜんだよね。しかも、今いまは枚数まいすうありきじゃなくて自分じぶんたちのペースで音楽おんがくを作つくれているので、特とくに早はやいとも遅おそいとも感かんじないかなあ。

櫻井さくらい　1年ねんに1枚まいくらいがちょうどいいペースなんじゃないですかね。それ以上いじょう空あけると間延まのびしちゃうというか……年齢ねんれい的てきにも、あんまりのんびりやってられないんですよ（笑）。

向谷むくや　残のこされた時間じかんが限かぎられてるからね（笑）。

神保じんぼ彰あきら（Dr）　まだ2ndアルバムがリリースされてもいないのに、もう3rdアルバムのアイデアが沸にえ々と湧わいてきたりもしていて。

向谷むくや　まあデビューしたてのバンドですから、少すくなくともアルバム4枚まい目めぐらいまでは“このバンドでやれること”を次々つぎつぎと提示ていじしていく段階だんかいなのかなと思おもいます。タイトにスケジュールを詰つめてやっている意識いしきはまったくないですね。

──なるほど。その中なかで今いま作さくの“宇宙うちゅう”というモチーフについては、どこから出でてきたアイデアなんですか？

櫻井さくらい　アルバムの1曲きょく目めに収録しゅうろくした「ウチュウノアバレンボー」のデモができたときに、ものすごくスケールの大おおきな暴あばれっぷりがすでに発揮はっきできていたので、このタイトルがなんとなく浮上ふじょうしてきたんです。みんな最初さいしょからハンパなく気合きあいが入はいってた。

神保じんぼ　最初さいしょに形かたちになったのがこの曲きょくだったよね。「ウチュウノアバレンボー」というタイトル案あんもかなり早はやい段階だんかいから出でていて、なんとなくアルバム全体ぜんたいを象徴しょうちょうする言葉ことばとしてハマった感かんじです。

向谷むくや　その名称めいしょうを最初さいしょに決きめたからこういうアルバムになった、ってことだよね。前作ぜんさくが「大人おとなげないオトナの音楽おんがく」というキャッチコピーで、今回こんかいのタイトルが「ウチュウノアバレンボー」というのは、まあ五ご段だん活用かつようみたいなもんで。

櫻井さくらい　五ご段だん活用かつよう（笑）。

向谷むくや　「大人おとなげないオトナの音楽おんがく」をしのぐ言葉ことばはなんだといったら、もう「宇宙うちゅう」くらいしかない！みたいなノリです。

神保じんぼ　大人おとなげなさに拍車はくしゃをかけよう、という気持きもちは最初さいしょからありましたね。

──実際じっさい、前作ぜんさく以上いじょうに大人おとなげないアルバムで（笑）。それだけ前作ぜんさくでの手応てごたえがあったということだと思おもうんですけれども。

向谷むくや　一定いってい数すうの認知にんちをいただけた感触かんしょくはあります。この間あいだ、「Jazz Fusion Summit 2024」というイベントに出でたんですよ。私わたしたちは新人しんじんバンドとして先輩せんぱい方かたの胸むねを借かりるつもりで臨のぞんだんですが、ステージで「かつしかトリオ、ご存ぞんじですか？」と言いったらけっこう反応はんのうがよくて。

櫻井さくらい　80年代ねんだいに10年間ねんかん一緒いっしょにやっていた3人にんが今いままたこうしてバンドをやっている、ということを喜よろこんでくれているお客きゃくさんがいらっしゃるのを実感じっかんできてうれしかったですね。僕ぼくらはあの頃ころと同おなじことをするのではなく、自分じぶんたちが今いまやりたいことをやっているわけですけど、その姿勢しせいもちゃんと伝つたわったうえで喜よろこんでもらえているのを感かんじました。

向谷むくや　ずっと聴きいてくれている人ひとたちにとっては懐なつかしいものとして、初はじめて聴きく人ひとたちにとっては新あたらしいものとして受うけ取とってもらえているんですよ。

櫻井さくらい　メンバーの共とも作さくという形かたちでやれているのは大おおきいと思おもいます。リーダーを立たてずに3人にんでフランクに意見いけんを交かわしながら作つくっているので、その結果けっかとして、懐なつかしさがありながらもこれまでにない音楽おんがくを生うみ出だすことができている。なので、すごくいい状態じょうたいで2枚まい目めの制作せいさくに入いれましたね。このままみんなが健康けんこうでいれば、どんどんパワーアップしていくかつしかトリオをライブで体感たいかんしていただけるのではないかなと思おもいます。

──本当ほんとうに、くれぐれも健康けんこうには気きを付つけていただきたいです。

向谷むくや　そこがね（笑）。じじいバンド最大さいだいの課題かだいだね。

神保じんぼ　でも、それも1つの挑戦ちょうせんじゃないかと思おもっていて。我々われわれくらいの年代ねんだいになると、若わかい頃ころのままエネルギッシュな人ひとと、芸風げいふうを変かえて省しょうエネになっていくタイプの2種類しゅるいに大おおきく分わかれると思おもうんですよ。それに対たいして、我々われわれは“年齢ねんれいに反比例はんぴれいしてパワーアップしていく”というようなロールモデルを提示ていじできればいいなと。

3人にん全員ぜんいんがリーダーにもバランサーにもなれる

──「リーダーを置おかない」というお話はなしが出でましたけど、3人にんが自由じゆうに意見いけんをぶつけ合あうことで収拾しゅうしゅうがつかなくなったりはしないんですか？

神保じんぼ　それはあんまりないですね。

櫻井さくらい　みんなでアイデアを出だし合あいながら進すすめるんですけど、最終さいしゅう的てきにそれぞれの曲きょくがそれぞれ違ちがう形かたちでまとまるんです。そこに法則ほうそく性せいはないんですよ。まず誰だれかが大元おおもとのアイデアになるものを持もってきて、それを「どうやってもっとよくしようか」とみんなで考かんがえていく……例たとえば僕ぼくが「ここに何なにか刺激しげき的てきな、ジャズっぽいフレーズを入いれます」と言いって演奏えんそうすると、そこに向谷むくやさんが「それならこのハーモニーだろ」ってコードをビャッと当あてるみたいな。そういうのが積つみ重かさなってできあがっていく。

──「これどうよ？」と出だしたものに対たいして、「いいじゃん」となる感覚かんかくが3人にんでそろっているからまとまる感かんじですか？

櫻井さくらい　いや、そろわないです（笑）。

向谷むくや　そろわないよね（笑）。でも、この3人にんはそれぞれリーダーにもなれるし、1人ひとりのメンバーとしてバランスを取とる立場たちばにもなれるんですよ。その両方りょうほうの資質ししつを全員ぜんいんが兼かね備そなえているからバンドとして成立せいりつするんじゃないかと思おもいます。誰だれかが旗はた振ふり役やくになることでスムーズに進すすむこともあるかもしれないけど、それによってほかの誰だれかに遠慮えんりょが発生はっせいするくらいだったら、みんなで「これどうよ？」と徹底的てっていてきに言いい合あえる体制たいせいをとったほうがいいなと。

櫻井さくらい　それによってこれだけ幅広はばひろい音楽おんがくができているというのは間違まちがいないんじゃないかな。自然しぜん発生はっせい的てきなひらめきをみんなが遠慮えんりょなくバンバン言いえる、というのがかつしかトリオのいいところだと思おもいます。

向谷むくや　単純たんじゅんにそっちのほうが楽たのしいんですよ。明確めいかくなリーダーを置おくことのメリットもデメリットも40年間ねんかんずっと経験けいけんしてきた3人にんだし、今いまさら「誰だれがリーダーやる？」なんてことを話はなし合あうような関係かんけい性せいでもないしね。