アルバムは2年ねんに一いち度どの発表はっぴょう会かい

──「Unspoiled」を聴きいて、冒頭ぼうとうからシングル曲きょくとは違ちがう新あたらしいKroiの表情ひょうじょうが見みえてくるような、鮮烈せんれつで冒険ぼうけん心しんに満みちた素晴すばらしいアルバムだと感かんじました。まずは本ほん作さくを完成かんせいさせた今いまのお気持きもちを1人にんずつ聞きかせてください。

関せき将すすむ典てん（B）　この3カ月かげつくらいで仕上しあげた作品さくひんなんですけど、その間あいだに今いままでにない経験けいけんをたくさんしたんです（※インタビューは5月がつ下旬げじゅんに実施じっし）。アメリカに行いって「SXSW」に出演しゅつえんしたり、テレビ出演しゅつえんの多おおい月つきがあったり、何なにより年始ねんしには日本武道館にほんぶどうかんでのライブもあった。そういうこれまでの活動かつどうにはなかったことに取とり組くみながらの制作せいさくだったので、正直しょうじき「ちゃんと作品さくひんと向むき合あえているのか？」と思おもう場面ばめんもありました。でも、いざアルバムが完成かんせいしてみると真摯しんしに向むき合あって作つくり切きることができたんだと実感じっかんしました。

Kroi

長谷部はせべ悠ゆう生せい（G）　関せきさんが言いうように、バンドの状況じょうきょうが「telegraph」（2022年ねん7月がつ発表はっぴょうのメジャー2ndアルバム）を作つくった頃ころとはだいぶ変かわったんですよね。曲きょくを作つくって、リリースして、ツアーをして……という、いつもの活動かつどうの間あいだにテレビ出演しゅつえんであったり、武道館ぶどうかんワンマンであったり、デカいトピックがたくさんあった。特とくに最近さいきんはタイアップをたくさんやらせてもらって、それをシングルとしてリリースしたことも大おおきかったです。タイアップ曲きょくはKroiを知しらない人ひとたちに俺おれらの音楽おんがくを聴きいてもらうチャンスでもあるから、そこに向むけた曲きょくの作つくり方かたにはなるんですよね。だからシングル曲きょくはシングル曲きょくで挑戦ちょうせんしたこともあるし、新曲しんきょくでかなり自由じゆうに好すきなことをやれた感かんじもあるし、「Unspoiled」はそういうのがうまいバランスで混まざり合あったアルバムになったんじゃないかと思おもいます。

益田ますだ英知えいち（Dr）　カレンダーを確認かくにんしたら、武道館ぶどうかんが終おわってから1週間しゅうかん後ごにアルバムのドラムレコーディングが入はいってますね。それまではアレンジやプリプロもやっていない状態じょうたいだったし、武道館ぶどうかんまでは気持きもちを外そとに向むけて活動かつどうしていたので、レコーディングが始はじまっても最初さいしょの頃ころはあまり身みが入はいっていない状態じょうたいでした。ただ、2週しゅうに1回かいレコーディングをして、その間あいだにプリプロやアレンジをやるというハイペースな作業さぎょうをやりながらアルバム用ようの曲きょくを1、2曲きょくくらい録ろくったタイミングで、関せきがPDFで資料しりょうを作つくってきてくれたんです。その資料しりょうには「Unspoiled」というタイトルや、ジャケットのイメージが載のっていて。制作せいさくペースは相変あいかわらず急きゅうピッチでしたけど、頭あたまの片隅かたすみに常つねに「Unspoiled」という言葉ことばがある状態じょうたいで作業さぎょうができたから、1つのテーマに向むき合あう感覚かんかくでレコーディングができたのはよかったですね。

千葉ちば大樹だいき（Key）　僕ぼくはアルバムは2年ねんに一いち度どの発表はっぴょう会かいだと思おもっていて。この発表はっぴょう会かいを無事ぶじに迎むかえられたことにまずはホッとしています。制作せいさくが始はじまると、考かんがえる間あいだもなく手てを動うごかし続つづけなければならないので、とにかく一生懸命いっしょうけんめいやっていたという感かんじで、何なにを意識いしきしていたというわけでもないんです。ただ、これまでにリリースした作品さくひんと比くらべてできることが増ふえていて、そういう部分ぶぶんで成長せいちょうを感かんじて安心あんしんしました。今いままでやってないタイプの曲きょくも入はいっているので、あとは聴きいた人ひとにお任まかせします。とにかく一旦いったん、ここまでがんばりました。

内田うちだ怜れい央ひさし（Vo）　アルバム、ずっと作つくりたかったんですよ。やっと作つくれるってタイミングで今回こんかいはタイアップ曲きょくをたくさん入いれることになって。既すんで発はつ曲きょくがたくさんある中なかで、自分じぶんたちのやりたいことをどのくらいのバランスで出だすか、というのはかなり意識いしきしました。あとは……千葉ちばさんの「アルバムは発表はっぴょう会かい」って言葉ことば、いいですね（笑）。

千葉ちば　ありがとうございます（笑）。

内田うちだ　気きに入いりました（笑）。まさに、アルバムは発表はっぴょう会かいなんですよ。自分じぶんたちが今いまやりたい音楽おんがくを制作せいさくを通とおして確認かくにんできたし、課題かだいも見みえたし、このアルバムが世よに出でることでまた成長せいちょうできる気きがします。

──関せきさんがアルバムタイトルを提案ていあんする際さいに資料しりょうを作つくられたというのは以前いぜんインタビューで拝見はいけんしましたが、そこにはすでにジャケットのイメージもあったんですね。

関せき　そうですね。「Unspoiled」には“腐くさっていない”とか“ダメじゃない”“損そこなわれていない”という意味いみがあるんですけど、最初さいしょはフレッシュな果物くだものや食品しょくひん、そこに音楽おんがくにまつわるものが雑多ざったに混まざっているようなイメージを作つくっていたんです。ほかのタイトル案あんに、英語えいごのつづりを忘わすれてしまったんですけど“防腐ぼうふ剤ざい”という意味合いみあいの言葉ことばもあって。そういった意味いみを踏ふまえて、今回こんかいはRakさんという俺おれらがめちゃくちゃ尊敬そんけいしているアートディレクターの方ほうがいいものに仕上しあげてくださいました。アルバムタイトルに込こめた思おもいはジャケットにも反映はんえいされていると思おもいます。

売うれる曲きょくを作つくって売うれても気持きもちよくない

──武道館ぶどうかんワンマンを終おえてすぐにアルバム制作せいさくに取とりかかったそうですが、当時とうじはその後ごのバンドの展望てんぼうやビジョンについてどのように考かんがえていましたか？

内田うちだ　武道館ぶどうかんが終おわって、より「売うれてえなあ」と思おもったんですよ。というか、武道館ぶどうかんでライブをやっている最中さいちゅうから「これ次じが大変たいへんだな」という感覚かんかくでした。武道館ぶどうかんってバンドにとって1つのゴール的てきなところがあるじゃないですか。そこからさらに上うえに行いくのって大おおきな壁かべだと思おもうんです。その壁かべを破われるような音楽おんがくを作つくらなきゃいけないんだなと。ただ、売うれる曲きょくを作つくって売うれても気持きもちよくないから、自分じぶんたちがやりたいことを周まわりのバランスを見みながらしっかりとやっていく。俺おれは革命かくめいを起おこすのが目標もくひょうなので、そこのバランス感覚かんかくはより鋭するどくしていかなきゃなとは思おもいましたね。

内田うちだ怜れい央ひさし（Vo）

──武道館ぶどうかんワンマン後ごに「売うれたい」と思おもったのはご自身じしんとしては意外いがいでしたか？ それとも自然しぜんに湧わき出でた感情かんじょうだった？

内田うちだ　自然しぜんな感かんじだったと思おもいます。これまでもライブハウスのキャパを更新こうしんするような、バンドの節目ふしめのタイミングには「次つぎは何なにすんだろう？」って考かんがえるんです。ワクワクしすぎちゃって、考かんがえが次つぎにいっちゃう。武道館ぶどうかんではインディーズ時代じだいの記憶きおくがフラッシュバックしたりもしたけど、ライブの後半こうはんにはもう「次つぎはどうしよう？」と考かんがえていたので。

──内田うちださんは常々つねづね「革命かくめいを起おこしたい」とおっしゃっていますが、改あらためてそれはなぜなのだと思おもいますか？

内田うちだ　学生がくせい時代じだいに自分じぶんが好すきなアーティストの話はなしをできる相手あいてがあまりいなかったからじゃないですかね。レッチリ（Red Hot Chili Peppers）やファンクが好すきで「みんなとこういう音楽おんがくの話はなしをできればもっと楽たのしいのにな」と思おもっていた。その頃ころの自分じぶんとか、今いまの若わかい子こで自分じぶんみたいなやつらを救すくうためにやっている……というか。日本にっぽんのメジャーシーンに俺おれが好すきだったような音楽おんがくが増ふえたらいいのになと思おもうんです。自分じぶんたちがやりたいことは忘わすれず、ちゃんと聴きいてもらえるような曲きょくを作つくる、それをただひたすらにやっている感かんじですね。

──曲きょく作づくりに関かんしては、どういったモチベーションで取とり組くんでいました？

内田うちだ　落おち着ついた曲きょくをやりたいというのはありました。ここ最近さいきんライブで強つよい曲きょくばかりできちゃっている感かんじがあったんですよ。新あたらしい曲きょくが増ふえていく中なかで、このままだとセトリのバランスが悪わるくなるかもなとは考かんがえていて。だからローテンポでもしっかりと聴きき応ごたえがあって、ライブ映ばえしそうな曲きょくを作つくりたかった。1曲きょく目めの「Stellar」なんかはそれを形かたちにした曲きょくで、ライブでどうなるかはまだわからないけど、反応はんのうが楽たのしみなんですよね。