お芝居しばいをしないでいい相性あいしょう

──前作ぜんさく「三さん毒どく史し」は宮本みやもと浩次こうじさん、櫻井さくらい敦司あつしさん、向井むかい秀徳ひでのりさん、トータス松本まつもとさん、ヒイズミマサユ機きさん、浮雲うきぐもさんといった男性だんせいボーカリストをゲストに招まねいた作品さくひんでした。あれから5年ねんを経へて完成かんせいした新作しんさく「放生会ほうじょうえ」には、7人にんの歌姫うたひめが参加さんかしていますね。

男声だんせいへの当あて書がきというのは、やはり一いち度どは経験けいけんしておきたいことでした。彼かれらのそれまでのキャリアを思おもえば恐おそろしいことでしたけれども、「勇気ゆうきを出だしてよかった」「本音ほんねの部分ぶぶんで描えがけた」と、ある種しゅ納得なっとくしたので、次つぎはいよいよ女声じょせいをお招まねきしようと。

──女性じょせいアーティストとのコラボレーションと言いいますと、椎名しいなさんはデビュー2年ねん目めの1999年ねんには、すでにともさかりえさんに楽曲がっきょく提供ていきょうをして、プロデュースをされていますよね。

「カプチーノ」に関かんしては、実じつは自分じぶんのデビューシングル発売はつばい前まえから作業さぎょうしていたんですよ。当時とうじから、自分じぶんが演者えんじゃをやらず、演出えんしゅつに専念せんねんするときだけに生しょうじる集中しゅうちゅう力りょくや描写びょうしゃ力りょくに気付きづいていました。全体ぜんたいプロデュースのほうが合あっていました。

──その後ごも広末ひろすえ涼子りょうこさん、栗山くりやま千明ちあきさん、柴しば咲さきコウさん、高畑たかはた充たかし希のぞみさん、深津ふかづ絵里えりさん、真木まきよう子こさんなどに楽曲がっきょく提供ていきょうしています。

皆みなさんそれぞれに素晴すばらしく、毎度まいど感激かんげきしきりでした。ただ、彼女かのじょたちは役者やくしゃさんなので、演えんじ切きってもらう内容ないようでしたし、デュエットもしていないんですよね。今回こんかいご参加さんかくださった皆みなさんはミュージシャンで、共闘きょうとうしていただいています。

──共闘きょうとうどころではないですよね。アルバムの始はじまりも終おわりもゲストボーカルの声こえですし。

まあ、前作ぜんさく（「三さん毒どく史し」）もお経けいで始はじまっていますし、いつぞやも坂間さかま大介だいすけ氏しにまずご登場とうじょういただいていますし。私わたしはあまり自分じぶんの声こえを最初さいしょに出ださないで、遅おくれて行いきます。「行いけたら行いく」みたいな。

──（笑）。先さきほど、プロデュースが「自分じぶんには合あってる」とおっしゃっていましたが、椎名しいなさんは昔むかしから、作詞さくし作曲さっきょく、編曲へんきょく、プロデュースする側がわに回まわりたいというニュアンスの発言はつげんをされていますよね。だから、少すこし心配しんぱいなんですよ。交互こうごに歌うたうデュエット曲きょくの多おおい本ほん作さくを経へて、椎名しいな林檎りんごが歌うたう割合わりあいがどんどん減へっていったらどうしようと。

なるほど。ただ、日頃ひごろ一緒いっしょに作業さぎょうしている職人しょくにんでそんなことを言いう人ひとは誰だれもいませんよ。むしろ企画きかく・制作せいさくの代役だいやくのほうが、もっと見当みあたらないですから。限かぎられた時間じかんの中なか、よりよいものを、より多おおく遺のこそうと考かんがえるとき、シビアに判断はんだんせねばなりません。もちろん、なるべく長ながくパフォーマーとしても及第きゅうだい点てんを出だしてゆけるよう努つとめたいとは思おもっております。

──歌姫うたひめとのデュエットがスタートしたのは、2019年ねんに椎名しいな林檎りんごと宇多田うただヒカル名義めいぎで配信はいしんリリースされた「浪漫ろうまんと算盤そろばん」ですよね。

そうですね。ヒカルちゃんさえよろしければ、年としを経へるごとにときどきは集あつまって、面白おもしろいことをご一緒いっしょできたらいいなと。そういう関係かんけいだと思おもっています。さほど、理由りゆう付づけはあまりしていなかったです。

──20周年しゅうねんだから、同期どうきだから、元もとレーベルメイトだからというわけではなく？

もはやそういうものは、なくなってしまっているかもしれないですね。彼女かのじょがどうかはわからないですけれど。

──では椎名しいなさんにとって、宇多田うたださんはどういう存在そんざいですか？

いろいろ申もうし上あげられますものの、まずは癒いやしの存在そんざいです。客観きゃっかん的てきにはセールスのある人ひとですけれど、私わたし個人こじんにとっては、競争きょうそう社会しゃかいの忙せわしなさを忘わすれさせてくれる稀有けうな存在そんざいなのがまた不思議ふしぎです。

──どうしてですかね。それこそ、宇多田うたださんはアルバムのミリオンセールスが何なん枚まいもある人ひとなのに。

なぜでしょう。お会あいするときは音楽おんがくと関係かんけいのない話はなししかしてないです。今いまは子供こどものことでしょうし、昔むかしは食たべ物ものの話はなしとか。議題ぎだいが無邪気むじゃきで普遍ふへん的てきだからかもしれないですね。

──先日せんじつの「with MUSIC」でのテレビ初はつ共演きょうえんも話題わだいになっていました。

私わたしがデレデレしていて不謹慎ふきんしんだったという話はなしですよね。それは申もうし訳わけなかったです。ヒカルちゃんだけ映うつしてほしいって何なん回かいも局きょくの方ほうへ頼たのんだのですよ。

──いや、「ぜいたくで歴史れきし的てきな瞬間しゅんかんだった」「かわいらしい」という声こえが多おおかったですよ。番組ばんぐみ内ないで宇多田うたださんは、椎名しいなさんについて「トータルで見みえ方かたを考かんがえて作つくり込こんでる人にんのように見みえるけど、素直すなおなんじゃないかな。計算けいさんじゃなく、自然しぜんと変化へんかしていってると思おもう」と語かたっていました。

私わたしがヒカルちゃんと一緒いっしょにいてラクだと思おもう理由りゆうの1つとして、あまり無理むりをしない、お芝居しばいしないでいい相性あいしょうだからというのが挙あげられそうです。例たとえば、もしも私わたしが芝居しばいをしていたら、彼女かのじょには、メディアを通つうじてでもすぐわかるだろうし。私わたし自身じしんはどうして自分じぶんが策略さくりゃく家かみたいに言いわれるのかわからないですけど、ヒカルちゃんからするとわかるんでしょうね。人ひとが私わたしをどう見みていて、どういう部分ぶぶんをピックアップしてそう言いっているのか。よくわかってるからこそ、そのように言いってくれたのでしょう。

──宇多田うたださんは「似にているところがいっぱいあると思おもう」ともおっしゃっていました。番組ばんぐみの衣装いしょうは白しろと黒くろ、「浪漫ろうまんと算盤そろばん」の英語えいごタイトルは「the sun & moon」ということで、対照たいしょう的てきに語かたられることも多おおいですが、椎名しいなさんも「似にている」と感かんじることはありますか？

そうですね。2人ふたりとも「ブランディングを一所懸命いっしょけんめいしなきゃ」というところもあまりないし、自分じぶんの仕事しごとがどういうものか、はっきり自覚じかくしている。別べつに盛もっているわけでもなければ、卑下ひげしているわけでもない。芝居しばいする必要ひつようがないという意味いみで、自分じぶんにも他者たしゃへも正直しょうじきなナチュラルさは、よく似にていると思おもいます。

あの方々かたがたは特別とくべつなんです

──「浪漫ろうまんと算盤そろばん TYO album ver.」を含ふくめて、アルバム全曲ぜんきょくのビートが石いし若わか駿しゅん（Dr）さんと鳥越とりこし啓介けいすけ（B）さんのコンビによるものです。昨年さくねんの全国ぜんこくツアー「椎名しいな林檎りんごと彼かれ奴等やつらと知しる諸行無常しょぎょうむじょう」と同おなじリズム隊たいですね。

石いし若わか氏しとは、去年きょねんのライブで初はじめてご一緒いっしょしまして。新あたらしい曲きょくから古ふるい曲きょくまで触さわってもらったときに、彼かれと鳥越とりこし氏しにもっといろんなビートを鳴ならしてほしくなりました。だから毎月まいつき毎月まいつき、お二人ふたりと、ギターやピアノのプレイヤーらとの時間じかんがもらえる日ひをめがけて、曲きょくを書かいていきました。演奏えんそうしてもらっては「気きに入いった。しかしそうなるともっとこういうのもお願ねがいしたいな」と、またさらなる欲よくが湧わいてくる。だからまた新あらたに書かいた曲きょくのデモテープを用意よういして……。その繰くり返かえしでした。「人間にんげんとして」の大だい編成へんせいを書かき始はじめるときに、ちょうど石いし若わか氏しがご自分じぶんで書かいたフルオーケストラの曲きょくを、大晦日おおみそか、故郷こきょうの交響こうきょう楽団がくだんに演奏えんそうしてもらうと聞きいて。まず同おなじときに同おなじような作業さぎょうをしている事実じじつが心強こころづよく励はげまされましたし、実際じっさい、後日ごじつ彼かれらの演奏えんそうを拝聴はいちょうするとスリリングでカッコよく、また感かんじ入いりました。「なるほど石いし若わか氏しは全体ぜんたいのアンサンブルを見据みすえたうえでアプローチするから、ドラムにしても、あれだけ客観きゃっかん的てきで、的確てきかくなんだな」と思おもい至いたりました。彼かれは真しんの音楽家おんがくかなんですよね。優すぐれた打楽器だがっき奏者そうしゃ、そしてありとあらゆる奏者そうしゃでありながら、面白おもしろいものを書かかれる作家さっか。そういう部分ぶぶんを余あますことなく生いかしてもらわないともったいない！と焦あせりました。メジャーシーンに対たいして、石いし若わか氏しからどんな宝物ほうもつを贈おくってもらおうか？と考かんがえ出だすとキリがないし、「ちゃんとご本人ほんにんが、なんらかの点てんで水みずを得えた魚さかなになってくださらないとつまらない」とも考かんがえました。そういったことをあれこれ悩なやみ、しばし研究けんきゅうしました。鳥越とりこし氏しは、どんな曲きょくを書かいて、どんなオーダーをしても、必かならず予想よそうを上回うわまわる仕事しごとをしてくださるプレイヤーです。腕利うでききながら、同時どうじにちゃんと不良ふりょうなのが最高さいこうです。

──刺激しげき的てきなリズムを手てに入いれたうえで、歌姫うたひめたちはどのような基準きじゅんで選えらんだのでしょうか？

今回こんかいは自分じぶんに近ちかいミュージシャン気質きしつの方ほうばかりにお越こし願ねがいました。しかも容易たやすく尻尾しっぽを振ふらない、猫ねこ気質きしつの、ひょうきんな方ほうだけ。去年きょねんの夏なつぐらいには大方おおかた当あて書がきし終おえて、順次じゅんじリズム録ろくりに入はいっていきました。新あたらしい学校がっこうのリーダーズに参加さんかしてもらいたいと思おもい、デモをプレゼンしたのが最後さいごでした。

──新あたらしい学校がっこうのリーダーズは、少すこし意外いがいな組くみ合あわせのように感かんじました。

ああ、そうですか。周まわりのミュージシャンはSUZUKAちゃんのことを「若わかいときの椎名しいな林檎りんごみたい」と言いってくれるんですよ。わっち（伊澤いさわ一葉かずは）とか、私わたしの当時とうじを知しってる人ひとは。それがどんなところなのかはわからないけど、「もっと言いってください」と、つい調子ちょうしに乗のってしまいます。うれしいです。

──（笑）。新あたらしい学校がっこうのリーダーズと出会であったのはいつですか？

テレビで「オトナブルー」を歌うたっていらっしゃるのを観みて。つい最近さいきんです。

──デビュー当時とうじは、元もと東京とうきょう事変じへんのヒイズミマサユ機きさんがプロデュースしていましたよね。

ええ。それな案件あんけんです。テレビで彼女かのじょたちを観みて「すごく素敵すてきだ」と思おもって、ググってたら、ヒイちゃんがいっぱい曲きょくを書かいていることを知しったんです。すぐにヒイちゃんを詰問きつもんしました。「なんで教おしえてくれなかったの？（怒いか）」って。

──ヒイズミさんから彼女かのじょたちのことは聞きいていなかったんですね。

そうなんです。阿久あく悠ゆう先生せんせいの詞しで、ヒイちゃんが作曲さっきょくした、色いろっぽい曲きょくもあって（2018年ねん8月がつリリースのシングル収録しゅうろく曲きょく「雨夜あまよの接吻せっぷん」）。その曲きょくはMIZYUちゃんが歌うたっていらっしゃるんですが、見事みごとにみんな、歌声うたごえがいいんですよね。全員ぜんいん、お声こえもいいし、お顔かおもいいから困こまります。それで「そもそも、ヒイちゃんもだけど、椎名しいなだってけっこう曲きょくのタッチが合あうのでは？」という妬ねたみ嫉そねみが。「なぜ少すこしくらい仕事しごとを分わけてくれないのか？」というやっかみも今回こんかい、やや解消かいしょうされ、めでたしめでたしです。

──（笑）。新あたらしい学校がっこうのリーダーズのどのようなところに惹ひかれましたか？

今いま、彼女かのじょたちはいろんな分野ぶんやで高たかく評価ひょうかされているようですけれど、私わたしは歌うたって、パフォーマンスしていらっしゃる本業ほんぎょうのところしか見みていないので、とにかくブルーズのある、昔むかしながらの真心まごころある歌うたい手てであり、踊おどり手しゅなんだなというふうに感かんじています。「シンガーとして、プレイヤーとして、こんなにパワフルでソウルのある人ひとがいるんだ。しかも、こんなにお若わかい」とまっすぐに受うけ取とりました。だから、彼女かのじょたちに似合にあう曲きょくを書かきたい、ブルーズ際立きわだつ曲きょくを書かきたいと思おもっていました。普段ふだん、ヒイズミ氏し以外いがいの作家さっか先生せんせいからはコマーシャルなフックを持もつ華はなやかな楽曲がっきょくをもらうことが多おおいかもしれないから、うちからは、派手はでさに欠かけたとしても、セッションとして重おもみのある渋しぶいバンドものを差さし上あげたいなと考かんがえました。

──そして「ドラ１独走どくそう」という曲きょくができあがりました。ボーカルはSUZUKAさんが務つとめて、ミュージックビデオに4人にん全員ぜんいんが出演しゅつえんされています。今回こんかいご一緒いっしょしてどうでしたか？

感無量かんむりょうでしたよ……。クレバーで、セクシーで。あの方々かたがたは特別とくべつなんですよね。4人にんともものすごく勘かんが鋭するどく、誰だれかお一人ひとりがリードしてる人ひとがいるわけではない。頼たのもしいやら、眩まぶしいやら。「青春せいしゅん日本にっぽん代表だいひょう」とおっしゃっている通とおり、いつも歌うたや踊おどりにより「いまこのとき」を謳歌おうかしていらして、その模様もようを垣間見かいまみさせてもらうだけでも、もう目頭めがしらが熱あつくなりますよね。本当ほんとうは1曲きょく通とおして全部ぜんぶ表現ひょうげんしてほしいのですが……。

──いや、椎名しいなさんが歌うたわないのは困こまりますよ。

ええ、まあ彼女かのじょたちにすべてお願ねがいしたいという思おもいはありつつ、今回こんかいは私わたしが一緒いっしょにパフォーマンスすることにしたわけで、であればどういう意味いみのものがいいんだろうということを念頭ねんとうに、作詞さくししました。

──どのような思おもいで書かきましたか？

20歳さいくらいの頃ころ「今いましかできない」と思おもっていたような猛もうダッシュの生いき方かたって、20年ねん経たってもやめられないものなんですよね。若わかい頃ころは「この生いき方かたは今いましか保たもたないかもしれないぞ」と思おもってるんだけど、1回かいそのペースで走はしり始はじめちゃった人ひとは結局けっきょくそのまま行いくしかない。しかも意外いがいとずっと走はしれてしまう。私わたしはそう実感じっかんしている世代せだいだから、若わかい頃ころと同おなじ姿勢しせいのままここまで来きているというのを、まだ20歳さいそこそこの皆みなさんになんとなく覚おぼえていてもらって、いつか何なにかあったとき、安心あんしんしていただきたいなと。「存外ぞんがいなかなか終おわらないぞ」と。

──この曲きょくでは、「若わかさが恨うらめしい」というフレーズをSUZUKAさんに歌うたわせていますね。

SUZUKAちゃんには、私わたしが20歳さいだった頃ころを、勝手かってながら重かさねて見みてしまう部分ぶぶんが多おおくあります。当時とうじの自分じぶんみたいな生意気なまいきさは感かんじませんし、SUZUKAちゃんのがよっぽど巧たくみで頼たのもしいのは確たしかなものの……。「早はやく熟じゅくして、説得せっとく力りょくを持もちたい」という、当時とうじの私わたしの心境しんきょうを思おもい出だして書かいている節ふしもありました。「今いましか使つかえないものを使つかわなきゃ」とか、当時とうじの自分じぶんには焦あせりもあった気きがします。「賢かしこくなりたい、深ふかみを持もちたい」といった気持きもちですとか。この曲きょくでは40歳さい過すぎた今いまの私わたしも、結局けっきょく持もち続つづけてしまっている性急せいきゅうさを描えがこうと努つとめました。

私わたしが悪役あくやくを引ひき受うけよう

──「初はつKO勝がち」でデュエットしている、のっち（Perfume）さんとはどういった間柄あいだがらですか？

20年ねん近ちかく前まえに寿司すし屋やさんでPerfumeの御ご三さん方ぽうと食事しょくじしたときに「（中田なかた）ヤスタカ先生せんせい以外いがいの方ほうが曲きょくを書かくことはないんですか？」という質問しつもんをしました。「いつ、どのようなきっかけで解禁かいきんされるのですか？」と。もしそういうことがあるなら、かなりドラマチックな場面ばめんだと思おもいますし、当事とうじ者しゃでおられる彼かれらがそういうことを、どうお考かんがえなのか気きになって。

──その際さいは私わたしに書かかせてほしい、と。

お恥はずかしながらアピールさせていただいたと思おもいます。そこからずっと、まだか、まだかと待まって。でも、大だい成功せいこうを収おさめていらっしゃるチームへ、まったく異ことなるアプローチを提案ていあんする者ものなんて、絶対ぜったいに悪役あくやくになるじゃないですか。

──いやいや。ファンの皆みなさんもPerfume以外いがいでの、のっちさんのボーカルを聴きいてみたいと思おもってるはずですよ。

本当ほんとうは誰だれかが先さきにやってくださってから、すぐあとに続つづきたいところなんです。最初さいしょにやると、もれなく批難ひなんを浴あびるから。でもいつまで経たっても誰だれもやろうとしないので、そうであれば、また例れいの如ごとく、はばかりながら私わたしが悪役あくやくを引ひき受うけようと。

──Perfumeの中なかでも、今回こんかいのっちさんにお願ねがいしたのはなぜ？

のっちは、うちの作品さくひんを聴きいてくださってると伺うかがったことがあったから。いったいどの部分ぶぶんをご愛顧あいこくださっているのか想像そうぞうしました。お似合にあいになりそうなサウンドやスケールを考かんがえたうえ、今回こんかいは小しょう編成へんせいバンドのボーカリストとして自然しぜんに、且かつ力強ちからづよく存在そんざいしていただくことにしました。あと、あえて踊おどらないものにしたいとも考かんがえました。ストップ＆ゴーのギクシャクしたビートにしてるのは、そういう理由りゆうです。

──エフェクトがかからない、生なま声こえのレコーディングを経験けいけんしたのっちさんはどうでしたか？

緊張きんちょうしておられるとか、ギクシャクなさることもなくて、終始しゅうし楽たのしんでいらっしゃるようにお見受みうけしました。堂々どうどうとパフォーマンスなさって、ご自身じしんのテイクをお聴ききになって、面白おもしろがってくださって。ああ、私わたしはこういうことがしたいんだなと思おもいました。のっちはじめボーカリストはもとより、プレイヤーが、自分じぶんの準備じゅんびした作戦さくせんに乗のっかって共犯きょうはん関係かんけいになってくださること。それがまず幸しあわせですし、さらにご自身じしんのお仕事しごと込こみで「いい」とご賛同さんどうくださったら、それが一番いちばん私わたしはうれしいです。