wacciと松下洸平が、wacci「恋だろ」を歌うライブ映像が今、大きな話題を集めている。
「恋だろ」は、6月まで放送されていたフジテレビ系ドラマ「やんごとなき一族」の挿入歌として、wacciが書き下ろした楽曲。性別や年齢、家柄といったあらゆる“壁”を越えてゆく一途な恋心を、温かなサウンドに乗せて歌い上げるミディアムバラードだ。YouTubeで公開されたライブ映像は、6月に行われたwacciのライブに「やんごとなき一族」の出演者である松下がゲスト参加したときのもの。松下と橋口洋平(Vo, G)のまっすぐなハーモニーが心を打つこの動画は公開されるなり急上昇ランキングに浮上し、約852万再生(8月1日現在)を記録している。
同じ事務所に所属している橋口と松下は、実は約10年にわたる親交がある間柄。それぞれに歩んできた道が「やんごとなき一族」を通じて交わった今、2人はどんな思いを抱いているのか? 音楽ナタリーでは、橋口と松下の対談をセッティング。お互いに対する思いや「恋だろ」のこと……じっくりと語り合ってもらった。
取材・文 / 三橋あずみ撮影 / 藤記美帆スタイリスト(松下洸平) / 渡邉圭祐
お互いの成長を言葉にせずとも確かめ合っている
松下洸平 橋口くんと初めて会ったのは……2011年?
橋口洋平(wacci / Vo, G) そうだね、2011年。
松下 この年にwacciがキューブに所属することになって、事務所の周年記念イベントでライブをしてくれたんだよね。僕はそれを客席から観ていたんだけど、橋口くんの声も楽曲も本当に素晴らしくて「なんて素敵な音楽なんだろう」ってものすごく感動したのを覚えてる。そのあとに僕のほうから橋口くんに声をかけて、そこからは僕が年に1回やっていたライブイベントに出ていただいて2人で歌ったり。僕も事務所に所属したのが2010年だから、wacciとはほぼ同期みたいな感覚なんです。いろんな話をしながら、常にいい刺激をもらっているというか。
橋口 お互いにね。僕は事務所に入ってから洸平くんの存在を知ったんだけど、ライブに呼んでもらって洸平くんの歌を聴いたとき、「素晴らしい歌声の持ち主だな」ってホントにびっくりした。それ以降は、洸平くんの舞台やライブにもたくさん行かせてもらって。
松下 そうそう。
橋口 「木の上の軍隊」もそうだし、「母と暮せば」も。そのたびに感動をもらっています。そうやって、お互いに作品の感想や音楽の感想を伝え合うような仲間という感じだよね。同じ事務所の仲間でも、そこまで密に連絡を取り合う人って僕の中では限られているので。すごく貴重で大切な、同じ目標に向かってがんばる仲間。
橋口洋平(wacci / Vo, G)
松下 それぞれの作品を通して、お互いの成長みたいなものを言葉にせずとも確かめ合っているような感覚もすごくありますよね。
橋口 そうだね。とにかく僕にとって洸平くんはとても大きい存在ですし……彼がもともと持っている才能や仕事に対する姿勢に出会った頃からずっと尊敬の思いがあるので、今の活躍はもう、必然というか。やっと世の中が見つけたんだよなと。
松下 いやいやいや!!
橋口 自分が知っていた松下洸平のよさが世の中に知れ渡っていくことがすごくうれしいですし、勝手に仲間として誇りに思っていますね。
「いい曲が書けたな」と思うときは、決まって洸平くんが言ってくれる
松下 僕、wacciとの思い出ですごく覚えていることがあるんです。5年前かな? wacciが「感情」(2017年)という曲をリリースしたとき、あまりにもこの曲がよすぎて衝撃を受けて。wacciの曲は名曲ばかりだけど、「感情」を聴いたときの気持ちは忘れられない。自分のInstagramで勝手に曲を紹介したり、もう、いろんなところで「感情」「感情」言いまくって(笑)。
橋口 覚えてる。うれしかった。
松下 なんというか、現実と理想は常に違っていて、その違いに一喜一憂しながら人は生きていると思うんですけど……橋口くんは、いつだってその両方を歌詞にしてくれるところが素敵だと思う。綺麗事ばかりじゃない、苦しさも包み隠さず歌ってくれるから、常にwacciの曲には共感できることがあるんじゃないかなって。でも、決して誰かを傷付けたりするわけではなくて。赤裸々なんだけど、最後には痛みもそっと包んでくれる温かさがあって。とにかくね……橋口くんが「感情」をライブで歌ってる姿を観たときには、嗚咽するくらい泣いた(笑)。
橋口 あはははは。
松下 それも事務所のイベントだったと思うんだけど、ステージの奥に歌詞も投影されてたんだよね。「もう勘弁してくれよ。泣いちゃうぜ」って(笑)。あの場所にいた全員が泣いてたと思う。
松下洸平
橋口 でも本当に、自分的にも手応えがあって「いい曲が書けたな」と思うときは、決まって洸平くんがSNSで言ってくれたり、電話くれたりするからさ。だからもう、これから曲出すたびに不安だよね。「あれ、この曲……洸平くんから連絡ないな?」みたいな(笑)。
松下 あはははは!
橋口 それ基準で、自分の中で○×を付けちゃいそうで(笑)。
松下 全部に連絡するよ(笑)。
橋口 ホントに、「今回はあんまりだったよ」でも連絡が欲しいくらいです(笑)。で、僕も洸平くんのすごさを語らせてもらうと……僕が観に行かせてもらった舞台って、キャストが2人とか3人とか少人数で、その分セリフの量が多いものばかりで。
松下 そうそう、そうだったね。
橋口 1人ひとりの役の存在感がすごく際立つ中で2時間くらいある物語をしっかり見せて、観客の感情を揺さぶるって本当にすごいことだと思うし……人の生死に関わるストーリーや、密な人間関係の中で立ち振る舞っていく役を、リアルな感情の動きを持って表現している姿がホントにカッコいいなと。そんな感想を、素人ながらにいつも伝えさせてもらったりしているんだけどね。最近はテレビドラマに出る機会が多いけど、きっと舞台とテレビの演技って全然違うよね?
松下 うん、そうだね。
橋口 それこそ動きの大きさもそうだし、セリフのい方だって違うでしょう? その場その場に合わせた形で、いろんな役を自分の中にしっかりと落とし込んで演じている姿を見ると、やっぱりすごいなって思う。あと、今回の「やんごとなき一族」の挿入歌でwacciが関わらせてもらったときもさ、「自分はこういう役だから、曲をこう受け止めてる」とか、「ドラマの中で、こうやって使われているよ」とか教えてくれたりしたじゃない。作品を俯瞰で見て、チームの一員としてがんばっている姿も素敵だなと思ったし、そうやって洸平くんががんばっている場所に自分たちも挿入歌担当として参加できたことが、すごくうれしかったんだよね。