毎日まいにち毎日まいにち何なにやってるんだろう、俺おれはけっこうがんばってるつもりなんだけどな

──「毎日まいにち」は高揚こうよう感かんと切迫せっぱく感かんのようなものが同居どうきょしている曲きょくだと感かんじました。この曲きょくはジョージアの新あたらしいCMソングですが、タイアップのお話はなしをいただいてから書かいた曲きょくだったんでしょうか？

はい。昨年さくねんに引ひき続つづきCMソングを担当たんとうさせていただくことになって、それがきっかけで作つくり始はじめました。とはいえ「毎日まいにちって、けっこうドラマだ。」というCMのキャッチコピーは変かわらない。同おなじテーマで違ちがう曲きょくを書かくのは難むずかしいと思おもったのは覚おぼえていますね。

──昨年さくねんにはジョージアのCMソングとして「LADY」がリリースされました。CMは長ながらくオンエアされてきましたが、新あたらしく曲きょくを書かくにあたって「LADY」とどう差別さべつ化かするかということは意識いしきしましたか？

そうですね。“LADY 2”のような曲きょくは作つくりたくなかったので。ただ、いろいろやっていても、基本きほん的てきにほぼ同おなじ空気くうき感かんのものに対たいして曲きょくを当あてていくと、どうしても“LADY 2”になってしまう。「なんか違ちがうな」と思おもって、書かいては捨すてて、書かいては捨すてて、みたいなことを何なん度ども繰くり返かえしました。自分じぶんの仕事しごと量的りょうてきにも切羽詰せっぱつまっているタイミングだったので、そうしているうちに「何なにやってるんだろう……」と思おもって。自暴自棄じぼうじきというか、家いえに1人ひとりでこもって、デスクの前まえから一いち歩ほも動うごかずにうんうん唸うなってるだけの毎日まいにちを過すごしている。「毎日まいにち毎日まいにち何なにやってるんだろう、俺おれはけっこうがんばってるつもりなんだけどな」と感かんじて。そこから「これを曲きょくにすればいいや」と思おもったんです。

──なるほど。曲きょくの歌うたい出だしに「毎日まいにち毎日まいにち毎日まいにち毎日まいにち 僕ぼくは僕ぼくなりに頑張がんばってきたのに」というフレーズがありますが、これは米津よねつさんの心しんの中なかにあった正直しょうじきな叫さけびだった。

そうですね。魂たましいの叫さけびというか。そういうテンション感かんでした。

「でもこれが俺おれの人生じんせいだ」って、開ひらき直なおって言いうしかない

──「LADY」のときは“倦怠けんたい感かん”がキーワードとしてあったとおっしゃっていましたが（参照さんしょう：米津よねつ玄げん師し「LADY」インタビュー｜“変かわり映はえしない日々ひびの倦怠けんたい感かん”を軽かろやかに歌うたにして）、この曲きょくはそれとは違ちがうアップリフティングなムードがあるように思おもいます。そういう曲きょくになったのはどういう由来ゆらいなんでしょうか？

自分じぶんも30代だいになって、いろいろ思おもうことや感かんじることも変かわってきて。30歳さいになった節目ふしめのあたりで人生じんせいゲームの司会しかい者しゃみたいな人ひとが降おりてきて「あなたの30年間ねんかんの人生じんせいはこんな感かんじでした。さあ引ひき続つづきどうぞ」って、いろんなパラメーターがパッと示しめされたような感覚かんかくがあったんです。自分じぶんなりにがんばってやってきたけど、それによって成功せいこうした部分ぶぶんもあれば、失敗しっぱいした部分ぶぶんもある。大おおきく育そだった部分ぶぶんも全然ぜんぜん育そだたなかった部分ぶぶんもある。そうやって自分じぶんが今いままで生いきてきた人生じんせいを振ふり返かえって、どうあがいても、どうがんばっても自分じぶんは自分じぶんでしかないなっていうあきらめがついた。よく言いえば受うけ入いれた、悪わるく言いえば開ひらき直なおった感かんじがあったんです。それによって浄化じょうかされた部分ぶぶんもあったけれど、とはいえできなかったことができるようになるわけじゃないから、依然いぜんとして目めの前まえに困難こんなんもある。そうなってくると「落おち込こんでる時間じかんなんてないな」という感かんじがどんどん大おおきくなってきて。

──なるほど。自分じぶんは自分じぶんでしかない。

近年きんねん、そういうことに自覚じかく的てきな人ひとが増ふえたと思おもうんです。ちょっと前まえに「親おやガチャ」って言葉ことばが流行はやったり、マイケル・サンデルも言いっていたりしましたけれど。そもそも生うまれた環境かんきょうとか、遺伝子いでんしとか、親おやの資本しほんとか、そういうものによって自分じぶんの適性てきせいや能力のうりょくみたいなものがある程度ていど決きまってしまっている。でも「とはいえ、どうしようもなくない？」って思おもうんです。自分じぶんの才能さいのう、適正てきせい、性格せいかくみたいなものが運うんによってある程度ていど決きまってしまっていて、何なんらかの生いきづらさを抱かかえていたとしても、今いまさら取とり返かえしがつかない。これからの社会しゃかいを是正ぜせいすることはできたとしても、今いま生いきている我々われわれはどうしようもない。それは本当ほんとうに由々ゆゆしきことだと思おもうんですけど、ならどうすればいいのかと言いわれたら、身みも蓋ぶたもない話はなしだけど、がむしゃらにがんばるしかない。がんばれるのも才能さいのうだったとしても、それでもがんばるしかない。勉学べんがくでもスポーツでも何なにでもいいですけど、毎日まいにち毎日まいにち手しゅが痺しびれるまで反復はんぷくする。サッカーだったらボールをずっと蹴けったり、勉学べんがくだったらペンを走はしらせる。社交しゃこう性せいがないなら社交しゃこうの場ばに赴おもむく。毎日まいにち毎日まいにち地味じみなことを反復はんぷくする。たとえ意味いみがなかったとしても反復はんぷくする。自分じぶんなりにがんばる。それを努力どりょくと呼よぶのであれば、そういう努力どりょくでしか自分じぶんを地獄じごくから救すくうことはできない。本当ほんとうに身みも蓋ぶたもない話はなしですけれど、その身みも蓋ぶたもない現実げんじつをどう生いきるのかというと「でもやるんだよ」っていう。

──ある種しゅの開ひらき直なおりみたいなものが、この曲きょくのモチーフになっている。

そうですね。毎日まいにち毎日まいにち同おなじようなことの繰くり返かえしだけど「でもこれが俺おれの人生じんせいだ」って、開ひらき直なおって言いうしかない。破やぶれかぶれの開ひらき直なおり、破やぶれかぶれの空元気からげんき。そういう感かんじです。

──「毎日まいにちって、けっこうドラマだ。」というCMのキャッチコピーから触発しょくはつされたところはありましたか？

そんなに意識いしきはしなかったです。ただ、確たしかに「毎日まいにち」ってタイトルだし、「毎日まいにち毎日まいにち」というところから曲きょくが始はじまる。曲きょくを作つくり終おわったあとにタイトルをどうしようか考かんがえたんですけど、「毎日まいにち」としか言いいようがなかった。脳味噌のうみその表層ひょうそうには意識いしきがなかったですけど、影響えいきょうはあるかもしれないですね。

勢いきおいでゴリ押おそうと思おもったんですよ。そういう曲きょくにしようって

──曲調きょくちょうについても聴きかせてください。曲きょくのムードにはEDMに通つうじるものを感かんじますが、サウンドのテイストや曲きょくの構成こうせいについては、どんな意識いしきで制作せいさくしましたか？

EDM的てきというのは自分じぶんとしてはあまり自覚じかくがなくて。今回こんかいはYaffleと一緒いっしょに編曲へんきょくをしたんですけど、なんなら自分じぶんが作つくったデモ段階だんかいはもう少すこしオーガニックなものだったんです。制作せいさくしていくうちにYaffleが返かえしてきたものがこういう感かんじだった。「ああ、そういう感かんじでいくんだ、いいねOK」と続つづけていったら偶発ぐうはつ的てきにこうなりました。最初さいしょと最後さいごに「毎日まいにち」ってフレーズが入はいるのも、頭あたまから順じゅんに作つくっていって、気きが付ついたらこうなっていたという感かんじです。こういうものにしようと意図いとして作つくっていったわけじゃなくて、順繰じゅんぐりにやっていった結果けっかですね。

──曲きょくを作つくっていくにあたって、一番いちばん苦心くしんしたところとか、ここのフレーズが出でてきたことで道みちが開あけたと感かんじたところはありましたか？

やっぱり最初さいしょの1行ぎょうですね。「毎日まいにち毎日まいにち毎日まいにち毎日まいにち 僕ぼくは僕ぼくなりに頑張がんばってきたのに」というところをヤケクソになって書かいて。そっからは半なかば自動じどう書記しょきみたいな、スルスル紐解ひもとかれていくようにできていった。勢いきおいでゴリ押おそうと思おもったんですよ。そういう曲きょくにしようって。コードも基本きほん的てきにワンループだし、変へんにこねくり回まわすんじゃなくて、勢いきおいでテンポよくポンポン進すすんでいって帰かえってくる感かんじですね。