ウエストランド井口いぐちと作家さっか飯塚いいづかとヨネダ2000とラブレターズが語かたる「2023年ねん12月のお笑わらい」

構成こうせい / 狩野かの有理ゆり ヘッダーイラスト / 清野きよのとおる

※取材しゅざいは12月26日にちに公開こうかいイベントとして実施じっし。

井口いぐちもいろいろ考かんがえている

井口いぐち　令れい和わロマンが「M-1」優勝ゆうしょうしましたけど、まず言いっておきたいのは、くるまがいろいろ分析ぶんせきしてるって話はなしにお笑わらいファンは「あぁ～！」（ウエストランドの漫才まんざいに登場とうじょうする「あ、あ、あぁ～！佐久間さくまさ～ん！」の感かんじで）となりすぎ！ 「シシガシラさんが上あがってきたということは……」じゃないんだよ！ そんなのみんな考かんがえてるから！ 口くちに出だすかどうかだけ！ なんで僕ぼくが2022年ねんの「M-1」であんなに強つよく伝つたえたのに、まだ「すごい」とか言いってるんですか？ 僕ぼくだって分析ぶんせきしてるってことを、今日きょうは全部ぜんぶ言いいます。だってチャンピオンなんだから。すごいときの。

──すごいときのチャンピオン。

井口いぐち　そうですよ！ 「M-1」現げん地勢ちせいとしても貴重きちょうな情報じょうほうを言いっていきます。飯塚いいづかさんは「M-1」どうでした？

飯塚いいづか　テレビで7時じ間あいだ半はんずっと観みてた。ざっくりと全体ぜんたいの感想かんそうを言いうのは難むずかしいんだけど、5、6年ねんくらい前まえの「M-1」の雰囲気ふんいきがあった。点数てんすうも含ふくめて、爆発ばくはつ待まちをしている時間じかんが長ながかったと感かんじた視聴しちょう者しゃも多おおかったと思おもう。

井口いぐち　僕ぼくは敗者はいしゃ復活ふっかつをAブロックまで観みてから屋上おくじょうでの漫才まんざいのスタンバイをしていたので、誰だれが上あがったかはリアルタイムでは知しらなかったんですよ。そこから移動いどうして、トップバッターの令れい和わロマンが始はじまる頃ころにスタジオに着つきました。客席きゃくせきを見渡みわたしてみたら、いわゆる番組ばんぐみ観覧かんらんよりも圧倒的あっとうてきに男おとこの人ひとが多おおかった。男性だんせいだから、女性じょせいだからということではないですけど、そのバランスが「M-1」独特どくとくのヒリつきを生うむし、爆発ばくはつしたときに高たかい笑わらい声ごえと低ひくい笑わらい声ごえがちょうど混まざり合あって爆発ばくはつ感かんを生うむんですよね。「M-1」がそれを狙ねらってやっているかはわからないですけど。そんな中なか、いきなり令れい和わロマンがめっちゃウケてたから、ここからどんどん盛もり上あがっていくんだろうなという空気くうきは感かんじました。

飯塚いいづか　令れい和わロマンはいつも以上いじょうにツカミを丁寧ていねいにやっていて、全部ぜんぶお客きゃくさんに投なげかけるようなスタイルだった。審査しんさ員いんを目めがけてというよりは会場かいじょうを巻まき込こもうとするネタを選えらんでいて、それが成功せいこうしているんだろうなと思おもうウケ方かただった。

井口いぐち　「キングオブコント」とかに比くらべて、「M-1」が一番いちばんウケと得点とくてんが比例ひれいしている気きがします。「キングオブコント」はウケても意外いがいと点てんが低ひくい、（2023年ねん大会たいかいの）ジグザグジギーのときみたいながっかりパターンがあるじゃないですか（笑）。優勝ゆうしょうしそうなウケ方かただったのに！っていう。「M-1」は審査しんさ員いんのみなさんがウケに重おもきを置おいている感かんじがします。

飯塚いいづか　コントは審査しんさ員いんそれぞれの美学びがくもあるからね。令れい和わロマンはお客きゃくさんウケ重視じゅうしのトップバッターだった。

【参考さんこう記事きじ】コントは各人かくじんに美学びがくがある話はなし、男性だんせいブランコと語かたる「2023年ねん11月のお笑わらい」

井口いぐち　一応いちおうみんなトップバッターになる心持こころもちではいるけど、笑わらい神しん籤くじだからマジでわかんない。

飯塚いいづか　でも令れい和わロマンも優勝ゆうしょう後ごに言いっていたけど、4つネタを用意よういしていて、一番いちばんだったらこのネタをやろうということまで考かんがえていらしいね。だから、そこまで計算けいさんしているくるまさんがとにかくすごくて、あぁ～！ くるまさ～ん！っていう……。

井口いぐち　いいんですよ、くるま信者しんじゃは！（笑） 「速報そくほう！M-1ネクストデイ」（ABC）で審査しんさ員いんのしゃべっていることが拾ひろわれていましたけど、松本まつもと（人志ひとし）さんが「高たかえ～」と言いっていましたよね。

飯塚いいづか　自分じぶんが審査しんさ員いんだったら、横よこで松本まつもとさんが「高たかえ～」と言いってたら「やべ！」って思おもっちゃいそう（笑）。

井口いぐち　「違ちがった！」ってなりそうですよね（笑）。でもあれには、「これを基準きじゅんにしてこの先さきもブレないように」という松本まつもとさんの思おもいがあったのかなと。当然とうぜん、審査しんさ員いんは自由じゆうな点数てんすうを付つけていいけど、「基準きじゅんを忘わすれないようにしなきゃいけない」っていうのが松本まつもとさんの中なかにしっかりあるんだなと改あらためて感かんじた場面ばめんでした。

敗者はいしゃ復活ふっかつ戦せんの新しんシステム

井口いぐち　敗者はいしゃ復活ふっかつ戦せんのシステムが変かわったのはどうでした？

飯塚いいづか　敗者はいしゃ復活ふっかつした人ひとを応援おうえんする気持きもちで決勝けっしょうを観みるシステムになっていたよね。敗者はいしゃ復活ふっかつ戦せんの会場かいじょうもテレビの視聴しちょう者しゃも「シシガシラがんばれ！」という気持きもちになったと思おもう。決勝けっしょうのお客きゃくさんもスマホとかで敗者はいしゃ復活ふっかつ戦せん見みてた人ひともいたみたいだから、決勝けっしょうで「敗者はいしゃ復活ふっかつ戦せんで見みたあのネタじゃない」と思おもった人ひともいたのかも。

井口いぐち　あとからシシガシラさんの敗者はいしゃ復活ふっかつネタをYouTubeで見みましたけど、めちゃくちゃ面白おもしろくて。今回こんかいの新しんシステムってどうしても各かくブロックの最後さいごのほうの組くみが有利ゆうりですけど、シシガシラさんが5組くみくらいぶち抜ぬいているから「行いけー！」という感情かんじょうにもなりました。いつも「M-1」を一緒いっしょに観みている三四郎さんしろう・小宮こみやさんとかのメンバーも、シシガシラさんで大だい爆笑ばくしょうだったらしいです。前回ぜんかいは視聴しちょう者しゃ投票とうひょうでオズワルドが復活ふっかつして、決勝けっしょうでも同おなじネタをやったんですよね。今回こんかいはシステムが変かわってシシガシラさんが選えらばれましたけど、変へんな話はなし、シシガシラさんが例年れいねんのシステムで上あがれたとは到底とうてい思おもえないじゃないですか（笑）。

──お茶ちゃの間あいだの知名度ちめいどを考かんがえればその可能かのう性せいもありそうです。

井口いぐち　でも、前まえのシステムも新しんシステムも、どっちもありだと僕ぼくは思おもうんですよ。

飯塚いいづか　そうだね。どっちがいいとは言いえないと思おもう。

井口いぐち　お笑わらいファンはすぐこれ（＝視野しやが狭せまくなるジェスチャー）じゃないですか。

飯塚いいづか　「これ」で伝つたわるんだ（笑）。

井口いぐち　「このシステムこそが最高さいこうだ！」となっちゃいそうだけど、人気にんきや知名度ちめいどだって自分じぶんで積つみ上あげてきたもの。しかも、忘わすれちゃいけないのは“敗者はいしゃ”ですから。一いち度どは負まけて、決勝けっしょうに行いけなかったんだから、それは過酷かこくにやらなきゃいけないと思おもう。僕ぼくも敗者はいしゃ復活ふっかつ戦せんで下したのほうの順位じゅんいだったこともあるし、ランジャタイ、キュウ、ストレッチーズとか、ライブで人気にんきの芸人げいにんがみんな下位かいを経験けいけんしてるけど、それはそういうものだから。今いままでがよくなくて、今回こんかいのシステムが絶対ぜったいにいいとは一概いちがいには言いえないとは思おもいますね。夢ゆめ（知名度ちめいどが高たかくない芸人げいにんのチャンス）は広ひろがっているかもしれないですけど。

飯塚いいづか　現地げんちにいた人ひとは現地げんちの意見いけんで決きめている納得なっとく感かんがあるかもしれないけど、視聴しちょう者しゃにとっては審査しんさに関かかわっていないから、入はいり込こめなかった人ひともいたかもしれないよね。

決勝けっしょうと準決勝じゅんけっしょう、観客かんきゃくの違ちがい

井口いぐち　全体ぜんたい的てきに言いえるんですけど、「M-1」が好すきでお笑わらいにめちゃくちゃ詳くわしいお客きゃくさんだからこそのネタバレでウケないこともあるじゃないですか。「またこれか」っていう。一方いっぽう、ライトな層そうもいる中なかで「ご存知ぞんじ」の感かんじでやるとそれはそれでウケない。今回こんかい、現地げんちで決勝けっしょうを観みていてどちらも感かんじたんですよね。

飯塚いいづか　準決勝じゅんけっしょうのお客きゃくさんは本当ほんとうにお笑わらい好すきの人ひとたちだから、もうその芸人げいにんさんのキャラクターもわかっているんだけど、決勝けっしょうの会場かいじょうの空気くうきは別べつだよね。お笑わらい好すきじゃない観覧かんらんの人ひとももしかしたらいるのかもしれないし、あの審査しんさ員いんたちが同おなじ空間くうかんにいることで1回かいリセットされるところもあるのかもしれないし。

井口いぐち　好すきで、よく知しっているけど、あの舞台ぶたいに立たつとまた違ちがって見みえるというのもありそうです。

飯塚いいづか　あの豪華ごうかなセットの前まえで見みると小ちいさく見みえてしまう人ひともいる。あの空間くうかんに負まけない人ひとじゃないと勝かてないと思おもう。

井口いぐち　前まえも言いいましたけど、「ご存知ぞんじ、我々われわれです」のしゃべり方かたとかボケをされてもこっちは知しらないよって感かんじじゃないですか。「なんでそんなしゃべり方かたをするのか」をどれだけ早はやい段階だんかいで伝つたえるかが大事だいじというか。それで言いうと、マユリカは説明せつめいをないがしろにしていないし、「マユリカでござい！」という感かんじではなくて、会場かいじょうでもちゃんとウケていた印象いんしょうです。

飯塚いいづか　阪本さかもとさんが普段ふだんから舞台ぶたいでやっている「走はしって登場とうじょう」をおざなりにしないで、しっかり“ヤバい人じん”ですよっていうのを最初さいしょに見みせていたのはよかった。

井口いぐち　マユリカは人気にんきがあるから、いつも通とおりキモく出でてきたときに会場かいじょうも知しっている人ひとが多おおそうな反応はんのうでした。キャッチコピーがよかったっていうのもあるかもしれませんけど。

──キャッチコピーは「ずっとキモダチ」でした。

飯塚いいづか　よかったのか悪わるかったのか（笑）。もっとキモいネタをやるんじゃないかと人ひとによっては思おもっちゃうんじゃないかな？というのは少すこし気きになったけど。

井口いぐち　ああー。それは確たしかに。でも「M-1」って、究極きゅうきょくの客観きゃっかん視しなんですよね。自分じぶんがどれだけ知しられているかを考かんがえないと。モグライダーくらい人気にんきがあればまたやり方かたを変かえないといけないと思おもいますし。前回ぜんかいの僕ぼくらは、今いま思おもえばちょうどいい知名度ちめいどだったと思おもうんですよ。当時とうじすでに松本まつもとさんと共演きょうえんさせてもらっていたし、お笑わらい番組ばんぐみをよく観みている人ひとだったら僕ぼくのキャラは知しってるけどネタはよくわからない、くらいの感かんじだったと思おもうので。あとマユリカは平場ひらばも面白おもしろかったですね。

飯塚いいづか　平場ひらば完璧かんぺきだったね。あれはかなりいいPRになったと思おもう。

ヤーレンズを見みて「やり続つづけることが大事だいじ」

井口いぐち　僕ぼくは客席きゃくせきから松本まつもとさんがどんな反応はんのうするかをずっと見みていたんですよ。コメントもしていましたけど、シシガシラさんのツカミでめちゃくちゃ笑わらってました。あの「堪たまんないよ」の顔かおをされていて。ファーストラウンドでは、僕ぼくが見みていた限かぎりなので定さだかではないですけど、ヤーレンズで一番いちばん笑わらっていた気きがします。ヤーレンズと僕ぼくらはずっと一緒いっしょのライブに出でていたし、2位いに入はいったときは「うおー！」となりましたけど、あと4組くみいると考かんがえると落おちちゃう可能かのう性せいもあるなと思おもっていて。というのも、ここまでみんなウケてはいましたけど“大だい爆発ばくはつ”みたいな笑わらいはまだ起おきていない感かんじだったので。ヤーレンズは本当ほんとうにちょっとしたことですけど、衣装いしょうを変かえたり髪型かみがたを変かえたりしたことでハマりだしましたよね。

飯塚いいづか　以前いぜんは落おち着ついた色いろのスーツにアスコットタイをしていたり、髪型かみがたもおしゃれ漫才まんざい師しっぽかったけど、今いまは楢原ならはらさんのウザいおじさん感かんが出でてるのがすごくいい。

井口いぐち　楢原ならはらさんが急きゅうに丈たけの短みじかいスーツにして、ここに来きてのベッカムヘア（笑）。トム・ブラウンとかもそうで、もともと面白おもしろかったけど布川ふかわさんがロン毛げにしてから一気いっきにハマりましたよね。

飯塚いいづか　それも、最初さいしょからやると「キャラ狙ねらってる」になっちゃうんだよね。いろいろなことを経へて、経へて、あれにたどり着ついているのがいいんだろうな。

井口いぐち　思おもい切きりはしましたよね。楢原ならはらさんが突然とつぜんベッカムヘアで劇場げきじょうに来きたときは、みんな「何なにしてんだよ！」と言いうわけですよ。それでも、やってよかった。衣装いしょうにしても、ライブだとちょっと派手はですぎるかもしれませんけど、あの決勝けっしょうの舞台ぶたいで見みると全然ぜんぜんそんなことなくて。むしろあれくらいじゃないと。

飯塚いいづか　あのキャラクターが「ウザい」とか「腹立はらだつ」となった瞬間しゅんかんに審査しんさ員いんの芸人げいにんさんたちにもハマっていく感かんじだよね。キャッチコピー（「ノンストップ・ウザ」）通どおりのキャラ。

井口いぐち　僕ぼくらが初はじめて2020年ねんに決勝けっしょうに行いって、翌年よくねんモグライダー、ランジャタイが行おこなって、この世代せだいの漫才まんざい師しで1組くみだけずっと決勝けっしょうに行いけなくて、いつ腐くさったり投なげ出だしてもおかしくない中なか、ずっとライブに出で続つづけた。結局けっきょく、やることが大事だいじなんだよなと思おもいますね。ときどきライブに出でてチェキ売うりさばいてるような奴やつじゃダメ！ やってる人ひとにしか結果けっかは出でないから。

飯塚いいづか　チェキを売うりさばいてる人ひとへの憎悪ぞうおがすごいね（笑）。

「M-1」で自虐じぎゃくネタは難むずかしい

飯塚いいづか　ヤーレンズもそうだし、令れい和わロマンも井口いぐちくんの仲間なかまってことになるの？

井口いぐち　全員ぜんいんそうですよ。さや香かとカベポスターは去年きょねんしのぎを削けずった仲間なかまだし、マユリカは「チャンスの時間じかん」で会あったことあるから、ほとんどもう仲間なかま。実じつは、シシガシラさんも仲間なかまですからね。これは本当ほんとうにどこにも言いってないんですけど、シシガシラのあの人ひといるじゃないですか。あのー、脇田わきたさんじゃないほう。

飯塚いいづか　仲間なかまなのに名前なまえが出でてこない（笑）。

──浜中はまなかさんです。

井口いぐち　浜中はまなかさん、僕ぼくと大学だいがくの同おなじ学部がくぶの同おなじ学科がっかで、同おない年どしの同級生どうきゅうせいなんですよ。だから、シシガシラさんが優勝ゆうしょうしたらそれ言いおうと思おもってて。

──大学だいがく時代じだいにしゃべったことはあったんですか？

井口いぐち　まあまあまあ……。あったかもしれないです。遡さかのぼって確認かくにんはできないですから。シシガシラさんの決勝けっしょうネタを見みて思おもったのは、「M-1」って自虐じぎゃくが難むずかしいんですよね。僕ぼくらも2020年ねんの決勝けっしょうは自虐じぎゃく要素ようそでやってダメだったし、2018年ねんのギャロップさんもあんまり点数てんすう伸のびずでしたし。

飯塚いいづか　ギャロップはその年としの準決勝じゅんけっしょうで「優勝ゆうしょうするかもしれない」ってくらいウケてた。さっきの客観きゃっかん視しの話はなしに通つうずるけど、準決勝じゅんけっしょうと決勝けっしょうではまた違ちがうんだよね。

井口いぐち　お笑わらいが本当ほんとうに好すきな人ひとからすれば、脇田わきたさんがいくらひどいこと言いわれようが、井口いぐちが悲惨ひさんだろうが、なんにも思おもわないんでしょうけど。知しらない人ひとが見みると「かわいそう」に映うつっちゃうのかもしれない。

飯塚いいづか　決勝けっしょうで披露ひろうしたのは、数すう年ねん前まえからできていたシシガシラの代表だいひょう作さく的てきなネタだと思おもうけど、扱あつかってるテーマ的てきに、披露ひろうする空間くうかんだったり時代じだいの流ながれに左右さゆうされやすいのかなと思おもったりもした。あのネタ大好だいすきなだけに、難むずかしいって改あらためて思おもった。

ウエストランドの優勝ゆうしょうネタはとっても秀逸しゅういつ

井口いぐち　決勝けっしょうって緊張きんちょう感かんもあるから、お客きゃくさんが聞きき逃のがしちゃう可能かのう性せいがあるんですよね。で、聞きき逃のがすと、そこでついていけなくなっちゃう。そういう意味いみではウエストランドの「あるなしクイズ」は実じつはすごくいい構成こうせい。どこから聞きいても笑わらえるので、秀逸しゅういつな作つくりなんですよ。

飯塚いいづか　あはははは（笑）。確たしかにね。でも、1本ほんでつながっている作品さくひん性せいの高たかいネタがウケる年としもあるし、令れい和わロマンみたいにお客きゃくさんにどんどん投なげかけていくのがウケる年としもあるし、どういうネタがいいかは本当ほんとうに当日とうじつになってみないとわからない。

──「#M1グランプリ」を追おいながら決勝けっしょうを観みていたんですが、「歌うたネタ」を歓迎かんげいしていない投稿とうこうが多おおくありました。「M-1」で歌うたネタは不利ふりなのでしょうか？

飯塚いいづか　おいでやすこがが歌うたネタをやったらそんな反応はんのうは少すくないと思おもうんですよ。これもさっきの話はなしと同おなじで、どういうコンビなのか、お笑わらい好すきからは知しられていてもライトな層そうからしたらまだよくわからないコンビがいきなり歌うたネタをやる、となると「ああ、掛かけ合あいの漫才まんざいじゃないのか」と身構みがまえてしまうのかもしれません。例たとえば、ロバート秋山あきやまさんがカラオケ音源おんげんを自分じぶんの口くちで歌うたったら、もともとそういうことをしそうなイメージもあるし違和感いわかんなく受うけ入いれられると思おもう。そこが準決勝じゅんけっしょうでウケたネタが決勝けっしょうでは違ちがう反応はんのうになってしまうという難むずかしい部分ぶぶんなのかなと思おもいます。

井口いぐち　そう考かんがえると2022年ねんは……。

飯塚いいづか　2022年ねんって誰だれが優勝ゆうしょうしたんだっけ？

井口いぐち　井口いぐち率ひきいるウエストランドが優勝ゆうしょうしたんですけど（笑）、僕ぼくら最初さいしょのほう、全然ぜんぜん掴つかめていないんですよ。最初さいしょのあるなしはゼロ笑わらい。でも、そのあとの「警察けいさつに捕つかまり始はじめている」のくだりが絶対ぜったいウケると思おもっていたから気持きもち的てきには大丈夫だいじょうぶでした。絶対ぜったいにどんなときでもウケる部分ぶぶんが前半ぜんはん1分ふん半はんくらいにある、という状態じょうたいにしておかないと、掴つかみ損そこねたときにスルスルスルとそのまま最後さいごまでいっちゃう。どこでも絶対ぜったいにウケるボケを前半ぜんはんに、できれば自然しぜんな形かたちで入いれておくことで、自分じぶんの気持きもちも保たもたれるしウケたら一気いっきにウケると思おもうから、「M-1」を戦たたかううえではめちゃくちゃ大事だいじな要素ようそだと思おもいますね。

飯塚いいづか　なんか、すごいタメになる話はなしてるね。井口いぐちくん、「M-1」塾じゅく開あけば？（笑）

“勝かち確かく”のサイン

飯塚いいづか　さや香かの採点さいてんのときに松本まつもとさんが「令れい和わロマンと比くらべて点数てんすうを付つけた」と言いっていて、そこで1回かい会場かいじょうが冷静れいせいになった感かんじがあったよね。「確たしかに令れい和わロマン面白おもしろかったな」と思おもい出だす瞬間しゅんかんになった。

井口いぐち　「M-1」はその場ばを掌握しょうあくした人ひとが勝かつじゃないですか。2022年ねんの決勝けっしょうを観み返がえしたときに、最後さいごのほうでロングコートダディの堂前どうまえさんが「人前ひとまえでこんなに悪口わるぐち言いう人ひと初はじめて見みました」と言いっていて、僕ぼくの話はなしになっていたんですよ。その段階だんかいで“勝かち確かく”というか。みんなが「井口いぐちって奴やつはなんなんだ」という話はなしをしてしまっている。今回こんかいはちょこちょこ令れい和わロマンの話題わだいになってたんですよね。（司会しかいの）今田いまだ耕司こうじさんの「令れい和わロマンとは全然ぜんぜんちゃうな」とか。

飯塚いいづか　トップバッターの令れい和わロマンのことを最後さいごまで忘わすれなかったよね。2本ほん目めのネタは以前いぜん見みたことがあったんだけど、最後さいごに吉本興業よしもとこうぎょうのくだりを足たしていたんだよ。あれがめっちゃよかったし、ウエストランドイズムを感かんじた。今いままで架空かくうの話はなしだったのが、急きゅうに現実げんじつになって、吉本よしもとの審査しんさ員いんや今田いまださんも反応はんのうせざるを得えなくなる。ウエストランドが優勝ゆうしょうしたときに爆笑ばくしょう問題もんだい・太田おおたさんが言いっていた「みんなを巻まき込こんじゃった」感かんじに近ちかいなと思おもった。

井口いぐち　「M-1」もタレント審査しんさ的てきな部分ぶぶんもあるんじゃないかと思おもっていて。僕ぼくらが「レッドカーペット」（フジテレビ）でレッドカーペット賞しょうを獲えったときって、若干じゃっかんズルですけど審査しんさ員いんに話はなしかけたりしてこっちに巻まき込こんでいたんですよ。そこからなんとなく積つみ重かさねてきた考かんがえ方かたというか、技わざというか、そういうものが「M-1」にも出でてたのかなとは思おもいます。真空しんくうジェシカも面白おもしろかったですし、松本まつもとさんも高こう得点とくてんを付つけていて、落おちたときに「脱落だつらくか～」と残念ざんねんそうに言いってましたね。

飯塚いいづか　真空しんくうジェシカのすごいところは、ああいう芸風げいふうでバラエティに出でると、普通ふつうはキャラクターを剥はがされるじゃん。「こいつ、本当ほんとうは真面目まじめなんです」とか。それを全部ぜんぶ突つっぱねて、全部ぜんぶボケで漫才まんざいのキャラのまま「ラヴィット！」（TBS系けい）とかも出でてる。ただ、審査しんさ員いんが「もっと奇抜きばつなことを期待きたいした」と言いっていたけど、そのすごさゆえにキャラが浸透しんとうしすぎていてハードルが上あがっていたのかもなと思おもった。

井口いぐち　3年ねん連続れんぞく決勝けっしょうって、本当ほんとうにすごいですからね。僕ぼくはよく「返かえり咲ざくのがとくにかくすごいんだ」（ウエストランドは2020年ねん決勝けっしょう、2021年ねん準々じゅんじゅん決勝けっしょう敗退はいたい、2022年ねん優勝ゆうしょうの返かえり咲ざき）と言いっていますけど、返かえり咲ざくよりも3年ねん連続れんぞくはすごいと思おもう。しかも3回かいともウケているのは相当そうとうすごいし、今回こんかいは特とくにアジャストもしてきて。「映画えいが泥棒どろぼう」のくだりは拍手はくしゅ笑わらいが来きてました。

くらげ、井口いぐちの言葉ことばに刺ささる

井口いぐち　くらげが、審査しんさ結果けっかが出でたときに「もう終おわりですか……」と言いっていたじゃないですか。あの気持きもち、僕ぼくは痛いたいほどわかります。僕ぼくらは2020年ねんの決勝けっしょうで10番目ばんめに出でていって、暫定ざんてい席せきに一いち度ども座すわれずにその瞬間しゅんかん「M-1」が終おわった。笑わらい神しん籤くじが引ひかれてネタやって4分ふん、審査しんさも含ふくめて6、7分ふんでこの舞台ぶたいから去さらなきゃいけない、ここにもう立たてないんだと思おもうと本当ほんとうにキツかったですから。過去かこにあんまり見みたことないと思おもいますけど、今回こんかい、決勝けっしょうの生放送なまほうそうが終おわってからファイナリストのみんなのところにズカズカ入はいって行いったんですよ。

飯塚いいづか　あんまり見みないね。前回ぜんかいのチャンピオンが決勝けっしょう終おわったばかりのファイナリストに突撃とつげきするの（笑）。

井口いぐち　「ネクストデイ」の続編ぞくへん（TVerのみで配信はいしん）では僕ぼくとともしげさんが楽屋がくやで話はなしているところが使つかわれていましたけど、僕ぼく、袖そでのほうにも行おこなったんですよ。終おわってホカホカのところに。

飯塚いいづか　え、あの松本まつもとさんとかがファイナリストに声こえをかけていたところ？

井口いぐち　そうです、そうです。さすがに松本まつもとさんや審査しんさ員いんの方ほうがはけたあとに行いきましたけど。令れい和わロマンには「新しん世代せだい感かん出だすなよ」と言いっときました。「同どう世代せだいの仲間なかまだよな？」って。あと、ヤーレンズは「ごめんな、繋つなげなかった」ということを言いってましたね。僕ぼくら世代せだいの活躍かつやくを繋つなぎたかったっていう思おもいには熱あつい気持きもちにもなりました。そこから楽屋がくやに行いって、さや香か・新山しんやまはあのネタ（2本ほん目め）がやりたかったと話はなしていて、「来年らいねんも出でるんでしょ」みたいな会話かいわをしました。カメラが回まわってたからもう1回かい令れい和わロマンのところに行いって、「みなさんあんまり知しらないかもしれないですけど、K-PROライブでずっと一緒いっしょに戦たたかってきた仲間なかまです。仲間なかまが連続れんぞくで優勝ゆうしょうしてます」って一応いちおう映像えいぞうには残のこしときました。

飯塚いいづか　あははは（笑）。マヂカルラブリー、錦鯉にしきごい、令れい和わロマンって、ずっと井口いぐちくんの仲間なかまが優勝ゆうしょうしてるってことだよね？

井口いぐち　そうなんですよ。まだバトンは繋つながっているな、と（笑）。真空しんくうジェシカもいて、キャラもあるからあんまり言いうもんじゃないかもしれませんけど、川北かわきたが「どうでした？ 井口いぐちさん。今日きょう観みてて」って聞きいてきたんですよ。負まけるって本当ほんとうにしんどいことですけど、あいつは終おわった直後ちょくごに意見いけんを求もとめてきて。「また行いくぞ」という感かんじで、誰だれよりもクッと次つぎに向むかっているなと思おもいました。くらげは、「僕ぼくらもマヂラブさんも最下位さいかいから優勝ゆうしょうしたんだから」「ここからテレビも増ふえて、大丈夫だいじょうぶでしょ」と声こえをかけたら「マジで刺ささります……」ってすごい刺ささってたんで、怖こわくなって逃にげました（笑）。くらげが刺さすことはあっても刺ささるとは思おもってなかったんで。くらげが痺しびれてたのは怖こわかったです。

飯塚いいづか　オチみたいになった（笑）。

「検索けんさくちゃん」いい話はなし、ない

──「爆笑ばくしょう問題もんだいの検索けんさくちゃん 芸人げいにんちゃんネタ祭まつりスペシャル」（テレビ朝日てれびあさひ）にウエストランドが出演しゅつえんしました。ずっと前説ぜんせつをやってきた番組ばんぐみに、爆笑ばくしょう問題もんだいと共ともに名なを連つらねた感慨かんがいをぜひお伺うかがいしたいです。

飯塚いいづか　エモい話ばなしはないの？

井口いぐち　ないです（キッパリ）。もちろん出ださせてもらってありがたいんですけど、僕ぼくとしては「なんで前回ぜんかい呼よんでくれなかったんだ？」っていうのがあるので。トム・ブラウンとかは出でてるのに。前回ぜんかいの収録しゅうろくが、僕ぼくらの「M-1」決勝けっしょうが決きまったあとで、オンエアは決勝けっしょう後ごだったんですよ。だから、ざまあみろと思おもいました（笑）。呼よばれなかった悔くやしさがあったので、今回こんかいは思おもいっきりやってやろうとは思おもいましたけど。みなさんがエモいとか思おもうのは自由じゆうですけど、僕ぼくに対たいして「よかったね」とかは言いわないでもらいたいです！

──失礼しつれいしました（笑）。

飯塚いいづかの「今月こんげつのお笑わらい」付つけ足たし

THE W

紅べにしょうがが5度目どめの決勝けっしょうで優勝ゆうしょうしました。今年ことしは1本ほん目めも2本ほん目めもコントでしたが、毎年まいとし出でて、そのたびに何なにか新あたらしさを求もとめられちゃうのってツラいだろうなって思おもいます。そういう意味いみでも2本ほんともコントで攻せめたのは作戦さくせん勝がちな気きがしましたし、熊くまプロさんだけでなく、稲田いなださんの面白おもしろさを出だそうとしていて、そこもよかったんじゃないかなと思おもいます。

エルフは1本ほん目めのコントがすごく話題わだいになりました。ギャルをネタにしたコントというより、「登場とうじょう人物じんぶつがギャルであるほうが面白おもしろくなるコント」という気きがして、ネタの世界せかいがすごく広ひろがったと思おもいます。正式せいしきなタイトルが「居場所いばしょ」っていうのもいいですよね。

あとスパイクがパワーアップしているんじゃないかと感かんじました。後輩こうはいの三さん戸こキャップ。さんにツッコミのやり方かたを指摘してきされて、ムカついたけど今いままでのスタイルを変かえたと言いってました。今いままでは空そらに向むかって張はり上あげるようにツッコむようなスタイルだったけど、今年ことしはコントの登場とうじょう人物じんぶつとして、お芝居しばいの中なかでツッコむスタイルになった気きがします。

あぁ～しらきさんのネタも話題わだいになりましたが、あのネタはライブにかけてなくて、「THE W」準決勝じゅんけっしょうで初はじめて下おろしたそうです。あのネタを叩たたいて叩たたいて、磨みがいてきていたら、なんか嫌いやな気きもするので安心あんしんしました。ランジャタイ国崎くにさきさんからもアドバイスをもらっていたみたいで、なるべく完成かんせい度どを上あげないように言いわれてたらしいです。

和牛わぎゅうの解散かいさん

和牛わぎゅうが2024年ねん3月がつでの解散かいさんを発表はっぴょうしましたね。近ちかしい芸人げいにんさんたちもほとんど知しらされてなかったみたいで、衝撃しょうげきが走はしってました。これも前回ぜんかいも言いったように「本当ほんとうのことは当事とうじ者しゃしかわからない」に尽つきるのですが、最初さいしょのリリースに「遅刻ちこくがきっかけ」と入はいっていたことで、それを題材だいざいにどっちが悪わるいか論争ろんそうがSNSで巻まき起おこっていたのが切せつなかったです。中なかには「遅刻ちこくくらいでって言いうけど、遅刻ちこくは相手あいての時間じかんを奪うばうからよくない」みたいな、正論せいろんでぶん殴なぐるようなインフルエンサーの方ほうもいて、そういうのを目めにするのも胸むねが痛いたいです。コンビの距離きょり感かんって本当ほんとうに難むずかしいと思おもうので、このコンビは仲良なかよいとか過剰かじょうに決きめつけたり、それを求もとめすぎないほうがいいと思おもいますし、どっちが原因げんいんと決きめられるような単純たんじゅんな話はなしではないのかなって思おもいます。

TVチャンピオン

令れい和わに復活ふっかつした「TVチャンピオン」（テレビ東京てれびとうきょう）が面白おもしろかったです。手先てさきが器用きよう選手権せんしゅけん、段だんボールアート王おう、和菓子わがし職人しょくにんも、ウチの6歳さいと4歳さいの子供こどもたちも夢中むちゅうになって観みていたし、コンテンツとしてまだまだ強つよいなって思おもいました。「今月こんげつのお笑わらい」的てきに注目ちゅうもくしたいのはリポーター。かつては中村なかむらゆうじさんをはじめ、デビット伊東いとうさんや、彦摩呂りょさん、山崎やまざきまさやさんなど独特どくとくな人選じんせんだったけど、令れい和わ版ばんではアルピー酒井さかいさん、チャンス大城おおきさんが選えらばれていて、これまた絶妙ぜつみょうだなって思おもいました。

スベリ-1グランプリ

いろんな賞しょうレースがあった12月ですが、「水曜日すいようびのダウンタウン」（TBS）の企画きかく「スベリ-1グランプリ」もありました。推薦すいせん者しゃの芸人げいにんさんたちのガヤも面白おもしろくて、見応みごたえがあったと思おもいます。優勝ゆうしょうしたエンジンコータローさんはネコニスズ舘野たてのさんの元もと相方あいかたで、大阪芸大おおさかげいだいの落研出身しゅっしん。今回こんかいの優勝ゆうしょうによってM-1（ミルクボーイ）、キングオブコント（空気くうき階段かいだん）、THE W（オダウエダ）に次ついで、スベリ-1も大阪芸大おおさかげいだい落研OBが獲得かくとくしたことになりました。

令れい和わロマンの娯楽ごらくがたり

テレ朝てれあさで「令れい和わロマンの娯楽ごらくがたり」という、令れい和わロマンの地上波ちじょうは初はつ冠かんむり番組ばんぐみが放送ほうそうされました。9月くらいからテレビ朝日てれびあさひの秋山あきやま直ただしディレクターと企画きかく書しょを作つくっていて、最初さいしょは「バラバラ大だい作戦さくせん」を狙ねらっていたんですけど、まだ「M-1」の3回戦かいせんも終おわってない段階だんかいで、年末ねんまつに23時じ台だいで特番とくばんやってみようと決きまりました。「これ優勝ゆうしょうしたら最高さいこうのタイミングですね」ってスタッフで話はなしてたら本当ほんとうに優勝ゆうしょうして興奮こうふんしました。エンタメについて分析ぶんせきする、くるまさんの得意とくい技わざがバンバン出でてる番組ばんぐみです。TVerでまだ配信はいしんされていると思おもうので観みてほしいです。