地上波ちじょうは番組ばんぐみでボツになってしまった企画きかくを掘ほり起おこし、実現じつげんさせるAmazon Prime Videoオリジナルバラエティ「今田いまだ×東野とうののカリギュラ」。過激かげきなシーンが盛もりだくさんで、シーズン2の最終さいしゅう話ばなしではMCの今田いまだ耕司こうじと東野とうの幸治こうじが自みずから体からだを張はって火ひだるまになっている。

そんな同どう番組ばんぐみに捨すて身みの覚悟かくごで挑いどみ、次々つぎつぎと名めい場面ばめんを生うみ出だしているのが平成へいせいノブシコブシ吉村よしむらだ。オファーを断ことわる芸能人げいのうじんが続出ぞくしゅつした危険きけんな企画きかくで体からだを張はり続つづける彼かれを、今田いまだと東野とうのは敬意けいいを込こめて“ミスターカリギュラ”と呼よんでいる。吉村よしむらはなぜ過激かげきな企画きかくのオファーを受うけ入いれるのか。芸人げいにんとしてどこを目指めざしているのか。本人ほんにんに話はなしを聞きいてみた。

取材しゅざい・文ぶん / 塚越つかこし嵩たかし大だい　撮影さつえい / 小坂こさか茂雄しげお

シーズン2に入はいってからヤバさに拍車はくしゃがかかった

──吉村よしむらさんといえば最近さいきん、「水曜日すいようびのダウンタウン」（TBS）や「金曜きんよう☆ロンドンハーツ」（テレビ朝日てれびあさひ）といった番組ばんぐみでの立たち振ぶる舞まいが話題わだいとなり、再さい評価ひょうかの声こえが高たかまっているように感かんじます。このような現状げんじょうをご自身じしんはどう受うけ止とめていますか？

すごくうれしいんですけど……この評価ひょうかも長ながくは続つづかないんじゃないかと思おもっています。僕ぼくのいろいろな側面そくめんの1つにたまたまスポットが当あたったという感かんじで、いずれまた好こう感度かんどは下さがっていくんじゃないかな。今いまの状況じょうきょうは宝たからくじに当あたったような感覚かんかくです。

──冷静れいせいに捉とらえられているんですね。

自分じぶんのベースにあるのは「カリギュラ」でケツにバイブを入いれているような姿すがただと思おもうので（笑）。そんなところを見みせたら好感こうかん度どなんて下さがっていく一方いっぽうですよ。

──（笑）。では、そんな「カリギュラ」と吉村よしむらさんの歩あゆみを振ふり返かえっていければと思おもいます。最初さいしょにこの番組ばんぐみを知しったときに抱だいた印象いんしょうは？

「東野とうの、鹿しかを狩かる」とか「オレオレ詐欺さぎ選手権せんしゅけん」とか……ヤバい番組ばんぐみだなと思おもいました。昨今さっこんのバラエティ番組ばんぐみに蔓延まんえんしている閉塞へいそく感かんをぶち壊こわそうみたいなことを掲かかげていますけど、過去かこにもこんなヤバい番組ばんぐみなかったんじゃないですか？ 前人ぜんじん未踏みとうの激げきヤバ・バラエティという印象いんしょうです。

──吉村よしむらさんが最初さいしょに出演しゅつえんされた企画きかくは「ROAD TO WALKING DEAD 第だい1回かい芸人げいにんゾンビオーディション」でした。平成へいせいノブシコブシさん、千鳥ちどりさん、とろサーモン久保田くぼたさん、スリムクラブ真栄田まえださんがゾンビになりきる演技えんぎで競きそいあうという内容ないようです。

この企画きかくはロケ地ちが牧場ぼくじょうだったのでピクニック気分きぶんで楽たのしかったです。「ウォーキング・デッド」のファンなので「これがきっかけでドラマの制作せいさく者しゃたちに噂うわさが届とどくかもしれない」という気持きもちで一生懸命いっしょうけんめいやりました。問題もんだいはシーズン2に入はいってからですよ。一気いっきに企画きかくのヤバさに拍車はくしゃがかかりました。

──参加さんか者しゃが火ひだるまの状態じょうたいでいかに遠とおくまで飛とべるかを競きそう「人間にんげん火ひの鳥とりコンテスト2018」の登場とうじょうですね。この危険きけんなオファーを受うけた理由りゆうは？

こういう過激かげきな企画きかくのオファーって結構けっこう断ことわられるらしく、僕ぼくのところに話はなしがくるときにはもう断ことわれない状況じょうきょうになっていて。「やってくれる人ひと、ほかに誰だれもいないんです！」というお願ねがいのされ方ほうだからやるしかないんです（笑）。僕ぼく自身じしんも自分じぶんのことをNGなし芸人げいにんというか、ヤリマン芸人げいにんというか、「しょうがねえ、またあの人ひとのところ行いくか」と頼たよっていただくポジションの芸人げいにんだと思おもっているので。そうやってこの世界せかいを生いき抜ぬこうとしています（笑）。

──総合そうごう演出えんしゅつの姉崎あねざき正広まさひろさんにインタビューした際さい、“火ひの鳥とり”挑戦ちょうせん者しゃのほとんどが「生いきててよかった」とコメントする中なか、吉村よしむらさんだけは「俺おれ、カッコよかった？」と言いってきたというエピソードを聞ききました。それはどういう思おもいから出でた言葉ことばだったのでしょうか？

褒ほめてもらいたいからです。僕ぼくはこの番組ばんぐみにとっての昔むかしながらのセフレという感覚かんかく。呼よばれたらすぐに行いくけど、たまには優やさしい言葉ことばも欲ほしいわけです。最近さいきんではようやく“ミスターカリギュラ”と呼よんでいただけるようになって「セフレもがんばれば地位ちいが上あがるんだな」と感無量かんむりょうでした（笑）。

──なるほど。東野とうのさんからは「ポージングが素晴すばらしい」という称賛しょうさんの声こえもありましたね。

そこも褒ほめていただいて本当ほんとうにうれしい！ 飛ひ距離きょりを出だそうと思おもってポーズにはこだわったので、ぜひ見みてほしいです。

俺おれたちが臆病おくびょうになりすぎていたのかもしれない

──「人間にんげん火ひの鳥とりコンテスト」の次つぎの企画きかくは尻しりの穴あなにバイブを入いれてロケに臨のぞむ「嗚呼ああ！麗うるわしのバイブス」でした。

これにいたってはオファーを受うけるか考かんがえる間あいだもなく、すでに出演しゅつえんが決きまっていたんですよ！ どういう内容ないようなのか詳くわしく聞きかされないまま現場げんばに向むかわされて、その場ばで詳細しょうさいを知しるという……。でもそこは老舗しにせのセフレですから、何なにも文句もんくを言いわずにやりました。一方いっぽうで、ロケが終おわったあとは「俺おれの評価ひょうかどうなっちゃうんだろう」「『外そとでこんなことするな』って炎上えんじょうしちゃうのかな？」って結構けっこう悩なやみましたね。でも、いざ配信はいしんされると女性じょせいを含ふくむ知しり合あいからLINEで「よかったよ！」という反応はんのうがたくさんきたので、世間せけんって狂くるってるんだなって思おもいました（笑）。「カリギュラ」は「これで楽たのしんでくれる人ひともいるんだ」「俺おれたちが臆病おくびょうになりすぎていたのかもしれない」って、考かんがえを改あらためさせてくれる番組ばんぐみでもあります。

──吉村よしむらさんが実際じっさいにバイブをお尻しりに入いれて、最初さいしょは痛やめがっていたのに、終盤しゅうばんで感かんじ始はじめてしまうのが笑わらってしまいました。

あれのせいで穴あなが広ひろがって、若干じゃっかん性癖せいへきが変かわりました（笑）。性癖せいへきまで変かえるバラエティなんて革命かくめい的てきですよ。しかも海外かいがいにも配信はいしんされるということで、今いままで日本にっぽんがき上ずきあげてきたクールジャパンのイメージを崩壊ほうかいさせる可能かのう性せいがある。国くにが規制きせいを出だすんじゃないかと危惧きぐしています。“国家こっか指定していの有害ゆうがいバラエティ”になるかもしれない。

──（笑）。パート2の最終さいしゅう話ばなし「今田いまだ・東野とうの 世界せかいへ飛とぶ ～The phoenix to the world～」では、今田いまだ耕司こうじさんと東野とうの幸治こうじさんが“火ひの鳥とり”に挑戦ちょうせんしました。吉村よしむらさんも見守みまもり役やくとして現場げんばにいらっしゃいましたね。

あれは見みていて震ふるえました。僕ぼくがこの世界せかいに入はいったときにはすでにMCとしての位置いちを確立かくりつしている2人ふたりだったので、あそこまで体からだを張はっているところを生なまで見みたことがなかったんです。自分じぶんとは違ちがう世界せかいにいる“MCの達人たつじん”だったので、正直しょうじき「体からだを張はらせたら俺おれらが勝かつんじゃないの」「OBが今いまさら試合しあいに出でてもねえ」という思おもいがどこかにあって。でも実際じっさいは体からだを張はる今田いまださんと東野とうのさんってガッチガチに面白おもしろくて、「なんだよ！ まだ現役げんえきじゃねえかよ！」って怖こわさを感かんじました。まだどいてくれないんだなあって。

──なるほど。吉村よしむらさんは見守みまもる立場たちばとしてもいくつかの企画きかくに参加さんかしていましたが、自分じぶんがまったく関かかわらなかったものもご覧らんになられましたか？

観みました！ 全部ぜんぶ面白おもしろかったんですけど、ロバート秋山あきやまさんたちが“平成へいせい最大さいだいの爆破ばくは”に挑いどんだ「特効とっこう野郎やろうAチーム」は特とくに面白おもしろかったです。この時代じだいに「ただただ大おおきい爆破ばくはをする」というなんの情報じょうほう性せいもない企画きかくを実行じっこうする動機どうきが謎なぞすぎます（笑）。どの企画きかくも“逆算ぎゃくさんから作つくられてない”というイメージ。答こたえや結末けつまつありきで、そこに誘導ゆうどうするようなものを作つくるのではなくて、何なにが起おきるかわからないけどとりあえず進すすんでみようという姿勢しせいをとても感かんじます。だから、みんなタガが外はずれてわけわかんなくなっちゃってるときもあるんですが（笑）。童話どうわの「舌した切ぎり雀すずめ」って最後さいご、大おおきいつづらを開あけたら妖怪ようかいがドバーッって出でてくるじゃないですか。あれに似にていますよね。妖怪ようかい大だい運動会うんどうかいのようなカオス状態じょうたい。