このイラストのように、恒星は燃料を使い果たすと爆発する。天文学者は毎年、何千もの爆発を目撃しているが、そのほとんどは地球から比較的近い場所で起きている。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の新しいデータから、宇宙初期の超新星が多く発見され、太古の宇宙で起きた爆発の記録が急増した。(ILLUSTRATION BY MEHAU KULYK, SCIENCE PHOTO LIBRARY)
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遠く離れた超新星を観測することは、過去をさかのぼるようなものだ。超新星爆発は天文学者に、何十億年も前の宇宙がどのような姿だったかを教えてくれる。天文学者たちは現在、遠くにある宇宙初期の超新星をこれまでより10倍も多く発見しており、6月7日付けで査読前論文を投稿するサーバー「arXiv」に発表した。その中には、観測史上最も古く、最も遠い超新星が含まれる。
これらの超新星は、米航空宇宙局(NASA)のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が集めているデータから発見された。同望遠鏡の画像を解析した結果、宇宙のごく小さな領域で、約80の超新星が見つかったと、6月前半に米ウィスコンシン州マディソンで開催された米天文学会の会合で発表された。発見された超新星の多くは、これまで知られていたどの超新星より遠くにあり、宇宙がまだ20億歳だった時代を見ていることになる。
天文学者たちはジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のデータを用い、時間とともに明るさが変化した約80の天体(緑の丸で囲んだ箇所)を特定した。「トランジェント天体(突発天体)」と呼ばれるこれらのほとんどは、超新星爆発の結果として生じたものだ。これらの星は、宇宙がわずか20億歳ほどのときに爆発した。(PHOTOGRAPHS BY NASA, ESA, CSA, STSCI, JADES COLLABORATION)
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、宇宙のかなたにある光を探すのに最適なツールだ。「大きな望遠鏡で、集光面積はハッブル宇宙望遠鏡の約10倍です」と、研究に参加した米宇宙望遠鏡科学研究所(STScl)のジャスティン・ピーレル氏は話す。宇宙の広範囲を観測できるだけでなく、超新星の存在を示す波長の長い光にもより敏感に反応する。「はるか遠くに超新星が存在することはわかっていましたが、以前は見ることができませんでした」
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡はより大きく、感度が高いため、ほかの望遠鏡では検出できないものが見つかるようになった。「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のデータ上でこのような超新星が見つかるようになったのは素晴らしいことだと思います」と米ハーバード大学の天文学者エド・バーガー氏も喜んでいる。バーガー氏は今回の研究に参加していない。(参考記事:「宇宙初期の巨大ブラックホール、予想より50倍も多かった」)
今回の発見以外にも、宇宙の歴史におけるさまざまな時代の超新星が発見されている。宇宙の小さな領域で遠く離れた超新星を約80個も見つけたことは意義深いが、「広く浅く調べて発見される超新星の数は1年間に1万を超えており、それに比べると小さな数字です」とバーガー氏は言う。
ただし、多くの超新星はより若く、地球により近い。今回の発見の重要性は、はるか遠くの超新星を発見したことだ。つまり、宇宙の歴史のはるかに古い時代をのぞき見ていることになる。(参考記事:「歴史上最も明るい超新星爆発の記録を新たに発見」)
過去をのぞき見る
研究チームはより遠くにある超新星、つまり、より古い超新星を見つけるため、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が1年間にわたって撮影した多くの画像を比較した。研究者たちはそこから「トランジェント天体(突発天体)」と呼ばれる、画像に現れる光源や消える光源を探した。その結果、何十もの超新星が見つかっただけでなく、光の性質から、それらの超新星が何十億年も前に爆発したことが明らかになった。
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