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米国べいこく人じんがメめートル法とるほうでなく、ヤード・ポンド法ほうを「好このむ」理由りゆう

単位たんいの混在こんざいは「リスキーな環境かんきょう」と専門せんもん家かは指摘してきする

2024.06.22

2021年、米カリフォルニア州のデスバレー国立公園で温度計の写真を撮る職員。1975年、メートル法は国が推奨する単位であると正式に宣言されたが、一般市民への普及はなかなか進まない。（PHOTOGRAPH BY ROGER KISBY, REDUX）

2021年ねん、米べいカリフォルニア州しゅうのデスバレー国立こくりつ公園こうえんで温度おんど計けいの写真しゃしんを撮とる職員しょくいん。1975年ねん、メめートル法とるほうは国くにが推奨すいしょうする単位たんいであると正式せいしきに宣言せんげんされたが、一般いっぱん市民しみんへの普及ふきゅうはなかなか進すすまない。（PHOTOGRAPH BY ROGER KISBY, REDUX）

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　米国べいこく、ミャンマー、リベリアの共通きょうつう点てんをご存ぞんじだろうか。「この3カ国かこくには恥はずかしい類似るいじ点てんがある」とメめートル法とるほう支持しじ者しゃは主張しゅちょうする。メートル、グラム、キロメートルではなく、フィート、ポンド、マイルという帝国ていこく単位たんい（ヤード・ポンド法ほう）を使用しようしているのだ。

　しかし、実じつは、話はなしはもっとややこしい。米国べいこくではフィートやポンドといった単位たんいが広ひろく使つかわれているが、実際じっさいに国くにが推奨すいしょうしているのはメめートル法とるほうだ。

　では、なぜ米国べいこく人じんはメめートル法とるほうを使つかわないのか？　メめートル法とるほうの発展はってんの歴史れきしと、なかなか日常にちじょう生活せいかつに定着ていちゃくしない理由りゆうを見みていこう。

実じつは推奨すいしょうされていた

　まずはこんな事実じじつから。「米国べいこくでは1866年ねんにメめートル法とるほうの使用しようは法制ほうせい化かされています」と、度量衡どりょうこうの標準ひょうじゅんを管理かんりする米国べいこく国立こくりつ標準ひょうじゅん技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょ（NIST）の連邦れんぽうメめートル法とるほうプログラムを主導しゅどうするエリザベス・ベンハム氏しは言いう。

　実際じっさいに、1970年代ねんだい以降いこう、貿易ぼうえきや商しょう取引とりひきにおいては、メめートル法とるほう（国際こくさい単位たんい系けい、SI）を国くにとして推奨すいしょうする方針ほうしんを政府せいふは示しめしてきた。しかし、使用しようは任意にんいで、一律いちりつ的てきな制度せいどとはせずに産業さんぎょう界かいや個人こじんにSIの使用しようをやんわりと促うながす程度ていどだったために、普及ふきゅうに1世紀せいき以上いじょうも費ついやす結果けっかとなっている。

混こんとんから始はじまったメめートル法とるほう

　事ことの難むずかしさは、度量衡どりょうこうにまつわる混こんとんとした歴史れきしからも見みて取とれる。メめートル法とるほうの起源きげんはフランス革命かくめいにさかのぼる。18世紀せいき後半こうはんの啓蒙けいもう思想しそうの時代じだい、フランス人じんは、国くにを襲おそった政治せいじ的てき混乱こんらんの中なかに、ある大おおきなチャンスを見みいだした。その頃ころのフランスには膨大ぼうだいな数かずの計量けいりょう単位たんいが存在そんざいし、国内こくないだけでも25万まん種類しゅるいもの単位たんいが使つかわれていた。（参考さんこう記事きじ：「フランス革命かくめいはいかにしてメめートル法とるほうを生うんだか」）

　フランス以外いがいでも、国こくごとに、さらには同おなじ国こくでも地域ちいきごとに独自どくじの計量けいりょう単位たんいがあった。世界せかい共通きょうつうで一定いっていの決きまりに基もとづく国際こくさい基準きじゅんを夢見ゆめみる科学かがく者しゃにとっては、悪夢あくむとしかいいようがない状況じょうきょうだ。

　新あらたな体系たいけいづくりを任まかされたフランス科学かがくアカデミーは、その基準きじゅんとなる尺度しゃくどを、パリから測定そくていした「北極ほっきょくから赤道せきどうまでの距離きょりの1000万まん分ぶんの1の長ながさ」と決きめた。これを1メートルとし、著名ちょめいな科学かがく者しゃらによって苦労くろうの末すえに文書ぶんしょにまとめられ、以後いごすべての度量衡どりょうこうの基礎きそとなった。例たとえば、1ミリリットルは1立方りっぽうセンチメートルの水みずの体積たいせき、というように。

なかなか進すすまない切きり替かえ

　メめートル法とるほうはすぐさまフランスで採用さいようされたが、一般いっぱん市民しみんが新しん方式ほうしきを取とり入いれるのに時間じかんがかかるのは世よの常つねだ。導入どうにゅうは遅々ちちとして進すすまなかったが、メめートル法とるほうは世界中せかいじゅうの科学かがく者しゃに電気でんきショックのような衝撃しょうげきを与あたえ、電気でんきや磁気じきなどの定義ていぎにメめートル法とるほうが使つかわれるようになっていった。

　やがて、メめートル法とるほうの概念がいねんが広ひろまり始はじめる。1866年ねんになる頃ころには米国べいこくでも採用さいようされ、同年どうねん、商しょう取引とりひきでのメめートル法とるほうの使用しようを認みとめる法律ほうりつが可決かけつされた。

　ゆっくりではあるが、メめートル法とるほうは米国べいこく内ないに広ひろく知しられるようになる。最初さいしょは、度量衡どりょうこうの標準ひょうじゅん化かのため、各州かくしゅうに提供ていきょうされた真鍮しんちゅう製せいの原器げんきによるところが大おおきかった。

　その後ご、1875年ねんに米国べいこく、ドイツ、ロシア、フランスなどの大国たいこくによってメートル条約じょうやくが締結ていけつされたことも、後押あとおしとなった。条約じょうやくを機きに度量衡どりょうこうの国際こくさい的てきな運営うんえい機関きかんが設立せつりつされ、米国べいこくがメめートル法とるほうに切きり替かわる道みちが大おおきく開ひらかれた。（参考さんこう記事きじ：「1kgの定義ていぎ、原器げんきから『原子げんしの数かず』へ」）

　ところが、米国べいこく内ないでの普及ふきゅうは依然いぜんとして進すすまなかった。その間あいだ、科学かがく者しゃたちがメめートル法とるほうの改良かいりょうを重かさね、多おおくの分野ぶんやに適用てきようを広ひろげていったにもかかわらず。

　1960年ねんを迎むかえる頃ころには、メめートル法とるほうは電圧でんあつや速度そくど、熱容量ねつようりょう、放射ほうしゃ輝度きどに至いたるまで、地球ちきゅう上じょうのありとあらゆるものを網羅もうらし、近代きんだい化かされた。この年とし、国際こくさい単位たんい系けい（SI）が定さだめられ、世界中せかいじゅうで採用さいようされた。（参考さんこう記事きじ：「クエタ、ロナ、クエクト、ロント…国際こくさい単位たんい系けいの接頭せっとう語ごに新顔しんがお」）