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人ひとの顔かおを認識にんしきできない「相貌そうぼう失しつ認みとめ」は意外いがいに多おおい？最大さいだい5％にも

自分じぶんで気きづかない人ひとも、「失礼しつれいでも、人嫌ひとぎらいでも、変かわり者ものでもない」と専門せんもん家か

2024.07.01

親したしい人ひとの顔かおを覚おぼえられなかったり、目めの前まえにいる人ひとの顔かおを識別しきべつできなかったりする「相貌そうぼう失しつ認みとめ」の人ひとは、これまで考かんがえられていたよりも多おおい可能かのう性せいが研究けんきゅうで明あきらかになった。（PHOTOGRAPH BY BALLBURN_PHOTOGRAPHY, GETTY IMAGES）

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　伝説でんせつの霊長れいちょう類るい学者がくしゃジェーン・グドール氏し、俳優はいゆうのブラッド・ピット氏し、そして『妻つまと帽子ぼうしをまちがえた男おとこ』の著者ちょしゃとして知しられる神経しんけい学者がくしゃの故こオリバー・サックス氏しの共通きょうつう点てんは何なにか？　答こたえは親したしい人ひとや有名人ゆうめいじんの顔かおを覚おぼえられなかったり、見分みわけがつかなかったりする「相貌そうぼう失しつ認みとめ（そうぼうしつにん）」だ。

　長年ながねん、相貌そうぼう失しつ認みとめはまれな障害しょうがいとされてきたが、2023年ねんに学術がくじゅつ誌し「Cortex」に掲載けいさいされた論文ろんぶんによれば、相貌そうぼう失しつ認みとめの人ひとはこれまで考かんがえられていたよりも多おおい可能かのう性せいがあるという。この研究けんきゅうでは、相貌そうぼう失しつ認みとめの重おもさや症状しょうじょうは連続れんぞく的てきで、その有無うむを単純たんじゅんに判定はんていできず、使用しようする基準きじゅんによって、成人せいじんの1〜5％に見みられるとされている。

「相貌そうぼう失しつ認みとめは高次こうじ視覚しかく機能きのう障害しょうがいで、視力しりょくには問題もんだいないのですが、顔かおを認識にんしきできません」と米べいコロラド大学だいがく医学部いがくぶの神経しんけい学がく教授きょうじゅで行動こうどう神経しんけい学がくを専門せんもんとするクリストファー・M・フィリー氏しは説明せつめいする。「彼かれらの脳のうは、顔かおの要素ようそを処理しょりできないのです」

「重度じゅうどの相貌そうぼう失しつ認みとめがある人ひとは、スーパーで少すこし離はなれたところにいる自分じぶんの配偶はいぐう者しゃを認識にんしきできなかったりします」と米べいVAボストンヘルスケアシステムのボストン注意ちゅうい・学習がくしゅう研究所けんきゅうじょの共同きょうどう所長しょちょうで認知にんち神経しんけい科学かがく者しゃのジョー・デグティス氏しは続つづける。

「認識にんしきできるかどうかは状況じょうきょうによります。朝あさ、隣となりで目覚めざめたときや、仕事しごとから帰宅きたくしたときには、配偶はいぐう者しゃを認識にんしきできる可能かのう性せいが高たかいですが、予期よきせぬ状況じょうきょうでは認識にんしきできないことがあるのです」。また、相貌そうぼう失しつ認みとめがある人ひとは、顔かおを覚おぼえるまでに、人ひとの顔かおをより多おおく、長ながく見みる必要ひつようがあるという。

「発達はったつ性せい」と「後天こうてん性せい」がある

　相貌そうぼう失しつ認みとめは1つの障害しょうがいではなく、相互そうごに関連かんれんする一群いちぐんの障害しょうがいだとカナダ、ブリティッシュ・コロンビア大学ころんびあだいがくの神経しんけい学がく・神経しんけい科学かがく教授きょうじゅであるジェイソン・バートン氏しは説明せつめいする。「親したしい人ひとの顔かおは覚おぼえられないが、写真しゃしんの顔かおの違ちがいはわかるというタイプもあれば、写真しゃしんの顔かおの違ちがいがわからないタイプもあります」

　相貌そうぼう失しつ認みとめには、おそらく遺伝いでん的てきな要因よういんによる「発達はったつ性せい」のものと、脳のうの損傷そんしょうなどによる「後天こうてん性せい」のものがある。

　英えいボーンマス大学だいがくの心理しんり学がく教授きょうじゅであるサラ・ベイト氏しによると、発達はったつ性せい相貌そうぼう失しつ認みとめについては、全員ぜんいんに相貌そうぼう失しつ認みとめが見みられる家族かぞくもあるが、原因げんいんの遺伝子いでんしを探さがす研究けんきゅうはまだ終おわっていないという。米べいハーバード大学だいがく医学部いがくぶの精神せいしん科か准じゅん教授きょうじゅでもあるデグティス氏しも、「発達はったつ過程かていで異常いじょうが起おきたのか、それとも遺伝いでん要因よういんがあるのかは、まだわかっていません」と言いう。

　2023年ねんに学術がくじゅつ誌し「Brain Sciences」に発表はっぴょうされたレビュー論文ろんぶんでは、発達はったつ性せい相貌そうぼう失しつ認みとめの人ひととそうでない人ひとの脳のうの構造こうぞうと活動かつどうを比較ひかくした63件けんの研究けんきゅうを分析ぶんせきしている。その結果けっか、発達はったつ性せい相貌そうぼう失しつ認みとめの人ひとは、そうでない人ひとに比くらべて、脳のうの「紡錘ぼうすい状じょう回かい顔がお領域りょういき（FAA）」と他たの顔かお認識にんしきに関かかわる領域りょういきとの結合けつごうに問題もんだいがあることが明あきらかになった。