私わたしカリーナちゃん。神様かみさまへの納品のうひんと、ついでに靴下くつしたの仕入しいれを済すませて収納しゅうのう空間くうかんへと戻もどってきたの。

　神器じんぎとして納品のうひんした海賊かいぞく船せんは解体かいたいされ、神器じんぎ部分ぶぶんを取とり除のぞいた余あまりであろう木材もくざいと積つみ荷に、食料しょくりょう等とうが整理せいりされ置おかれていた。うーん、さすが神様かみさま仕事しごとが丁寧ていねい。まさに神かみ対応たいおう。

　あ、このベッドよさげ、使つかわせてもらおう。

「おかえりなさいカリーナお姉ねえさん」

「ただいまー、って、まだ寝ねてなかったんだ。あとその白しろワンピ可愛かわいい、似合にあってるね」

「……ありがとうございます。なんかその、眠ねむれなくて」

　ディア君くんはしっかりとワンピースに着替きがえていた。今度こんどは白しろか。

　寝巻ねまきにするのかな。いいね！

「実じつは、お姉ねえさんに言いってなかったことがあって……」

「ん？　何なにかな」

　もしや告白こくはくだろうか。私わたしが初恋はつこいって神様かみさま言いってたヤツ……

　いやまって？　さすがに男おとことは付つき合あえないよ！？

　あ、いや、でも男おとこの娘むすめならアリなのか！？　ＴＳ美少女びしょうじょの私わたしと足たして２で割わったらちょうどいいもんな！？　うわぁどうしよ、悩なやむ！　ディア君くん可愛かわいいから尚なお悩なやむ！

　アリ、ナシ、アリよりのナシ？　ナシよりのアリ？？

　ああああ、どうしよどうしよ！！

「……ボクの本当ほんとうの名前なまえは、ディーアソルト・ハイリア・ベルトクスです。いままで黙だまっていてすみません、カリーナお姉ねえさん」

「ごめん少すこし考かんがえさせ――ってなんだ。名前なまえかぁ。……ってか、謝あやまることなんてなにかあった？　最初さいしょから偽名ぎめいでいいって言いってたでしょ」

「え？　あ、いや、カリーナお姉ねえさんがいいならいいんですけど」

　名前なまえを隠かくしていた件けんについては何なにも問題もんだいない。そのディーア……なんたら？　とりあえず長ながったらしい名前なまえからして、貴族きぞくのご子息しそくといったところだろうけど……

　そりゃ貴族きぞくのご子息しそくご令嬢れいじょうが海賊かいぞくに捕つかまったとか醜聞しゅうぶんでしかないもの。隠かくすのが普通ふつうといえよう。

「まぁディア君くんっていう方ほうが可愛かわいいから引ひき続つづきディア君くんって呼よんでいい？　元もとの名前なまえちょっと長ながいし、これからも仲良なかよくしようねっていう意味いみも兼かねて」

「！　は、はいっ！　もちろんいいですよ！」

　ぱぁっと嬉うれしそうなディア君くん。つか眠ねむいしそんな長ながい名前なまえ覚おぼえらんねぇし。

　晴はれやかな笑顔えがおだ。

「あ、そうだ。これから一緒いっしょに生活せいかつするにあたって部屋へやを作つくったほうがいいよね」

「部屋へやを作つくる、ですか？」

「そうだよ。プライバシーとかプライベートってのは大事だいじだからね」

　というわけで、まずは私わたしの居住きょじゅうスペース――ずっとむき出だしだったのを、別べつの空間くうかんに切きり分わける。そして、海賊かいぞく船せんから解体かいたいされていた扉とびらを出入でいり口ぐちとしてつけた。

　扉とびらを開あけたら、私わたしの部屋へやの空間くうかんに繋つながるのだ。モチロン鍵かぎもかかる。

　――部屋へや空間くうかんのできあがりだ！

「こんな感かんじで、ディア君くんの部屋へやも作つくってあげる」

「なるほど。ではいままでの場所ばしょはリビングみたいな形かたちになるんでしょうか？」

「ああ、それはいいね。リビングも作つくろう」

　そうなるとソファーとかも置おきたいな。海賊かいぞくの戦利せんり品ひんにあったかな？

　なかったら作つくろう。

「ディア君くんの部屋へやはどこにする？」

「カリーナお姉ねえさんの部屋へやの隣となりがいいです！」

「じゃあ並なべて置おこうか。えーっと、扉とびらはこれでいいかな」

　扉とびらを並ならべて、もう片方かたがたをディア君くんの部屋へやとする。ガチャリと開あけると、何なにもない白しろい部屋へやが広ひろがっていた。

　……２ふたつの部屋へやの扉とびらを同時どうじに開ひらいておくと明あきらかに空間くうかんが被こうむってる範囲はんいがあって頭あたまがバグりそうになるな。実物じつぶつのアパートとかじゃありえない。

　空間くうかんが異ことなるので、壁かべドンしても防音ぼうおんは大丈夫だいじょうぶだ。

「中なかの広ひろさもとりあえずそれっぽく作つくっておいたけど、足たりなかったら簡単かんたんに広ひろげられるから言いってね。窓まどもつける？」

「え、窓まどってどこに繋つながるんですか？」

「んー、開あけられないハメ殺ころしだけど、適当てきとうに外そとの空間くうかん？」

　実際じっさいにつけてみると、窓まどから太陽たいようの光ひかりが差さし込こんできた。これなら部屋へや空間くうかん自体じたいを光ひからせたりしなくていいな。カーテンで調整ちょうせいもできる。内うち開ひらきの戸板といたつけてもいいな。

「……外そと見みると、なんかすごい空そらに居いますね」

「町中まちなかに窓まどがあったら大騒おおさわぎでしょ」

「空そらを飛とぶ魔物まものとかにぶつかりませんか？」

「ぶつかってもこっちは平気へいきだから大丈夫だいじょうぶ」

　まぁ魔物まものも避さけるでしょ。

「さて、家具かぐを運はこぼうか。海賊かいぞくんとこのベッドとかイスとか、ここに運はこぶよ。あ、クローゼットもいいなぁ。もちろん中身なかみは可愛かわいい女おんなの子この服ふく！　姿見すがたみもここに置おこうね！」

「うう、は、はい。がんばりますっ」

　これをここに置おいてほしいって指定していしてくれれば空間くうかん魔法まほうで一発いっぱつだよ。

　がんばることないよね？

　とりあえずディア君くんの部屋へやにも海賊かいぞくの戦利せんり品ひんベッド置おいてっと。ランプの魔道まどう具ぐ、あとテーブルとイス。クローゼット、中身なかみは当然とうぜん女子じょし服ふくに差さし替かえておく。

　これで最低限さいていげん以上いじょうの部屋へやっぽさは整ととのった。よし。

「よし。ディア君くんの部屋へや完成かんせいだー」

「ありがとうござ……ふぁ……なんか安心あんしんしたら眠ねむくなってきました」

「今いまのところは寝ねようかぁ。私わたしも眠ねむいし……あー、起おきたらまた細こまかいレイアウトを考かんがえたり、錬金術れんきんじゅつで遊あそぼうね。おやすみー」

「はい、おやすみなさい。カリーナお姉ねえさん」

　ディア君くんは目めをこすりながら自分じぶんの部屋へやへと向むかった。……ふぁぁ。あー、私わたしも寝ねよう。おやすみー。