「それにしても、私わたし、カリカリと飲のんだ日ひにソラシドーレを出でてここまで来きたんだけど……いつのまにヴェーラルド行いったりエルフと知しり合あったりしたの？」

「あー。超ちょう早はやい乗のり物ものを手てに入いれたんだよ。ソラシドーレからカルカッサまでを５日にちで走はしり抜ぬけたの」

「なにそれ馬車ばしゃの倍ばい速はやいじゃん。そんなのあったら世界中せかいじゅうでお酒飲さけのみ放題ほうだいじゃん……！」

「早はやすぎて安全あんぜん性せいに難なんはあるけどね。あと燃費ねんぴ？　ゴーレム用ようの魔ま石せきをバカ食ぐいする（という設定せっていになってる）から、パトロンがいないと元もとは取とれないねぇ。あとめっちゃ揺ゆれる」

「あー、そりゃ……うん。きついね」

　ちなみに設定せってい上じょうはバカ食ぐいするはずだったのだが、実際じっさいに星ほし形がた(スター)エンジンの燃費ねんぴでいうとオークの魔ま石せきでもあの速度そくどが出だせる模様もよう。やべー技術ぎじゅつ革新かくしん。現在げんざいはアクセルとギアによる速度そくど調整ちょうせいを研究けんきゅう中ちゅう。

　あ、オークの魔ま石せきはいっぱい間引まびいておいたからかなりストックがあるよ。つまり、オーク魔ま石せきが多おおくある……ごめんなんでもない。

「ドワーフとエルフが仲なか悪わるいとかあったりするの？」

「あー、たまに聞きくねぇ。あれだよ、ドワーフ女おんなって幼おさなく見みえるじゃん？」

「うん、サティたんとかめっちゃ可愛かわいいよね」

「私わたし、これでも子持こもちなんだよぉ」

　マ！？

「え、人妻ひとづま……やだ好すき……！」

「んー、その反応はんのうは初はじめてだなぁ。まぁ嘘うそなんだけど。でも子供こどもがいてもおかしくない年齢ねんれいなのよ私わたし」

「えー、嘘うそなの？　それはそれで好すき」

「あはは、私わたしもカリカリ大好だいすきだよぉ。で、そのね。他た種族しゅぞくからはドワーフの男おとこが全員ぜんいんロリコンのように扱あつかわれるわけよ。特とくにエルフからしたら、同おない年どしのカップルが『お爺じいちゃんが幼女ようじょに手てを出だしてる』って見みえることもあるみたい。エルフって相当そうとう年取としとらないと髭ひげはえないから」

　あー、なるほど。

「んで、そう言いわれて逆ぎゃくに『ドワーフ的てきに見みるとエルフこそ熟じゅく女おんなが少年しょうねんに手てを出だしてるように見みえるぞ』って返かえしちゃった奴やつがいたのよ」

「全ぜんエルフオネショタ計画けいかく……ってコト！？」

「んー、その反応はんのうも初はじめてだなぁ。ま、酒さけの席せきの軽口かるくちだったんだけど、エルフって冗談じょうだん通つうじないとこあるじゃん？　それが原因げんいんで一部いちぶ対立たいりつしちゃったこともあってねぇ」

　あー、ディア君くんも真面目まじめそうだもんなぁ。

「大丈夫だいじょうぶ、ウチのエルフは冗談じょうだんも通つうじる可愛かわいい子こだから！」

「カリカリの仲間なかまだもんねぇ。……どういう知しり合あいなの？」

　おっと、どう説明せつめいしたもんかな。

　私わたしとディア君くんの出会であいを語かたるには、大だい魔法使まほうつかいカリーナちゃんが出でてくるところだが……上手うまいことボカすとしよう。

「ヴェーラルドの魔道まどう具ぐ店てんで錬金術れんきんじゅつの教本きょうほん買かってさぁ、錬金術れんきんじゅつの話はなしで意気投合いきとうごうしたのよ」

「へー、錬金術れんきんじゅつ。私わたしもポーションくらいなら作つくれるよ。お酒さけ割わるとおいしいんだ」

「あ、こっちは魔道まどう具ぐとかそっち系けいのやつ。ポーションも気きになってるんだよね」

「私わたしのお古ふるでよければポーションの教本きょうほん売うってあげよっか？　金貨きんか１枚まい、のところを今いまなら大だい特価とっか、銀貨ぎんか１０枚まい」

「買かった！　あ、現金げんきんで払はらうね。商人しょうにんギルド証しょうはちょっと残高ざんだかが足たりない」

「……カリカリ、騙だまされないように気きを付つけなよー。いいよいいよ、タダで。エルフさんの紹介しょうかい料りょうってことであげるよぉ」

「いいの？　そういう事ことなら貰もらっておくね」

「そのかわり靴下くつしたはナシね」

「うぐっ……渡わたしてから言いわないでよぅ」

　私わたしはサティたんが荷物にもつから取とり出だした教本きょうほんを受うけ取とり、自分じぶんのリュックにしまった。

　……尚なお、銀貨ぎんか１０枚まいの価格かかくは別べつにお買かい得どくというわけでもなかった模様もよう。

「ま、まぁその。錬ね金きむ王国おうこく滅ほろんだじゃん？　これからこういうの価値かち出でるかもだし」

「むしろ本ほんは勝手かってに増ふやして売うるんじゃないの、権利けんり者しゃがいなくなったんだし」

「……そういう見方みかたもできなくはないですね？」

　そうか、公式こうしきの供給きょうきゅうが途絶とだえたのに需要じゅようがあると海賊版かいぞくばんが出回でまわるのか……。

　元々もともと写本しゃほんとかあるしなぁ。そういうもんか。

　そんな風ふうに雑談ざつだんしつつ、鳥とりが引ひく馬車ばしゃに揺ゆられて私わたし達たちは宿屋やどや区画くかくへやってきた。

　空間くうかん魔法まほうの反応はんのうを見みるに、ディア君くん達たちは……お、ディア君くんはあそこの宿やどかな。アイシアは別べつの場所ばしょにいるようだ。調しらべものかな。

「ふぅん。まぁまぁの宿やどじゃん」

「んじゃ、ちょっとまっててね。ディア君くんに話はなし通とおしてくるから」

「あー、カリカリがここなら今回こんかいは私わたしもこの宿やどにしようかなぁ。馬車ばしゃ置おいてくる」

「そっか。んじゃ先さき行いってるね」

　私わたしはサティたんの馬車ばしゃから降おりて、宿やどの中なかへ。……ディア君くん発見はっけん！

「あ、お姉ねえさん。とりあえず１週間しゅうかんで宿やどを取とりましたよ」

「おー、ありがとディア君くん。あ、これお小遣こづかい。配達はいたつ依頼いらいの半額はんがくね。冒険ぼうけん者しゃパーティー『フェイカーズ』として山分やまわけだよ！　あ。それとアイシアは？」

「この付近ふきんの食たべ物もの屋やを調しらべてもらっています。お姉ねえさんに美味おいしいモノ食たべてもらうんだって張はり切きってましたよ」

　くっ、可愛かわいい！　けど絆ほだされないぞ、いや嘘うそ、少すこし絆ほだされてる！

　でも解放かいほうはしない――って、そういえばアイシアはハーフドワーフだ。

　サティたん、ハーフドワーフの奴隷どれいとか大丈夫だいじょうぶだろうか？　まずハーフの取とり扱あつかいが分わからん。たまにハーフが迫害はくがいされたりする話はなしあるけど、サティたん、うちの子こいじめたりしないよね？

　うーん。まぁ私わたしの所有しょゆう物ぶつってことになってるから、大丈夫だいじょうぶだと思おもいたいけど……

　逆ぎゃくに、ハーフドワーフの奴隷どれいを持もってる私わたしを嫌悪けんおしたりとかもあり得える……？

　まぁ今いまは時間じかんがないし悩なやんでも仕方しかたない、後あとで考かんがえよう。

「ディア君くん。エルフの国くにに行いきたいってドワーフが居いて、紹介しょうかいしたいんだけどいいかな？」

「お姉ねえさんの紹介しょうかいなら会あうくらいならかまいませんよ。許可きょかが出だせるかは本人ほんにんを見みないと分わかりませんが」

「そう？　あ、空間くうかん魔法まほうのことは秘密ひみつね。んじゃ連つれてくる――っと、来きたみたい」

　私わたしがディア君くんと話はなした丁度ちょうどその時とき、サティたんが宿やどに入はいってきて、私わたしを見みつけて手てを振ふっていた。