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【完結】政略結婚をしたらいきなり子持ちになりました。義娘が私たち夫婦をニヤニヤしながら観察してきます。 - 第一話
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だいいち


「まさか、こんなことになるなんて……」



 さびしげにまるめられたちいさな背中せなかきしめながら、いとともいきした。


 結婚けっこん来週らいしゅうひかえたタイミングで――目尻めじりなみだかべ、スヤスヤとねむおさな少女しょうじょむすめむかえることになろうとは。







 ◇◇◇



 堅牢けんろうとりでゆたかな自然しぜんあふれるアンソン辺境へんきょうはくりょう

 ライラット王国おうこくひがし国境こっきょうまも重責じゅうせきにな土地とちである。


 そして、そのアンソン辺境へんきょうはくりょう昨日きのうやってたばかりのわたし名前なまえは、アネット・ランディル。来週らいしゅうには結婚式けっこんしきむかえてアネット・アンソンとなる。

 ランディル侯爵こうしゃく長女ちょうじょとしてまれたわたしは、いえ同士どうしつながりをつよめるためにアンソン辺境へんきょうはくとついでたのだ。


 ことのはじまりは両家りょうけ祖父そふだいまでさかのぼる。


 まだせんおおこく安定あんていしていなかった時代じだい死地しちなんともえた祖父そふたちは、まさに戦友せんゆうぶにふさわしい関係かんけいきずいていた。やがて平穏へいおん時代じだいおとずれ、なが親交しんこうふかめてきた祖父そふたちは、いつか両家りょうけ名実めいじつともに家族かぞくとなれるといいとさけせきでよくはなしたそうな。


 そしておなねんまごまれてく、あっという縁談えんだんがまとまった。そのまごというのがわたしたち、アネットとクロヴィス・アンソンさまというわけだ。


 辺境へんきょうまもるアンソン辺境へんきょうはくと、おう近衛このえ騎士きしだんひきいるランディル侯爵こうしゃく両家りょうけ婚姻こんいんは、ライラット王国おうこく軍事ぐんじりょくをよりつよめることが期待きたいされ、祖父そふたちとよき友人ゆうじん関係かんけいにあるという先代せんだい国王こくおう陛下へいかにもお墨付すみつきをもらっている。


 つまり、わたしたちはまれたときから政略せいりゃく結婚けっこんまっていたのだ。


 とはいえ、おうみやこきょかまえるランディル侯爵こうしゃくと、東西とうざいながいライラット王国おうこくひがしはし位置いちするアンソン辺境へんきょうはくりょうとおく、どれだけいそいでも馬車ばしゃじゅうにちはかかる。

 アンソン国境こっきょうまも重要じゅうようにんについているため、なか領地りょうちはなれることはかなわず、かといってこちらから簡単かんたんあそびにけるほどの距離きょりでもなく――とうわたしたちは長年ながねん手紙てがみでのみ交流こうりゅうかさねてきた。


 アンソン辺境へんきょうはくりょうにやって昨日きのうまでに、クロヴィスさまとおいしたのはたったのいちじゅうさいむかえるとし王城おうじょう開催かいさいされるデビュタントのパーティでのことだった。

 当時とうじ、なかなか社交しゃこうてこられないクロヴィスさまは、女嫌おんなぎらいだとか、くまのような巨漢きょかんだとか、もないうわさをされていた。


 あののことはわすれられない。


 領地りょうちてはるばるおうにやってたクロヴィスさまとようやくうことができる。そうおもうとしんおどった。

 手紙てがみでは不器用ぶきようながらもわたしおもいやる言葉ことばつづってくれるしんやさしいひとだとかんじていた。


 一体いったい将来しょうらい旦那だんなさまはどのようなおかたなのだろう。


 期待きたい一抹いちまつ不安ふあんむねいてクロヴィスさま初対面しょたいめんたしたわたしは――あっけなくこいちた。


 はじめてかおわせたクロヴィスさまは、スラリとした長身ちょうしんで、同年代どうねんだいなかでも特段とくだん大人おとなびてえた。細身ほそみながらも、ふくうえからでもかる無駄むだのない筋肉きんにくは、日々ひび鍛錬たんれんおこたらないかれ勤勉きんべんさをあらわしているようだった。

 あでやかでうつくしい銀髪ぎんぱつは、かれうごくたびにサラリとれてきつけ、キリッとしたむらさきひとみうつされるわたしかおは、まっていた。


 のせいでなければ、とぼけでなければ、クロヴィスさまもどこかほおあからめている様子ようすで、わたしたちはぎこちなく挨拶あいさつわしたのち、ダンスホールでファーストダンスをおどった。


 クロヴィスさま言葉ことばすくなかったけれど、一挙手一投足いっきょしゅいっとうそくからわたしへの気配きくばりをかんじ、ますますわたしおもいを加速かそくさせた。


 結婚けっこんまええたのはこのときだけ。けれど、わたしはクロヴィスさまつまとなれることをしんからたのしみにしていた。


 そしてわたしたちはじゅうはちさいとなり、いよいよ結婚けっこんするはこびとなった。


 ところが、ドキドキ、ワクワクとむね高鳴たかならせ、馬車ばしゃでの長旅ながたびえてようやくアンソン辺境へんきょうはくりょう到着とうちゃくしたわたしむかえたのは、けわしいかおをしたクロヴィスさまだった。







 ◇◇◇



「えっ……落石らくせき事故じこ、ですか?」



 到着とうちゃくして早々はやばや長旅ながたびねぎらわれながらとおされた応接間おうせつまにてかされたのは衝撃しょうげきてき内容ないようだった。



「ああ。がアンソン遠縁とおえんにあたるいえのものだ。我々われわれ結婚式けっこんしき参列さんれつするため、こちらにかっているとききた事故じこだ。らせをけてけつけたときにはもう……」



 くやしそうにこぶしにぎるクロヴィスさまは、さんねんまえからさらにびてたくましい男性だんせい成長せいちょうされていた。精悍せいかんなおかおいがませ、クロヴィスさまはなしつづけた。



くなった夫妻ふさいにはおさなむすめがいる。さいわい、その屋敷やしき留守番るすばんをしていたようで無事ぶじなのだが……夫妻ふさい両親りょうしんともにすでに他界たかいしていて、兄弟きょうだいもいないということだ」


「そんな……」



 はなしによると、のこされた少女しょうじょ名前なまえはフィーナ。まだよんさいおさなおんなだという。


 突然とつぜん両親りょうしんうしない、きっとその事実じじつれられないであろう彼女かのじょしんおもうと、むねけられるようにいたんだ。



「フィーナは、どうなるのですか?」



 たずねるこえふるえてしまう。カタカタとふるえるむねまえでぎゅっとにぎりしめた。



つらなる家門かもん養子ようしむかえることになるだろう。屋敷やしき一人ひとりにしてはおけないので、事故じこ現場げんばおとずれたあしでそのまま彼女かのじょむかえにった。いまはこの屋敷やしき一室いっしつごしている」


「そうですか……安心あんしんいたしました。わたしうことはかないますでしょうか?」



 そうもうると、クロヴィスさまおどろいたように見開みひらいた。



「ああ、もちろんだ。なさけないことだが、おれ幼子おさなご相手あいてをしたことがなく、どうせっしていいものかおもなやんでいた。つかれているところもうわけないが、いまからフィーナの部屋へやかおう」


「はい」



 そうして案内あんないされた部屋へやおとずれると、おおきなベッドの中央ちゅうおうで、おおきなウサギのぬいぐるみをいた少女しょうじょがちょこんとすわっていた。部屋へや片隅かたすみには、フィーナのお世話せわがかりだという侍女じじょひかえていた。


 突然とつぜんらない場所ばしょれられて、きっと不安ふあんでいっぱいだろう。

 かえらない両親りょうしんらない大人おとな――


 がつけば、しわるほどギュウっとウサギのぬいぐるみをきしめるちいさな身体しんたいをそっとつつんでいた。



大丈夫だいじょうぶ大丈夫だいじょうぶよ」



 安心あんしんさせるようにこえをかけ、絹糸けんしのようにほそうつくしい銀色ぎんいろかみでる。クロヴィスさま遠縁とおえんとあり、かみしょくがクロヴィスさまとそっくりだ。


 あたまでているうちに、強張こわばっていた身体しんたい次第しだいほぐれていき、おそおそるといった様子ようすわたしふくすそつかんでくれた。すがるようなそのて、決心けっしんかたまった。



「クロヴィスさまわたし……この母親ははおやになりたいです」



 まっすぐにクロヴィスさま見据みすえると、クロヴィスさまわずかに見開みひらいたのちやさしいみをかべた。



「そうってくれるか。じつは、おれもこの養子ようしとしてむかえたいとかんがえていた。だが、アネットの意思いしはんしてむかえることはできないとおもっていたのだ。その……おれたちは来週らいしゅう結婚式けっこんしきむかえ、夫婦ふうふとしてあゆはじめる。結婚けっこんしてすぐに子持こもちとなるのだ。夫婦ふうふとしても未熟みじゅくで、これからというときに、れてもらえるのかとおもなやんでいたのだが……ふ、余計よけい心配しんぱいだったな。おれっているアネットがフィーナを見捨みすてるわけがなかった」


「クロヴィスさま……」



 そうか、クロヴィスさまもフィーナのおやとなる決意けついかためていらしたのね。


 わたしこそ、長年ながねん文通ぶんつうでクロヴィスさま心根こころねやさしくおもいやりにちていることをっている。きっと、クロヴィスさまなられてくれると、しんじていた。



つまとして、ははとして……その役割やくわりたすことができるか、正直しょうじき不安ふあんではあります。ですが、夫婦ふうふとなるのですもの。一人ひとりでそのせめうわけではありません。わたしたちにんで、なやみ、かべにぶつかりながらも、家族かぞくとしてあゆんでいければいいなと、わたしはそうおもいます」



 フィーナがすぐにわたしたちをおやだとおもうことはむずかしいだろう。

 けれど、彼女かのじょがのびのびとすこやかにそだつことができるように、全力ぜんりょくくそう。


 そうおもいをめてフィーナをきしめると、こたえるようにキュッときしめがえしてくれた。


 はかなこわれてしまいそうなちいさな身体しんたい

 おやとなる責任せきにん重大じゅうだいだ。

 まさか結婚けっこん早々そうそう子持こもちになるとはおもいもよらなかったが、きっと、クロヴィスさまとなら素敵すてき家庭かていきずいていける。



 こうしてわたしたちは、結婚式けっこんしき準備じゅんび並行へいこうし、フィーナとの養子ようし縁組えんぐみ手続てつづきをすすめることとなった。

同名どうめい短編たんぺん長編ちょうへんとなります。

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