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【完結】政略結婚をしたらいきなり子持ちになりました。義娘が私たち夫婦をニヤニヤしながら観察してきます。 - 第二十九話 side???
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完結かんけつ政略せいりゃく結婚けっこんをしたらいきなり子持こもちになりました。むすめわたしたち夫婦ふうふをニヤニヤしながら観察かんさつしてきます。 作者さくしゃみずミナト@『解体かいたいじょう書籍しょせき&コミカライズ進行しんこうちゅう

だいしょう いざ、おう

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だいじゅうきゅう side???

 もう、うんざりだ。


 ぼく照明しょうめいとした部屋へやなか、ベランダのまどはなほおでるふうかんじている。

 月明つきあかりだけがやさしく室内しつないらすなかぼくはぼんやりとちゅう視線しせん彷徨ほうこうわせた。


 まだななつになったばかりだというのに、ぼくはもう自分じぶん人生じんせいあきらめている。


 もっとずっとおさなころは、としはなれたあにじょうのちうように庭園ていえんはしまわったものだ。

 だが、いまぼく余程よほどのことがないかぎり、自室じしつからそとにはない。


 すうねんまえ高熱こうねつしてからというもの、風邪かぜきやすくなってしまった。両親りょうしん病弱びょうじゃくぼく心配しんぱいし、身体しんたい成長せいちょうしてつよくなるまではのんびりごすといいとわれている。


 だい王子おうじまれたぼくが、そのようなあまえを享受きょうじゅできるのも、あにじょう立派りっぱ王子おうじとしてのつとめをたしてくれているからだ。


 ぼくあにじょう大好だいすきだ。尊敬そんけいしているし、あこがれている。

 武芸ぶげいひいで、地頭じとうもいい。だれにでもへだてなくせっする寛容かんようさもわせていて、くにをよりくしようと貪欲どんよくまな姿勢しせいもある。どこからどうても完璧かんぺき次期じき国王こくおうだ。


 ぼくも、そんなあにじょうささえとなり、ともくにみちびいていきたい。おさなころはそんな未来みらい夢見ゆめみていたものだ。



 けれど、ぼくたちの周囲しゅういがそうさせてはくれなかった。



 あにじょうまれたときから隣国りんごく王女おうじょむかえることがまっていた。

 くに同士どうしつながりをつよめるための婚約こんやくであるが、なんもおたがいのくにして交流こうりゅうかさねてきた二人ふたりあいだには、たしかな信頼しんらいあいがある。


 くに行末ゆくすえ安泰あんたいだ。

 だれもがそうおもうはずなのに――


 ぼくからすればほんの些細ささいなことで、あにじょう退しりぞけたいとかんがえるやからがいるのだ。


 そいつらは登城とじょうのたびにぼくつけてはこん々と血筋ちすじとうとさと素晴すばらしさについていては満足まんぞくした様子ようすかえってく。そんな大人おとなたちとかおわせたくない気持きもちもあいまって、ぼくはますます自室じしつもるようになった。


 血筋ちすじおもんじるかたよったかんがかた即刻そっこくるべきだとおもい、父上ちちうえにも不穏ふおん一派いっぱ排除はいじょすべきでは? と進言しんげんしたことがあるが、実際じっさいなに事件じけんこったわけでもないし不満ふまんくちにしただけでは糾弾きゅうだんできないとわれてしまった。


 もしかすると、血統けっとう主義しゅぎ方便ほうべんで、ぼくをおかざりのおうげてこの平和へいわくに混乱こんらんさせようとしているのでは。

 そんないしれない不安ふあんむねなか渦巻うずまいている。


 あらゆることに不満ふまんいているあいだに、あにじょう隣国りんごく留学りゅうがくてしまい、それがまたぼくげようとするやつらの行動こうどう助長じょちょうさせている。


 打算ださんしかない大人おとなねらわれ、部屋へやもりながらみずからの無力むりょくさを痛感つうかんする日々ひび

 部屋へやこもっていると身体しんたいうごかす機会きかいっていき、ぼく身体しんたいはすっかり貧相ひんそう貧弱ひんじゃくなものとなっていった。


 家庭かてい教師きょうしはついているので、自室じしつ勉強べんきょう読書どくしょいそしんでいる。

 いつか、あにじょうたすけとなるように――どうしてもそのかんがえがてられず、ぼくはかろうじてなまにしがみついている。


 あにじょう隣国りんごくから定期ていきてき手紙てがみおくってくれて、それだけが毎日まいにちたのしみになっている。

 せま世界せかいきるぼくとはちがい、ひろ世界せかいあにじょう

 ぼくにもたまにはそといろんなものを自分じぶん世界せかいかんじろとうが、そとたところではんだいいち王子おうじ一派いっぱつかって都合つごうよく利用りようされるのがオチだろう。


 あにじょうとのつながり以外いがいきる価値かち目的もくてきも、たのしさもなに見出みだせていないぼく人生じんせいはつまらないものだとおもう。


 しずかに、いきころして、ただぎゆく時間じかんゆだねている。




 ――だが、やはりぼく存在そんざいあにじょう邪魔じゃまをしてしまうようだ。



 まどからよるふうってながれてくる夜会やかいにぎわいをに、ぼくはゆっくりととびらほう身体しんたいけた。

 いつのまにかおともなく、全身ぜんしんくろふくおとこにん、そこにっていた。



「――何者なにものだ」



 自分じぶんでもおどろくほど、冷静れいせいひくこえた。

 もしかすると、いつかこんなるのではないかと、どこかでそうかんっていたのかもしれない。



「へへっ、殿下でんか。こんばんは。今夜こんやつきがよくえますな。満月まんげつのようですよ」



 そういながらジワジワとこちらとの距離きょりをってくるおとこ一体いったいだれなのか。

 すこかすれたこえだが、ききおぼえがない。今日きょうこののためにやとわれたおとこなのだろうか。



「さあ、おれとちょっくらよる散歩さんぽきましょう。大人おとなしくしてりゃ、いたおもいはしなくてすみますからね」



 そのおとこは、をこまねきながらおかしなことをう。



一体いったいどこにくとうのだ」


「へへっ、ちょっと監禁かんきんするだけですよ。なあに、にはしません。この部屋へやこもってるのとそうわらねえさ」



 下品げひんみをかべるおとこたちを、ぼーっとつめる。


 ――ほら、やっぱり。

 ぼく人生じんせいろくでもないものなんだ。


 どうせ抵抗ていこうしたって、ひょろひょろのぼくれるわけもない。

 ぼくすべてをあきらめて、抵抗ていこうすることなくおとこたちにつかまる――はずだった。



「うわっ!? なんだ?」


まええねえ!」



 おとこたちのぼくびてきたそのとき、ふわりとカーテンがふうなびいた。

 そしてはげしい突風とっぷう部屋へやなかんできた。


 つづけてぼく中心ちゅうしんちいさな竜巻たつまきこり、ぼくとらえようとしていたおとこたちははじばされてかべ身体しんたいちつけた。



「ビンゴ! つけたわ」



 はげしいふうきやみ、はなたれたまどからったのは――ぎんかみ月光げっこう反射はんしゃさせ、白銀はくぎんおおかみまたがったおさな少女しょうじょだった。

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