烈れつ歴れき98年ねん 4月がつ28日にち　

夜明よあけとともに、僕ぼくは目めを覚さます。

目めを覚さましたのは、豪華ごうかなベットの上うえで、このベットには天蓋てんがいまで付ついている。

ここはブラン・サザンガルド家かの屋敷やしきで、僕ぼくにあてがわれた部屋へやだ。

元々もともと客人きゃくじんが宿泊しゅくはくする部屋へやに泊とまっていたが、この屋敷やしきの令嬢れいじょうであるビーチェと婚約こんやくしてからは「もっといい部屋へやで過すごしてもらわないと！」というビーチェのお母様かあさまのアドリアーナさんの手配てはいで、この部屋へやで過すごしている。

ベッドから出でて、毎朝まいあさの日課にっかである鍛錬たんれんをするため、クローゼットからいつもの服ふくを取とり出だし、着替きがえをする。

中庭なかにわに出でて、槍やりを振ふって、鍛錬たんれんに励はげみ、汗あせを流ながす。

一心不乱いっしんふらんに槍やりを振ふっていると、日にちが高たかくなってきたようで、屋敷やしきの窓まどから僕ぼくを呼よぶ声こえが聞きこえた。

「シリュウ～！おはよ～なのじゃ～！」

朝あさから大おおきな声こえで、明あかるく挨拶あいさつをしてくれたのは、僕ぼくの最愛さいあいの女性じょせいであり婚約こんやく者しゃのベアトリーチェ・ブラン・サザンガルド、通称つうしょうビーチェだ。

ビーチェの声こえが聞きこえるだけで、僕ぼくの心しんは高鳴たかなる。

「おはよー！ビーチェ！」

そして今日きょうもまたビーチェとの挨拶あいさつを皮切かわきりに１日にちが始はじまるのだ。

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鍛錬たんれんを終おえた後のちに、浴場よくじょうで汗あせを流ながし、また着替きがえをしてから朝食ちょうしょくを取とるため食堂しょくどうへ行いく。

食堂しょくどうへ行いくと、すでに当主とうしゅでありビーチェの父親ちちおやであるオルランドさんと母親ははおやであるアドリアーナさん、そしてビーチェが着席ちゃくせきしていた。

「すみません！お待またせして」

僕ぼくは到着とうちゃく早々はやばや詫わびた。

この屋敷やしきで朝食ちょうしょくは、家人かじんであるオルランドさん、アドリアーナさん、ビーチェの３人にんが食しょくしてから使用人しようにんや兵士へいしの方ほうが取とるそうで、僕ぼくはビーチェの婚約こんやく者しゃなので、家人かじんと同様どうようの扱あつかいを使用人しようにんの方ほうから受うけていた。

なので朝食ちょうしょくを取とるタイミングも、この３人にんと一緒いっしょなのだが、少すこし待またせてしまったようだ。

「気きにしなくていいのよ、シリュウさん。あなたが来きてくれてベアトがシリュウさん会かいいたさに早起はやおきになったもの。ベアトに待またされる時間じかんに比くらべればかわいいものよ？」

そうおっしゃるはアドリアーナさん

「寝坊ねぼうで遅おくれたわけではあるまい。誰だれよりも早はやく起おき、鍛錬たんれんに励はげむ姿すがたは当家とうけの騎士きし達たちにも刺激しげきになっているよ。むしろありがたいのさ」

そうおっしゃるはオルランドさん

お二に人にんとも他所よそから来きた僕ぼくにも優やさしい素晴すばらしい人達ひとたちだ。

「ありがとうございます。でもここに来きて、朝あさから湯浴ゆあみできたり、着替きがえを用意よういしてもらったり、至いたれり尽ことごとくせりで、ダメ人間にんげんになりそうで怖こわいのですけどもね…」

僕ぼくが不安ふあんを吐露とろするとアドリアーナさんが諭さとすように言いった。

「あらあら？シリュウさんはこれから華族かぞくとして生いきていくのだから、お世話せわされるのにも慣なれてもらわないとね？」

確たしかに。

「そうじゃぞ！シリュウ！」

ビーチェが力強ちからづよくそう言いうが

「ベアトはもう少すこし自分じぶんのことをしなさい…」

オルランドさんから突つっ込こみが入はいった。

今日きょうもブラン・サザンガルド家かには穏おだやかな時間じかんが流ながれている。

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エンペラーボアを狩かって、当主とうしゅのシルベリオさんから結婚けっこんの了承りょうしょうを貰もらって早はや半月はんつき近ちかく

僕ぼくはブラン・サザンガルド家かに滞在たいざいしながら、色々いろいろなことを過すごしていた。

まずは怪我けがの治療ちりょうだ。

エンペラーボアとの戦たたかいで、左ひだり半身はんしん、特とくに左腕さわんに火傷かしょうを負おってしまったため、その療養りょうようのため１週間しゅうかんは屋敷やしきの中なかで過すごしていた。

屋敷やしきではビーチェと話はなしたり、本ほんを読よんだり、使用人しようにんの方ほうと交流こうりゅうをしたりして過すごした。

シルベリオさんから結婚けっこんの了承りょうしょうをもらった翌日よくじつには、僕ぼくがビーチェの婚約こんやく者しゃであることが屋敷やしき内ないで公表こうひょうされたため、使用人しようにんの方々かたがたの扱あつかいが「お嬢様じょうさまの友人ゆうじん」から「お嬢様じょうさまの旦那だんな様さま（未来みらい）」に格上かくあげされ、この身みに余あまる待遇たいぐうを受うけて、慣なれなかった。

１週間しゅうかんもすれば、怪我けががほとんど治なおったため、ビーチェに連つれられて、サザンガルドの名所めいしょを回まわっていた。

皇国こうこくの基地きちや闘技とうぎ場じょう、市場いちばや大だい規模きぼ武器ぶき商店しょうてん等とう、軍ぐん都との名なに相応ふさわしい施設しせつが目白押めじろおしだった。

特とくに僕ぼくの興味きょうみを引ひいたのが、軍事ぐんじ学校がっこうで、この軍事ぐんじ学校がっこうを卒業そつぎょうすると、皇国こうこく軍ぐんや領りょう邦くに軍ぐんに入にゅう軍ぐんする際さいのステータスになるらしく、出世しゅっせもしやすくなるようだ。

また軍事ぐんじ学校がっこうの卒業生そつぎょうせいで派閥はばつも皇国こうこく軍ぐん内ないや領りょう邦くに軍ぐん内ないに形成けいせいされているらしい。

軍事ぐんじ学校がっこうは基本きほんは２年ねんで修了しゅうりょうするようで、入学にゅうがくは14～18歳さいまでの皇すめらぎ国民こくみんなら学費がくひさえ払はらえれば誰だれでも入いれるらしい。

僕ぼくも軍事ぐんじのことを学まなびたくて今いまからでも入学にゅうがくしようかとビーチェに相談そうだんして見みたけど、「シリュウが入学にゅうがくすると、同おなじ時期じきに在学ざいがくした学生がくせいがかわいそうじゃ」と一蹴いっしゅうされ、入学にゅうがくは断念だんねんした。

この半月はんつきほとんどビーチェが僕ぼくの傍はたにいてくれた。

ビーチェに「他たになにかやらないといけないこととかないの？」と聞きくと

「当主とうしゅ教育きょういくはカルロが快方かいほうに向むかっていることでやらなくていいと父様とうさまが、花嫁はなよめ修業しゅうぎょうはシリュウと共ともに過すごすことが花嫁はなよめ修業しゅうぎょうじゃと母はは様さまが言いっておるから大丈夫だいじょうぶじゃ」とのこと

僕ぼくとしては、大好だいすきなビーチェと一緒いっしょに過すごせるからいいんだけどね。

ビーチェと2人ふたりで街まちに出でかけることも多おおく、手てを繋つないだり、恋人こいびとっぽいこともしたけど、まだキスはしていない……

いい雰囲気ふんいきになることはあるけど、街まちの中なかも屋敷やしきの中なかも人目ひとめがあって、完全かんぜんな2人ふたりきりになることが少すくないからだ。

近ちかいうちにまた一いち歩ほ進すすめれたらなとは思おもう。

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食堂しょくどうでの朝食ちょうしょくが終おわり、オルランドさんが話はなしを切きり出だした。

「シリュウ殿どの、今日きょうの予定よていはあるかね？」

「いえ、特とくには。また街まちに出でて武器ぶきとか見みるに行いこうかなくらいでした」

「それは良よかった。できたら昼過ひるすぎあたりに時間じかんをもらえないか」

「もちろんです。どのような用件ようけんでしょう」

「カルロに会あってほしいんだ」

「…！？カルロ君くんにですか？では…？」

「うむ、例れいの活力かつりょく剤ざいのおかげで毒どくの症状しょうじょうはほとんど回復かいふくしている。長期間ちょうきかんの寝ねたきり生活せいかつのため、筋肉きんにくが衰おとろえて、まだ自立じりつ歩行ほこうは厳きびしいが、意識いしきははっきりしていてね。身みだしなみを整ととのえさせるから会あってやってほしいんだ。ビーチェとの婚約こんやくやエンペラーボアを狩かった話はなしをすると、カルロもシリュウ殿どのに会あいたいとせがんでいてね」

「もちろんですよ。僕ぼくも会あいたかったので。楽たのしみにしています！」

「妾わらわもここ最近さいきんカルロに会あっておるよ。その度たびにシリュウの話はなしをするんじゃが、もう妾わらわよりシリュウのことが好すきなんじゃないかと思おもうくらい会あいたがっておったよ」

ビーチェが苦笑くしょうしながらそう話はなす。

「それは流石さすがにないと思おもうけど…」

「カルロにとってシリュウさんは命いのちの恩人おんじんなのよ？大おおげさではないと思おもうわ」

アドリアーナさんからもそう言いわれる。

「偶々ですよ。運うんが良よかったんです。でもついにカルロ君くんに会あえるんだね。きっといい子こだと思おもう。なんたってビーチェを慮おもんばかることができる子こだもんね」

僕ぼくがそうポロっと言いうと

「ン～？シリュウ～？どういうことかや～？」

ビーチェがジト目めで睨にらんでくる。

しまった。失言しつげんだったか。

そう思おもいオルランドさんとアドリアーナさんを見みると二に人にんともウンウン頷うなずいている。

「ベアトの影響えいきょうを受うけずに真まっすぐに育そだってくれて本当ほんとうによかった…」

「きっと反面はんめん教師きょうしにしていたのよ。ほら、あの子こ幼おさない時ときから賢かしこかったもの」

「どういう意味いみかや！？」

ビーチェが大おおきな声こえで突つっ込こみはするも、使用人しようにんの方々かたがたまで頷うなずいている。

これまでのビーチェの行おこないがどれほどだったろうと想像そうぞうしつつ、カルロ君くんに会あえるのを楽たのしみに待まつ僕ぼくだった。

２章しょう開始かいしです。のんびり進すすめていきます。