ランベルク村むらの例れいのキーシャという一家いっかが住すむ家いえへと向むかった。

　最初さいしょに村むらを訪おとずれた時ときは、領主りょうしゅの息子むすことバレないようにしていたが、今いまは身みなりを変かえずに行いっている。

　というのも、六ろく回かい目めに村むらで人材じんざい探さがしをしていた時とき、バレて騒さわぎになったのだが、それからも何なん度どか行いっていると、私わたしが村むらに来くるのにも慣なれたのか、特とくに騒さわぎが起おきなくなっていた。そのため、変装へんそうする必要ひつようがなくなったのだ。

　今いまは、リーツと一緒いっしょに歩あるいているが、これも今日きょうが初はじめてというわけではないので、特とくに村人むらびとに群むらがられたりはしない。

「ここがキーシャ家かの住すまいですよ」

　少すこしボロい家いえに到着とうちゃくした。この村むらとしても、立派りっぱな方ほうに入はいる家いえではない。

　私わたしは扉とびらの前まえに立たち、中なかに入にゅうろうとする。

　すると、扉とびらが勢いきおいよく開ひらかれ、

「う、うわぁ〜〜ん！！」

　家いえの中なかから、大だい泣なきしながら子供こどもが飛とび出だして来きた。

　細ほそい体からだの中性ちゅうせい的てきな子こで、性別せいべつはどちらか一見いっけん分わからない。恐おそらく男おとこの子こだろう。

　髪かみは金色きんいろで、ボサボサして、手入ていれがされていない。

　今いまの私わたしより背せは小ちいさく、年下とししたに見みえる。

　その子こは私わたしを一瞥いちべつすると、泣なき続つづけながら勢いきおいよくどこかに走はしり去さっていった。鑑定かんていする暇ひまもなかった。キーシャ家いえの子こだろうか。しかし、子供こどもは十じゅう二に歳さいと十じゅう一いち歳さいと、リーツは言いっていたような……。

　いや、そういえば三さん兄弟きょうだいと言いっていたか。

　強つよいと噂うわさになっている兄弟きょうだいには、下したにもう一人ひとり弟おとうとがいたんだな。

　三男さんなんはあまり強つよくは見みえなかったが、まあ、まだ幼おさない。これからいくらでも成長せいちょうできるだろう。

「コラ、ロセル！！　待まて！！」

　今度こんどは怒鳴どなり声ごえを上あげながら、大柄おおがらの男おとこが家いえから出でて来きた。

　男おとこは私わたしに気きづき、

「お前まえさんは……あ、もしかして領主りょうしゅの息子むすこさんですかい！？」

　服装ふくそうを見みて私わたしが領主りょうしゅの息子むすこだと気きづいたのか、男おとこは血相けっそうを変かえる。

「いかにも私わたしは領主りょうしゅの息子むすこのアルスだ」

「俺おれのような家いえに何なんの用ようで来きたのですかい……？」

「この家いえの息子むすこが非常ひじょうに優秀ゆうしゅうだと聞きいて、一度いちど見みておきたいと思おもって来きたのだ」

「あ、ああ、それはそれは、歓迎かんげいします。俺おれはグレッグ・キーシャといいます。どうぞお入はいりなさってください」

　かなり歓迎かんげいしているようだ。

　マルカ人じんのリーツを見みてあまりいい顔がおはしなかったが、明あきらかにリーツは良よい身みなりをしているので、家臣かしんであるということが分わかったのか、言及げんきゅうはしてこなかった。

　ちなみにグレッグのステータスは、武勇ぶゆうが少すこし高たかいくらいで、あとは平凡へいぼんだった。

「ところで先さきほど、泣ないて出でて来きた子こがいたのだが、あの子こはグレッグの息子むすこか」

「あいつはロセルっていうんでさぁ。三男さんなん坊ぼうですが、上うえ二に人にんに比くらべて出来できが悪わるくてですねぇ。体からだは弱よわいしすぐ泣なくし、どうしようもないってもんでさぁ。さっきだって、五ご歳さいにもなって寝ねションべンしやがって、叱しかってたら泣ないて逃にげ出だしたんだ。ありゃあ、どんな大人おとなになるんだか、心配しんぱいでならねぇ」

「まだ五ご歳さいなら、これからどうにでも成長せいちょうするだろう」

「そうですかねぇ。しかし、さすが領主りょうしゅの息子むすこ様さまだ。ロセルとは比くらべものにならねーくらいしっかりしていらっしゃる。年齢ねんれいもあまり変かわらないくらいなのになぁ」

　しっかりしているのは転生てんせいしているからなんだけどな。前世ぜんせいの私わたしも五ご歳さいでオネショをしたことぐらいあった気きがする。

　そのあと、私わたしは長男ちょうなんと次男じなんに引ひき合あわされた。

　私わたしを領主りょうしゅの息子むすこだと紹介しょうかいする。

　息子むすこの名なは、長男ちょうなんがガトス、次男じなんがマルクス。

　確たしかにどちらとも、背せが高たかく、年齢ねんれいにしては体からだもガッチリしていた。

　ステータスを見みたが、想像そうぞうしていたより良よい数値すうちだった。

　統率とうそつの限界げんかい値ちはどちらも40台だいで、将しょうの器うつわではなかったが、武勇ぶゆうの限界げんかい値ちが、ガトスが77、マルクスが75、現在げんざいの数値すうちでも、ガトス67、マルクス65といい数値すうちだった。知略ちりゃくと政治せいじはどちらも低ひくい。

　適性てきせいだが、ガトスの歩兵ほへい適性てきせいがA。ほかは全部ぜんぶCかD。マルクスは弓ゆみ兵へい適性てきせいがA。ほかは全部ぜんぶCかDだった。

　ガトスは接近せっきん戦せんに、マルクスは弓ゆんでの遠距離えんきょり攻撃こうげきに優すぐれているといえるだろう。

　全然ぜんぜんダメでも驚おどろかなかったのだが、噂うわさも当あてになる時ときがあるようだ。

「どうですか？」

「この二に人にん、中なか々いいぞ。将来しょうらい兵士へいしになりたいと望のぞむのなら、明日あしたからでも練兵れんぺい場じょうで訓練くんれんさせるべきだろう」

　リーツの質問しつもんに私わたしは答こたえた。

「おお、良よかったな。お前まえら兵士へいしとして活躍かつやくして、名なを上あげたいって言いってたからなぁ！」

　グレッグは狩人かりゅうどをやっているらしいが、息子むすこがどちらとも兵士へいしになるのは、むしろ歓迎かんげいしているみたいだった。息子むすこ二に人にんも私わたしに評価ひょうかされて、喜よろこんで練兵れんぺい場じょうで訓練くんれんをすると、意気込いきごんでいる。

「早速さっそく明日あしたから来くるといい」

「「はい！！」」

　気持きもちのいい返事へんじを聞きいたところで、私わたしは家いえを出でる。

　そこで、先さきほど泣なきながら家いえを出でていった三男さんなんのロセルが、家いえに戻もどってきており、ちょうど鉢合はちあわせになった。

　兄あに二に人にんが優秀ゆうしゅうなら、三男さんなんのこの子こも優秀ゆうしゅうなのかもしれない。

　軽かるい気持きもちで、ロセルのステータスを調しらべてみた。

　私わたしはそのステータスを見みて息いきを呑のんだ。

　ロセル・キーシャ　5歳さい♂

　・ステータス

　統率とうそつ 35/88

　武勇ぶゆう 11/32

　知略ちりゃく 45 /109

　政治せいじ 32/95

　野心やしん 21

　・適性てきせい

　歩兵ほへい D

　騎兵きへい D

　弓ゆみ兵へい C

　魔法まほう兵へい C

　築城ちくじょう A

　兵器へいき A

　水軍すいぐん C

　空軍くうぐん A

　計略けいりゃく S

　将来しょうらい大軍たいぐん師しになりそうな、そんなとてつもない知略ちりゃくを秘ひめていた。