私わたしは捕虜ほりょの鑑定かんていを行おこなう。

　捕虜ほりょの数かずは約やく五ご十じゅう名めい。

　多少たしょう目めが疲つかれたが、何なにとか全員ぜんいん分ぶん終おわらせた。

　結果けっか、リーツやシャーロットのようにとんでもない能力のうりょくを持もった者ものはいなかったが、それなりに優秀ゆうしゅうな人物じんぶつが五ご人にんいた。

　その中なかで、クランに忠誠ちゅうせいを誓ちかう気きのないものは三さん人にん。

　この三さん人にんは縛しばられたまま、堅かたい牢ろうがあるクランプレス城じょうに移送いそうされた。

　忠誠ちゅうせいを誓ちかう者ものは、そのままワクマクロ砦とりでの護衛ごえい兵へいの一員いちいんとして組くみ込こまれるようである。

　忠誠ちゅうせいを誓ちかわず、その上うえ、能力のうりょくもあまり優すぐれていないのは二に十じゅう人にんである。

　最初さいしょは三さん十じゅう人にんが忠誠ちゅうせいを誓ちかわない姿勢しせいであったが、説得せっとくしたことにより十じゅう人にんの気きを変かえることが出来できた。残のこりの二に十じゅう人にんは説得せっとく不可能ふかのうなくらい強固きょうこに反はんクランの態度たいどを貫つらぬいたため、処刑しょけいされることが決定けっていした。

　二に十じゅう人にんが頭あたまを台だいに乗のせて並ならべられる。

　それから斧おのを持もった処刑しょけい人じんも、二に十じゅう人にんの捕虜ほりょの近ちかくで斧おのを構かまえている。

　私わたしはこの処刑しょけいを見みないなら見みないで特とくに咎とがめられることはないのだが、見みることに決きめた。

　自分じぶんが選別せんべつしなかったために、死しんでいく者しゃたちの死しから目めを逸そらすことが出来できなかったからである。

　以前いぜん処刑しょけいは見みたがあれは一いち回かいだった。それも処刑しょけいされたのは罪つみを犯おかした罪人ざいにんだ。

　今回こんかい処刑しょけいするのは、味方みかたに忠誠ちゅうせいを誓ちかう誠実せいじつな人ひとたちと言いってもいい。

　正直しょうじき心苦こころぐるしかった。

「やれ」

　クランの合図あいずで、処刑しょけい人じんが捕虜ほりょたちの首くびに斧おのを振ふり下おろした。

　首くびが落おち、鮮血せんけつが周囲しゅういに飛とび散ちり、地面じめんを赤あかく染そめ上あげた。

　私わたしはその光景こうけいから目めを逸そらさず見み続つづけた。

　今回こんかいは吐はき気けはしなかった。慣なれてきたというのもあるが。

　ただただ、捕虜ほりょたちが死しんでいくのを哀あわれに思おもった。

　まだ二十歳はたちにも満みたない若者わかものもいた。

　戦せんになり死しぬ覚悟かくごはしていただろうが、それでも彼かれらにはまだ未来みらいがあったかもしれないのにと思おもうと、悲かなしみが胸むねからこみあげてきた。

　せめて彼かれらにも私わたしと同おなじように転生てんせいし、二に度目どめの人生じんせいが与あたえられるよう祈いのりをささげた。

〇

　死体したいを片付かたづけた後のち、クランは主要しゅような人物じんぶつを集あつめた。

　早速さっそく軍ぐん議ぎを行おこなうようである。

「さてワクマクロ砦とりでを落おとしたので、次つぎはこの勢いきおいでサムク城じょうを落おとす。サムク城じょうさえ落おとせば、サムク郡ぐんは制圧せいあつしたも同然どうぜんだ」

「あの少すこしいいですか？」

　私わたしは手てを上あげる。

「申もうせ」

「次つぎの城しろですが私わたしの知しっている密偵みってい傭兵ようへいの力ちからを使つかいませぬか？　事前じぜんに工作こうさくをしておけば、容易たやすく城しろを落おとせるかもしれません。まだまだベルツドまで戦たたかっていく必要ひつようがあります故ゆえに、少すこしでも兵へいと資源しげんは温存おんぞんしてサムク城じょうを落おとした方ほうがいいと思おもいます」

「ほう。お主あるじの知しっている密偵みってい傭兵ようへいとは、以前いぜんペレーナ郡ぐんから書状しょじょうを盗ぬすんできた者もの達たちか？　確たしかに凄腕すごうでであることは間違まちがいないだろうし、悪わるくない作戦さくせんではあるな」

「はい、しかし依頼いらい料金りょうきんが結構けっこうかかりまして、金貨きんか二に百ひゃく枚まいは必要ひつようとなるかもしれません。私わたしには払はらえないので、クラン様さまに融通ゆうずうしていただけないかと……」

「そのくらいなら出だしても問題もんだいはない。その者ものたちには実績じっせきもあるし、お主あるじの見みる目めも信用しんようしておる。必かならず戦果せんかを挙あげると期待きたいしておる」

　金貨きんかを払はらって貰もらえることになった。

　これでシャドーの力ちからを借かりれるな。

　サムク城じょうの情報じょうほうはまだ聞きいてはいないが、ワクマクロ砦とりでよりかは恐おそらく落おとしにくい城しろだろう。

「どういう工作こうさくを行おこなうか、本人ほんにんの口くちから聞ききたいため、軍ぐん議ぎの場ばに呼よび寄よせたいのだが出来できるだろうか？」

「えーと、なるべく自分じぶんの正体しょうたいを知しられたくないようで、軍ぐん議ぎの場ばに呼よぶのは難むずかしいかもしれません」

「ふむ……まあ、密偵みっていとしては当然とうぜんではあるが……では交渉こうしょうはお主おもに任まかせた。私わたしとしてはサムク城じょうの門もんを開あけることと、それから城しろにある魔法まほう罠わなの解除かいじょ、魔力まりょく水すいを集あつめている貯蔵庫ちょぞうこの破壊はかいなどをしてもらえると、相当そうとう落おとし易やすくなるだろう」

「魔力まりょく水すいの貯蔵庫ちょぞうこは破壊はかいしてもいいのですか？　物資ぶっしは城しろを落おとせば我わが軍ぐんの物ものとして利用りようできますが」

「物資ぶっしは大量たいりょうにあるから問題もんだいない。落おとす難易なんい度どを下さげる方ほうが大事だいじである」

「分わかりました。それでは私わたしが交渉こうしょうしましょう」

「軍ぐん議ぎはこれで以上いじょうだ。あとは、傭兵ようへい密偵みっていがいつまでに工作こうさくを完了かんりょうさせるかなどの情報じょうほうを聞きいてから、出陣しゅつじんの時期じきを決きめる」

　軍ぐん議ぎが終おわり解散かいさんする。

　それから私わたしは、ファムと依頼いらいについて交渉こうしょうを開始かいしした。

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