私わたしは軍ぐん議ぎが終おわった後のち、ファムを呼よび出だし交渉こうしょうを開始かいしした。

「今回こんかいやってもらいたい依頼いらいは、サムク城じょうの城門じょうもんの開門かいもん、それから魔法まほう罠わなの解除かいじょ、魔力まりょく水すい保管ほかん庫この破壊はかいだ。可能かのうか？」

「三みっつか。まあ、可能かのうだろう。サムク城じょうは一度いちど見みたことがあるが、それほど防備ぼうびが固かたい城しろではなかった。忍しのび込こむのは容易よういだ」

「報酬ほうしゅうはいくらを希望きぼうする？」

「金貨きんか二に百ひゃく五ご十じゅう枚まい。前金まえきんとして金貨きんか五ご十じゅう枚まいいただこう」

「分わかった。前金まえきんはクラン様さまに払はらってもらう。それから、工作こうさくの完了かんりょうはどうやって知しらせてもらおうか」

「それなら問題もんだいない。ベンを外そとで待機たいきさせておき、音おと魔法まほうで伝つたえる」

「分わかった」

　交渉こうしょうはそれで終了しゅうりょうした。

　それからクランに前金まえきんをお願ねがいしたところ、予想よそう通どおりOKが貰もらえた。

　それから、途中とちゅうにある魔法まほう罠わなへの警戒けいかいは怠おこたらずに、サムク城じょう付近ふきんにまで軍ぐんを進軍しんぐん。広ひろい草原そうげんがあり、そこに陣じんを張はった。

　門もんが開ひらいたという報告ほうこくが入はいれば、すぐにでも城しろに侵攻しんこうできるくらいの位置いちに陣じんを張はっている。

　敵てき兵へいは外そとには出でて来こない。籠城ろうじょうする構かまえであるようだ。

　サムク城じょうにベルツドからの援軍えんぐんが入はいったという情報じょうほうはない。

　なるべく少すくない兵へいで我々われわれを足止あしどめすることで、ベルツドが落おちる確かく率りつを下さげる戦略せんりゃくだろうと、ロセルやミレーユは予想よそうしていた。

　サムク城じょうの兵へいは恐おそらくではあるが、死闘しとうになることを覚悟かくごしている。士気しきはかなり高たかいはずだ。死しぬのを覚悟かくごした兵へいは非常ひじょうに強つよい。それが籠城ろうじょうしているとなると、正攻法せいこうほうでは落おとせないとは言いわないまでも、かなりの時間じかん足止あしどめをくらった上うえに、自軍じぐんの兵へいをだいぶ減へらされていただろう。

　工作こうさくをして落おとすのがやはり一番いちばんいい方法ほうほうであったようだ。

「クラン様さまからさらに注文ちゅうもんが入はいった。開門かいもんは夜よるにして欲ほしいとのことだ」

　日ひが明あかるいうちに開門かいもんするより、夜よるにした方ほうがより効果こうか的てきな奇襲きしゅうになる可能かのう性せいが高たかい。

「最初さいしょからそのつもりだった」

「そうか」

　ファムはそう言いった。

「じゃあ、門もんに忍しのび込こんでくる。工作こうさくを終おわらせたら、ベンに連絡れんらくをさせる。ベンの顔かおは覚おぼえているな？」

「えーと……」

　そう言いえばかなり地味じみな顔かおをしていた。顔かおははっきりとは覚おぼえていない。

　しかし、名前なまえが確たしか凄すごく個性こせい的てきだったという事ことは覚おぼえている。

　アレクサンドロス・ベルマドルドだったか。

　鑑定かんていしてみたらそんな名前なまえの顔かおの地味じみな男おとこが、ベンと名乗なのってきたらそいつがベンであると考かんがえて間違まちがいないので大丈夫だいじょうぶか。

　ファムには顔かおを覚おぼえていると返答へんとうした。

　俺おれの返答へんとうを聞きくとファムは城しろに向むかっていった。

　多分たぶんファム以外いがいの仲間なかまもどこかにいて、一緒いっしょに潜入せんにゅうするだろう。

　俺おれは成功せいこうを祈いのりながら、朗報ろうほうが来くるのを待まった。

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